スマブラ Stern des Lichts 第19話 〜 森の中で
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「……う……」

 しばらく気絶していたピカチュウだったが、数分後に意識を取り戻して起き上がる。

「……大丈夫か?」

「……ピカピカ?」

 マリオとカービィが、倒れているピカチュウの顔を見下ろす。

 ピカチュウの目には霞がかかっていて、二人の姿は、はっきりと見えていない。

「……」

 ピカチュウは瞬きし、視界をはっきりさせる。

「その、声は……マリオに、カービィ、か?」

「! ピカチュウ……目が覚めたんだな?」

「よかった……元に戻ったんだね、ピカピカ」

「ん、ん、ん……そう、だな」

 ピカチュウはよっこいせ、と立ち上がる。

 すると、ピカチュウの身体がぐらりとよろめいた。

「うわっとと」

「危ねっ!」

 倒れそうになるピカチュウを、マリオが慌てて支える。

「……あれ。ここは……森……なのか?」

「気付いたのか? ピカチュウ」

「あ、ああ……」

 ピカチュウは頭をぶんぶん振って落ち着きを取り戻した後、マリオ達に事情を話そうとした。

「ちょっと待ってくれ、みんなを呼んでくる」

「分かった」

 マリオは、他のスマブラメンバーをピカチュウがいるところに集めた。

 それを確認したピカチュウは、改めて、全員に事情を話した。

「俺はあの時、強い光の中に閉じ込められていた。思い通りに身体が動かせず、もどかしかった。

 だが、カービィが流してくれた涙が、その光に穴を開けてくれた。そこから、俺は脱出して、お前達の顔を見た」

 ピカチュウは、他の助かったファイターよりも詳しく内容を覚えていた。

 キーラの光は、ピカチュウにとって眩しかったようだ。

 今回はピカチュウを助けた闇に感謝すべきだろう。

「あんな眩しい光にやられたら目が見えなくなるぜ」

「確かに……」

「……」

 ピカチュウは、やれやれとした様子のシャドウをじっと見ていた。

「僕の顔に何かついているのか?」

「俺を助けようとしたソニックを思い出しちまって……」

 キーラ軍が襲撃したあの日、ソニックは、自分より遅いピカチュウを助けるためにスピードを落とし、彼に手を伸ばした。

 しかし、それよりも早く光線はソニックとピカチュウに命中し、二匹は光の呪縛を受けてしまった。

 その事が今もピカチュウの中に残っており、似た容姿のシャドウに複雑な感情を抱いてしまうのだ。

「……なるほど。だが、僕はあいつではない。思い出す暇があるなら、前を向いていけ。それが、僕がお前に言える言葉だ」

「ありがとう……シャドウ……」

「別に、礼を言ったつもりはない」

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 一行は森を出る途中で、スパイキーを解放した。

 また、その道中で、コーラスメン、ピストン・ホンドー、タップマンも解放していく。

 スピリッツを解放していく途中で、霧が晴れ、緑のスイッチが見えた。

「これは、最後のスイッチかしら?」

「そうっぽいですわね……赤、青と押しましたから、次は緑と相場が決まっておりますわ」

 しかし、緑のスイッチは遠くにあり、ここからは遠くて先に進めない。

 一行はそのスイッチを押すべく、西の方に向かって歩いていった。

「もしかして、ここにスイッチがあるの?」

「ああ、僕の勘によればな」

「……シャドウ、お前ベルの影響を受けてないか?」

 マリオがシャドウを心配しつつ、スイッチがある森の中に入ろうとした。

 しかし、森の入り口には、サングラスをかけ、スカーフを首に巻いたモグラがいた。

「これはモグラ〜ニャ! オリマーやケンと同じく、妻子持ちよ。子供は七匹いるんだって!」

 ベルが目の前のスピリッツ、モグラ〜ニャについて説明する。

 彼は、ドンキーコングのボディに宿っていた。

「ネクタイがスカーフの代わりなのか?」

「……そうみたいね。こいつは特筆すべき力はない。真っ向勝負だから、私が挑むわ!」

 そう言って、ベルはモグラ〜ニャに戦いを挑んだ。

 

「よし、モグラ〜ニャのスピリッツを解放したわ」

 モグラ〜ニャに勝利したベルは、彼のスピリッツをスピリッツボールの中に入れた。

「箱に入れている時点で、解放とは……」

「キーラに捕まらないように一時的に入れてるのよ。戦いが終わったら、ちゃんと解放するから」

 ベルはピカチュウの指摘を説明で返した。

 すると、ピカチュウが緑のスイッチを発見する。

「おい、見ろ! あれがスイッチだ!」

「ホントだ! でも、スピリッツが邪魔をしてるよ」

 緑のスイッチの前に立ち塞がっていたのは、進化前のフシギソウのボディに宿っているフシギバナのスピリッツだった。

「地面を揺らすわけ……あるよな」

「今は、ね」

 フシギバナは赤い瞳を一行に向ける。

 シャドウは、フシギバナと同じ赤い瞳でフシギバナを睨み返した。

「僕が、こいつの相手をしてもいいか?」

「ええ、頼むわよ!」

「いいだろう。究極の力、見せてやろう!」

 シャドウとフシギバナの戦いが始まった。

 

「バナバーナ!」

 フシギバナはシャドウをつるのムチで縛り、タネマシンガンで攻撃する。

 シャドウはダメージを受けながらも、拳銃を撃ってフシギバナに穴を開ける。

 いずれもギリギリの攻防で、当たるか当たらないか、周りはハラハラしていた。

(大丈夫ですわ、わたしは信じています)

 アイシャは、シャドウが戦う姿をじっと見ていた。

 それは、彼に恋慕しているような眼で。

 もちろん、シャドウは全く気にせず、フシギバナと戦っている。

「バナ!」

 フシギバナはねむりごなをシャドウに降らせて眠らせようとするが、シャドウはすぐに振り払いフシギバナを蹴り飛ばし距離を取る。

「僕にそんな小細工は通用しない。とどめを刺す! カオスマジック!」

 シャドウは指を鳴らし、フシギバナを混沌の渦に巻き込んで大ダメージを与えた。

 その結果、フシギバナは戦闘不能になり、フシギソウのボディも消失した。

 

「解放完了!」

「これでいいのだ」

 フシギバナを解放した事で、緑のスイッチに行くための道が開けた。

 マリオが緑のスイッチを押すと、最後のバリアが消える音がした。

「よし、これであそこに行けるね!」

「待ちなさい、まだ森のスピリッツは解放されていませんわ」

 目的を果たして森を出ようとすると、アイシャが一行を引き留める。

 ベルが辺りをきょろきょろと見渡していると、確かにあちこちにスピリッツが浮いている。

「これを解放するのか?」

「ええ、そうですわ。ベルさんは、キーラに囚われた魂を解放したいのでしょう?」

「そ、そうだけど……」

「お願いしますわね♪」

 アイシャがベルに満面の笑みを浮かべている。

 だが、その目には、ある強い気持ちが宿っていた。

「……あんたがそう言うなら」

「それに、他のファイターも捕まっている可能性もありますしね」

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 アイシャの一言で、一行は森の中に入った。

 まず、一行はルキナのボディに宿る、軍帽を被り、黒い軍服を着た人物のスピリッツに遭遇する。

「おや、私の道を阻むのかい?」

 その人物の傍には、パルテナのボディに宿る、紫の服を着た青紫のグラデーションがかかった長髪の女性が立っている。

 彼女の目は閉じていて、服装には青い炎を思わせる装飾がある。

 ベルは、そのスピリッツの詳細を能力で説明した。

「この人はスペルビア帝国の特別執権官、メレフ・ラハット。彼女が契約しているブレイドは、帝国最強のカグツチよ」

「……彼女?」

「あら、メレフはれっきとした女性よ?」

 マリオは、メレフの全身を見ていた。

 確かに、メレフの声は男性的だが、体つきはやはり、女性らしかった。

 女性のルキナのボディに宿っているのも頷ける。

「メレフ様、敵は私が排除いたします」

「少し違うね。正確に言うと『私達』さ」

「メレフ、僕達は君とカグツチを助けたいんだ。だから、ここを通してくれないか」

 マルスはメレフを説得し、戦わずにスピリッツボールに入れさせようとした。

 しかしメレフとカグツチは首を横に振った。

「その質問の答えは、NOだ。何故なら、あの女にここを通すなと言われているからね」

 メレフが言う「あの女」とは、自身の肉体を奪ったキーラの事だろう。

「……キーラに操られているんじゃ、説得は通じなさそうだな」

「やはり、戦うしかないのか?」

「戦うというのであれば、手加減はしないよ。私とカグツチの連携、君達に破れるかな!?」

 そう言って、メレフは二振りの蛇腹剣を取った。

 アイシャ、カービィ、フォックス、マルス、ソレイユ、リュンヌは、メレフをキーラから解放するべく、彼女と戦った。

 

「参ります」

「ずぉぉぉぉ!」

 カービィはカグツチが飛ばした炎を吸い込み、ファイアをコピーする。

「火ふきこうげき!」

 ファイアカービィは口から火を吹いてメレフを攻撃する。

「君の炎は熱いね。でも、私のカグツチの炎はもっと熱いよ」

 メレフはカグツチの力を借りて双剣を振り、周囲を焼き尽くす。

「うわあぁぁぁ!」

「熱いですね」

「わたしが何とかしますわ、ティータイム!」

 アイシャは即席で紅茶を振る舞い、ダメージを受けた全員の体力を回復する。

「君は実に献身的だね」

「あ、ありがとうございますわ……」

 メレフに褒められて、アイシャは照れる。

 繰り返すが、メレフはれっきとした女性である。

「シールドブレイカー!」

「それっ!」

「ダンスのポーズ!」

 マルスはファルシオンに力を込めてメレフを突く。

 彼女がマルスの一撃を受けて怯んだ後、ソレイユがバレーボールをメレフにぶつけ、リュンヌが英雄のポーズでメレフを吹っ飛ばす。

 メレフはすぐに体勢を整えて双剣を構え直し、奥義の構えを取った。

「参の型でいくぞ、カグツチ! ハァッ! シラヌイ!!!」

 すると、無数の青い焔が現れ、弾幕のように六人を追い詰めていく。

「かわすぞ!」

「うん!」

 六人は何とか、カグツチが放った青い焔を全てかわした。

 青い焔が地面に当たると、そこが焼き尽くされた。

「うわっ……」

「当たったら丸焼きになるところだったな」

「狐の丸焼き……」

 カービィはフォックスを変な目で見る。

「何がおかしい」

「……何でもないよ」

「おっと、油断大敵だよ。燐火!」

 メレフはカービィとフォックスが話している隙に青い焔を放った。

「うわぁ!」

「油断大敵だとあいつが言っただろう」

「ごめんごめん……でも、これで目が覚めたよ。ありがとう、フォッ君! かいてん火ふき!」

 カービィは回転しながらメレフに火を吹く。

「さらにいくぞ、ファイヤー!」

 フォックスは全身に炎を纏い、メレフに体当たりを繰り出す。

「これが俺達の炎だ! メレフ、参ったか!」

 フォックスが自信たっぷりに言う。

 カグツチは目を閉じたままだったが、メレフは、ふふっと微笑んで口を開いた。

「……よくやったね。私達の負けだ」

「メレフ様……」

「心配するな、少し休むだけだ。さあ、私とカグツチの魂を解放してくれないか」

「魂の解放なら、私にお任せ!」

 ベルはスピリッツボールを開け、メレフとカグツチにそれを見せると、二人のスピリッツはボディから抜け、スピリッツボールの中に入った。

 同時に、ルキナとパルテナのボディが崩壊する。

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「……」

 崩壊していくルキナのボディを見て、マルスが憂いの表情を浮かべる。

「……今頃、ルキナはどうしているのかな」

 自分の子孫は今、どうなっているのだろうか。

 キーラの襲撃で戦えるファイターがほぼ全滅し、しかも今まで戦ってきたファイターが全員操られている以上、無事ではない事は確実だが、

 彼女がどこにいるのかをマルスは知りたがっていた。

「よし、じゃあ私が探してあげるわ!」

「ありがとう、ベル」

 ベルはそんな彼の期待に応えるべく、魂を感知する術でルキナを探そうとした。

 しかし、笑顔はすぐに苦い表情に変わる。

「……駄目。ルキナの反応がないわ」

「そうか……仕方ないね」

 落胆するマルスの肩に手を置くベル。

「ベル、どうしたんだい?」

「あんたは本当に優しいのね。こんな時でも他人を心配するなんて」

「……彼女が母体を使われて苦しんでいるとなると、つい、同じ気持ちになってしまって……」

「ふふ、あんたは本当にいい人だわ。マルス、あんたは腹黒くないし、ナルシストでもないし、脳筋でもないわよね?」

「当たり前さ。僕をそういう風に捉えている人は、本人の前で言うのは悪いけど、頭がおかしい人、だと思うな」

 ベルの言葉にマルスはそう返した。

 彼の表情に嘘偽りはなく、ベルは一安心した。

「じゃ、残りのスピリッツを助けよう!」

「ええ!」

 一行は、敵に見つからないように、茂みの中に身を隠しながら森を歩いていく。

 その道中で蜘蛛のスクイッターと森林伐採ロボットのスラッシュマンを解放し、森の奥まで進むと、

 赤いネクタイを付けたゴリラが、台座に縛られていた。

「ドンキー!」

 それは、ジャングルの王者ドンキーコングだった。

 マリオは彼を解放するべく、彼が縛られている台座に触れると、自由になったドンキーがマリオ達に襲い掛かって来た。

「ウオオオオオオオオオオオオ!!」

 ドンキーの両目は真っ赤に染まっていて、見境なく目の前の敵を襲う狂戦士と化していた。

 今のドンキーは、操られて本能のままに動いているのだ。

「よし、ちょっと痛いが、覚悟してもらうぞ!」

「私達があなたを助けますよ!」

「私もソレイユの夫として戦います」

「今、助けてあげるね!」

「究極生命体たるこの僕が相手になってやろう」

「さあ、行くわよ!」

 マリオ、カービィ、シャドウ、ベル、ソレイユ、リュンヌは、暴れるドンキーを止めるべく彼との戦いに挑んだ。

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 〜ベルのスピリッツ名鑑〜

 

 スパイキー

 出身世界:未来の地球

 性別:不明

 ハイカラスクエアで活動する一つ目のウニ。

 ダウニーの子分として、ギアパワー専門の仕事を請け負う。

 

 コーラスメン

 出身世界:リズムの世界

 性別:不明

 三人組のコーラス隊。「あなた」は三番目。

 白黒の世界にいるため、真っ白い身体をしている。

 

 ピストン・ホンドー

 出身世界:地球

 性別:男性

 武士道を重んじるボクサー。28歳。

 本名は「ピストン本田」というらしい。

 真面目で礼儀正しい性格をしている。

 好きな食べ物は寿司で、大食いチャレンジにも挑戦している。

 

 タップマン

 出身世界:こことは異なる世界

 性別:男性型

 オートバランサーを搭載した、高速回転ができるロボット。

 根回しが良いがお調子者。アイススケートが好き。

 頭から独楽を出すため、正月の人気者。

 

 モグラ〜ニャ

 出身世界:地底世界

 性別:♂

 サングラスとスカーフが特徴のモグラ。

 妻子持ちで、7匹の子供がいる。

 

 フシギバナ

 出身世界:ゲフリアース

 性別:♂♀両方存在するが♀はかなり少ない

 フシギソウが進化した、たねポケモン。

 くさ・どくタイプで、特性はしんりょく、隠れ特性はようりょくそ。

 花からうっとりする香りが漂い、戦う者の気持ちを宥めてしまう。

 希少な雌のフシギバナにはめしべがある。

 

 メレフ・ラハット

 出身世界:ゼノワールド・並列世界4

 性別:女性

 スペルビア帝国の特別執権官。

 帝国最強のブレイド、カグツチを連れている。

 戦闘ではカグツチと共に、二振りの蛇腹剣を使って戦う。

 

 スクイッター

 出身世界:DKアイランド

 性別:不明

 スニーカーを履いた蜘蛛。

 糸を吐いて蜘蛛の巣を作り、足場として登る事ができる。

 

 スラッシュマン

 出身世界:こことは異なる世界

 性別:男性型

 森林伐採ロボットを戦闘用に改造したもの。

 手が早いが、超ワイルド。野菜と果物が好き。

 武装のスラッシュクローは近くの敵を衝撃波で攻撃する。

説明
森探索回です。
マルスの性格にはかなり気を付けました。
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