空飛ぶ戦車ドクトリン 第十話 謀を天秤にかけるもの
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己の心臓と己の罪を秤にかけ、己の罪の重さが心臓つまり与えられた命より重いか軽いかで量る神が冥界にいるそうだ。

 

そうだと言ったのは死んだ者がそれを見てこの世にいるも、どうだったかを語ってくれた事がないからだ。

 

死から帰ったもは一様にしてこう語るのだ。

 

「ある夢を見た、そこで見た夢を叶えるためにこの世界を燃やそうと思う」

 

死は何もかも奪うのだ、狂気だけをさらけ出しそして死者に火を放つようせっつくのだ、それで夢がかなうと信じる狂人達を奮わせるように。

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

「二重スパイ始めました?」

 

とある廃墟の一室、そこには俺と俺の呼び出しで来てくれた男ギュンターがそこにいた。

 

「にしてもそんなジョークを言う為にこんな廃墟に呼び出したのか?トロイ」

 

「まぁ…そんなところだ」

 

この廃墟の位置は実に都合のいい位置にある、ブリニストとトロイの館の中間位置にあり行き来していてもおかしくない、そして軍部のジークリットの視線も気にしなくていいという利点もある。

 

会うのが俺でなければ問題だが、あくまで俺はあの女のスパイという事だから相手からの密談を受けたという体にして、事後報告という形をとれば事を荒立てることはないと…まぁ俺は踏んでいるわけだ。

 

「つまり、そのジークリットという諜報部か軍警察だかの少佐が俺を疑ってお前えに密偵をさせているという事か?」

 

呑み込みが早くて助かるなこの男は。

 

「その考えで問題ない」

 

「おかしくないか?そもそもその少佐何故自前の部下を使わないんだ?どう考えても素人のお前を使うこと自体間違いだろう」

 

「そういう疑問はご尤もだが、たいして意味がないんだよ、ギュンター」

 

俺の返答に不思議そうな顔をする、まぁ自身の考えを説明することにした。

 

俺の考えとしては、軍の諜報部の人間が個人の伝手を使って公では行えない調査、つまり貴族への手入れを考えている。

相手も考えていることはこちらと同じ蚕食してくる連中を探している事になる。

 

先日見せてもらった人物関係図がそれを物語っていた。

ギュンターと繋がりのある人間がほぼ貴族階級で固められている。

まぁヘクサォはとっくにその制度はなくあくまで"元"貴族となるわけだが、ヴィージマの貴族とも繋がりが深くそしてその交友関係を利用して、国内の社交場で発言権を強く持ってるように見えるゆえに、ジークリットはギュンターをスパイと見なしてその魔の手を防ぐ何かを手に入れようとしているのが本音だろう。

 

ジークリットも指示してくる人間が、犯人というのは解っている。

どうせ適当に流すために捜査指示を出しただけだが、それを逆手にとってやろうと考えているんだろう。

 

「つまり、私の個人的な交友関係に国賊の親玉がいるから、そのジークリットって奴は私から証拠を見つけて芋ずる式で検挙しようってのか?この国防の危機に?ナンセンスだ」

 

俺の考えに対して、ギュンターは思った通りの反応をした。

 

「何笑ってるんだトロイ、説明しろ不愉快だぞ」

 

「失礼、まぁ怒らずに聞いてほしい、だからこそ俺は二重スパイなるって言ったんだ」

 

「説明が不足だな」

 

「先ず俺のこの諜報戦の最終目的を言おう、ずばりフェルキアの勝利だ」

 

俺の言葉にギュンターの瞳がきらりと光る、この一言で理解できるんだから大したものだ。

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「なるほど、お前は私と相手を天秤にかけながら謀を行う気か、双方の情報がよりフェルキアの勝利に傾くように…いかれてるな」

 

「この諜報戦では、ギュンター貴方に主導権が"やや"ある、この事は貴方にだけ話している情報をうまい具合に扱えるならうまい具合に事が運ぶ。」

 

「"やや"か…厄介だなトロイ、お前はどちらにとっても二重スパイであるつもりか?」

 

解るもんだな、やっぱ賢いなこの男は。

 

「そうだ、こちらの胸先三寸でリークした情報にも色々隠し味を加えさせてもらう、正直貴方の知り合いにも恐ろしく黒い灰色の人間も居るだろうしその人間相手に嘘をつけるほど貴方は…」

 

「冷徹になれないか?」

 

「下品ではない」

 

俺の言葉にギュンターは少しだけ目を見開いた…そんな気がした。

 

「正直騙し合いに化かし合いは、知恵が小賢しく働くものがすることだ、しなければ二進も三進もいかない連中がする事だ、まぁ俺を上手く使ってくれという事だ」

 

「全く、変わった男だ君は…命が惜しくないのか?」

 

「生き死にを経験すると多少気にしなくなるさ」

 

ギュンターの心配に俺は軽口で返した。

 

「確認だトロイ君が泥をかぶる形で、この命がけのギャンブルの様な戦いをするというわけでいいんだな」

 

「その通りだが、見ようによっちゃアンタらの方が泥をかぶるかもしれんぞ、結果が全てだ過程で何があってもギュンター、君は俺を信じるしかない」

 

「それで構わない」

 

「わざわざ密会して迄話した甲斐があったな」

 

そういうと俺は少し安堵した、まぁ友人を名乗ってくれたとはいえ相手は貴族だからな気分を害したらいつでも俺を殺せるわけだしな、ましてやスパイ疑惑だ、

まぁ理解力が高い男と踏んだからこそ話したわけだがな、ヨハンではこうはいかなかっただろう。

 

「最後に一つだけいいか?」

 

ギュンターが俺の方を見て訊ねてくる、その顏…いや眼差しには何か決意めいたものを感じた。

 

「…なんだい?」

 

「生き死に…トロイ君はそう言ったな?命のやり取りではなく…」

 

「…」

 

「君はやはり、ホシビトではないのか?」

 

賢いのは問題だな…俺はこの男の目を見ながらそんなことを考えてしまった。

 

 

 

説明
本文の前に書いてる例のアレ、アレが書けないと本文が書けないわけですが、今回はずいぶん早く思いついたので個人的にはハイペースで書けたと思います。

あの前文があると物語の雰囲気が高まるのでなんか書きやすいので書いてます。

何というか狂った人の話をぼんやり考えていて、なんか短い文章にして書いていますがアレがなんなのか実際は何も決めていません。

誰の視点なのかも、いつの時代の物かもさっぱりです。
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異世界 アンリアルストレンヂ 空飛ぶ戦車ドクトリン 

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