ある魔法少女の物語 3「日常」 |
恭一とまり恵により魔女が倒され、新型コロナウイルスは地球上から存在が完全に消滅した。
天然痘以来の病原体の撲滅だったが、人々はそれらを記憶していなかった。
何故ならば、魔女を倒したおかげで、元々存在しなかった事になったからだ。
「うわぁぁぁ〜! 遅刻する〜!!」
恭一は真字駆高校に通う道を必死で走っていた。
周りには、自分以外の高校生はいない。
とっくに奈穂子とまり恵は、真字駆高校に着いているだろう。
「ぜえ、ぜえ、ぜえ……」
ガラッ、という音と共に、扉が開く。
恭一は大急ぎで真字駆高校の1年A組の教室に入った。
「ギリギリセーフみたいだね」
どうやら、今回もギリギリセーフのようだ。
奈穂子はくすくすと笑っている。
ちなみにまり恵はB組なのでこの教室の隣にいる。
「お前はもう少し、時間を考えた方がいいぜ」
「ああぁ、沢村まで奈穂子と同じ事を……」
沢村太志が奈穂子と同じ事を言った。
恭一は恥ずかしくなって、顔が赤くなった。
―キーン、コーン、カーン、コーン
その時、授業を知らせる鐘が鳴る。
恭一達はすぐに姿勢を整え、宮園先生が来るまで待った。
「皆さん、席に着きましたね?」
しばらくすると、宮園先生がやってきた。
眼鏡と「鉄仮面」と呼ばれる表情は、今までと全く変わらなかった。
宮園先生は周りを見渡した後、教鞭をとった。
「では、授業を始めます」
1年A組の教室に、宮園先生の声が響いた。
一時間目は、国語の授業だ。
(……)
あれから、ジュウげむの姿は見えなくなった。
恭一達は、日常を取り戻したのだ。
だが、戦いの果てに得た平和は、本当に平和を取り戻したのだろうか。
恭一は、それを疑問に思い、集中できなかった。
「……若林さん、何をぼーっとしているのですか?」
「あ、先生、ごめんなさい」
恭一がぼーっとしている事に気づいた宮園先生が静かに彼に注意する。
奈穂子は対照的に、話を真面目に聞いていた。
そのため、恭一と違って勉強はよくできている。
「分かればよろしい。ちゃんと授業に集中してくださいね」
宮園先生はそう言うと、教壇に戻った。
その頃、ジュウげむは……。
「災いなんて、この世に存在してはならないんだ。だから、たくさんの魔法少女を探さなきゃ。ボクはそのために、生まれたんだから」
魔法少女を探し、真字駆市を旅していた。
ジュウげむの目は、災いに対する強い憎しみの気持ちで満ち溢れていた。
「邪魔はしないでくれよ。キミが邪魔をしたら、世界は苦しむからね」
ジュウげむの目的は、災いを消し去るだけなのか。
世界は、少しずつ変わろうとしていた。
説明 | ||
願いや決意は誰も止める事ができない。 そう、世界や時代の流れすらも……といった感じです。 |
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