ある魔法少女の物語 11「何も起こらない」
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「それじゃ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 恭一は真字駆高校に通う道を歩いた。

 昨日、まり恵を怒らせてしまったため、彼女に謝るためである。

 まり恵は隣のクラスなので、昼食の時間に彼女に会う事にした。

 

 そして、いつものように恭一は高校に着く。

 今回も始業時間ギリギリで、今日も鉄仮面の女教師から授業を受ける。

 そんなルーチンを、恭一は繰り返していた。

 

 ……本当に、これだけが繰り返されていた。

 終わらない恭一達の生活……ほとんどの人間は、違和感を感じる事なく過ごしていた。

 

 昼食の時間、恭一は屋上に来ていた。

 屋上にはまり恵がいて、彼女は和食中心の弁当を食べていた。

 恭一は彼女に謝るために、昼食を持って近付いた。

「まり恵、昨日はあんな事を言っちゃってごめん」

「こちらこそ、そう言ってくれてありがとう。本当に悪い人は、自分がやった事も忘れちゃうんだもの」

「……ああ」

 仲直りはすんなりと成功した。

 恭一とまり恵はいつも通り、屋上で弁当を食べる。

 しばらくすると、奈穂子がやってきて、恭一の隣に座って弁当を食べた。

「恭一君、魔女が町を襲う以外は、本当に何も起こってないね」

「ああ……いや、俺達が知らないだけなのかもしれないが……」

 恭一達が高校に通い、魔女が町を襲い、魔法少女が魔女を退治するという、何の変化もない生活。

 それがここ最近、ずっと繰り返されていた。

 ジュウげむの策略なのかもしれないが、それに気づいているのは恭一達だけで、しかも現時点でジュウげむに対抗する手段はない。

 だから、恭一と魔法少女はただ、ジュウげむに従うままに魔女を倒すしかなかった。

「ところで、魔女って一体どんな奴なんだ?」

「災厄の象徴ってジュウげむが言ってたよ」

「いや、そうじゃない。魔女はどうやって生まれたんだ? 魔法少女はジュウげむと契約すればなれるんだが、魔女に関しては何も言わなかったな」

 ジュウげむは魔法少女については詳しいが、何故か魔女については話してくれない。

 恭一は何かを隠していると勘ぐっているが、そのチャンスをまだ見つけていない。

 どうすればいいのか……と恭一が考えていた時。

 

「おーい、みんな、あと15分で昼食時間が終わるぞ」

 恭一と奈穂子のクラスメイト、沢村がやってきて今の時間を知らせる。

 彼は既に、昼食を食べ終わっているようだ。

「あ、そうだった! 恭一君、まり恵ちゃん、早く食べよう!」

「そうだな!」

「すっかり忘れてたわ」

 恭一達は急いで、授業に間に合うまでに昼食の弁当を食べるのだった。

 

 その頃、ジュウげむは、カタリナと共に魔女を探していた。

「ボクには分かっているよ。キミ達が運命に抗う力を持たないって」

「それは……どういう事なの……?」

 カタリナはジュウげむにそう言うが、ジュウげむは涼しい顔をしている。

「キミは何も知らなくていい。世界を平和にしたいんだろう? だから、キミは魔女を倒してくれるだけでいい」

 まるで、上司は自分である、とでも言いたそうな声のジュウげむを、カタリナとルーナは鋭い目で睨みつけた。

「あなたはそうやって、私を束縛しようとするの? いくら相手が魔法少女であっても、言ってはいけない事があるのよ」

「☆×▲◇!」

 カタリナとしては、運命や魔法少女という鎖に縛られたくないのだろう。

 しかしジュウげむは、笑いながら言った。

「面白い事を言うんだね。ボクに説教をするなんて。……でも、ボクに逆らったらどうなるか、分からないのかな……?」

「そんなもの、知らないわよ」

「じゃあ、こうしようか」

 そう言って、ジュウげむは、赤い瞳を光らせた。

 すると、カタリナの身体が赤い光に包まれ、彼女の瞳が茶色から赤に輝いた。

 カタリナは何もできないまま硬直し続け、光が消えると、カタリナは元に戻った。

「私に何をしたの?」

「逆らった罰として、大切なものを貰ったからね」

「何を?」

「さあ? それじゃあ、魔女を探そうか」

「そうね……」

説明
ジュウげむは他人を幸せにするために行動している。
でも、それを受け入れない人もいる。
そんな人に、彼はこんな事をするのです。
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