英雄伝説〜灰の騎士の成り上がり〜 |
〜カイエン公爵家城館・正面ロビー〜
「トマス教官!それにロジーヌも!」
「よかった……やっと目覚めたんですね……!」
「ええ、心配をおかけして申し訳ございませんでした。」
トマス達の登場にエリオットとアリサは明るい表情を浮かべ、二人の言葉にトマスは笑顔で返した。
「そちらの二人は一体……」
「それぞれ”支える篭手”の紋章を服につけていますから、遊撃士の方達のようですが……」
「嘘!?貴方は……!」
「ハハ……まさかエステル君達より先に貴方と再会する事になるとはね。」
「ジンさんじゃない!どうしてここに?」
一方大柄な男性達の正体がわからないガイウスとセドリックが不思議そうな表情で二人を見つめている中、サラは驚きの表情で声を上げ、オリヴァルト皇子は懐かしそうな表情で男性を見つめ、シェラザードは信じられない表情で男性に訊ねた。
「お前さん達も知っての通り、共和国は連合によって滅ぼされちまったからな。連合による占領後の旧共和国の状況も落ち着いたから、”弟子”に協力しているお前さん達の助太刀にさっさと向かえとキリカに急かされたんだ。」
「”弟子”って誰の事?」
「フフ、このタイミングで援軍をよこしてくれるなんて、さすがは”師匠”だよ。」
大柄な男性の話を聞いたフィーが不思議そうな表情で首を傾げている中、アンゼリカは苦笑しながら答え、アンゼリカの答えを聞いたアリサ達はそれぞれ血相を変えた。
「ええっ!?そ、それじゃあもしかしてその”キリカ”って人がアンちゃんの……!」
「ああ……私に”泰斗流”を師事してくれた”師匠”さ。以前はギルドの受付を務めていたけど、3年前の”リベールの異変”後にロックスミス大統領直々の誘いによって旧共和国の情報機関の”室長”を務めるようになったと聞いているよ。」
「なっ!?きゅ、旧共和国の情報機関の”室長”!?」
「まさかアンゼリカ先輩にそんな特殊な立場のお知り合いがいたなんて……」
「その人って、”飛燕紅児”の異名で呼ばれている人でしょ?情報局の情報だとその人は『泰斗流』の奥義皆伝者だから、アンゼリカとも何らかの関係があると思っていたけど、まさか師弟の関係だったとはね〜。」
「つー事はあんたもゼリカと同じ”泰斗流”の使い手なのか?」
トワの疑問に答えたアンゼリカの説明を聞いたマキアスとエマは驚き、ミリアムは興味ありげな表情を浮かべ、クロウはある事を男性に訊ねた。
「ああ。――――――おっと、自己紹介が遅れたな。俺の名はジン・ヴァセック。遊撃士協会に所属しているA級正遊撃士だ。そんでこっちが……」
「同じく遊撃士協会所属、エレイン・オークレールです。ランクは1級です。以後お見知りおきを。」
「へ……い、”1級”って事は”準遊撃士”!?」
「おい、ジン……何考えていやがるんだ?”1級”は”準遊撃士”の中では最高ランクだが、連合と帝国の戦争の件に関わらせるのは幾ら何でも厳しすぎるぞ……!?」
男性――――――A級正遊撃士にして”不動”の異名で呼ばれているジン・ヴァセックが名乗り上げた後娘――――――準遊撃士エレイン・オークレールも続くように名乗り、エレインが準遊撃士と知ったアネラスは驚き、アガットは困惑の表情で指摘した。
「ハハ、アネラスとアガットの反応は当然だが心配無用だ。エレインは相当”筋”がよくてな。サラやエステル達以来の最年少A級正遊撃士になるんじゃないかと言われている旧共和国の遊撃士協会にとっては超有望なホープだ。」
「ハアッ!?」
「という事はそちらの女性――――――エレインさんはサラ教官に並ぶ使い手なのか……」
「フフ、ジンさんを含めた周りの人達が私の事を持ち上げすぎているだけよ。私自身は分不相応な評価だと思っているもの。」
ジンの説明を聞いたその場のいる多くのの者達が血相を変えている中サラは驚きの声を上げ、呆けた表情で呟いたガイウスの言葉にエレインは苦笑しながら答えた後表情を引き締めてジンと共にレン達と対峙した。
「さてと……わざわざ再会を喜ぶ時間を待ってくれた事には感謝しとくぜ。」
「うふふ、別にいいわよ?ジンおじさんとはオリビエお兄さん達同様、”影の国”以来の再会になるんだから、ちょっとしたサービスよ♪」
「フフ、それにしてもこのタイミングで旧共和国側の遊撃士協会の”不動”が援軍として駆けつけてくるなんて、これも完全に想定外だったわね。」
「ああ。この調子だと、更なる援軍の可能性も十分に考えられるな。」
「そうだな……それこそその援軍がヨシュア達の可能性もあるかもしれん。」
ジンの言葉に対してレンは小悪魔な笑みを浮かべて答え、エンネアとアイネスは興味ありげな表情でジン達を見つめ、レーヴェは静かな表情で推測した。
「さすがにエステル達に来られると冗談抜きで状況を変えられるから、レンとしては来てほしくないのだけど……それはともかく、教会から連合(レンたち)とやり合う際に守護騎士(ドミニオン)や古代遺物(アーティファクト)の使用禁止を命じられているにも関わらず、レン達の目の前で堂々と禁止されている力を使うなんて、生徒達のピンチに血迷ったのかしら、”匣使い”さん?」
「いえいえ、私は教会の命令にはちゃんと従っていますよ?貴女達との戦闘の際は守護騎士――――――いえ、”星杯騎士”として得た力で貴女達に攻撃や妨害の類は行いませんし、ロジーヌ君にも星杯騎士団で習得した法術や戦技(クラフト)を決して貴女達を含めた連合の関係者達に向けない事を命じてあります。先程の転位はあくまで”移動手段”として古代遺物(アーティファクト)を使っただけですよ。――――――教会の命令はあくまで、”連合の関係者との戦闘が発生した際に守護騎士や古代遺物の力の使用禁止――――――つまり、守護騎士や古代遺物の力を連合(あなたたち)に向けない事”なのですから。」
「ったく、とんだ屁理屈ね。」
レーヴェの言葉に対して疲れた表情で答えたレンは気を取り直して意味ありげな笑みを浮かべてトマスに問いかけ、問いかけられたトマスは笑顔で答え、トマスの答えを聞いたセリーヌは苦笑していた。
「うふふ、なるほどね。――――――だったら、”蒼の深淵”達が援軍として現れる前にまた”間引き”をしておかないとねぇ?」
一方レンは軽く流した後再び魔人化した!
「魔人化(デモナイズ)……!」
「やれやれ……嬢ちゃんにとってはトラウマだったはずの教団の力――――――”グノーシス”を最大限に活用するとか、さすがは嬢ちゃんと言うべきか。――――――行けるか、エレイン?」
「ええ、大丈夫です。」
魔人化したレンの姿を見たロジーヌは厳しい表情で声を上げ、ジンは溜息を吐いた後真剣な表情を浮かべてエレインに訊ね、訊ねられたエレインは頷いた後前に出て自身の得物である騎士剣を構えた。
「うふふ、自分の力に自信がないような事を言っている割にジンおじさんに協力を頼まれて今回の戦争の件に自分から関わるようになった理由はもしかして”いなくなった幼馴染”が帝国にいるかもしれないと考えたからなのかしら?」
「!貴女……どうして”ヴァン”の事を――――――!なるほど、”私の記憶を読み取った”のね。女性の過去を勝手に覗き見るなんて、ご両親は一体どんな教育をしたのかしら?」
意味ありげな笑みを浮かべたレンの指摘に驚いたエレインだったがすぐにレンの能力を思い出して落ち着いた様子でレンに問いかけた。
「クスクス、両親に反対されて遊撃士になったお姉さんには言われたくない――――――わよ!!」
そしてエレインの問いかけに対して答えたレンは再びアリサ達にとっては目にも止まらぬスピードでエレインに強襲した。
「―――――ハッ!!」
「!?」
しかしエレインは騎士剣を振るってレンの強襲攻撃を弾き返し、エレインに攻撃を弾き返されたレンは驚いた。
「行けっ!!」
レンの強襲攻撃を弾き返したエレインは反撃に剣を振り下ろして衝撃波を放つクラフト―――――アークショットをレンに放ち
「!切り裂いてあげる♪」
「これは見切れるかしら?ハァァァァァァ…………ッ!!」
エレインが放った衝撃波を回避したレンは再びエレインに強襲して大鎌による5連続攻撃――――――羅刹刃で襲い掛かったが、対するエレインは嵐のような連続突きを繰り出してレンが繰り出す連続斬撃を相殺し
「!――――――そこっ!!」
「……ッ!?」
連続斬撃が終わった瞬間を見逃さず、連続突きの後の止めの強烈な斬撃をレンに繰り出し、エレインが繰り出したクラフト―――――ラピッドテンペストの最後の一撃を咄嗟に大鎌で防御したレンは防御した際の衝撃で後ろに後退させられた。
「凄い……人間離れの動きの今のレン皇女殿下相手にまともに戦えるなんて……」
「とても準遊撃士とは思えない剣捌きだな。」
「フフ、まさか旧共和国領にこんなとてつもないルーキーがいたなんてね。」
レンとエレインの戦いを見ていたセドリックは驚き、ミュラーは感心し、サラは苦笑しながらエレインを見つめ
「まさか旧共和国領のギルドに”不動”以外にあんな伏兵が隠れていたとはね。」
「ああ。この後現れる”紅き翼”の”援軍”の事も考えるとルーレの時以上に楽しませてもらえる戦いになりそうだな。」
「……ほう?正遊撃士――――――それも上級クラスの正遊撃士と言っても過言ではない使い手だな。それこそ、3年前の”ゴスペル”の”実験”でやりあった”重剣”と比べれば何倍も見所がある動きだ。」
「こ、このヤロウ……!どさくさに紛れて大昔の事を持ち出しやがって……!」
一方エンネアとアイネス、レーヴェもエレインの腕前に感心し、レーヴェの言葉を聞いたアガットはレーヴェを睨んだ。
「セイッ!ハアッ!ヤアッ!!」
「……ッ!――――――正直驚いたわ、お姉さんの腕前には。魔人化(デモナイズ)状態のレンとまともにやり合える人なんて、パパ達以外だとお姉さんが初めてよ。」
エレインが放った突き、薙払い、斬り上げの三段連携――――――ブレードラッシュを大鎌で防いだレンは後ろに大きく跳躍してレーヴェ達の所まで戻った後魔人化を解いて真剣な表情でエレインを見つめて指摘した。
「旧共和国の犯罪者達の中には麻薬(ドラッグ)で身体能力を上昇させる連中もいたし、東方武術独特の強化技(クラフト)である”気功”で人間離れした身体能力を上昇させる連中もいたから、私だけが特別という訳ではないわ。――――――それよりもやはり、”私が睨んだ通り魔人化には制限時間があるみたいね”?」
「!!フゥン………」
レンの問いかけに答えたエレインはレンにある指摘をし、エレインの指摘に一瞬目を見開いて驚いたレンは真剣な表情を浮かべてエレインを見つめた。
「ハッ、どうやら図星のようだな。」
「せ、”制限時間”………?」
「”人”が”人外じみた力”を使うには”相応の代償や条件”があるという事よ。リィンだって”鬼の力”を使いこなせるようになっても、常時”鬼の力”を解放した状態で戦うような事はできなかったし、時間が経てば”鬼の力”の状態は解除されたでしょう?あれと同じよ。」
「あ……ッ!」
「ましてやグノーシスを利用した魔人化には”リスク”がある事もヨアヒム・ギュンター自身がその身をもって証明していますから、ヨアヒム・ギュンターのように”追い詰められた状況”でもないのですから、レン皇女殿下がヨアヒム・ギュンターのようなリスクを覚悟で魔人化を解放し続ける事はないかと。」
「えっと……そのヨアヒム・ギュンターという人が魔人化した時は一体どんなリスクがあったんですか……?」
一方エレインの推測に対して反論しないレンの様子を見たアッシュは不敵な笑みを浮かべ、エレインの推測を聞いて戸惑っているマキアスの疑問に答えたセリーヌの話を聞いたアリサは声を上げ、シャロンの話のある部分が気になったトワは訊ねた。
「”至宝”と同等の絶大な”力”を持った”魔人”と化する事と引き換えに正気を失って暴走し、最後は”消滅”……それが”特務支援課”に追い詰められて”グノーシス”を大量に摂取して魔人化したヨアヒム・ギュンターの”末路”だと聞いているわ。」
「”消滅”だと!?」
「ど、どうして僕達の足止めの為にそれ程の危険な力を……」
サラの話を聞いたその場にいる多くの者達が血相を変えている中ミュラーは厳しい表情で声を上げ、セドリックは信じられない表情でレンを見つめた。
「幾ら何でも”消滅”はしないわよ。一度にグノーシスを大量に摂取したヨアヒムと長年グノーシスを摂取した事によって得た魔人化の力を得たヨアヒムの魔人化を吸収したレンは”魔人化の前提条件”が違うもの。ま、せいぜい一時的に正気を失って敵味方問わず襲い掛かるくらいよ。―――――とはいっても、そんな優雅の欠片もないレンを誰かに見せるなんて死んでも嫌だから、試すつもりもないけどね。レンはサラお姉さんみたいに後先を考えない”脳筋”じゃないもの♪」
「何でそこであたしを例えに出すのよ!?しかもさり気なくまたあたしの事を”脳筋”ってバカにして……!この場合、例えに出すとしたらリィンでしょうが!?」
呆れた表情で答えた後からかいの表情を浮かべたレンの言葉を聞いたその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中サラは顔に青筋を立ててレンを睨んで指摘した。
「それで?まだ続けるつもりなのかしら?」
「レンの”魔人化”に”リスク”がある事を見抜いたからと言って調子に乗っているなんて大間違いよ……と言いたい所だけど、お姉さんの場合、レンよりも適正な相手がいるからそっちに任せるわ―――――という訳で後はお願いね、レーヴェ♪」
「やれやれ、このタイミングで俺任せにするとはレン皇女らしいな。―――――まあ、俺としても望む所だが。」
エレインに問いかけられたレンは静かな表情で答えた後レーヴェに視線を向けてウインクをし、レンにエレインの相手をするように委ねられたレーヴェが呆れた表情で溜息を吐いた後静かな笑みを浮かべて前に出てエレインと対峙したその時
「おっと、さすがにエレインにお前さんの相手は荷が重いからお前さんの相手は俺だぜ。」
「ジンさん……」
ジンがエレインの前に出てレーヴェと対峙し、ジンの行動にエレインは目を丸くした。
「”不動”か。まさか旧共和国領で活動しているお前まで今回の件に介入するとは思わなかったが………”飛燕紅児”の差し金である事から察するに故郷(カルバード)を滅ぼした連合(おれたち)に対する”飛燕紅児”やお前自身の意趣返しの意味で、放蕩皇子達の援軍に駆け付けたのか?」
「そいつはお前さんの考えすぎだぜ。確かに連合には思う所はあるが、それとこれとは別問題だ。―――――皮肉な話、お前さん達連合の侵略によって黒月(ヘイユエ)等と言った旧共和国を巣食っていた”裏”の組織の類がほとんど一掃されたからな。そのお陰で皇子達の援軍に向かえる余裕ができて、シェラザード達も皇子達に協力しているという話だから、遅れながら今回の件に参戦させてもらったのさ。」
静かな笑みを浮かべたレーヴェの指摘に対してジンは苦笑しながら答えた。
「……なるほど。しかし解せんな。皇子達にとってもお前達の援軍は完全に想定外だった様子から察するに、お前達と接触した”匣使い”がお前達をこの場に導いたのだろうが……一体誰がお前達と”匣使い”が邂逅できるように仲介した?」
「―――――それについては大方、”怪盗紳士”達が気を利かせたのじゃないかしら?”怪盗紳士”達は”黄昏”の件に関しては、オリビエお兄さん達に協力しているようだし。」
「フフ、正解だ。」
レーヴェの疑問に対してレンが自身の推測を答えるとその場にブルブランの声が響いた後ブルブラン、ルシオラ、クロチルダがそれぞれの転位術によって姿を現した!
「ハハ、このタイミングで来るとはね―――――我が好敵手。」
「ルシオラ姉さん……!」
「ヴィータ姉さんも……!」
「まさに狙っていたとしか思えないタイミングだね。」
ブルブラン達の登場にオリヴァルト皇子とシェラザード、エマが明るい表情を浮かべている中フィーは苦笑していた。
「フフ、またお邪魔させてもらうわね。」
「ちょっと遅れちゃったかしら?まあ、帳尻は合わせましょう。」
「ハッハッハッ!まさに私達が参加するに相応しい舞台になっているようじゃないか。―――――そして”そちら”の準備も整ったようではないか?」
それぞれ登場したルシオラとクロチルダは微笑み、ブルブランは高々と笑った後ある方向に視線を向けて声をかけ
「ええ、エレインさんが時間を稼いでくれたお陰で。」
「義勇隊の皆さんの傷の回復は完了しました……!」
ブルブランに声をかけられた人物―――――トマスとロジーヌがそれぞれ答えると二人の背後にはレンによって無力化されたトールズ義勇隊の面々がそれぞれの武装を構えていた。
「ハーッハッハ!メンフィルの強者(つわもの)達よ、不死鳥の如く蘇った我ら”トールズ義勇隊”の底力、今度こそ見せてさしあげよう!」
「フハハ、私達に気にせず先を急ぎたまえ、ユーシス君!」
「グフ、貴方達の”協力者”の人達と共にここは足止めするわぁん!」
「ここはあたし達に任せてリィン達の所に急ぎな、アリサ!」
「貴女達が選んだ”道”をリィン君達に示してきなさい!」
「フィーちゃん達が咲かせようとする”花”の邪魔はさせないわ……!」
「わかりました――――――ここはよろしく頼みます……!」
「どうか気をつけてください……!」
義勇隊の面々の心強い言葉にマキアスとラウラが答えた後紅き翼の面々はクロチルダと共に先へと向かった。
「待ちなさい――――――ッ!?」
自分達を無視して先へと急ぐ紅き翼の面々の様子を見たエンネアは紅き翼に狙撃を行おうとしたがルシオラが投擲した扇によるダメージで怯み
「フフ、私達の事を忘れてもらっては困るわね、”魔弓のエンネア”。」
「ふふっ、別に忘れてはいないわよ。――――――むざむざと紅き翼を一人も欠けさせずに後ろに通してしまった雪辱……貴女達で晴らさせてもらうわよ、”幻惑のルシオラ”……!」
妖しげな笑みを浮かべるルシオラが自分と対峙すると不敵な笑みを浮かべてルシオラとの戦闘を開始した。
「クク、メンフィルと”グノーシス”、それぞれで得た君の魔術(マジック)、ちょうどいい機会だから存分に披露してもらおうか、”殲滅天使”!」
「うふふ、その言葉、そっくりそのまま返すわ。貴方が披露する怪盗の妙技(マジック)、レンに通じるかしら?」
ブルブランとレンはそれぞれ不敵な笑みを浮かべた後詠唱を開始して戦闘を開始し
「さてと……”影の国”の件から更に磨いた俺の”泰斗”の拳、今のお前さんにどこまで通じるか試させてもらうぜ――――――”剣帝”!!」
「―――――いいだろう。お前の”不動”、”剣帝”たる俺の剣の前にはどこまで耐えられるかその身をもって試してみるといい―――――!!」
ジンとレーヴェはそれぞれ自身に凄まじい闘気を練った後戦闘を開始した。
「フム、どうやらそれぞれ指名の相手がいるようだから、余った私の相手は其方のようだな?」
「そのようね。―――――行くわよっ!!」
「フフ、来るがいい……ッ!」
アイネスは不敵な笑みを浮かべながら自分に向かってくるエレインを迎え撃って戦闘を開始した。
「さて…………―――――それでは我々も彼らの援護を始めましょうか……!」
「はい……!”協力者”の方々を中心に最大限のフォーメーションを!」
「おお……っ!!」
そしてトマスとロジーヌの号令を合図に義勇隊の面々、そしてトマスとロジーヌはそれぞれの相手と戦い始めたジン達の加勢を始めた。
〜饗応の間〜
一方その頃リィン達は目標地点である”饗応の間”に突入していた。
「―――――来てしまいましたか。」
「クレア少佐………」
「それと”光の剣匠”―――――いえ、”光のガウェイン”もやはりこちらの想定通り、待ち構えていたわね。」
「ああ……ただ問題は向こうに数の差を補う”何か”があるかどうかだが……」
リィン達が突入すると光のガウェインと共に待ち構えていたクレア少佐が静かな表情でリィン達を見つめて呟き、二人を確認したセレーネは複雑そうな表情を浮かべ、エーデルガルトとクロードは真剣な表情で二人を見つめていた。
「アルフィン……!本当によかった、無事で……それにリィンさんやエリスさん達も……」
「お母様………」
「姫様……」
「ふふっ、この状況でもなお、姫様だけでなく私達の無事を喜ぶ皇妃殿下の”器”には感服致しますわ。」
祖国や家族を裏切ってでも自分達の無事な姿を見て安心しているプリシラ皇妃の様子を見たアルフィンは辛そうな表情を浮かべ、アルフィンの様子を見たエリスは心配そうな表情を浮かべ、ミュゼは苦笑していた。
「……ふふ、内戦以来だね、リィン君にセレーネ君、それにエリス君も。そしてご無事で何よりです――――――アルフィン皇女殿下。まさかあの内戦が原因でこのような事態になるとは、夢にも思わなかったよ。」
「ええ……それは俺達もです。――――――やはり今回の戦争に反対してオズボーン宰相に逆らった事が原因でオルディスに左遷させられたのですか?」
懐かしそうな表情でリィン達を見回したレーグニッツ知事は複雑そうな表情を浮かべ、レーグニッツ知事の言葉に頷いたリィンは静かな表情で問いかけ
「………はい、リィンさんの予想通りです。」
「リーヴェルト少佐……」
自分の代わりに答えたクレア少佐をレーグニッツ知事は複雑そうな表情で見つめた。
「――――――私の立場から説明するのもおかしな話でしょうが……アルフィン皇女殿下がエレボニアを出奔された日以来、知事閣下は様々な形で戦争に反対され、メンフィル・クロスベル連合との和解を主張されました。『国家総動員法』への反対に帝都庁を挙げての反戦キャンペーン、アルフィン皇女殿下が連合との和解の為に単身でメンフィル帝国に向かわれた事に対する皇女殿下の勇気と想いを無駄にしないで欲しいという市民達への語りかけ、皇帝陛下の暗殺未遂とアルスター襲撃が連合と王国の陰謀というのは誤りであるという指摘。」
「……………………………」
クレア少佐の説明を聞いていたプリシラ皇妃は辛そうな表情で目を伏せて黙り込んだ。
「しかしそのどれもが実を結ばず、不自然なまでの失敗に終わりました。賛同者の突然の心変わり、もしくはあり得ない誤解と連絡不足。事故に巻き込まれての関係者の入院――――――情報局もそうですが連合の工作などではなく――――――”どれもまったくの偶然によって。”」
「まさかそれらもが――――――」
「”巨イナル黄昏”最大の呪い―――――因果律制御と言うべき強制力ですか。」
「今のエレボニアの状況を考えると、恐らくその”呪い”は軍や行政に一番影響を与えている可能性が高そうですね。」
「ああ……どちらも”戦争”に直接影響する”現場”だからな……」
クレア少佐の話を聞いて察しがついたディミトリは厳しい表情を浮かべ、ミュゼが答えを口にし、アルティナとクルトは真剣な表情で推測した。
「……今のクレア少佐の話は本当なんですか、知事閣下?」
「―――――肯定するつもりはない。私は私の政治信条で動いたまでだ。そしてそれが裏目に出たとしても政治家としての私の力量不足……国家総動員法の下に帝都の行政管理が中央政府に一時的に統合され――――――クロイツェン州での”焦土作戦”に対する抗議をした事で宰相閣下達に『国家反逆罪』扱いされて海都の行政管理に回されたのも全ては私自身の限界によるものだろう。」
「知事閣下……」
「……不可視の力でいつの間にかそこに填め込まれたという事ですか……」
リィンの問いかけに無念そうな様子で語るレーグニッツ知事の様子をエリスは心配そうな表情で見つめ、オリエは重々しい様子を纏って呟いた。
「結果を受け止めるのも政治家であり、更には行政担当者というものだ。――――――そして今の私は海都の臨時統括者。統括府たるこの城館の管理も任されている。城館の制圧しと皇妃殿下の身柄が目的ならそちらの二人に挑みたまえ。――――――もはや”戦い”でしか”決着”をつけられない事になった今の状況では戦う手段を持たない私にできる事は君達の戦いを見届け、”勝者の方針”に従うだけだ。」
「―――――わかりました。――――――クレア・リーヴェルト少佐、そして子爵閣――――――いえ、”光のガウェイン”。”降伏”してください。ジュノー海上要塞は既にオーレリア将軍達と灰獅子隊の別動隊によって奪還され、海上要塞近郊で迎撃部隊を展開してヴァイスラント新生軍と戦闘を繰り広げていたエレボニア帝国軍も海上要塞が奪還され、挟み撃ちにされた事を知るとヴァイスラント新生軍に降伏したという報告が先程入りました。オルディス近郊の街道で守備隊を攻めているウォレス准将達と港湾区で迎撃部隊を展開してそちらが迎撃に向かわせた予備の部隊と戦闘を繰り広げているプリネ皇女殿下達、どちらも”優勢”の上ここに来るまでに迎撃態勢を取っていた鉄道憲兵隊や正規軍の部隊は全て”撃破”し、現在は城館の完全掌握の為にこの城館に連れてきた精鋭部隊が城館に配置している鉄道憲兵隊や正規軍の部隊を各個撃破しています。援軍の可能性も全て潰された貴女達に”勝機”はありません。」
レーグニッツ知事の言葉に頷いたリィンは前に出てクレア少佐とガウェインに降伏勧告を行った。
「―――――例え絶望的な戦力差であろうとも、ミリアムちゃんを見捨てた私には最後まで諦める訳――――――いえ、”諦める資格はないのです。”それに何よりもエレボニア帝国軍人として……鉄道憲兵隊として……そして呪いの”依代”でもある、”鉄血の子供”としての使命のためにも。」
リィンの降伏勧告に対して目を伏せて答えたクレア少佐は決意の表情を浮かべると共に瞳に何らかの紋章を具現化させた。
「その紋章は”黒の工房”の時の……!」
クレア少佐の瞳にある紋章を見たエリスは真剣な表情で呟いた。
「これこそはオズボーン閣下を通じて”子供達”に与えられた”力”。”巨イナル黄昏”と繋がることでその強制力を意図的に行使する能力です。――――――そしてそれは、戦闘において効果を発揮するだけではありません。”知事閣下の失敗の時にその効果を最大限に発揮します”。……最も、圧倒的戦力差を保有しているリィンさん達でしたら私のこの能力すらも力づくによる強引な突破も可能でしょうが。」
「フフ、確かに厄介な能力ではありますが、”魔神”と比べれば大した事はありませんね。」
「あの……比較対象が色々な意味で間違っているかと。」
クレア少佐の説明を聞いたリィン達がそれぞれ血相を変えている中リタは口元に笑みを浮かべてクレア少佐を見つめ、リタの言葉を聞いたアルティナはジト目で指摘した。
「―――――それではこれより、敵部隊の”制圧”を開始します。あなた方もあなた方の”軍務”を存分に果たされるといいでしょう。」
そして自身の得物である導力銃を構えたクレア少佐が何らかの装置を押すとクレア少佐の周囲に黒の工房でも戦ったアルティナの”ギアモード”状態になった子供達のような姿をした人形が2体現れた!
「黒の工房が開発した”Ozシリーズ”型(タイプ)の人形兵器……!」
「ったく、本拠地どころか予備の拠点も全て潰したのにまだ残っていたのかよ……」
新たに現れた2体の人形達を見たステラは真剣な表情で声を上げ、フォルデは呆れた表情で呟いた。
「フフ、”乙女”殿の言う通り、確かに其方達の戦力は圧倒的だ。――――――だが、それがどうした!?」
その時ガウェインは不敵な笑みを浮かべてリィン達を見回した後声を上げると共に全身に膨大な闘気を纏った!
「我が剣は”全てを守る剣”……!どんな圧倒的な戦力であろうと、理不尽な出来事だろうと、この剣と忠誠を持って我が命に代えてでも全て”絶つ”……!」
「子爵閣下……どうしてそこまで……」
「お兄様、もしかして子爵閣下が”呪い”に操られてしまった理由は……」
「ああ……”焦土作戦という理不尽な出来事”から守れなかった故郷、領民に関する罪悪感……更に子爵閣下が支えると決めたオリヴァルト殿下達の状況が内戦の時以上に絶望的であることを憂いていた事……そして、領民自身からアルノール皇家への忠誠を批難された事による無力感を突かれた事によってオズボーン宰相達側として操られるようになったのだろうな。」
「”哀れ”としかいいようがないわね……」
玉砕も躊躇わないガウェインの様子にアルフィンが困惑している中事情を察したセレーネとリィンの会話を聞いたエーデルガルトは複雑そうな表情でガウェインを見つめた。
「子爵閣下……貴方がそんなことになってしまった事は本当に残念ですが、それでも俺達は貴方を超えさせてもらう。”エレボニアを救う為には俺は連合側として武勲を挙げ続ける必要がある”のですから……例えその結果がラウラに――――――仲間達から恨まれることになったとしても、俺はこの”道”を進み続ける。来い――――――アイドス!」
静かな表情でガウェインを見つめて呟いたリィンは神剣アイドスをガウェインに向けると共にアイドスの名を呼んでアイドスを自身の傍に召喚し
「多くの責任を背負った事によって”呪い”に選ばれてしまった哀れなる剣客よ………せめて我が”慈悲”をもって楽にしてさしあげましょう。」
召喚されたアイドスは異空間から自身の愛剣――――――真実の十字架(スティルヴァーレ)を取り出した後構えて宣言した。
「エーデルガルト、ディミトリ、クロード、そしてオリエさんは予定通りの戦闘配置についてくれ!」
「ええ!」
「「ああ!」」
「はい!」
リィンの指示にそれぞれ答えたエーデルガルト達はリィンとアイドスと共にガウェインと対峙し
「エリス、ミュゼ、アルフィン、アルティナ、クルトの5人は人形達の相手を!ステラとフォルデ先輩、そしてリタはクレア少佐の相手を!」
「「「「「「はいっ!!」」」」」」
「了解!」
「おうっ!」
更にリィンはエリス達にそれぞれ指示をし、リィンの指示によってエリス達はそれぞれの相手と対峙した。
「――――――灰獅子隊、これより、敵将達の制圧を開始する。みんな、行くぞっ!!」
「おおっ!!」
そしてリィンの号令を合図にリィン達はそれぞれの相手との戦闘を開始した!
〜城館内〜
リィン達がクレア少佐達との戦闘を開始する少し前、ジン達の加勢によってレン達による守りを突破したトワ達は”饗応の間”の一つ手前のフロアに到着していた。
「随分と広い所に出たな……」
「うん……さっきの正面ロビーより広いよね……?」
「ハッ、いかにも仕掛けてきそうな場所だな。」
フロアに到着して周囲を見回したマキアスの感想にエリオットは頷き、アッシュは鼻を鳴らして周囲を警戒していた。
「レン皇女殿下の話通りだと、ベルフェゴールとリィンの新たな使い魔が俺達を待ち構えているはずだが……」
「見た所、誰もいませんよね……?」
「姿が見えないからと言って油断は禁物よ。あの女は”転位”もできるのだから、いつ私達の目の前に現れる事もそうだけど背後に現れて奇襲を仕掛けてきてもおかしくないわよ。」
周囲を見回したユーシスは真剣な表情で呟き、周囲に誰もいない事を戸惑っているセドリックにセリーヌは目を細めて指摘した。
「……少なくてもあたし達を阻む最後の関門がここである事は間違いないでしょうね。」
「あん?何でお前は確信しているんだ、シェラザード。」
ある事に気づいて呟いたシェラザードの言葉が気になったアガットは不思議そうな表情でシェラザードに訊ね
「―――――あれを見て。」
訊ねられたシェラザードがある方向――――――自分達の進行方向の出入口に展開されている結界を指さした。
「霊的な障壁……!」
「それも相当高位な障壁ね……少なくても私が組める術式の結界じゃ、遠く及ばないわ。」
「フム……まさかとは思うが、あの結界が”最後の関門”である彼女達による足止めで、彼女達自身はリィン君達と共に子爵閣下達の相手をしているかもしれないね。」
「”魔神”による結界等、そう簡単には破る事はできないからな……」
結界を目にしたエマは真剣な表情で呟き、クロチルダは結界を分析し始め、オリヴァルト皇子とミュラーはベルフェゴールの意図を考え込んでいた。
「ベルフェゴールの意図はわからないけど、本人が姿を現す前にとっとと結界を破壊して先を急ぐわよ――――――」
そして自身の得物を構えたサラが結界に向けて走り出したその時
「!上ですわ、サラ様!」
「!!」
サラの頭上に雷が発生した事に逸早く気づいたシャロンがサラに警告し、警告に気づいたサラは後ろに跳躍して落雷を回避した。
「サラ教官!?」
「チッ、やっぱりいやがったか。お前達が俺達の最後の関門として控えている事はもうわかっているんだから、コソコソ隠れていないでいい加減出てきたらどうだ!?」
サラへの奇襲攻撃を見たアリサは驚き、クロウは舌打ちをした後周囲を見回して声を上げた。すると結界の前にアンリエットが自身の転位術で姿を現した。
「あ、あれ?ベルフェゴールじゃないよね〜?」
「多分、彼女がレン皇女殿下の話にあったリィン君の新たな使い魔の人だと思うよ。」
アンリエットを目にして首を傾げているミリアムの疑問にトワが真剣な表情で自身の推測を答えたが
「………可憐だ………」
「ふえ……?」
アンリエットを見つめて呟いたアンゼリカの言葉を聞くと思わず呆けた声を出した。
「清楚と儚げさを併せ持ち、小柄でありながらも女性として欠点のない身体つき……!そしてその人形のような容姿にピッタリなグリーンブラウンと魔女っ娘!まさかトワとティータ君に続く天使に出会えるとはっ!彼女まで手籠めにしたリィン君には本気で殺意が沸いてきそうだよ……!」
「うんうん、アンゼリカちゃんはわかっているね〜!名前はなんて言うのかな!?それと今すぐギュッと抱きしめていいかな!?」
「え、えっと……?」
「こ、この人達は……」
それぞれ興奮した様子のアンゼリカとアネラスに話しかけられたアンリエットは困惑し、二人の様子に仲間達が冷や汗をかいて脱力している中アリサはジト目でアンゼリカとアネラスを見つめた。
「それで?テメェがあの痴女と一緒に俺達を阻む”最後の関門”とやらでいいのか?」
「”痴女”………?……………………ベルフェゴール様の事ですか。ええ、わたしの名はアンリエット。リィン様達によって救われ、赦された者にして、リィン様をお守りする者の一人。あなたさま達がリィン様やベルフェゴール様達の話にあった”紅き翼”の方々ですね。この先ではリィン様達がリィン様達の使命を果たす為に戦いを繰り広げています。リィン様達の使命の為にも、どうか引き返してください。」
アッシュの問いかけを聞いて一瞬誰の事がわからなかったアンリエットだったがすぐに心当たりを思い出した後気を取り直してアリサ達に忠告した。
「引き返せって言われて引き返すくらいなら、こんな所まで来ない。」
「ああ……!父上を救うためにも、悪いが力づくでもそこをどいてもらう……!」
アンリエットの忠告に対してフィーとラウラはそれぞれ反論した。
「……リィン様達が仰っていた通りやはり、歩みを止めるつもりはないのですね。でしたら、強硬手段に出るまで……」
二人の反論を聞いたアンリエットは悲しそうに瞳を閉じる。再び瞼を開いた時には、全身から魔力が漏れ出ていた。一方アンリエットの様子を見たアリサ達はそれぞれの武装を構え
「相手は一人よ!理由はわからないけど、ベルフェゴールが現れないのだったら、現れない内に速攻でアンリエットを無力化するわよ――――――!」
「”一人”………?おかしなことを仰いますね。あなたさま達を阻む”死霊”はあなたさま達の周囲にたくさんいるのに。」
「へ……し、”死霊”……?」
「!まさか――――――」
サラの号令に対して不思議そうな表情で首を傾げて呟いたアンリエットの言葉の意味がわからなかったマキアスが困惑の表情を浮かべている中、アンリエットの言葉の意味を理解していたエマは血相を変えた。するとその時、なんとアリサ達の周囲に散乱していた鉄道憲兵隊や正規軍の遺体が起き上がり、更に死霊達が次々と姿を現した!
「オオオォォォ…………」
「イヤダ、シニタクナイ………!」
「イタイ、イタイ、クルシイ……!」
「ヒッ!?し、死体が起き上がった……!?」
「それに突然現れた目の前の不可解な”魔物”はまさかローゼングリン城の時の……!」
「あわわわわわ……っ!?ほ、本物のゾンビにお化け〜〜〜〜〜〜!?」
アンリエットの呼びかけによってゾンビとして起き上がった鉄道憲兵隊や正規軍、そして死霊達を目にしたエリオットは悲鳴を上げ、ガイウスは真剣な表情で声を上げ、ミリアムは表情を青褪めさせて声を上げ
「ゾンビと死霊を操る……―――――!まさかとは思うけどアンタ……死霊使い(ネクロマンサー)!?」
「死霊使い(ネクロマンサー)とは一体何なんです……!?」
「死霊使い(ネクロマンサー)は死者や霊を用いた術、そして霊魂もそうだけど死体をアンデッドに変えて操る事もできる暗黒魔道の使い手――――――つまり、私達”魔女”からすれば、後戻りできない所まで堕ちた魔術師――――――”外法”の魔道士よ!」
アンリエットの正体を察したセリーヌは厳しい表情で声を上げ、セリーヌが口にした言葉の意味がわからないセドリックの疑問にクロチルダが答えた。
「ゾンビに死霊、”外法”の魔道士って事は不良神父や眼鏡教官達の案件じゃねぇか!?」
「いやいや、彼女はリィン君の使い魔でもあるんだから、彼女をリィン君の許可もなしに勝手に滅したりなんてしたら、リィン君達も私達の事を”本気”で敵として認定するだろうから、少なくても彼女を滅する事は絶対に避けるべきだよ。」
「チッ、せめてトマス教官とロジーヌがこの場にいれば、ゾンビや死霊達への対処は簡単だったのでしょうけど……!」
厳しい表情で声を上げたアガットの言葉に対してオリヴァルト皇子は疲れた表情で答え、サラは舌打ちをして厳しい表情を浮かべた。
「ったく、冗談抜きであんなヤバすぎる女までハーレムの一員にするとか、あのシスコンリア充剣士は何を考えていやがる――――――うおっ!?」
「……ッ!?一体何をするんだ、クロウ!?」
その時疲れた表情で溜息を吐いたクロウは突如自分の一番近くにいたアンゼリカに攻撃し、咄嗟にクロウの攻撃を防いだアンゼリカはクロウの行動に困惑していた。
「わからねぇ!体が勝手に動きやがるんだ……!く……っ……左右に散開して回避しろ!」
後ろに跳躍してアンゼリカから離れたクロウは困惑の表情で答えた後必死に何かに耐えるような表情を浮かべながら武装を双刃剣から双銃に変えてアリサ達に警告し、そしてクラフト―――――クイックバーストをアリサ達に放った。クロウによる突然の同士討ち(フレンドリーファイアー)はクロウの警告によってアリサ達が咄嗟に左右に散開した事で命中しなかった。
「ちょっ、僕達は味方なのに、何で僕達を攻撃するんだ!?」
「だから体が勝手に動くって言っているだろうが!?俺の意思じゃねぇ!」
「!しまった……!クロウの肉体は”不死者”だから、アンリエットの死霊術の影響を受けてしまったのね……!」
「クロチルダさんはクロウ君の状況について何か気づいたんですか……!?」
マキアスの指摘に対して反論するクロウの様子を見てあることに気づいて厳しい表情を浮かべて呟いたクロチルダの言葉を聞いたトワはクロチルダに訊ねた。
「姉さんの説明にもあったように、死霊使い(ネクロマンサー)の術の一つとして、アンデッド――――――つまり、”不死者を操る術”があります。ですから、”肉体が不死者(アンデッド)”のクロウさんも現在アンデッド達を操っているアンリエットさんの死霊術の影響を受けた事によって無理矢理私達と敵対させられているんです……!」
「何ですって!?くっ………アンリエットと言ったわね。――――――すぐにクロウにかけている術を解きなさい!」
クロチルダの代わりに答えたエマの説明を聞いて血相を変えたサラは厳しい表情でアンリエットを睨んで命令した。
「わたしの目的はあなたさま達をリィン様達の所に向かわせない事。あなたさま達が引き返すのであれば、そちらの不死者を解放致しましょう。そのつもりがないのであれば、リィン様達が使命を果たされるまでここで死霊達と戯れてもらいます。」
サラの命令に対して静かな表情で答えたアンリエットが杖を振ると死霊や不死者達、そしてクロウはそれぞれ戦闘態勢に入った。
「クソッ、可愛い顔をしている割にはやる事がえげつな過ぎだろ……!すまねぇが、できるだけ俺へのダメージを最小限に抑えて俺を無力化してくれ……!」
「ええい、世話の焼ける……!」
「クロチルダさん、エマちゃん、セリーヌちゃん!クロウ君を傷つけずにアンリエットさんの死霊術から解放する方法で何かないのですか!?」
クロウの要求に対してユーシスが呆れた表情で答えた後トワは真剣な表情でクロチルダ達にクロウを解放する方法を訊ねた。
「一番手っ取り早いのは”術者”であるアンリエットを気絶させる事よ!そうすればアンデッド達もそうだけどクロウを操っている死霊術も自動的に解除されるわ!」
「もしくは私達がアンリエットさんの死霊術を解析して、私達がアンリエットさんの死霊術に介入して解除する事ですが………」
「相手の魔術の術式――――――ましてや死霊使い(ネクロマンサー)の術式の解析なんて、ロゼでもそう簡単にはできないでしょうから、そっちにはあんまり期待しない方がいいわよ!」
「ハッ、結局はあのオカルト使いの女をシメればいいだけじゃねぇか……!」
「来るぞ……っ!」
クロチルダ達の説明を聞いたアッシュは鼻を鳴らし、ミュラーは今にも襲い掛かってきそう敵達を見て警告した。そしてアリサ達はアンリエット達との戦闘を開始した!
〜同時刻・海都オルディス上空・メルカバ伍号機・甲板〜
一方その頃、オルディスの上空にステルスモードを展開している”メルカバ”の”伍号機”の甲板にエステル、ヨシュア、ミント、フェミリンスがある人物達に見送られようとしていた。
「あの見るからに豪華な建物が”四大名門”の一角にして帝国貴族を率いる”カイエン公爵家”の城館や。」
「ず、随分と豪華で大きい館ね〜。バリアハートやルーレにあった屋敷とも比べ物にならないじゃない。」
「というか、もう”家”や”屋敷”じゃなく”お城”に見えるよね……」
エステル達を見送ろうとしている神父――――――トマスと同じ守護騎士(ドミニオン)――――――第五位”千の護手”ケビン・グラハムは城館に視線を向けてエステル達に説明し、城館に視線を向けたエステルはジト目で、ミントは冷や汗をかいて苦笑しながらそれぞれの感想を口にし
「オルディスがゼムリア大陸でも最大規模の海都である事から、税収は間違いなく他の四大名門の本拠地よりも圧倒している事もあるだろうし、何よりもカイエン公爵家は帝国貴族を率いるリーダー的存在でもあったから、他の四大名門の館よりも”格上”にしたんだろうね。」
「まさに”血統主義”の帝国貴族達の筆頭らしい館と言うべきですわね。」
エステルとミントの言葉に対してヨシュアとフェミリンスはそれぞれ静かな表情で答えた。
「それで念のために確認しておくけど、本当にあの館でオリビエ達やリィン君達が戦っているのよね?」
「はい。”紅き翼”と連絡を取り合っているバルクホルン卿の話によると、灰色の騎士達はオルディス奪還の為には”黄昏の呪い”によって操られている”光の剣匠”を討つことも止むを得ないとの考えで、”紅き翼”はそれを阻止して”光の剣匠”を”呪い”から解放しようとしているとの事ですから、既にオルディスの戦端も開かている以上館内でも戦闘が繰り広げられている可能性は高いかと。……最悪の場合、”灰獅子隊”、”紅き翼”、そして”光の剣匠”達による三つ巴の戦いが起こっているかもしれません。」
「そっか………全くリィン君達もその子爵さんが操られている事で子爵さん自身にとっては不本意な戦いを強いられていると知っていながら、オルディス奪還の為に子爵さんを討つつもりなんて融通が効かないわね……」
エステルの疑問にケビンの隣にいるシスター――――――ケビンの従騎士である星杯騎士――――――リース・アルジェントは頷いて真剣な表情で答え、リースの話を聞いたエステルは疲れた表情で溜息を吐いた後ジト目でリィン達を思い浮かべた。
「それについては仕方ないよ。彼らは”上の命令が絶対の軍人”なんだから、”優先すべきは自分達の感情ではなく、軍務”だよ。」
「ましてや相手は帝国でも5本の指に入ると謡われている達人(マスター)クラスの武人……幾らアイドス達の協力があるとはいえ、彼ら自身はまだ”未完の大器”なのですからそのような彼らが達人(マスター)クラスの武人相手に”加減”等すれば彼らから犠牲者が出る可能性が高まるのは目に見えているでしょうから、仲間や部下の犠牲者を減らす為に彼らは”軍人として最適な判断を決断した”だけの事ですわ。」
「それくらいは言われなくてもわかっているわよ。ラピスとリンの記憶と統合する前のあたしはともかく、”為政者としての考え”も身についていえるラピスとリンの記憶と統合した今のあたしは”リィン君達の判断は決して間違っていない事くらいは理解しているわ。”――――――ま、だからと言って遊撃士のあたし達が困っている人達に手を差し伸べる事とは別だけどね。」
「えへへ……ミント達は困っている人達を助ける”遊撃士”だもんね♪」
ヨシュアとフェミリンスの指摘に疲れた表情で答えたエステルだったが口元に笑みを浮かべ、エステルに続くようにミントは無邪気な笑みを浮かべた。
「ハハ、エステルちゃん達らしい答えやな。できればオレ達も加勢したい所やけど、生憎連合の関係者達とやり合う事は”上”の方から禁じられているから、オレ達がエステルちゃん達に協力できる事はここまでや。」
「私達の分も含めて副長やロジーヌさん、そしてオリヴァルト殿下達を助けてあげてください。」
「うん、任せて!――――――来て、カファルー!!」
エステル達の様子にケビンは苦笑し、リースは静かな笑みを浮かべてエステル達に見送りの言葉をかけ、リースの言葉に力強く頷いたエステルはカファルーを召喚し、エステル達はカファルーの背に乗った。
「それじゃあ行くわよ、カファルー!ここからでもわかるあの豪華で大きい館まで超特急でお願いね!」
「グオッ!!」
そしてエステル達を乗せたカファルーはエステルの指示によってカイエン公爵家の城館目掛けて急行し始めた――――――
今回の話を読んでもうおわかりかと思いますが、クロの軌跡でようやく再プレイアブル化した不遇(コラッ!)ことジンが登場&クロの軌跡のメインヒロイン(?)の一人と思われるエレイン・オークレールがまさかの超フライング登場、そしてエステル達の再登場&介入ですwwクロの軌跡のティザームービーでエレインとジンのプレイアブル化を見て二人がちゃんとプレイアブルキャラとして登場する事は安心しましたが、何よりもフィーもそうですが創でも登場したアリアンロードの後釜と思われる”姫”までプレイアブルキャラとして登場する事にはマジで驚きましたwwまさかとは思いますが、”姫”はクロの軌跡の八葉一刀流枠なんでしょうか……(汗)この調子なら、クロの軌跡U(気、速すぎぃっ!!)やクロの軌跡最終作でのレンのプレイアブルも期待できそうですwwなお、ジン達登場時のBGMは空シリーズの”Challenger Invited”か”The Fate Of The Fairies”のどちらか、今回のアルゼイド達戦のBGMは創の”Sword of Swords”、ラプソディの”争いを望む者と望まぬ者”、VERITAの”宿業”のどれかで、アンリエット達戦のBGMは零の”Demonic Drive”、コンキスタの”迫られる判断は好か危か”、空3rdの”Demonic Drive”のどれかで、エステル達のシーンのBGNは空3rdの”最後の選択”だと思ってください♪ちなみに先に言っておきますがエステル達がZ組に協力するのはオルディス篇と終章でのZ組側で予定している????戦での途中からのゲスト参戦くらいで、それ以外の出番は終章のラストダンジョンやラスボス戦、後日譚の裏ラスボス戦(!?)の際にリィン達と共闘するくらいだと思います。なお、裏ラスボス戦で参戦するのはリィン達とエステル達だけでなく、Z組陣営、戦女神陣営、特務支援課陣営、イース陣営、那由多陣営に加えて原作ノーマルエンディング後の創メンバーであるZ組、特務支援課、ピクニック隊(オイッ!)+協力者達という私自身も全員の登場や活躍が書けるかどうかわからないメンツになる予定です(ガタガタブルブル)
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第131話 | ||
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