〜薫る空〜38話(拠点:桂花√)
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 青い空。白い雲。

 

 いい天気というのはこの空のためにあるような気がした。ゆっくりと風に流れる雲がずいぶん綺麗に見えて。

 

 太陽はまぶしいほどに輝いていて、だがそれでも見ていたい気持ちになる。この季節もあって風は冷たい。それが日光と暖かさと相まってこっち良さを相乗させ―――。

 

 

【桂花】「いつまで現実逃避しているつもりよ。さっさと運びなさい」

 

 

 空を見上げていると桂花の声が聞こえた。

 

【一刀】「わかってるよ…」

 

 うんざりしたように呟くと後ろから「だから男なんて…」と桂花がぶつぶつ言っている。

 

 二人がしているのは資材運び。そろそろ休暇もおわり、軍を動かす準備をしている。

 

 それを提案したのが桂花だったのだが、華琳に進言したところ――

 

 

【華琳】『なら、一刀も桂花を補佐しなさい。動く人間が限られているのだから、協力するのよ』

 

 

 という君主様のお達し。

 

 桂花の補佐は本来なら薫の役目のはずなのだが、その薫も人手不足と別のところに借り出されている。

 

 自動的に「能力:桂花>薫>一刀」の縮図が浮かんでしまい、少し落ち込んだ。

 

 表だって否定できないのも痛いところだ。実際、軍師レベルの働きが出来ているのかと聞かれると、上手く答えることが出来ない。

 

 それにしたってだ。

 

 よりにもよって俺と桂花を一緒にすることは無いと思うんだ。

 

 華琳だって普段俺が桂花になんて呼ばれてるかくらい知っているはずなのに…。

 

 

 

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【桂花】「ぼーっとしてさいでさっさと歩きなさい。どうせまた誰かを―――っ!」

 

 言いかけて、桂花がものすごい勢いで後ろへ身を引いた。資材を持つ手が震えている。そんな桂花をみた瞬間、俺は気づけば深く息を吐いていた。

 

【一刀】「はぁ…もういいって」

 

 半分諦めているように、俺は呟いて前へと歩き出す。だって仕方ないだろう。桂花の考えなんてこれまでの事を考えれば、想像なんてすぐにつく。

 

 散々変態だのなんだの言われ続けてきたせいか、そんな態度にはずいぶん慣れてしまっている自分がいる。

 

 桂花の頭の中では、また俺に犯されているんだろうな…とか考えつつ、俺は手に持った資材を担当の兵に渡す。

 

 倉庫のような役割を持った天幕。その前に見張りと管理のための兵が立っている。彼らに現場に残っている物を渡していくのが俺の仕事。あと同じ仕事を持った者の指揮。いわゆる撤収係。

 

 兵に一通り荷物を渡して折り返すように踵を返すと、桂花が歩いてきていた。

 

【桂花】「……っ……」

 

 なんだか息切れしているようにも見える。そういえば、桂花がこんな体力モノの仕事をしているのは珍しい。というか、初めて見たかもしれない。

 

 もう頭の中は空っぽになっているみたいだ。俺の姿を見ても、その表情が変わることは無い。

 

 距離が近づいてくると、次第に彼女の声がはっきりと聞こえてくる。

 

【桂花】「くっ…………はぁっ……」

 

 かなり息が荒い。顔色からも相当つらそうなのが分かる。

 

 そんな彼女を見て、普段の仕返しのつもりだったのだろうか。すれ違い様、本能的な部分で俺は呟いていた。

 

【一刀】「桂花って……運●だったのか…」

 

【桂花】「―――――!!?」

 

 雷にでも打たれたように、桂花の体が思い切り伸びた。

 

【桂花】「い、今……なんて言ったの…」

 

【一刀】「だから●痴……って、うわっ!」

 

 桂花の反応を誰とも気づかず、俺は振り向い――そこには凶器と貸した資材(木製の大きな何か)を持ち上げる桂花がいた。

 

 

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【桂花】「てぇいっ!!」

 

【一刀】「うぉっ!」

 

 飛来するその凶器をぎりぎりでかわす。

 

【一刀】「危な……お前――なぁぁぁぁっ!?」

 

【桂花】「ふんっ!」

 

 かわした矢先、つま先めがけて桂花の足が飛んでくるが、ソレもなんとかかわす。

 

【桂花】「ち………」

 

【一刀】「くっ…」

 

 桂花の顔が歪んだ。かわされたことがよほど悔しいようだ。

 

 何を怒って――…ってそれは俺のせいか。思わず呟いた一言が桂花のボルテージをどんどん上昇させているようだ。

 

【一刀】「お、おちつけ…とりあえずソレ運んでこないと…な?」

 

【桂花】「〜〜〜〜〜〜!!!」

 

 だ、だめだ…。俺が話せばそのたびになんだか顔が赤くなっていってる気がする。

 

【桂花】「〜〜〜!!……はぁ……いいわ……今は、華琳様の命を優先しないと…」

 

 肩で息をしながら、桂花は投げた資材を持ち直して、再び歩き出した。

 

 足音がいつもより大きい気がする…。

 

【一刀】「………………背後には気をつけよう…」

 

 

 当然、その決意は無駄に終るわけだが。

 

 

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 ――数時間後。

 

 華琳から言われた仕事を片付けた俺は、自分の天幕の前に立ち尽くしていた。

 

 入り口の前の色の変わった地面を見つめながら。

 

【一刀】「また古典的な……いや、この時代なら最先端になるのか?……」

 

 呟いた後、どこからか視線を感じる。誰か分かるが、何処からかは分からない。

 

 少し周囲を見渡すが、姿はみえない。

 

【一刀】「はぁ……」

 

 ため息をついた後、俺は近くにある少し大きめの石をいくつか手に持ち、ソレを――

 

【一刀】「ほい、ほい、ほいっと」

 

 変色した地面の上に乗せていく。手持ちが無くなれば、また回収しては乗せていく。

 

 最後に、足で色の境目を掘り起こすように削ってやった。

 

 ミシリと音がしたような気がした瞬間。

 

 轟音をたてて、地面は陥没した。

 

【一刀】「ったく……って、うわ…水仕込むとか…」

 

 まあ、そのおかげで地面の色が変わってたんだろうけど。

 

 ため息が絶えない中、このままにしておいても仕方ないので、俺は土を持って来てはその穴を埋めた。

 

 

 

 

 

【桂花】「く……なんであの馬鹿こういう勘だけはいいのよ……」(※主人公補正です)

 

 明らかに視認できるレベルでの失敗には目を背ける桂花だが、次の瞬間には口元を歪ませて笑っていた。

 

【桂花】「いいわ……だったら次の手を使うまでよ…」

 

 

 

 

 

 

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 ――さらに数時間後。

 

 

 

【一刀】「ふわぁぁ…」

 

 天幕へもどった後、疲れていたのか、寝台へ倒れこめばすぐに眠気が襲ってきた。

 

 そのまま昼寝してしまい、目が覚めると、もう空は暗くなりかけていた。

 

【一刀】「ちょっと寝すぎたか……ん?」

 

 外へ出ると、妙なものが落ちていることに気づいた。遠目でみるとはっきりとは見えないが、何かの書物のようだ。

 

 で、その書物がさっきよりはましだが、また色の違う地面の上に置かれている。昼間ならばわからないくらいの違いだろうが、暗くなると影が濃くなっていくのか、色の違いははっきり見えた。

 

【一刀】「しかし、あれなんだ?」

 

 明らかに昼間の落とし穴と同類の物だが、その上に乗っている物が気になった。

 

 ゆっくりと、落ちないように気をつけながら近づいていく。

 

【一刀】「なんだ…こ…れえぇぇぇ!!??」

 

 目を細めてその表紙を見ると、女性の絵が描いてあるようだった。かなり露出の高い服装の。

 

【一刀】「これは、あ、あれか。中●生が本屋でこそこそしながら他の本をカモフラージュにして買っていくというアレか!」

 

 時代こそ違うものの、どうやら俺が連想しているもので間違いはないようだった。

 

 高速で周囲を見渡す。誰もいない。特にやましいことがある訳ではないが、なぜかこの類の物を見つけるとやってしまうのだ。

 

 欲しいわけではない。読みたいと思っているわけではないが、今どうやってこの落とし穴を攻略しようかと考える自分がいる。

 

 下手に崩してしまっては先ほどのように、水が仕込んであるかもしれない。そうなっては台無しだ。

 

 もう一度いうが、決して読みたいわけじゃない。

 

 俺は何か長い棒状の物が無いか探してみる。

 

【一刀】「くっ…何も無い…」

 

 

 

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 一刀が、そんなこんなでアタフタしている頃。

 

【桂花】「ふふふ・・・既にその周囲にあった長い物は全部撤収済みよ。さすが変態だわ。ものすごく食いついてるわね…。もしもさっきみたいにバレたところで本能には逆らえない罠を用意すればいいのよ」

 

 

 苦しむ一刀を眺めながら、桂花は笑っていた。

 

【桂花】「さあ……素直に落ちてしまいなさい。」

 

 落ちることが素直になるかはともかくとして、桂花はもはや一刀が落とし穴にはまることを信じて疑っていなかった。

 

 

 

 

 

 

【一刀】「……どうすればいい…。」

 

 必死に頭を捻るが、艶本は明らかに穴の中央に置いてあり、手では届かない。しかし、移動させようにも回りに届くものもない。

 

 必死に考える。どうすればアレを手に入れることが出来るのか。

 

 何度も言うが、決して読みたいわけじゃない。だがしかし、何かを達成しなければならない時が男にはあるはずな

 

んだ。

 

 これは桂花の俺に対する挑戦だ。ならば、俺は真正面から受けてやろうと。そう考える。

 

【一刀】「!!!そうか!」

 

 俺は腰に手を当てて、それを見た。

 

【一刀】「これがあるじゃないか!!」

 

 それは師匠から承ったありがたい剣。これがある。これで取れる。これで――。

 

 

 

 

 

 

【琥珀】『………………。』

 

 

 

 

 

 

【一刀】「いや、やめておこう…。うん。」

 

 決意した瞬間、何処からか殺気が飛んできた気がする。

 

 

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【一刀】「……これが使えないとなると…どうすれば…」

 

 悩んでは見るが、答えがでない。俺がもし、わざと穴にはまり、本を手につかみ、土が底に落ちきる前にその土を高速で蹴り上げ、その反動で穴からとびでる――なんて事が出来れば、解決するのだが…。

 

【一刀】「無理だ……。どこのサ●ヤ人だよ」

 

 俺には髪を金色にすることも、星を爆破することもできない。

 

 かといって、ゴムみたいに手を伸ばすことも、分身を作ることだって出来ない。

 

【一刀】「桂花め………」

 

 若干春蘭風に呟いては見たが、状況はかわらなかった。

 

【一刀】「…………………。」

 

 しかし、よく考えてみれば、俺は決して読みたいわけじゃないんだから、こんなにこだわる必要は無いと思うんだ。

 

 だったら、なんでこんなことをしているのか。

 

 

 

 

 〜妄想中

 

【一刀】『フ。桂花、あんな罠じゃ、誰もはめることなんてできないぜ。ほらよ』

 

【桂花】『キィ〜〜〜〜!!!』

 

【一刀】『出直してくるんだな』

 

 獲得した艶本を桂花へと投げわたし、踵を返して去る一刀。

 

 〜妄想終了。

 

 

 

 

 

 

 そうだ、これがしたいんだ!

 

 あの桂花が悔しがる瞬間がみたいんだ。思えば散々馬鹿にされてきたからな。

 

【一刀】「意地でも獲ってやるぞ………あのエロ本!!」

 

 俺は腰の太刀を抜き、正眼へと構える。

 

【一刀】「………………ふぅ」

 

 息を整えて、その目標を視界の中央で捉える。

 

 

 

 

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【桂花】「何…何なのあの殺気…ほんとにあいつ…?」

 

 桂花から見た一刀は、太刀を構え、落とし穴の前で今まで見たことの無いほどのオーラを漂わせていた。それは真剣になった春蘭にも引けをとらないほどのもので、遠目でありながらも、桂花は動揺していた。

 

 

【桂花】「で、でも、あの剣でどうしようと、踏み込んでしまえば、即落とし穴よ…」

 

 

 

 

 

 

【一刀】「………………」

 

 目を閉じて、自分に潜在する意識をすべて、目の前のエロ本に集中する。

 

 あれを、落とし穴の向こうへ飛ばすイメージ。何度も思い浮かべて、すべての意識が収束する。

 

【一刀】「――!!はあああああっ!!!!」

 

 一度振り上げ、そのまま太刀を下へと振りきる。

 

 太刀筋は一本の刃となって、その場に風を引き起こす。

 

 地面に一筋の軌跡をつくりながら、一瞬でその書物を巻き上げ、穴の外へと吹き飛ばした。

 

 ――俗にいう、真空波の誕生だった。

 

【桂花】「な、ななななななああ!!!?」

 

【一刀】「よっしゃあああ!!!」

 

 指を指して、開いた口がふさがらない桂花。一刀は喜びのあまりに、両手を挙げてガッツポーズをとっていた。

 

 

【桂花】「あ、あんた、反則じゃないの!!そんな技つかえるなんて聞いてないわよ!!」

 

【一刀】「ふん。今完成したからな。」

 

【桂花】「そんな、めちゃくちゃじゃない!」

 

【一刀】「そんなことより…」

 

 一刀は穴をよけるようにして、吹き飛ばした本を回収し、戻ってくる。

 

【一刀】「ほら、桂花。お・と・し・も・の・だ。」

 

【桂花】「〜〜〜〜っ!!!」

 

 艶本を渡してやると、桂花は顔を真っ赤にして睨みつけてくる。

 

 だが、怖さはまったくなかった。

 

 その顔を眺めながら笑っていると、桂花は次第に涙目になってくる。

 

【桂花】「あ、あんたなんか………」

 

 震えるように、桂花は叫んだ。

 

 

 

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【桂花】「精液垂れ流しの変態大王のくせに、生意気なのよ!!!」

 

【一刀】「お、おま…!なんだそれ!」

 

【桂花】「う、うるさい!!しゃべらないでよ!あんたが話す度に誰かが妊娠してるんだから!」

 

【一刀】「ちょ、声でかいし、変な事言うなって…」

 

【桂花】「だまりなさい!!!」

 

 最後にそう叫んで、桂花は俺を突き飛ばした。

 

 ちょうど、穴の目の前にいる俺を。

 

 当然ながら、足元に感じるのは浮遊感。

 

【一刀】「うっわああああっ!!!!」

 

 体重をかけて、色の違う地面を踏んでしまった俺は、そのまま重力にさらうことなく、落下する。

 

【一刀】「――冷たっ」

 

 落ちたときに鳴った音は、ドサリというものではなく、激しい水音だった。

 

 見上げると、さっきまで半泣きだった桂花が立っていた。

 

 半泣き”だった”桂花が、笑っていた。

 

【桂花】「あはははは!!!やったわ!この変態!」

 

【一刀】「く……」

 

 冷たさと泥水の不快さもあって、ひどく嫌な笑いだった。

 

【桂花】「ふふふ。あんたさっき何か言っていたわね。落し物?ずいぶん必死にほしがっていたのはあんたでしょ?

 

ほら、そんなにほしいならあげるわ。」

 

 喋り倒して、桂花はさっきのエロ本を穴の中へと投げ入れた。

 

【桂花】「泥だらけになって読みふけるといいわ。」

 

【一刀】「……………………。」

 

【桂花】「あら?もう話すこともできないの?情けないわね」

 

 

 さっきまで冷たかった水だが、今はもう何も感じていなかった。エロ本ももうどうでも良かった。

 

 今俺が一番やりたいこと。それは――

 

 

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【一刀】「お前も落ちろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 剣を引き抜いて、桂花の足元の土に突き立て、削り起こした。

 

 穴を掘ったことで柔らかくなっていたのか、土は簡単に崩れた。

 

【桂花】「な、ちょとっ!きゃあああああ!!!」

 

 俺のときよりも跳ねた水は少ないが、桂花も同じくして泥水の中にダイブした。

 

【桂花】「けほっけほっ……なぁっ…あんた…なにすん…ごほっ」

 

 気管に入ったのか、桂花はひどくむせていた。

 

【一刀】「大丈夫か?」

 

 俺が落としたわけだが、少し心配になって声をかけてみた。

 

【桂花】「さ、さわらないで!誰のせいだと思っているのよ!」

 

【一刀】「いや、お前だろ。穴掘ったの桂花だし」

 

【桂花】「うるさいわね…落ちるのはあんた一人でよかったのよ」

 

【一刀】「なら最後まで油断するなよ」

 

【桂花】「人に言えることじゃないわね」

 

 桂花はあくどい笑いを浮かべる。ずいぶん似合うと思いながら、彼女を見ると少しおかしかった。

 

【桂花】「な、なによ。なにを笑っているのよ」

 

 だって、自分だって泥まみれで顔だって髪だって汚れているのに、いかにも勝ち誇ったような顔をしてるんだから。

 

【一刀】「ってか、これ…どうすんだよ。湯浴みなんかできないぞ」

 

 遠征中に風呂があるはずもなく、当然ながら体を洗うには川かどこかへ行かなければいけないわけで。

 

【桂花】「そんなもの……予定にはいってないわ」

 

【一刀】「はぁ……」

 

 予想通りというかなんというか、そういうところはきっちり相手を困らせるように出来ている計画だった。

 

【一刀】「とりあえず出ないとな……。」

 

【桂花】「…………。」

 

 

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 土の固い部分を探して、足をかける。水から出るときに少し重く感じたが、なんとか上れる。

 

【桂花】「あ、あんた、一人だけ上っていくつもりじゃないでしょうね」

 

 穴から這い出たあと、桂花がそういった。

 

【一刀】「そんなことするかよ。ほら。」

 

【桂花】「う………」

 

 しかし、こんな状況になっても、まだ俺に触れることに抵抗があるのか、桂花はなかなか手をとらない。

 

【桂花】「……………。」

 

【一刀】「はやくしないと、華琳も心配するぞ」

 

【桂花】「…。か、華琳様…」

 

 華琳の名前を出しただけで、頬を染めてなにやら思いふけっている。

 

【一刀】「…………とりあえず、妄想はおいといて、先に上がれ。」

 

【桂花】「華琳様に余計な心労をかけてはいけない………これは華琳様のため……華琳様の……」

 

 何度も呟きながら、桂花は手を伸ばし、一瞬だけ俺の手に触れた。

 

【桂花】「ひっ」

 

 俺はその一瞬を逃すことはない。

 

【一刀】「ほらっ!!」

 

【桂花】「きゃああ!!」

 

 手をつかんで、一気に引き上げた。少し痛んだだろうが、桂花の場合はこうでもしないと日が変わりそうだった。

 

【桂花】「痛………」

 

【一刀】「ふぅ……」

 

 その場に座り込んで、なんだかひどく自分が疲れていることに気づいた。

 

 ついさっきまで眠っていたのに。

 

 桂花の方を見ると、俺がつかんだ手を隠すようにさすっていた。

 

 そんなに痛かったのか、顔も少し赤くなっている。

 

 内心悪いなと思いつつ、実際には口にしない。今までの事を考えると、それで五分な気がしたから。

 

【薫】「一刀…?桂花?……え、なんで、そんなに汚れてるの?」

 

 ボーっとしていると、薫の声がした。

 

【薫】「ちょ、ちょっと、何この穴…ってそれより、はやく体拭かないと!」

 

【桂花】「あ、こら、薫」

 

 薫は桂花を少し強引に立たせて、何処かへ連れて行こうとする。

 

【薫】「一刀もそこにいなさいよ!すぐくるから!」

 

【一刀】「はいよ〜…」

 

 気だるげに答えると、薫と桂花は行ってしまった。

 

【一刀】「はぁ……結局今日はなんだったんだろ」

 

 気づけば桂花と訳の分からない勝負になっていて、落とし穴にはまって。水浸しになって。

 

【一刀】「水も滴るいい男…って泥水じゃ笑えないな…」

 

 自分の状態を見て、苦笑い。

 

 しかし、結局のところ、今日の勝敗はどうなったんだろうなんて、思う一刀。

 

【一刀】「良くて引き分け……まぁ、持ち越しだろうなぁ…」

 

 

 最後に響いた声はずいぶん弱弱しかった。

 

 

 

 

【一刀】「へっっくしゅんん!!!うわ…やばいかも」

 

 

 

説明
桂花拠点です。
しかし……2,3日考えたネタがこんなしょーもないネタって……w
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コメント
艶本取って桂花に無駄な骨だったなと言いたいが為に必殺技を開眼・・・w (howaito)
真空波使えたら第一線いけるだろwwww(ムカミ)
穴掘りは重労働です。(ブックマン)
艶本取るために必殺技習得ってwww(フィル)
穴に落としたときの一刀GJwwwwww(スターダスト)
楽しい喧嘩ですね・・・一刀と桂花のやりとりを見てて、ニヤッと来た(ほわちゃーなマリア)
楽しく読ませていただきました。これも1つの愛のカタチ・・・なのかなw一刀哀れなりw(黒猫)
タグ
真・恋姫無双 カヲルソラ 拠点 桂花 

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