一刻夢の話
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これは一刻夢のおはなし

 

笛吹男がやってくる

大変だ大変だ子供がついて行くぞ

グッスリスヤスヤトコトコ

どこに行くのかな?行くのかな?

でも内緒

教えてあげない

教えてはいけない

良い子には―?―?―?―?

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 私は長い行列に並んでいました。

 

壁についた蝋燭の灯りだけでは薄暗く先が見えないですがとてもとても長い廊下にいるようでした。

 

教会や学校より立派なので外からしか見た事はありませんがこれはお屋敷の中なのでしょう。

 

いくつか扉もあります。

 

見知った顔がいくつもあるので町中の子がいるのかも知れません。

 

ベッドで寝ていたはずなので夢の中なのでしょう。

 

私は列を抜け出し友人がいないか探すことにしたのです。

 

 

 

 既に同じ様に抜け出した子供達がお話をしていました。

 

行列の先におじいさんがいてみんなに頼み事をするようです。

 

「嫌なら逃げちゃえばいいんだよ」とある少女は言います。

 

私も夢の中まで頼まれ事をするのは嫌だったのです。

 

扉の中に隠れる事にしました。

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 扉を開けると中には立派なお部屋がありました。

 

沢山の蝋燭が照らし先程まで暗がりにいた私には少し眩しいくらいです。

 

座ったら快適そうなふかふかな長椅子に飾りがある机。売り物ではない絵や置物があちこちにありました。

 

先に入っていたのでしょう。制服を着た見知らぬ少女達がいました。

 

同じ様に気付いたらここにいたようです。

 

私より前からここにいるようでした。

 

 

 部屋の中は既に少女達で探索済みでした。

 

クローゼットだけは決して開けていけない。正面ちゃんが出てくるよと言われたのです。

 

正面ちゃんとは何でしょう?ただ怖いとしかわかりませんでした。

 

 

 

 お部屋の中には食べた事がない美味しいお菓子もあり、カップのお茶は飲んでも減りません。

 

夢の中なら不思議な事があっても当然でしょう。時間も何かも気にせず少女達と楽しく過ごしていました。

 

 

 ふと大きな鞄が目についたのです。

 

人でも入れそうな大きな大きな旅行鞄でした。

 

私はクローゼットの事を思い出しました。

 

 

ここで過ごすのは楽しいです。

 

でも正面ちゃんがいなければみんな不安もなく、もっと快適になるかも知れません。

 

私は部屋にあった大きな鞄に正面ちゃんをしまって奥に隠す事にしました。

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 みんながゲームをして遊んでいる間に鞄を運び、蝋燭を持ってクローゼットをそろそろ開けました。

 

鞄を盾に恐る恐る開けて行きましたが、蝋燭の灯りで確認すると中には先端だけのモップが入っていました。

 

奥に何故か同じクローゼットの扉があります。

 

 

私は拍子抜けしましたが自分の夢の中なので怯えるわけにはいきません。

 

燭台と鞄の持ち手を握り締め扉を開けて行きます。

 

 

 

 

 2,3回開けたでしょうか?足元に何がすがりついて来ました。

 

「助けて!助けて!ここから出して!」と脚にしがみついて来ます。

 

 

暗くて何も見えず子供の様な高い声でした。

 

私はよく見ようと蝋燭を近づけましたが、

 

怯えて鞄に入り込んでしまったのです。そのまま正面ちゃんを鞄の中にしまいました。

 

鞄の中からはここから出してと言う声が暫くしていましたがだんだん聞こえなくなりました。

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 これでみんなも気にせず楽しく過ごせるようになるでしょう。

 

重い鞄はクローゼットの奥に押し込み、私は部屋に戻ろうとしたのですが、

 

はてさて、どうやって戻れば良いのでしょう。

 

 

 燭台を持ったままあけてもあけても現れるクローゼットの扉をひたすらあけ続けていました。

 

いくつ開いたのでしょう。数はわかりません。

 

開けた時に最初に見たモップの先があったのです。

 

これで出られると思いましたが「もし出られなかったら?」

 

そんな考えが頭を過ったのです。

 

突然扉が開きました。そこにいたのは同じくらいの女の子です。

 

その子が私には眩しく見えました。

 

私は嬉しくなり助けを求めましたがその子に怯えられ拒絶されました。

 

これじゃ正面ちゃんと同じ……と思った瞬間、

 

蝋燭の火が消えてしまいました。

 

私は絶望し深淵へ堕ちていきました。

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 お手伝いをしてくれた良い子にはおじいさんは何でもひとつ叶えてくれる不思議な袋をくれるのです。

 

お金でも形のない愛や幸せでも、子供ですから欲しかった玩具でも時には逆に不幸でも。

 

それでも開けなければ叶いません。願いを聞いて捨ててしまう大人もいます。

 

これはある場所の何十年かに一度あちこちの町や村にやってくる奇跡です。

 

ある町で子供達を集めて話しやってきたらお金を頼もうとしましたが、

 

聞かなかった子供だけに奇跡は訪れたのです。

 

一度でも話を聞いてしまうと例え子供でも奇跡は起きないのでした。

 

 では、お手伝いをしない子はどうなるのか?

 

大体は何も得ずそのまま戻ってくるのですが、でも、不幸な子もいるのです。

 

 

娘達は眠っているようでした。

 

白い服を来た参列者が歩いて行きます。

 

その人は参列者に知り合いをみつけ「どうしたの?」と、声をかけました。

 

「何か責任感じちゃって…」とそう話すのは逃げちゃえばと、言った少女でした。

 

参列者の白い列は長く続いて行きます。

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フワフワ幸福でもキラキラ不幸でも

 

決して話してはいけない 

 

話せないならみんな同じさ

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