鬼畜王文台 蘇りし虎は曹魏を食らう 18 第十二章三節
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第十二章

 

 

 

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〜擁州・長安〜

 

 

 

華琳「あなたたちの言のとおりね。 番兵の一人すらいないわ」

 

雪蓮「本当に守りが手薄ねぇー。 まさか冗談抜きでスッカラカンだなんて思いもしなかったわ」

 

穏「趙雲さんたちが危惧していた伏兵も、ここまでは見当たりませんでしたねぇ〜」

 

厳顔「しかしまだ油断はできませぬ。 あの男は計算高い人物でしてな。

   恐らく我らの離反も、とうに読まれていると思って差し支えありますまい」

 

貂蝉「でもなんか臭うのよねぇん。 何かこう、人でないものがワンサカ出てくるような、オ・カ・ン」

 

卑弥呼「ふむ、貂蝉よ、傀儡の気配でも見つけたかの?」

 

貂蝉「ん〜、仙術というより、妖術の気配がするのよねぇん。 でももしかしたら神術かもしれないわん」

 

明命「(それ以前に、この人たちは本当に人間なのでしょうか…?)」

 

風「妖術ですかー。ですが、街中には、特にこれといった異常はありませんねー」

 

趙雲「今のところは、な」

 

稟「ですが仮にそのような摩訶不思議な力を使用する場合、

  その付近に必ず媒体となる何らかの源が存在するはずです。

  まずはそれを捜索するのが宜しいかと」

 

春蘭「むぅぅ…私には何のことだかさっぱり分からんぞ?」

 

華琳「良いのよ春蘭。 あなたには分からなくても。

   それより春蘭、秋蘭、あなたたちは周囲の気配に警戒なさい。

   いざとなった時に私たちを守るのはあなたたちの役目よ。 二人とも、いいわね?」

 

春蘭・秋蘭「はっ!!」

 

雪蓮「明命も頼むわよ。 いつ許貢と黄祖の影があるか分からないし、

   警戒だけは怠らないようにしなさい。

   それから白蓮、あなたには緊急事態が起きたときに

   真っ先に一刀と母様に危急を知らせてもらうから、そのつもりでいなさい。 あなたの馬術が頼りよ」

 

明命「了解です!!」

 

白蓮「責任重大だな…まあやるだけやってみるよ」

 

桂花「街中には特に異常はないようですね」

 

華琳「となると…やはり城内か。 黄忠、あなたはこの城について何か知っていることはないのかしら?」

 

 

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黄忠「そうですね… ここ長安の城内には、蜀の国宝、南華老仙が著した太平要術の書が

   収められております。 そして、ここからは私の推測でしかありませんが、

   恐らく彼は、その太平要術の書を使って、自らの臣下の意思を残した上で、

   かつ、意のままにおいて我々をかどわかし、統率したものと存じます」

 

華琳「何ですって……!!? あれは元々我ら曹一族の持ち物よ!!

   それも読んではならぬ禁書だったのよ!?

   盗賊に盗まれて、その討伐の折に火計で焼けたものとばかり思っていたのだけれど……」

 

秋蘭「……焼け残ったか、はたまた持ち出されたか…

   どちらにしても現存していた、ということでしょうな」

 

稟「それにしても、董卓も気の毒ですね。 一度無理やり傀儡として皇帝にされ、

  我らに捕まったあと、出奔した所で再び傀儡の皇帝ですか…」

 

桂花「ふんっ、華琳様の寵愛を受けようとせずに拒んだのがいけないのよ。 自業自得だわ」

 

華琳「桂花、あなたは少し黙ってなさい。 あとでオシオキだわね」

 

桂花「ひっ…!!」

 

雪蓮「どうでもいいけど、とにかくその少帝ちゃんと、なんとかろーせんとやらを探しましょ。

   早く戻って母様と一緒にひと暴れしたいわ」

 

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孫策が城下町と王宮を隔てる境界線である城門を半歩またいだ、その時だった。

白いフードに黒い口隠しの布、黒い楕円に赤い目玉模様のような図案が描かれた、

異形の白装束の集団が、まるで地面から雑草が生えるかのごとく、

音もなくニョキニョキと姿を現し始めた。 その数、およそ五千ほど。

 

 

雪蓮「ッ!?」

 

それを見た瞬間、孫策は顔つきを小覇王のそれに変え、二本の南海覇王を構えて仁王立ちする。

 

華琳「何奴ッ!!? もしや、五胡の妖術か!!!??」

 

同時に曹操も、孫策を守るように白装束の前に立ち、大鎌・絶を構えて警戒態勢をとった。

 

 

 

白装束「ここより先は通さぬ!!」

 

白装束「太平要術の書は渡さぬ!!」

 

白装束「北郷一刀は悪なり! 悪は滅すべし!!」

 

白装束「北郷一刀はこの世界に仇なす魔王、同じく孫文台は邪王である!!」

 

白装束「北郷一刀の信奉者たちもまた同罪なり!!」

 

白装束「裏切り者の趙子龍どもに、死を!!」

 

白装束「肯定派は消せ!! この外史は直ちに終局を迎えるべきである!!」

 

白装束「孫文台は人にあらず!! 人ならざる者に、裁きを!!」

 

 

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曹操は思った。

 

文台様が人でない? 何を言うかと思えば、いまさら。 馬鹿馬鹿しいにもほどがある。

この曹孟徳、そのようなことなどとうに心得ている。

皆が皆、文台様が人とは別の何かであることなど、とうの昔に知りえている。

我ら曹魏一同は、全て知っての上で文台様に仕えているのだ。

たとえ人でなく妖魔や神仙の類であろうとも、あの方には私ですら為し得なかった

すばらしき徳と人望がある。

街には物があふれ、商人の威勢の良い掛け声が聞こえ、人々には笑顔が絶えぬ。

治安も治水も優れ、官も軍も規律良い。

 

一刀もまた同様だ。

アイツはどうしようもない真性の女たらしだけれど、文台様に負けないくらいの徳と人望がある。

一軍をまとめあげる賢さもあるし、秋蘭や冥琳から出された仕事は、

時間がかかりながらもきちんとこなす。

春蘭には敵わないまでも、武もそこそこ立つ。

桂花は反対しているが、我が伴侶の候補として認めても良い。

どちらにしても、大切なのは中身だ。

 

劉表の軍を見たか。 同じ人でないものが統べる国とはとても思えない。

馬超や呂布の部隊はともかく、そのほかの連中など、単なる烏合の衆ではないか。

あのような凡人に、王たる器などありはしない。

一刀や文台様や雪蓮たちを、何としても失うわけにはゆかぬ。

 

華琳「愚か者が…この絶の錆にしてくれる」

 

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孫策は思った。

 

一刀と母様を殺す? ハァ??? 頭どうかしてんじゃないのコイツラ?

あたしは一刀に身も心も全てをささげたのよ。

こんなチンカス以下の連中に、あたしたち孫家の大事なお婿をブッ殺されてたまりますかっての。

ここらで一発、あたしの復活した姿を見せ付けてやろうかしら。

 

それにしても参ったわね。向こうから攻撃しては来ないみたいだけど、これじゃ先に進めないじゃない。

それに、一刀が魔王? 母様が邪王? いいじゃない、言いえて妙ね。

あの二人には良く似合ってると思うわ。

ついでにあたしにも何か称号が欲しいんだけどなー。

 

 

白装束「死に損ないの偽王孫伯符よ! 今度こそ黄泉路に旅立つがよいわ!!」

 

 

ブチッ

 

 

雪蓮「……いいわ。 そこまで言うのなら、遠慮は必要なさそうね。

   これで後腐れなく、思う存分殺し合いが出来るわ、

   一刀を馬鹿にした罪を、あの世でせいぜい後悔なさいな、ククク」

 

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卑弥呼は思った。

 

なるほど、拠点防衛型の罠か。

函谷関以西が一気に全て落とされたのは、こやつらの暗躍があったからと見て良かろうな。

となると、間違いなく次に狙われるは、北郷や孫堅様、そして洛陽の地。

そうはさせぬ。 ここで物語を終わらせてはならぬのだ。

宮殿内でこやつらとは別の気配がする。 あれは間違いなく我らの師、管路様の気だ。

二人の人物と戦っておる。 あの小僧どもの気ではないな。

恐らくは、あやつらこそが、かの許貢と黄祖か。 こちら側にいたか。

師もこの事態を察知され、動かれておったか。

 

卑弥呼「さっさと太平要術を取り戻さねば、あやつらが危ないの」

 

貂蝉「そうねぇ。 太平要術を結界の外に移動させれば、こいつらも現れて来なくなるはずだわん」

 

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趙雲「皆の意見にに同感だ…思えば我らは最初から、貴公らの下につくべきだったのかも知れぬな。

   我が姓は趙、名は雲、字は子龍、真名は星。 これより我、趙子龍、

   劉表のくびきを離れ、孫呉の旗の下にはせ参じよう」

 

厳顔「同じくわしは、姓を厳、名は顔、真名を桔梗と申す。 わしの部下に魏延という

   力馬鹿もおりますが、そやつもあとでわしが責任持って説得いたしまするゆえ」

 

黄忠「同じくわたくしは、姓は黄、名は忠、字は漢升、真名は紫苑と申します。

   よろしくお見知りおき下さいますよう」

 

華琳「承知した。 では貴公らには、我らの真名を呼ぶことを許しましょう。

   そして正式な挨拶は、文台様の裁可が降りてからにいたしましょう、それで良いかしら?」

 

趙雲「異存ない」

 

華琳「よし、ならば雪蓮、我ら二人、曹孟徳と孫伯符、曹魏の覇王と江東の小覇王、

   覇王と覇王の揃い踏みと行きましょう」

 

雪蓮「いいわねそれ、ゾクゾクしちゃう」

 

貂蝉「曹操ちゃん、孫策ちゃん、よく聞きなさい。

   この宮殿には間違いなく、あなたたちの敵である許貢と黄祖が潜んでいるわん」

 

雪蓮「ッ!!」

 

華琳「なんですって…!!?」

 

卑弥呼「彼奴らに遠慮は不要じゃ。

     すべからく撃退し、二人を捕獲し、孫堅様の下に引きずり出してしまうが良かろう」

 

華琳「良いでしょう……聞こえるか、元曹魏の精兵たちよ!!

   我らの前に、正体不明の白い装束をかぶった者どもが立ちふさがっている!!

   我らは奴らを蹴散らし、我が曹家の宝である、南華老仙が著した太平要術の書を取り戻し、

   この館に潜伏しているという、我らの宿敵である許貢と黄祖を捕らえ、

   文台様の面前に引きずり出すのだ!!」

 

雪蓮「我にその矢を向け死の淵に追い込んだ下衆共を、野放しにして帰すな!!

   我が母上をその手にかけた愚劣な輩を、

   孫呉の御名において、母上自身の手によって裁きにかけるのだ!!

   我ら孫呉に歯向かう者共には、死を!!

   我らが御遣い様に牙を向ける輩には、御遣い様に代わって、天誅を!!!!」

 

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華琳・雪蓮「総員、突撃いいいぃぃぃーーーー!!!!!!」

 

 

 

親衛隊兵士「オオオオオオオォォォォォォーーーーーー!!!!!!!!」

 

 

 

 

    函   谷   関   の   戦   い

 

 

 

       〜第二陣 復活の小覇王〜

 

 

 

 

華琳「ついに見つけたぞ…許貢、ならびに黄祖よ。

   我が友伯符を死の淵に追い込み、曹魏が滅びた原因を作った張本人どもよ。

   さあ、宴の始まりだ。 我ら曹魏と孫呉の、復讐の戦といこうではないか」

 

雪蓮「あたしたちね…本当はどっちでも良いのよ。

   あんたたちを生け捕りにしようと、首だけを持って帰ろうと。

   ホント、もうどうしょうもないくらい怒りでいっぱいなんだから」

 

 

 

第十二章三節終了

 

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コメント
くくく・・・鬼を怒らせたね....(劉趙)
劉表がどのような行動をとるのかが気になります(零壱式軽対選手誘導弾)
地獄よりヤバイ戦いが始まりました。(ブックマン)
相手に同情したくなります(トーヤ)
勝てる気がしね〜(motomaru)
ブチギレた皆様が怖いですな・・・。(りばーす)
おぉ、皆ぶちギレちゃってますね。続きが楽しみです!!(キラ・リョウ)
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