真剣で私と戦いなさい! 4話:困惑
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「纏身」

 

 

光に包まれたかと思うと自分の体が作り変わるのがわかる。

纏身が終わったときに感じたのは、自分が飛んでいる感覚。

 

 

 

怪人に吹っ飛ばされていたのをすっかり忘れていた。

 

 

 

 

 

巨大になった両手で地面を削る。

普段の自分では考えられないほどアクロバティックな動きをしながら体勢を整える。

 

 

両腕から生えている合計6本の角がスライドする。

 

 

「キサマハッ!?」

 

 

人語を理解しているのか俺の姿を見るなりうろたえ始める怪人。

 

 

両腕の先端にある穴から空気を取り込み、内部で圧縮する。

 

 

 

うろたえていた怪人は、俺が突き飛ばしたせいで、まだ地面に腰を下ろしたままの状態の京のほうをちらりと見る。

 

京に襲い掛かるつもりなのか体の向きを変えて京めがけて突進する。

 

 

左腕の砲身を京に突進する怪人に向ける。

 

 

撃鉄が降りる様に左腕の角が1本スライドし、砲身から空気の塊が打ち出される。

 

被弾と同時に怪人の体勢が崩れる。

残りの2本の角が順番にスライドし、空気の塊を打ち出し怪人を京から遠ざける。

 

 

3発の空気の塊の直撃により、さらに体勢が崩れたところで左腕を下ろして、右腕を構える。

 

右腕には空気以外にも何かがたまっていくのを感じる。

 

 

完全にたまったところで3本の角が一斉にスライドする。

 

 

右腕の砲身から淡い光を放つものが飛び出し、光弾は怪人の胸元に直撃したと同時に膨張し、怪人を数メートル浮き飛ばす。

 

 

「やったか!?」

 

 

岳人の倒せてないフラグに反応するように、怪人がよろよろと起き上がる。

 

 

「『ジガ』…ジャナイ。オ前ハ…?」

 

「分からないよ」

 

 

『ジガ』が誰かは知らないけど、自分自身も分からない。

 

さっきから、体が勝手に動いている。

俺の意思ではなく、この怪人の意思で…

 

 

「ソウカ…次ニ会ッタトキ、ソノ命貰ウゾ」

 

 

鳥のような怪人の姿が霞む。

姉さんの方から何か飛んできたが、確認する前に俺の意識は落ちていた。

 

 

 

 

 

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Side 川神百代

 

 

「キサマハッ!?」

 

 

光に飲み込まれた大和の変わりに群青色の怪人が立っていた。

気質が多少違うが大和だ。

 

その大和の姿を見て鳥のような怪人がうろたえ始める。

 

改めて自分の立場が分かったのか、大和が突き飛ばしたせいで尻餅をついたままの京を襲おうと怪人が動き始める。

 

右手に気を溜めて吹っ飛ばそうと思ったが、私が手を出す前に群青の怪人が何かを打ち出した。

 

一発目で体勢が崩れ、追い討ちにさらに2発。

弾は見えない、一体何を打ち出しているのだろうか。

 

 

大和と思われる怪人の気が右腕に集まっていくのを感じる。

 

そして、右腕の先端部から光弾を討ち放つ。

 

光弾は真っ直ぐ怪人の胸元に吸い込まれる。

接触した瞬間に光段の体積が膨張し、怪人がさらに吹き飛ばされた。

 

 

私の右手に溜まった気のやりどころに困る。

 

 

「『ジガ』…ジャナイ。オ前ハ…?」

 

「分からないよ」

 

「ソウカ…次ニ会ッタトキ、ソノ命貰ウゾ」

 

 

大和の答えを聞いた怪人の姿が薄れていく。

 

丁度いいので怪人に溜まっていた気を投げつける。

 

 

「ギャアアアァアァ!!!」

 

 

見事に直撃したが、消えてしまった。

 

 

「逃げられたか…」

 

 

大和のほうを向くと、姿が変わったときと同じように光に包まれて私たちのよく知る大和の姿になっていた。

 

その体が傾き、うつぶせに倒れる。

 

 

「大和!!」

 

 

京がいち早くその体を受け止める。

動きが見えなかった。

 

京の大和に対する愛情に戦慄しながらも皆大和の周りに集まる。

 

息遣いも正常、顔色もそれほど悪くないようだが、破れた服から鱗のような肌が見える。

 

 

「これは…ッ!」

 

「きゅ、救急車だ!!」

 

「117だな!」

「違うよ!!」

 

「110よね!」

「それ警察です!」

 

 

ここに来てようやく皆パニックになる。

 

こういう時こそ軍師が的確な指示を出すべきだろ…

年長者として、ここは冷静に判断しなくてはいけない。

 

 

「…家(川神院)に連れて行くぞ!」

 

 

そういって京から奪うように大和を抱き上げる。

 

救急車を待っているよりも私が運んだ方がいい。

 

 

 

私は全力で家に向かって疾走した。

Side out

 

 

 

 

 

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目を開く、目に映るのは病院の天井ではなく木の天井。

横を向くと襖、明るい光が入ってきているところを見ると夜が明けたのだろうか。

 

この場所には見覚えがある、ここは川神院だ。

 

 

「…治ってる」

 

 

起き上がって、右腕を見てみると包帯こそ巻いてあるが折れてはいない。

若干痺れるような感じがするが問題なさそうだ。

 

あの後一体どうなったのだろうか…

 

一人考えているとどたばたと足音が聞こえてくる。

 

 

「「大和!!」」

 

 

襖を勢いよく開けて京と姉さんが入ってくる。

まだ足音が聞こえる、他の皆もこっちに向かっているのだろう。

 

 

「おはようございました」

 

「やっぱり頭が…」

「大和!…でも大丈夫!パーになっても私が面倒見るから!!」

 

 

冗談が通じない。

京は本気かもしれないけどね。

 

二人に詰め寄られていると他の面子が集まってきた。

キャップとクリスが無垢な瞳でこちらを見つめている。

しかし、その目の下には隈が見える。

 

 

「大和!なんでこの事言ってくれなかったんだよ!」

「全くだ!まさかお前が孤高のヒーローだったとは!!」

 

 

 

「何の話だ…」

 

 

「キャップが徹夜で正義の味方雑談を始めてさ…」

 

「途中から脱線して大和の話になってよ…」

 

「そしたら、変な設定が勝手に組み上がってしまったんです」

「おかげでまともに寝れてね〜のさ〜」

 

 

 

俺のつぶやきにモロと岳人、まゆっちが反応してくれた。

 

 

どうやら俺には以下の設定が付け加えられた。

 

 

 

 

京をいじめから救ったことにより正義に目覚めた直江大和。

しかし、正義の心を恐れる悪の組織(フロシャイムではない)の卑劣な罠により捕まり改造されてしまう。

あわや、脳改造というところで脱出するも後遺症で歪んだ性格に…

 

そして俺は復讐のために一人怪人と戦い続けていた…

 

 

 

 

「性格が歪んでて悪かったな…」

 

 

そこで襖が開く。

学長・川神鉄心が入ってくる。

 

その顔は至って真剣だった。

 

 

「直江よ、わしにも詳しく話してもらえるかの?」

 

 

とてもNoと言える雰囲気ではなかった。

 

 

 

 

 

 

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俺は皆に、4年前の誕生日に貰った物体の話から今までのことを話した。

破天荒な話だが、信じてもらうしかない。

 

 

「…なるほど、よもやそのような事態になっておったとは…」

 

「あの時のプレゼントが本当に呪いのアイテムだったなんて思いもしなかったよ」

 

「大和、その指輪は外れないの?

 

 

ワン子に言われて外れるかどうか試してみることにする。

堂や田tら出るのか分からないので念じてみる。

 

 

右手の人差し指から指輪が浮き上がってきた。

 

引っ張ってみるがびくともしない。

 

 

「…取れそうにないみたいだ」

「やっぱだめか…」

 

「直江よ、どういう形であれお主は力を手に入れた。…その力どう使う?」

 

 

「………」

 

 

どう使うか、問われてもはっきりとした答えはでない。

意識を失う前に怪人が残した言葉を思い出す。

 

次に会ったとき

 

 

つまり、あいつらはまた俺の前に現れるつもりだ。

 

 

「そういえばあの怪人はどうなったの?」

 

「仕留め損なったぞ」

「断末魔あげてたようにも聞こえたけどな」

 

 

どっちだ。

 

 

「少なくとも最初に百先輩が倒しちゃったやつらはいつの間にか消えてたよ」

「一瞬で消えてなくなったぜ」

 

 

生き残りはいる。

俺の情報が怪人たちに行った可能性は無くもない。

 

 

「戦わざるを得ないかな…」

 

「ふむ、ならば直江。ちょっとワシと組み手せんか」

「大和、骨は拾ってやるぜ」

 

「キャップ、不吉な事言うのやめようよ!!」

 

「安心せい、手加減する。もっとも準備があるから昼からじゃな…」

 

 

そう言って学園長が部屋から出て行く。

拒否権はないらしい。

 

 

 

「でもさ、戦うにしてもどう戦うのさ?相手はいつ現れるか分からないのに」

 

「モロ、前提が違う。戦うのは相手が『襲い掛かって来るから』だ」

「そういう事、現れたら迎え撃てばいいんだよ。わざわざこっちから出向く必要はないさ」

 

 

そしてこっちは出現をある程度先読みできる。

最悪、姉さんが来るまで時間を稼げば何とかなる。

 

 

「別に大和は戦わなくても私が守るよ?」

「どうせ風呂とか布団の中にもついてくるとか言い出すんだろ…」

 

 

京はほほを染めながらサムズアップする。

 

 

「ふぁあぁ〜…いい加減眠くなってきたぜ」

「俺も少し仮眠するか…大和少し横に移動してくれ」

 

「大和の布団で寝るの!?」

 

 

「やっぱりキャップも大和狙いと見るしか!!!」

「京は少し黙ろうか」

 

 

まゆっちとクリスも興味深そうにこちらを凝視している。

姉さんはニヤニヤと見ているが、ワン子はよく分かっていない様子だった。

 

 

 

 

 

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現在、俺は川神院の裏手で学園長と対面している。

 

 

距離は5〜6メートルほど離れているが、どうせ通常なら視認する前に意識が無くなるであろう間合いだ。

 

周囲を門下生の人たちが囲って結界の準備をしている。

念のためらしいが、手加減するつもりあるのか…

 

 

「…遺書、用意するか…」

 

「何を言っておる。手加減はするといっておるじゃろうが…それに特別ゲストが来ておらんからしばし待て」

 

 

特別ゲスト?

誰だろうか…

 

 

「大和〜、がんばれ〜」

「死ぬなよ〜」

「不吉な事言うの止めようよ!怪我に気をつけて〜」

 

 

 

少し離れたところにファミリーの皆が見ている。

 

武士娘たちは手加減するとはいえ川神鉄心の戦いが見れるので真剣そのものだ。

 

 

「鉄心総代、お客様が来られましたヨ」

 

「うむ、案内を頼む」

 

 

ルー師範代と一緒に二人の人物が着いてきた。

 

 

 

赤いマスクにTシャツと短パンの男と紫の大きい服に盾と槍を持つ怪人。

 

 

「悪り〜悪り〜、一途遅れたか?」

 

「すみません、ちょっと夕食の片付けをしてたら遅れてしまって」

 

 

 

川神のヒーロー、天体戦士・サンレッドと悪の組織フロシャイムの幹部・ヴァンプ将軍が現れた。

 

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あとがき

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

 

ようやくレッドさんとヴァンプ様の登場。

 

物語はようやく中盤へ。

 

 

サンレッドとクロスいたことによりいろいろ改定する予定ですのでお楽しみに…

 

一応次回変身後の大和の実力が判明。

 

説明
指輪の力によって纏身した大和。
鳥の怪人『クロウ』を相手に戦うが・・・

ようやくヴァンプ様登場です。一応レッドさんも…
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コメント
キラ・リョウ様、残念ながら百代とではなく鉄心が相手なのですよ(ろしあ)
アイン様、作品を考える祭に一番最初から決まっていたことでござます( ´∀`)b(ろしあ)
まぁ百代さんには勝てないだろうが、大和がどこまで戦えるか楽しみです!!(キラ・リョウ)
でも、百代には勝てない絶対に(お約束)(アイン)
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真剣で私に恋しなさい!! 真剣で私に恋しなさい! まじこい 直江大和 サンレッド ヴァンプ将軍 

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