真剣で私と戦いなさい! 3話:纏身
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「私が感じた突然消える気配、そして行方不明者。多分関係あるんじゃないかと思ってな…」

 

 

確かに関係がありそうだ。

 

梅先生の話していた行方不明者は普通の人だったらしい。

 

つまり、姉さんの気配探知から逃げれるような人じゃない…

 

 

「俺様たちがどうこうできる問題じゃないだろ?」

 

「そうだね、行方不明が出てるからあまり関わらないように言われてるし」

 

「俺は興味あるぜ、何か面白生物かもしれないしな」

 

 

男衆は半々の意見

 

 

「キャップ、行方不明者が出ているのに不謹慎だぞ。私としては行方不明とその妙な気配の正体が関係しているのならば放置したくはないな」

 

「私は大和に任せる。必要とあれば倒すけどね」

 

「じゃあ、私はお姉さまに任せるわ」

 

「私は…わかりません」

 

 

女性陣はやはり好戦的な意見が多かった。

 

 

「今のところわかってるのは妙な気配は姉さんの探知から逃げれることだけなんだけどね」

「…だからこそ面白そうだろう」

 

情報が少なすぎる。

 

そもそも基本的に善意で動くことの少ない姉さんのことだから、最近強い相手と戦えないことに対するストレスが原因だろう。

ルー先生や学園長も危惧していたが、結構危ない状態なのかもしれない。

 

 

「そう言えばさ、ヴァンプさんたちって線は無いのかな?」

「ヴァンプさん?」

 

 

ふと思い出したようにモロが言う。

クリスは知らないだろうが、ここ川神市には『働かない正義のヒーロー』と『地域密着型悪の組織』が存在する。

 

悪の組織を自称する『フロシャイム』だが、いい怪人たちの集団だ。

実際川神市内ではよく怪人たちと会うことが出来る。

 

普段の彼らの行動から一般人を襲うのは考えられないわけだ。

 

 

「モロ、お前にしてはいいジョークだったが、あのヴァンプさんたちが人を襲うような怪人たちなら、百先輩は世界を滅ぼす存在だぜ」

 

 

岳人が余計な事を言う。

 

 

「いい度胸だな、岳人。ちょっと寝てろ!」

 

 

姉さんの右腕がぶれた瞬間、岳人が地面に吸い寄せられるように崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

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その後、ヴァンプさんたちを知らないクリスのためにフロシャイムとレッドさんについて教えておいた。

一応悪の組織を自称しているから、クリスが襲い掛からないとも限らないからな。

 

 

「俺さ…レッドさんに会ったときショックだったよ」

「まあ、キャップにはつらい現実だったな」

 

 

子供の頃、まだレッドさんがウェザースリーとして活動していたときに俺たちはレッドさんに出会った。

子供心に正義の味方に憧れはあったが、戦闘シーンを見て憧れは砕け散った。

 

戦闘服はおろかヘルメットすら着用しない。

力任せに殴る蹴る、倒れ付しても踏み続ける。

武器が改造スタンガン。

 

 

「それは、…正義の味方としてどうなのだろう」

「私はヴァンプさんに会ってみたいですね。そういえば、ウサギみたいな子がこの前飛んでましたけど…」

 

「多分、それウサコッツだと思うよ、一応怪人だね」

 

 

そのまま、怪人たちとの面白エピソードや、川神院でフロシャイムの怪人たちと合同稽古があったことなど話した。

 

 

 

 

 

 

―――甲高い耳鳴りが始まった。

姉さんたちの話は聞こえるが、意識が他所に集中する。

 

 

「レッドさんとは戦ってみたいが、爺に止めらr…ッ!!!」

 

 

話している最中に姉さんがいきなり立ち上がった。

 

 

「大和、新情報だ。どうやらいきなり現れるらしい」

 

 

姉さんの言葉とともに武士娘たちが一斉に立ち上がる。

全員真剣な顔で出て行く。

姉さんだけ窓から飛び降りたが…

 

 

 

「センサーに反応有り。…複数、ヒトじゃないかも」

 

 

クッキーからありえない言葉が出てくる。

こんな姿ではあるがクッキーは九鬼財閥が作り出した超高性能ロボットだ。

演算能力はきわめて高い。

 

 

それが『ヒト』ではないと判断している。

 

―――ビルの正面に5体、うち一体は存在が希薄

 

 

「怪人の人たちか?」

「登録されてる怪人じゃないみたい」

 

「百先輩もいるし、よっぽどのことが無い限り大丈夫だろ」

 

「なんでだろうな、余計に心配になってきたぜ!」

 

「なんだか、怪人の人たちの方が危ないみたいに聞こえるんだけど…」

 

「モロ、この前の不良たちを思い出してみろ、…後は分かるな?」

 

 

残る面々で軽口を叩きながら階段を下りる。

キャップならもっと早くいけるだろうが、モロや俺に合わせて降りている。

 

 

 

―――覚醒のときは近い

 

 

 

 

 

 

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みんなで階段を駆け下りる。

激しい打撃音が響く。

しかし、俺たちが出口に着くころには音は鳴り止んでいた。

 

そこで俺たちは目にしてしまった。

 

 

「やっぱり…」

 

 

腕はありえない方向に折れ、ピクピクとわずかに痙攣している…

 

この間の不良と同じように積み上げられている…

 

 

「…思ったより弱かったぞ…」

 

「いつか過剰防衛で訴えられるかもしないな…」

 

 

無造作に積まれている怪人と、それを囲う川神ファミリーの女性陣を…

 

 

 

 

 

 

人型にしては腕が新しい方向を向いているようだが、一応人型と言えなくもない姿だった。

全身を鳥の羽毛のようなもので覆われ、鴉のような顔でなければだが…。

 

間違いなくヒト以外のものだった。

 

 

 

 

ただかわいそうなことに、怪人以上にみんなが強かった。

ただそれだけの話なのだろう。

 

 

「つまらないな…」

 

「百先輩だけで全部倒しておいて…それは…」

 

「無双すぎだろ」

 

 

『みんな』ではなく、姉さん一人が怪人4体より強いらしい。

 

 

「…4体か、まだいたりするんじゃないか?」

 

「1匹いたら30匹いると思えってやつか」

「それはゴキブリでしょ!!」

 

 

―――そろそろ出てくる。

 

姉さんの理不尽な強さの前に、怪人たちは倒れ伏している。

 

そのはずなのに余計に胸騒ぎがする。

 

そして視界の隅に怪物が見えた。

 

 

「京ッ!!」

 

 

京の後ろに立っている。

ぼやけてはいるが確かにいる。

 

なのに皆気づいていない。

腕を振り上げ今にも京を襲おうとしている。

 

体が勝手に動く。

京を押しのけるように突き飛ばして怪人の間に割って入る。

 

 

 

いやな音が体の内部から聞こえる。

人間とは違い硬質な鱗のような羽根に覆われた腕が俺に叩きつけられている。

 

 

全く見えなかった。

姉さんたちの動きを見ているおかげで動体視力には自信がある。

それでも見えなかった。

 

その腕が俺の体をなぎ払う。

かすむ視界に唖然とする京が映り、離れていく。

 

今朝の岳人もこんな感じで吹っ飛んだのかな…だとしたら悪いことをしたかもしれない。

せめて見えない飛んで行く先に何かクッションのようなものがあることを願っておく。

 

 

―――暗転

 

 

 

 

 

 

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Side 川神百代

 

他愛ない。

いきなり消え、いきなり現れる何か。

私の渇きを癒してくれるかもと、死力を尽くした戦いができると思っていた。

 

しかし、弱かった。

生物としては人間以上なのかもしれない。

 

だが、動きが単調だった。

技が無い、知性はあるようだが力任せに過ぎる。

ヴァンプさんのところのアーマータイガーさんたちのほうが数段上だろう。

 

 

「つまらないな…」

 

「百先輩だけで全部倒しておいて…それは…」

 

「無双すぎだろ」

 

「…4体か、まだいたりするんじゃないか?」

 

 

ヴァンプさんたちの話では世界各地に怪人たちは平和に過ごしているらしい。

自分たちで作ったりもするらしいが、基本的には普通の生き物と同様に生まれるらしい。

 

 

「京ッ!!」

 

 

大和の怒声が響いた。

少し離れた位置にいた京の方に走る姿が見える。

少なくとも辺りに私たち以外の気配は無い。

 

 

 

だが、大和は吹っ飛んだ。

 

一瞬何が起こったのかわからなかった。

私が岳人を飛ばしたときのように寸前で押すように飛ばしたのとは違う。

肉を叩く鈍い音とわずかに聞こえる骨が折れる音がした。

 

空中に腕が生えている。

そして、腕から徐々に体が生えてきた。

 

いきなり現れるトリックの正体はこれか…

 

 

大和の方に目をやると、飛んでいく先にはコンクリートの壁。

敵に集中しすぎて助けに行くのを忘れていた。

 

すぐにでも動き出そうと足に力を込める。

 

その時、大和の右手が光った。

 

 

「うおっ!まぶしっ!!」

 

 

キャップが何か言っている。

あまりの光量に視界を腕で隠す。

 

 

 

 

光が晴れた先には、群青をまとった『怪人』がいた。

 

 

 

Side out

 

 

 

 

 

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何も無い。

 

真っ暗な世界が広がっていた。

 

手足を動かしている感覚はあるが、足の裏には地面を感じることは出来ない。

 

瞬きは出来るけど、自分の体が見えない。

 

 

 

「ここは…」

 

 

自分の声は聞こえた。

 

覚えているのは怪人に殴り飛ばされたところまで、もしかしなくても死んでしまったのではないだろうか。

 

 

「死んではいないよ」

 

 

自分の声が聞こえる。

 

喋ったつもりは無い。

 

 

「まだ、死んでないよ」

 

 

目の前に人型が現れそれ徐々に鏡の前でよく見る人物に変わる。

 

 

「生きたいか?」

 

 

問いかけてくる。

 

 

「生きたい」

 

 

その答えを聞いて『俺』の顔が歪む。

顔だけでなく体全体が、特殊効果の用に歪んでいく。

 

そして、人型の怪人に変わった。

 

 

「こんな姿になっても生きたいか?」

 

 

巨大な赤い複眼、硬質感のある肌、鱗のように入り組んだ鎧、やけに太い右腕。

群青色を基調とした怪人が立っていた。

 

 

「君は死に瀕している。あいつらは君を敵と認識した、君が私をその身に迎え入れたときに…」

 

 

怪人が小さくなっていく、そして小さな一つの輪になった。

あの時、目の錯覚と思っていた指輪の姿になっていた。

 

 

「長い年月を経て、私の封印は解かれた。そして、君は私を迎え入れた」

 

「あれは事故だろ…」

 

 

まさか本当に呪いのアイテムだったとは…

 

 

「それでも、君と私は一つになった。私を手に取るんだ…」

 

 

指輪が光を放つ。

気づけば視認することが出来なかった手足がある。

 

このまま何もしなかったら本当に死んでしまうかもしれない。

 

最悪怪人になっても、生きていけないことは無いだろう。

 

 

「…分かったよ」

 

 

指輪を手に取る。

指輪は吸い込まれるように右手の人差し指にはまる。

 

 

―――纏身だ

 

 

頭の中に声が響く。

 

断ることは出来ないのだろう。

どうすればいいのか勝手に頭の中に入ってくる。

 

 

―――直江大和。初回特典で私が戦いと言うものを教えてやろう

 

 

「纏身」

 

 

口が勝手に動く。

 

 

最初に感じたのは浮遊感。

 

 

 

 

俺は怪人に殴り飛ばされ、吹っ飛んでいる真っ最中だった。

 

 

 

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あとがき(と補足)

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

今更ながら一応この作品ある作品の設定とさらに別の作品とのクロスオーバー作品の予定です。

 

設定は、我らが尊敬する企画シナリオ担当のタカヒロ氏が同じく企画シナリオを担当した『姉、ちゃんとしようよ』の指輪による変身とクロウと呼ばれる怪人との戦いです。

 

クロスオーバーの方はくどいほど作中に出てくる『天体戦士 サンレッド』です

 

 

知っている人は知っているはず。

 

姉しよの方のキャラは出すか未定ですが、ヴァンプさんたちは結構出す予定です。

 

質問・疑問でもいいのでコメントいただけると全手動でお答えしたいと思っています。

説明
昨日の深夜に突然現れ、突然消えた謎の存在。
興味を持った百代は全員で調べることを進言する。
その時、基地に突然何者かが現れた。


一応三話目です。今回は一応若干シリアスっぽいです。
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コメント
まさかサンレッドとクロスするとは・・・  続きが楽しみです!!(キラ・リョウ)
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