ある魔法少女の物語 17「悲哀の魔女」
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 恭一達は、夏祭りの会場に襲い掛かった魔女との戦いに臨んだ。

 

「まずは食われようとしてる奴を助ける!」

 恭一は女性を捕らえている触手に突っ込んでいき、剣で触手を切り裂き、女性を救出した。

「あ、ありがとうございます!」

「話は後だ! 今は避難しろ!」

「は、はい!」

「奈穂子、彼女を安全な場所に連れて行くんだ」

「うん!」

 奈穂子は女性を連れて、安全地帯に避難した。

 

「エンチャント・ウェポン!」

 三加は本を開いて呪文を唱え、恭一の武器を強化する。

「サンキュー! せいやぁっ!」

「アアアアアアアアアァァァァァァ!」

 恭一は光の剣で魔女の触手を切り裂く。

 魔女は大きな叫び声を上げて、恭一達を怯ませた。

「くっ……なんというプレッシャー! でも、私達は負けません!」

 カタリナは弓を引き絞り、銀の矢を放つ。

 銀の矢は魔女の急所を突き、大ダメージを与える。

 まり恵は思いっきりハンマーを魔女に振り下ろす。

 すると、魔女の周囲で闇夜の大気が渦を巻いた。

「くぅぅぅっ……寒い……!」

「身体が凍り付きます……!」

 まり恵と三加の身体が、見る見るうちに氷に包まれていく。

 氷は砕けたが、凍傷によってまり恵と三加の体力が奪われた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「大丈夫か、二人とも」

「ええ……でも、あの魔女、なんだか悲しい目をしています……」

 まり恵と三加は、寒さにより顔が青くなっていた。

 カタリナは魔女の目を見ている。

「悲しい目?」

「まるで、忘れられたくない、というような……」

 どうやらこの魔女は、何かの思い出を具現化した存在のようだ。

 とはいえ、災厄をもたらす魔女である事には変わりない。

 恭一は武器を構え直し、魔女を睨みつけた。

「思い出を消し去るのは辛いですが、町が災いに見舞われるよりはマシです!」

 カタリナは涙をぐっとこらえ、魔女目掛けて光の矢を放った。

 ルーナも無表情ながらカタリナを気にしていた。

「ブラスト!」

「アアアアアアアアアアアアア!!」

 三加は本を持ちながら片手で印を結び、魔女に電撃の衝撃を飛ばした。

「ぐぅぅぅっ!」

「……何をしたのよ、三加……!」

 水を纏った魔女は、電撃に弱い。

 そのため、三加の攻撃は効果的だったが、それは結界内にいる恭一達にも効果が及んだ。

「すみません、あなた達に影響が及ぶとは思わなくて……」

 三加であっても、これは予測できなかったようだ。

「気にするな三加、電撃を放たなければいいだけだ」

 恭一は剣を構えて、魔女に突っ込んでいく。

 剣は魔女の身体を貫いた。

「アアアアアアアアアアア!!」

「この声……ぐっ、耐えてやる……!」

 魔女は恭一に向かって叫んだ。

 それは、消えたくない、という思いがこもった、とても悲しい叫び声だった。

 恭一は思わず攻撃を躊躇いそうになるが、魔女である以上、迷えば殺されてしまう。

 何とか強い心で耐え切り、魔女を突き刺した。

「アアアアアアアアアアアアアアア!!!」

「また、風が……!」

 すると、魔女の周囲で再び大気が渦を巻いた。

 負ければ凍ってしまうため、四人は踏ん張って風圧に耐え切った。

「はぁ、はぁ……あたしは、負けないっ……!」

 何とか凍らずに済んだまり恵は、ハンマーを持ち、思いっきり魔女に振り下ろす。

 攻撃は見事に命中し、魔女の身体を押し潰した。

 

「もしかしてこの魔女、消えたくないのでは?」

「俺もそう思ってる。だからといって人を襲うのは良くないけどな」

 きっと、この魔女は、何かを失うという災いが具現化したのだろう。

 魔女の叫び声が悲しかったのも、そのせいかもしれない。

 だが、魔女は例外なく人を襲うため、勇者と魔法少女が戦う必要がある。

 たとえ、大きな代償を払うとしても……。

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「みんな、俺に続け!」

「おおーーーーっ!!」

 恭一は剣を掲げ、希望の光を見出した。

 まり恵、三加、カタリナの士気が大きく上昇する。

「消えたくないからといって、人を襲っていいわけがないだろ!」

「そうよ! あなたは人が好きなんでしょ!?」

 恭一とまり恵は、魔女に呼びかける。

 だが、魔女は呼びかけに応じず、触手をうねらせて恭一とまり恵を打ち据えた。

「いてぇっ!」

「きゃぁっ!」

 三加は恭一とまり恵が地面に激突する前に魔法でクッションを作り、衝撃を軽減する。

「危なかった……死ぬところでしたよ」

「ありがとう、長根先輩」

「来ますよ!」

 三加は呪文を唱え、魔女に向けて炎を放つ。

 電撃は使えないため、代わりに威力が高い炎を使ったのだ。

「ロングレンジ・ブラスター!」

 カタリナはすぐに魔女に光の矢を放ち、魔女は反応できずにダメージを受ける。

「せい! とぉっ! クリムゾン・ナパーム!」

 恭一は飛びかかって剣を連続で振り、最後に火炎弾を連続でぶつけた。

 すると、魔女の口に青白い光が収束し、刹那、細長い光線となって放たれる。

 三加はすぐさま光の壁を張り、光線を反射したが、反射しきれない分は光の壁を貫通した。

「ぐっ……!」

 幸い、急所は外れたので死ぬ事はなかった。

 だが致命傷にはなったので、早めに決着をつけなければならない。

「そこですね!」

 三加は魔女の急所を狙ってエネルギーの光弾を撃ち出す。

「あなたの力を貸してください!」

「おう!」

「ミラー・マジック!」

 魔女が怯んだ隙に、三加は必殺魔法「ミラー・マジック」を発動し、本から無数の火炎弾を放つ。

 恭一の必殺技「クリムゾン・ナパーム」をコピーして魔女に放ったのだ。

「せいやっ!」

 カタリナは弓から光の矢を放ち、魔女の体力を残り僅かにする。

「これでとどめだ! 夏祭りを滅茶苦茶にするな!」

 そして、恭一は高く飛び上がって、魔女の脳天に剣を叩きつける。

 剣が命中した場所から、白い光が漏れ出す。

 魔女は白い光に包まれ、やがて消滅するのだった。

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「……終わった……」

 戦いが終わると同時に、結界は消えた。

 だが、大切な夏祭りを荒らされた事で、恭一はやるせない気持ちになった。

「ところで……無かった事になった災いって……?」

 魔女を倒せば、一つの災いが無かった事になる。

 ジュウげむに聞こうにも聞けないため、奈穂子は頭に?マークを浮かべていたが、まり恵がスマートフォンを持ってやってくる。

「ねえねえ、カタリナさん、聞いた? 真字駆市の隣町の小学校、取り壊されずに済んだみたいよ!」

「はい?」

 ここ、真字駆市の隣町にあった小学校は、一週間前に少子化が原因で廃校になった。

 失われゆく思い出の前に、残った小学生や卒業生達は泣いていた。

 それが、魔女を倒した事で取り消されたのだ。

「えーと、廃校は無かった、という事ですか?」

「……?」

「そうみたいよ」

 思い出が消えずに残ったのは良かった。

 だが、それは大きな矛盾が生じるという事だった。

 少子化が原因であるにも関わらず、廃校にならず、ずっと小学校が残り続けている……。

 これは、世界が歪んでいるという証だった。

「本当に……無かった事に……」

「カタリナ? どうしたの?」

 すると、カタリナは何故かふらふらとよろめいた。

 奈穂子とまり恵は、カタリナの傍に歩み寄った。

「何だか……気分が……」

 カタリナは苦しそうな表情でそう答えた。

「大丈夫?」

「え、ええ」

 すると……。

 

「……カタリナさん!」

 突然、カタリナがその場に倒れた。

 奈穂子がカタリナに声をかけるが、気を失っており、反応しない。

 先程まで盆踊りをしていた人達が、驚いた様子で集まってくる。

「カタリナさん! カタリナさぁーーーーーん!!」

 夏祭りの会場に、奈穂子の叫び声が響き渡った。

説明
夏祭りを襲った魔女との戦いです。
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