鬼滅の恋姫 弐話
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藤襲山を朝に出発した一刀一行は、途中で休憩を取りながら蝶屋敷へと向かい、到着する頃には夕方になっていた。

 

 

「ここが蝶屋敷です」

 

 

一刀の背中から降りたアオイは蝶屋敷の門を潜り、一刀はその後を追った。

 

 

「神崎アオイ、ただいま戻りました!」

 

 

ドタドタドタ

 

 

「アオイ、お帰りなさい」

 

 

出迎えたのは髪を左右で蝶の髪飾りで止め、蝶の羽根の模様を模した羽織を着た女性だった。

 

 

「カナエ様、ただいまです。紹介します、こちらは北郷一刀さんと真菰さんです」

 

 

アオイに紹介された一刀と真菰は頭を下げた。

 

 

「はじめまして。この蝶屋敷の主の『胡蝶カナエ』です。鬼殺隊の『花柱《はなばしら》』を勤めています」

 

 

「紹介に預かりました北郷一刀です、よろしくお願いします。抱えているのが真菰です」

 

 

「鱗滝真菰です。よろしくお願いします」

 

 

「カナエ様、真菰さんは最終選別で手足を負傷したので、蝶屋敷で療養させたいのですが…」

 

 

アオイは真菰の状態を伝える。

 

 

「あらあら〜、それは大変ね〜。それじゃ診察するからアオイ、案内よろしくね〜」

 

 

カナエはそう言うと、屋敷の奥へ引っ込んだ。

 

 

「それじゃ一刀さん、案内しますので」

 

 

「ありがとう。あ、申し訳ないけど、少しの間真菰さんを支えてもらえるかな?」

 

 

真菰を降ろした一刀はアオイに支えてもらうようお願いし、アオイは真菰を支える。そして一刀は靴を脱ぎ、揃えて"左端"に寄せた。

 

 

「ありがとうアオイさん。それじゃ案内よろしく」

 

 

一刀はアオイに礼を言って真菰を"おんぶ"した。一刀からは見えないが、真菰の顔は残念そうな表情をしていた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

アオイに案内された部屋は蝶屋敷の病室の個室だった。

 

 

アオイ曰く

 

 

「診察の為に服を脱ぐことがあるかもしれません。大勢の方が特に異性の方がいるとできませんので」

 

 

と言うことだった。一刀は部屋に備え付けられているベッドに真菰を座らせる。

 

 

「とりあえずこの部屋で待とう。俺は部屋の外、扉の近くにいるから、用があるなら声をかけて」

 

 

一刀はそう言うと、扉を開けて退室した。

 

 

その後、アオイがカナエを連れて真菰がいる部屋へと来た。一刀は

 

 

「診察が終わるまで屋敷内を探索するよ」

 

 

と言って部屋から離れた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

一刀は屋敷内をうろうろしていると、縁側に座っている一人の少女が目に入った。一刀は怖がらせないように少女から離れた所に座ると

 

 

「こんにちは」

 

 

少女に声をかけた。少女は一刀をじっと見つめているが、何も言わなかった。

 

 

「俺は北郷一刀。よろしく」

 

 

一刀は少女の顔を見ながら掌《てのひら》を上にして差し出す。少女は一刀の顔と掌を交互に見ながら、恐る恐る手を伸ばす。その間一刀は動かず、少女は手を出したり引っ込めたりしていた。

 

 

すると、少女は一刀の指を軽く握った。一刀は握られた指を軽く上下に動かすと

 

 

「改めてよろしく」ニコッ

 

 

「//////」コクコクッ

 

 

一刀が挨拶すると、少女は顔を赤くしながら頷いた。

 

 

「あらあら〜、カナヲが懐いているわね〜」

 

 

一刀は声がした方を振り向くと、そこにはカナエとアオイがいた。

 

 

「真菰さんの診察が終わりました。やはり手足の骨に罅が入っているようでした。なので、しばらくは蝶屋敷《ここ》に滞在することになりました」

 

 

アオイが真菰の診察結果を伝えると

 

 

「そうか。ありがとうアオイさん、カナエさん」

 

 

一刀は二人に向かって礼を言った。すると

 

 

『ただいま〜』

 

 

玄関の方から声がした。そして

 

 

「姉さん、何か見たことが無い靴がありましたけ…ど…」

 

 

縁側に来た女性が一刀の姿を見た。

 

 

「貴方、誰ですか?」

 

 

事情を知らない彼女は当然、一刀を警戒する。

 

 

「しのぶ様、お帰りなさい。こちらは北郷一刀さん。私同様、蝶屋敷でお世話になる方です」

 

 

「はじめまして、紹介に預かりました北郷一刀と言います。ここには産屋敷あまねさんより紹介を頂きました。疑うのであれば、こちらの手紙を読んで頂いて結構です」

 

 

一刀は制服の内ポケットから手紙を出し、しのぶの前に置いた。

 

 

「拝見します」

 

 

しのぶとカナエはその手紙を受け取り、読んだ。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「内容は分かりました。先程は失礼な態度を取ってしまい申し訳ありません。私は胡蝶カナエの妹で継子《つぐこ》の胡蝶しのぶと言います」

 

 

しのぶは先程の無礼の謝罪と自己紹介をする。

 

 

「いえ、知らない人がいきなり家にいると警戒するのは当然のこと。謝らなくて結構です」

 

 

一刀はしのぶの謝罪を受け取った。

 

 

「しかし、カナヲが見ず知らずの人に懐いているのに…」

 

 

カナエとしのぶが手紙を読んでいる間、一刀はカナヲの頭を撫で続けていた。カナヲも満更でも無く、素直に撫でられていた。

 

 

「構いません。それより、先程から言ってる"花柱"とか"継子"とかって、何ですか?」

 

 

一刀は聞き慣れない単語について質問をする。

 

 

「"花柱"とは、姉さんが持つ"称号"のことです。十ある階級の一番上、甲の更に上に当たる"称号"が柱で、柱になるには"一定の条件"を満たす必要があります。柱の名前は各々の呼吸に合わせたものになっていて、姉さんの場合は"花の呼吸"を使うので花柱と言った感じです」

 

 

「次に継子のことですが、継子とは"次期柱"になるために柱が直々に育てている人、つまり"弟子"の総称のことです」

 

 

しのぶは姉のカナエを差し置いて丁寧に説明をした。

 

 

「ご丁寧な説明、ありがとうございます。お陰で納得しました」

 

 

一刀はしのぶに頭を下げる。

 

 

「因みに"柱は九人"と制限があります。これの由来は"柱の画数が九画だから"と言われています」

 

 

しのぶが柱に関しての捕捉を付け加えると、一刀は『成る程…』と頷いていた。

 

 

「それでは今度はこちらから質問します。『何故貴方は"全集中の呼吸"を使える』のですか?しかも会得が難しい『常中』までも」

 

 

今度はしのぶが一刀に呼吸について質問をした。

 

 

「全集中の呼吸だったのかは知らなかったのですが、俺の家では剣術を教えていまして、その中に『疲れない呼吸の仕方』と言うものがあります。先ずはその呼吸を使える訓練、使えたらその呼吸を四六時中行う訓練をして、それができるようになって初めて剣術を教えてくれる、と言った感じです」

 

 

一刀は簡潔かつ丁寧に説明をした。

 

 

「成る程…、分かりました。因みに型はどれだけ使えますか?」

 

 

「今の所は壱ノ型"だけ"ですね。それ以降は自由に型を作っていいと言われているので」

 

 

「でしたら、私たちが使う型を見て自分流にしてみては?」

 

 

ここでアオイが口にしたことで一刀の新しい型を作ることが決定した。

 

 

「とりあえず、今日はもう遅いから明日以降にして、今からご飯にしない?」

 

 

カナエの言葉に各々が移動し始めた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

そして翌日、一刀は蝶屋敷の道場に来ていた。そこには、見慣れない『三人の少女』がいた。

 

 

「紹介します。左から『高田なほ』、『寺内きよ』、『中原すみ』です。この子たちは親を鬼に喰い殺されてしまったので、蝶屋敷でお世話をしています」

 

 

「「「よろしくお願いします!」」」

 

 

しのぶに紹介された三人は一刀に挨拶をした。

 

 

「よろしく。俺は北郷一刀、一緒に頑張ろう。俺のことは好きに呼んでいいよ」

 

 

「「「はい!」」」

 

 

互いに自己紹介を終えると、一刀はしのぶと向き合った。

 

 

「しのぶさん、よろしくお願いします!」

 

 

「ではよく見ていて下さい」

 

 

しのぶは木刀を構え

 

 

『蟲の呼吸 蝶ノ舞 戯れ』

 

 

『蜂牙ノ舞 真靡き』

 

 

『蜻蛉ノ舞 複眼六角』

 

 

『蜈蚣ノ舞 百足蛇腹』

 

 

自分が使う呼吸『蟲の呼吸』の型を見せた。

 

 

「…どうでしたか?」

 

 

全ての型を見せたしのぶは一刀に感想を聞いた。

 

 

「とても綺麗な型でしたよ」ニコッ

 

 

「そ…それは良かったです」/////

 

 

一刀の微笑みを見たしのぶは顔を赤くしながらそっぽを向いた。

 

 

「…って、そうでは無いです!新しい型の参考になる型は在ったのかを聞いているんです!」

 

 

しのぶは本来の目的を思い出し、一刀に詰め寄った。

 

 

「分かってますよ。先程の型の中では、三つ目の型が使えそうです」

 

 

「複眼六角が…ですか?」

 

 

「見ていて下さい」

 

 

『全集中 空の呼吸 弐ノ型 鷹爪《たかつめ》』

 

 

一刀は木刀を構えるとその場で勢いよくジャンプし、空中で四連続の突きを繰り出し、着地した。

 

 

「如何ですか?」

 

 

「確かに私の型に似ていますけど…」

 

 

しのぶが考えていると、不意に袴を引っ張られた。しのぶが目を向けると、カナヲがしのぶの袴を掴んでいた。

 

 

「どうしたの?カナヲ」

 

 

「しのぶ…姉さん…のは、六回。"お兄ちゃん"…のは…、四回」

 

 

しのぶはカナヲが何を言っているのか考えていると

 

 

「もしかして、しのぶさんの突きは六回で、俺の突きは四回って言いたいのか?」

 

 

「コクコクッ」

 

 

一刀が言ったことにカナヲは肯定の意味を込めて頭を上下に振った。

 

 

「もしかしてカナヲ、貴女見えてたの?」

 

 

通常、突きは剣速が速く目で捉えるのは至難の技である。なので、"どこに来るのか"を予測して避けるのが普通である。しかしカナヲは普通の人よりも視覚が発達しており、早い動きや遠いものをしっかりと見ることが出来るのだ。

 

 

「凄いじゃないかカナヲ。まさか俺たちの突きを目で捉えるなんて」

 

 

一刀はカナヲの頭を撫でると、カナヲは自分の頭を一刀に押し付けた。

 

 

「もしかして、おねだりか?」

 

 

一刀はゆっくりと、何度もカナヲの頭を撫でる。カナヲは一刀に頭をくっ付けて表情は見えなかったが、耳まで赤くなっていた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

それから数日後、療養していた真菰は私生活に支障が出ない程にまで回復した。だが、カナエとしのぶから『鍛練禁止』を言い渡されていた。

 

 

その理由はまだ回復しきっていないのに、『体を動かしたいから』と言う理由で鍛練をしようとしていたので、一刀経由で知ったカナエとしのぶが止めに入ったからだった。

 

 

そしてこの日は一刀、アオイ、真菰の隊服と日輪刀が届く日であった。

 

 

しのぶとアオイ、一刀の三人が蝶屋敷の前にいると、遠くに人影が"二つ"見えた。そして人影がくっきり判別できる距離まで来ると、一刀は驚いた。

 

 

人影の一人は黒子のような格好をしており、もう一人は火男《ひょっとこ》の面をしていたからだった。

 

 

「わざわざお越し頂きありがとうございます。どうぞ中へ」

 

 

しのぶが二人を屋敷へ案内し、二人は中へ入る。その後を一刀とアオイは追った。

 

 

「お初にお目にかかります。私この度北郷殿の刀を打たせてもらった鉄穴森《かなもり》と申します。それと神崎殿と鱗滝殿の刀もお持ちしました」

 

 

「私は事後処理部隊"隠《かくし》"の隊服縫製《ほうせい》係の『前田』と申します」

 

 

二人は縁側に通じる部屋に通されると、二人とも座り自己紹介をした。

 

 

「北郷一刀は俺です。刀と隊服の件、ありがとうございます」

 

 

一刀は二人に頭を下げる。

 

 

「さぁ先ずは刀をお持ち下さい。日輪刀は別名『色変わりの刀』。持った人によって刀身の色が変わります。さぁ手に取って鞘から抜いて下さい」

 

 

一刀は言われた通りにすると、徐々に刀身に色が付き、綺麗な"空色"になった。

 

 

「あぁ〜、綺麗な空色だ。まるで雲一つ無い晴天のような色だ。こんな綺麗な色を見せていただき、ありがとうございます」

 

 

鉄穴森は一刀の刀の色を褒め、礼を言った。

 

 

「いえ此方こそありがとうございます。握り心地も申し分無い、まるで長年使って来た感触です」

 

 

一刀も納刀しながら鉄穴森に礼を言った。次に鉄穴森は真菰とアオイに刀を渡した。曰く、『この刀は刀鍛冶の長が打った特性』とのことだった。

 

 

最初に真菰が刀を持つと、水を思わせる青色が刀身を染めた。

 

 

次にアオイだが、刀を手にしたまでは良かったが、一向に抜こうとはしなかった。そして段々と脂汗が出て遂にはガタガタと震えだした。

 

 

この時アオイは最終選別の時を思い出していた。あの『鬼に敵わなかった』時を。

 

 

アオイの震える手を"誰か"が掴んだ。アオイは目線を上げると、一刀がアオイの手を掴んでいた。

 

 

「アオイさん、無理に刀を持たなくていい」

 

 

「この刀は俺が預かる。再び立ち上がれるその時まで」

 

 

一刀はそう言ってアオイから刀を奪い取った。

 

 

「鉄穴森さん、申し訳ありませんが…」

 

 

「事情は分かりました。長には私から言っときましょう」

 

 

鉄穴森は事情を察して何も言わなかった。

 

 

「では次に隊服をお渡しします。北郷殿はこちら、神崎殿と鱗滝殿のはこちらになります」

 

 

前田は三人に隊服を渡した。まず先に一刀が着替える為に退室。少しして一刀は皆がいる部屋に戻ってきた。

 

 

一刀に支給された服は一般的な男性用隊服だった。

 

 

「お兄ちゃん、格好いい」

 

 

「ありがとうカナヲ」ナデナデ

 

 

カナヲが一刀を褒めると、一刀はしゃがんでカナヲの頭を撫でた。カナヲは嬉しそうな笑顔を浮かべ、一刀に抱きついた。

 

 

次にアオイと真菰が着替える為に退室する。そして少したった後、二人が入室すると、一刀は驚いた。

 

 

何故なら、真菰の隊服は上は一刀と同じだが、下はスカートになっていた。しかも、長さが太ももの"半分も無かった"のだ。

 

 

アオイも同様でスカートの長さは太ももの半分も無く、上も胸元が開いている物であり、谷間が強調される代物だった。

 

 

「一刀さん、どう?」

 

 

「一刀さん、あまりジロジロ見ないで下さい…」/////

 

 

真菰はその場でくるりと一回転し、アオイは恥ずかしさのあまり、モジモジしていた。これには一刀も黙ってはいなかった。

 

 

「アオイさん、真菰ちゃん。直ぐにさっき着ていた服に着替えて!」

 

 

一刀は立ち上がると二人を先程入って来た部屋に押し込む。

 

 

「鉄穴森さん、ちょっと"試し斬り"をしてもいいですか?」

 

 

一刀は鉄穴森の方を向いて試し斬りをしたいと言った。

 

 

「それは別に構いませんが…、何を斬られるのですか?周辺には竹とかありませんが…」

 

 

鉄穴森は辺りをキョロキョロと見渡す。すると

 

 

「ここにいますよ?」

 

 

一刀が指差した所を見ると、そこには前田がいた。そして鉄穴森は悟った。

 

 

「なるほど。でしたらどうぞ遠慮無く」

 

 

「ありがとうございます。さて前田《ゲスメガネ》、覚悟はいいか?」

 

 

一刀は自分の刀を抜刀しながら前田に近づく。前田は一刀の気迫に圧倒され後退《あとずさ》るが、距離は一向に縮まらない。むしろ徐々に近づきつつある。

 

 

そして遂に前田は一刀の前から逃げ出した。

 

 

「待て貴様〜!この刀の切れ味、貴様の体で試させろ〜!(怒)」

 

 

一刀は逃げる前田を刀を振りながら追いかける。その光景を着替え終わった真菰とアオイはずっと見ていた。

 

 

そして一刀に捕まった前田は自分が用意した隊服をしのぶたちに目の前で油を浸され、燃やされた。その後ちゃんとした隊服を支給するように確約させられた。

 

 

 

説明
『さようなら……、愛していたよ……』

本来の歴史をねじ曲げてまで愛する人を守った"天の御遣い"は最愛の人の前で消滅する……。

はずだった。

誰の因果か不明だが、"彼"は再び戦いの火中へと身を投じる。

悲しみの連鎖を絶ち切るために、立ち上がり刀を振るえ!
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原作死亡キャラ一部生存 恋姫†無双鬼滅の刃 

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