空飛ぶ戦車ドクトリン 第九話 ?つきは罠を好む。 |
"血で血を洗う"、この言葉に彼はよく反応する。
「洗った所で手は赤いままだ、臭いも取れないよ」
私は確かにその通りだと頷く、だが其れはあくまで慣用句で例えの話だ。
彼はこの血で血を洗う、という言葉に非常に関心を持っている。
「頭から漬け込んで見たら、見てみろ、人種も何も判らなくなったぞ!」
彼は笑顔で殺した人間を、溜めた血の池に放り込み引き上げこちらを見て笑っている。
彼はこの血で血を洗うという言葉に非常に惹かれている。
「私はこの言葉が大好きなんだ、こんな少しの言葉で人類を表現できているんだから」
彼は穏やかにそう呟きながら、赤く染めた死体と大地を眺めている。
「これは、私の色だよ…君もそう思うだろ?」
その問いかけに私は首を…
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ギュンターがスパイ!!、その情報は少佐であるジークリットからもたらされた。
「少佐殿、出来ればその顏を失念していた件は自分の不徳の極みであることを痛感しましたので、以後忘れないよう努力精進いたしますので…出来れば着席の許可を頂けないでしょうか?」
遜った、体と頭は別物だ、本当軽蔑したよトロイ・リューグナー!。
「よかろう、私も貴様に下から覗き込まれているのは気分が悪いからな許可しよう!」
そういうとジークリットは俺の頭から足を放し俺を蹴飛ばした。
トロイって体格良くて100キロはありそうな筋肉の塊なのに、この女…スッゲーな!!。
そういう感想は顔に出さずにいそいそと着席した。
「軍人さんって大変だね♪」
嬉しそうにヴィルマが着席した俺に話しかけてくる。
席的には対面の方が話しやすいだろうと俺とジークリット対面にヴィルマはジークリットの左側、つまり俺の右側に椅子を一個持ってきて座ってきたのである。
「失礼ですが…その少佐と彼女はどういうお知合いで?」
「同郷のなじみだ」
本題に入る前に軽い世間話でもと思い二人の関係を尋ねるが最速の即答でぶった切ってきた。
「あっはい」
即答にあっけをとられ、こっちも返事をしてしまう。
「では早速本題に入るぞ、少尉」
そういうと、ジークリットは封筒をテーブルに出した。
中には多くの肖像画とそれを追跡したであろう書類と手書きのメモ類。
最後の紙には人間関係をまとめた相関図があった。
「これは…」
その関係図に目が留まる、大きめの紙を線で三つに区切り上に見慣れた国名が書いてある、左から…。
「ヘクサォ、フェルキア、ヴィージマ…これって」
ギュンターを中心にした交友関係が記されているが、完全にスパイのそれだ。
「現段階でヘクサォとの関係は国境戦争で"一応"奴の連絡網は断絶されているから外してはいるが、ヘクサォにも関りが深い女性を前にして言うのは憚れるかもしれんが、この男はとんだ淫売だよ」
と女のジークリットが申しており、この人間関係図をパッと見ると下級の尉官の俺ですら売国奴と勘違いしてしまいそうなほどだ。
「これを見せたという事は、つまり…」
俺にギュンターをスパイしろって言う事か。
「皆迄は言わんが、貴様に愛国心があるというなら、応える義務はあるだろう」
簡潔に、実に簡潔に催促をしてくる。
だがここで一つ問題がある、ギュンターらもこの国が両大国のスパイ議員に蚕食されているのを見かねた大統領の命令で動いているとか言っていたな。
軍部にはこのスパイ議員の息がかかった連中もいるとか言ってたな、アイツ。
つまりだ、ジークリットとギュンター…どちらかが?をついて罠を仕掛けているってわけか。
いや、両方もあり得るがそうなるとよくわからなくなるぞ?。
「解りました、謹んで引き受けます」
俺は了承した、理由は至極簡単で両方を天秤にかけれる立場に立てるという事はこの立場をどのように見えようが利用しない手がない。
「詳しい事は未だ何一つわかっていないのですが、一つだけ彼から聞いた言葉が…」
「なんだ?」
俺の早速の情報提供に無表情ながらジークリットの目は輝きを隠せないでいる。
さて、ここからどう攻めるかだが、先ずある一つの共通点で集められた集団であることは伏せておきたい、もちろん今回奴らがしようとしてる目的は今ここで明かす訳にいかないし、それを指示したのが大統領というのも伏せるべきだ。
いかに、下級下士官程度が知れる情報と知恵を演出できるかだな。
「ギュンター卿も議院内も両大国の息のかかった議員だらけだとか言っているのを聞きました、あくまで随伴した先でほかの方と喋ってるのを横で聞いてただけですのでそれ以上は一応勉強はしているのですがよくわかりませんでした」
ギュンターと知り合ったのは自分があれこれお国の為に考えた案を面白がって聞く為に自分を屋敷に招待してくれたのだと、そこで初めて会った貴族であろう人たちと同席したが、会話等はせず話を聞いてただけと説明した。
話を整理する際嘘を混ぜるとより相手に理解させやすいというアレだ。
貴族が俺を同列において会話すること自体がおかしいからない実にスムーズにジークリットは理解した様だ。
「…調べてみる必要はあるな…」
そう独り言ちると彼女は、ヴィルマだけに挨拶をしてラ・バンを後にした。
速足でその後ろ姿は手掛かりを得たといった雰囲気を現していた。
「嘘つき。」
ジークリットを目で見送っていると視界の外から非難の声が聞こえた、声の方向に目をやると俺と対面になる、つまりいつもの席に座った彼女ヴィルマがいた。
「何がだい?私は別に嘘なんて…」
そう否定しようとしたが、それを聞いても彼女はその柔和な表情のまままた…。
「う・そ・つ・き」
とそう呟くように俺に言うのだった。
説明 | ||
今回は早い目の投稿です。 以前なろうで書いてた分で後半に入れたスパイやらなんやらをぶっこんでいこうと思い、主人公を二重スパイの立場おかせたりと…本当何も考えずに書いてます。 前の内容をそのまま出してもよかったのですが、時間を置いたらつまらなかったのでまぁ仕方がないと思っています。 頭悪い癖にこう賢い人ばっかり出てきてる風の物語は実にたちが悪い。 作者以上の賢者はいないので、読んでる人には馬鹿ばっかに見えちゃうんじゃないかと思ってしまう限りであります。 |
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