カイデズ(ギルティギア) いい夫婦の日用 短編 |
広い部屋の中、カイはひとり残って仕事をしていた。
昼間は部下が一緒に居る事が多いが、もう夜も遅い時間になったので、部下は先に帰らせた。自分は、同じ区画内に住居を与えられているから少々の残業もかまわない、いや、ゆりかご事件の後処理も含めて自分がやらなければならない事が山積みだった。
扉をノックする音が聞こえて、カイは机の上の書類から目を離し、扉の方へ顔を向けた。
「休憩にしませんか?」
部屋に入ってきたディズィーが、カイに声をかけた。手には軽食が入ったバスケットを持っている。
「もうこんな時間か」
カイは言って立ち上がると、ディズィーが軽食を広げている応接机へ向かった。
「お仕事、まだ終わりそうにないですか?」
ディズィーが少し心配そうな笑顔を向ける。忙しすぎるカイの体調や精神を心配しているのか、それとも、なかなか家に帰ってこない夫に不満があるのか。
「ええ、もう少しかかりそうです。貴女は先に帰ってください」
言いながら、カイはディズィーの隣に腰掛ける。
カイが城を離れて事件の対処をしている間にも通常の業務は行われていて、その分のツケを今払っているのだ。今日中に、と言われていた物については日中の内に済ませているが、期限が先だからといっていつまでも溜め込むわけにもいかない。家族には悪いが、この立場になってしまったからには、仕方がない。
いや、どちらかというと、家に帰らない事に慣れてしまっているのかもしれない。こうやって仕事をしている方が、自然な気がする。
ずっと、家には誰も居なかったのだ。
遅くに帰ったカイを出迎えてくれる人が誰も居ない日が、二年近く続いた。
むしろ、城にいれば、ディズィーの近くに居られる。時を止めて、会話することも、笑顔を見ることもできなくなってしまったけれど。その彼女は、今またカイと一緒に時を進め始めた。だから、本当はふたりで城に居るよりも、家に帰る方が良いはずだ。
「もう、わたしはお父さんの部下じゃありませんよ? お父さんのお仕事が終わるまで、ここで待ちます」
ちょっとむくれた顔を作って、ディズィーが言う。
言い出したらきかない所があるが、そういうところも彼女の良いところだ。
「わかりました」
カイは苦笑して答えた。その答えに満足げな微笑みを返すディズィーを、心底かわいいと思う。
「……ところで、その、」
「?」
言いにくそうにしているカイに、ディズィーは不思議そうな顔をした。
「今日はシンがいないので、『お父さん』という呼ばれ方はあまり――」
少し驚いたのか、ディズィーは目を見開き、次の瞬間に笑顔になった。
「カイさん」
「ディズィー」
カイはディズィーに口付けた。
唇を離すと、お互いの息が顔に掛かる。ディズィーの表情は、柔らかく微笑んでいる。
「今日はもう帰ろうか?」
ディズィーに顔を近付けたまま、囁く。
「でも、お仕事は?」
「明日できる事は、明日やればいい。今日しかできない事を、今日したい」
ディズィーの頭を自分の胸元に引き寄せて答える。
自分はずっと、ギアは不死に近い存在と考えていた。ディズィーが何者かに害される事などないと、根拠なく信じていた。だから、ディズィーが消えそうになった時、まったくの無防備だった己の甘さを呪った。
そんなカイの気持ちを感じ取ったのか、ディズィーは言った。
「ふふっ、明日も会えるじゃないですか」
それを聞いてカイは困った顔を見せた。
「そういう、意味ではないんですが」
確かに、明日も会えるという事はとても嬉しい事ではあるが、今のカイとしては『今日』の方にフォーカスして欲しかった。
カイの表情をどう捉えたのか、
「カイさん、わたしの居る場所は、貴方の居る所です。これからも貴方とずっと一緒にいますよ?」
真剣な顔で、ディズィーが言うので、カイは苦笑するしかなかった。
説明 | ||
検証など雑なので、それ違うよっていうところもあると思いますが、何卒ご容赦ください。 ギルティギア、カイデズの本当に短編です。 キャラや情景などは、既にみなさまが知っているという事を前提に、説明文となる部分を省いています。 |
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カイデズ 夫婦 ギルティギア ショートストーリー カイキスク ディズィー | ||
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