死ぬ意味を教えて〜番外 |
とある日の午後。
曇った空、灰色の雲。シルクのような白い雪。
吐く息が白くなる。
今日の学校。
嫌な事があった。
それは国語の授業中の事だった。
先生のダラダラとした長い話に耐えられなくて、窓から外の景色を眺めていた。
外では体育があっていて、生徒達が我先にとグランドを駆け回っていた。
そんな呆けている時だった。
「佐々木ヒカリ!授業中だろうが何処を見ている!黒板を見ろ!」
と学校の中でも、“三本の指に入る程”面倒臭い教師に怒られてしまった。
その時は素直に授業に参加したので、それ以上の事は無かったのだが、帰りのホームルームの時に私のクラスの担任を通して放課後に職員室に来る様に言われた。
職員室の中にある待合室。
その部屋の中に国語のあの教師が、腕を組んで待っていた。
私はその重苦しい空気で満たされた部屋の中に恐る恐る入り、ソファーに座った。
それから、どのくらいの時間が経ったのだろうか。
それくらいに長い時間、説教をされた。
そんなこんながあって、今の私は気分がブルーだ。
学校ではそれほど目立つ方ではないのだが、時々するドジのせいで先生に目をつけられがちだ。
「キャッ!」
…ほら、ドジっちゃった。
雪で凍結してしまって滑りやすくなっている歩道を歩いていて、足を滑らせ尻餅を付いてしまった。
運良く辺りには人が居なかったものの、オシリがびっちょびちょに…。
「あぁ、もう!」
ひとりで怒ってはみるが、私自身がやった事なので仕方ない。
「本当にドジだなぁ。」と思ったが、思っただけ。
だって、ドジなのは理解してるもん。
…はぁ。
私はなんでいつもこうかなぁ。
♪
今日の授業中。
可笑しな事があった。
外を見て呆けている佐々木さんに先生が「黒板を見ろ!」と一喝。
それに驚き、慌てる彼女。
いつもドジばかりしている彼女は、今も多分、帰り道で転んだりしてるんだと思う。
私にはそんな風に先生に怒られる事も、ドジをする事も出来ない。
出来ないんじゃない。皆がそれを“させてはくれない”。
私は皆の憧れ。目標にされるべき人だから。
「あれ?寒いと思ってたら、雪が降ってたんだ。」
手のひらにふわり。
白百合のように白く、それでいて綿飴のようにふんわりした雪が手のひらにのった。
それから徐々に溶けていき、無くなった。
「冬…なんだ。」
季節すら忘れてしまっていた。
皆の期待に応じたくて努力をし過ぎたのか。
それとも、ただ何も気にせず生きてきたせいなのか。
どちらかは分からないが、どっちかなに気がする。
もしかしたら両方かも知れない。
毎日勉強の日々。
息抜きと言えば読書くらい。
どうせ明日も今日と同じなんだと生きてきた。
でも、そんな私が彼女と出会って変わった。
彼女のするドジに笑わされる。
日々が楽しくなった。
話した事はないけれど、彼女と友達になりたいと思った。
「佐々木さん…。」
彼女と一緒に居たい。
そう思った。
♪
十二月。
相変わらず外では雪が降っている。
私の学校は暖房が無いので、スカートを穿いている私達にとっては嫌な季節だ。
まだ、暖房が有ればマシなのだが…。
「佐々木さん。」
名前を呼ばれ振り向くと、そこには可憐な女の子。
――立花アサヒが居た。
立花アサヒは席が隣というだけで、特に話した事は無かった。
生徒の憧れ的存在だった為に話し掛けずらかったと言うのもあるのだが…。
何より頭が良く、綺麗で可愛い彼女は私とは真逆な存在であり、とても遠くて手の届かない存在だった為に彼女とは接しにくかった。
そんな立花アサヒに突然話し掛けられ少し驚いた。
「なに?」と言葉を返すと、何故か彼女は頬を紅潮させた。
「あの…ですね。」
もじもじするアサヒ。
いちいちの行動が可愛らしい。
私には到底出来ない事だなとつくづく思う。
「友達…になってくれませんか?」
友達ねぇ。
友達…って。
「へっ?」
一時の間からの友達になってくれませんか宣言。
私は突然の出来事にどう言葉を返せばよいか迷ってしまった。
彼女、立花アサヒの事はなにも知らない。
ただ頭が良くて、性格がいいと“勝手に決め付けているだけ”。
彼女の事は何一つ知らない。
そんな私となぜ友達になりたいのか。
不思議だった。
「貴女が良いなら別に良いけど…。」
「本当ですか!」
物凄く嬉しそう微笑む。
彼女は友達が多い。
常に複数の生徒に囲まれて会話したりして楽しそうにしている。
楽しそう…ってあれ?
彼女の本当の笑顔を見た事が無いような気がした。
気のせいかも知れないが席が隣なだけによく彼女の顔を見る。
クラスメイトとの会話中、先生に褒められた時、成績が良かった時…。
笑っていた。
笑っていたのだが、心から嬉しいと思っていないような笑顔に見えた。
私の勝手な決めつけかも知れないが、なぜかそれが急に心配になった。
表と裏。
彼女が演じている今の姿が表なら、私達の知らない裏が有るはず。
誰にも見せない努力とか…。
でも、今さっきの笑顔は“本当の笑顔”だった。
彼女の事は何一つ知らない、関わりの無い私なのに、なぜかさっきの笑顔に安心した。
「宜しくねヒカリちゃん。」
彼女は微笑み小さくて可愛らしい手を差し伸べてきた。
その手を握りながら私は微笑む。
「宜しく。」
〜To be continue♪
説明 | ||
ドジっ子で、あまり目立たない“佐々木ヒカリ”。 生徒の憧れ的な存在の“立花アサヒ”。 それぞれに憧れを感じていた。 |
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