真・恋姫無双 〜不動伝〜 邂逅
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扉の向こうが騒がしい。信也の魂の限りの雄叫びを聞きつけてやってきた、ここの生徒が扉の前に占めているのだろう。

諸葛亮と鳳統の二人は、信也の雄叫びを真正面から受けてしまって部屋の隅でお互いに肩を抱き合って震えている。

「諸葛亮で御免なさい」、「鳳統で御免なさい」とぶつぶつと小言が聞こえてくるが、信也は気にしない。

というよりも彼の中にあった、『臥龍鳳雛』のイメージが完全にぶち壊しだ。

女になっていると分かっていても元来持ち得ていたイメージとかけ離れていれば、それは当然ショックを受ける。

ましてや、少なからず畏敬の念を感じていただけにそのショックは計り知れない。

可愛らしくなった諸葛亮と鳳統の何処に畏敬の念を抱けと。悲しくて涙が出そうだった。

 

「あの、不動さん? 何か気に障ることでもあったかしら?」

 

流石の水鏡も信也の変わり様には驚かずにいられない。

ただ、二人の生徒を紹介しただけなのにこの落ち込み様は異常だと感じた。

 

「水鏡さん……あの二人が、本当に諸葛亮と鳳統なので?」

 

「え、ええ、そうだけど。もしかして、貴方の知る二人とは違うのかしら?」

 

もう違うと言えば違う。あらゆる意味で正反対だと突っ込みたい。

だが、今さっき自分で言ったことを思い出す。

『三国志に出てくる有名な人物は、女性に変わっている』――自分で立てた仮説だ。

いくら目を背けようとも瞑ろうともこれが現実。これが事実。これがこの世界での真実。

認めざるを得ない。あの可愛らしい少女二人が、迎えれば天下も取れると謳われた『臥龍鳳雛』だと。

蜀県立の立役者となる天才軍師は、今部屋の隅でガタガタと震えている少女たちなのだ。

 

「あの、すみません。ショックが強かったので」

 

「しょっく? 天の国の言葉かしら?」

 

「あ、えーと、衝撃と言うか動揺みたいなもんです」

 

言葉の意味を理解出来たのか頷いた水鏡は、もう一度少女たちを呼び寄せる。

流石に師である水鏡の言葉は逆らえないのか、ビクつきながらも水鏡の傍まで歩み寄った。

二人の顔は信也の方を向けていない。それもそうだ。自己紹介したと思えば、いきなり叫び出したのだから。

その様子を見て、流石の信也もそろそろ焦り出す。

いくら自身の中にある諸葛亮像、鳳統像と違えども目の前の少女には全く関係ないことである。

明らかに非があるのは信也の方。むしろ水鏡の話を聞く限り、倒れていた信也を助けてくれたのはこの二人である。

命の恩人を蔑ろにしたことは、父親の教訓である『恩を仇で返すな』に反してしまっている。

寝台の上で足を畳み、痛む左肩を無視して土下座を決め込んだ。

 

「すみません。二人の名前を聞いて動転してしまい、声を荒げてしまいました」

 

今度は一転して頭を下げて謝罪する信也に、諸葛亮と鳳統の二人もポカンとしてしまう。

また怒声を浴びせられると覚悟していただけにこの展開は読めていなかった。

水鏡は微笑みを浮かべながら、何も手出しをしない。その場を任せるようだ。

 

「命を助けてもらったのにあんなことを言ってしまって、本当に申し訳ございません」

 

「あの、いえ、気にしていないから大丈夫ですよっ! 頭を上げてください」

 

ようやく反応を示した諸葛亮が慌てて取り成し、鳳統も諸葛亮の後ろでコクコクと頷いている。

 

「ありがとうございます。では、改めてお礼を申します。

 倒れているところを助けて頂き、ありがとうございました」

 

「そんな、困っている人を助けるのは当然です。怪我をなさっているなら尚更ですよ」

 

えっへんとない胸を反らす諸葛亮にまた後ろからコクコクと頷く鳳統。

どうやら、鳳統の方は大変人見知りをする内向的な子のようだ。そのような子に怒声を浴びさせたのかと思うと心苦しい。

 

「あの、貴方の名前はなんて言うんですか」

 

「申し遅れました。俺の名は姓が不動、名が信也。この国で言う字は持っていません」

 

「字が、ない? ど、どういうことでしょう?」

 

この国に住まう人間ならば姓名と字を名前として持つ。それが当然だし、当たり前の常識だ。

後ろにいた鳳統も興味に引かれたのか、顔を諸葛亮の背後から出してきた。

 

「俺はこの国の人間ではありません。日本――水鏡さんの言葉で言えば、天の国ですかね」

 

「てっ、天の国ってことは、貴方が噂の『天の御遣い』様ですか!?」

 

「天の国」という言葉に慌てふためく二人。手にしている信也の制服も落とさんばかりに両手をあわあわと振っている。

まるで、大物に思いがけず出会ってしまった一般人のような反応を示している。それだけ『天の御遣い』とやらは二人の心に染み付いているようだ。

 

「天の国出身ですが、その『天の御遣い』とはまた別です」

 

「へ? ち、違うんですか?」

 

「違うみたいです。本物は、もっと北の方に落ちたらしいですよ」

 

そこで水鏡に顔を向けて、信也は「そうですよね」と肯定を求める。

水鏡もゆっくりと頷いて肯定をする。その様子を見ていた二人は、がっくりと項垂れた。

二人には悪いことをしたかと思ったが、事実である以上嘘を吐くことは出来ない。

 

「実はこの子たち、『天の御遣い』に興味があるのよ」

 

「あー、なるほど。通りで見事な肩の落としっぷりで」

 

本物が現れたと思えば、全くの別人ですと返されたのだから落ち込むのも分かる。

それを素直に表現する辺りがまだまだ子供だなと思ったが、口にすると「もう大人の女性です!」と返されるのはまた別の話。

 

「ところで、朱里と雛里は一体どうしたの?」

 

「は、はい。不動さんの服をずっと洗濯していたんですけどとっても凄いんです!」

 

「光を浴びると反射してキラキラと光るんです」

 

そして、ずいっと信也の制服を水鏡に差し出す諸葛亮。随分とボロボロだったのにしっかりと光沢を取り戻している。

信也が寝込んでいた三日間、時間があれば洗濯してくれたのだ。あれだけの血を吸っていたのに目立った跡はない。

洗剤なんという便利な物がないことを考えれば、二人の苦労が目に浮かんでくると言うものだ。

後は破けた左肩部分を縫い合わせれば、着ることに関して問題ないだろう。

 

「もしかしてポリエステルのことかな? この時代にはないから当然と言えば当然か」

 

「ぽりえー……というのは?」

 

「天の国で使われてる生地だと思ってくれるといいよ」

 

「天の国の人たちは、皆こんな服を着ているんですか?」

 

「皆って程ではないけど、まあよく使われてはいるかな」

 

この国にはない生地に感嘆の声を上げて、まじまじと見る二人。水鏡も興味珍しそうにしていた。

治療の際は汚れていたから判別がつかなかっただろうし、傷の治療に一杯だったから見ている暇がなかったから仕方ない。

 

「後、これも凄いんですよ。こことここを合わせて、取っ手を引っ張れば……ほら、前が閉じるんです!」

 

「そして、取っ手を下ろせば……前が開くんです」

 

諸葛亮が実演して見せたのは、信也にとってはなんでもないファスナーの実演だった。

制服一つだけであそこまで騒がれるとむず痒くなってくるものがあるが、可愛らしい少女たちが笑顔を浮かべてる。

それだけで癒されてくるものがある。他にもポケットの構造とか水鏡に見せていた。

 

「そこまで喜ばれるとは思わなかったよ」

 

「いいえ。ここまで考えられた意匠は初めてです。天の国はとても文明が進んでるんですね」

 

「まあ、そりゃ、ね。ははは……」

 

千八百年も時代を先取りをしているんだから当然だと突っ込みたいが、突っ込んだところでやぶ蛇なだけだ。

信也は乾いた笑みを浮かべて、明後日の方向を見やるしかなかった。二人の笑顔がとても眩い。

 

「ところで、諸葛亮さん」

 

「あ、わたしのことは孔明と呼んでください。私の字です」

 

「あの、わたしのことは、その、士元と呼んでくだしゃい。あぅ」

 

この時代、人の名を呼ぶ時は字の方を呼ぶ。親や主君と言った目上の人物を除けば、名で呼びかけることは無礼な行為とされた。

 

「ん、じゃあ、孔明さん。他にも俺の荷物があったと思うんだけど」

 

「あ、はい。ちゃんと保管していますよ。今は、私たちの部屋に置いていますけど」

 

「いや、それだけ分かればいいので」

 

部屋に戻って取りに行こうとする孔明を引き止める。この二人の性格を鑑みれば、乱暴に扱ったりはしていないだろう。

授業が終えて、そのままバイト先に持っていった学園指定の鞄こそこちらに飛ばされていなかったが、制服のポケットには財布や携帯電話と言った小物を入れていた。

流石にこの時代では何の役も立たないだろうが、元の世界に戻ったら必要になるのだ。

他にも生徒手帳、バイト先で外したままだった腕時計にバイト用のメモ用紙にボールペンなどなど。

それらの無事を確認出来れば、後々受け取ればいい。

 

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「わ、ちょっ、押さないで」

 

「うん?」

 

なにやら扉の方から騒がしい声が聞こえてくる。元々騒がしかったが、今度は緊張が孕んでいる。

水鏡も孔明も士元も訝しげに扉の方に視線を向けると、扉はタイミングを見計らったように開け放した。

 

「きゃっ!?」

 

一人の少女が部屋の床に倒れ込む。波打った、短い黒髪の少女だ。

孔明と士元のように帽子こそ被っていないが、髪の色に合わせた上着と白のワンピースを着込み、帯をしていた。

同一の意匠から見て、どうやらそれが水鏡塾の制服のようだ。

 

「夏夜、貴女は何をしているのかしら?」

 

水鏡が穏やかに、それでいて厳かに床に倒れ込んでいる少女に話しかける。

ビクッと肩を震わせて、そろそろと顔を上げていく。悪戯が見つかった子供のように冷や汗を流し、乾いた笑みを浮かべている。

 

「あの、これはですね。そう! 朱里と雛里が拾ってきた人が、どんな人なのか気になって。ね、皆もそうでしょ!」

 

夏夜と呼ばれた少女は後ろに振り返って呼び掛けるが、そこには誰もいない。

彼女が倒れ込むと同時に蜘蛛の子を散らすかの如く、早々に去っていった。

三十六計逃げるが勝ち。戦略的撤退。戦略的勝利のためならば、戦術的敗北ぐらいは辞さない。

今回の場合は、夏夜という一人の少女の犠牲だろう。

この辺りの冷徹ぶりは、流石軍師の卵たちとも言える。水鏡の教育が素晴らしいことの裏付けだ。

もっとも夏夜にとっては悪夢でしかないが。

 

「夏夜、なにか言い残しはある?」

 

「いっ、言い残しって!?」

 

彼女の脳裏を掠めるのは、以前水鏡から受けた懲罰の内容。

僅か一度だけしか体験していないが、凄絶を極めて筆舌し難い――というよりも思い出すだけで今でも鳥肌が立って、奥歯がカチカチと鳴りそうだ。

あの惨劇の一夜を回避するために彼女は自慢の知略をフル回転させる。

そして、目に付いたのは寝台の上で正座する信也の姿。彼女の頭にこれしかないと閃いた。

 

「先生、聞いてください! あたしはですね、そこの兄さんの叫び声を聞いて飛んできたんですよ。

 あたしの可愛い朱里と雛里になにかあったんじゃあって。友達として、いてもたってもいられなかった訳です。

 でも、来てみれば先生がいるから聞きみっげふんげふん! 様子を見ようとした訳です」

 

孔明と士元は『可愛い』発言に「あわわ」「はわわ」と顔を赤くし、士元に至っては真っ赤な顔を帽子の大きな縁で隠している。

水鏡はやれやれと溜め息をついていた。

 

「全く……貴女は口ばかり達者になって」

 

「でもでも、ホントなんですよ!」

 

必死に頭を下げる夏夜の姿に信也も不憫に思えてきた。

自身にも責任の一端があることを分かっていたために集中的に責められる謂れはないはずだ。

水鏡のお叱りを夏夜からこちらに逸らそうと信也は助け舟を出す。

 

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「水鏡さんもここまでにしてあげて下さい。この子、えーと、夏夜さんだったっけ?

 彼女も悪気があった訳じゃ……って、あれ?」

 

信也が弁明の言を唱えている間に突如にして空気が冷たくなったのを感じて、言葉を止める。

水鏡、孔明、士元は呆けた様に口を開けており、夏夜に至っては先程の必死な表情はなくなって能面になっている。

場の豹変ぶりに信也は着いてこれず、頭の中でクエスチョンマークを飛ばすしかなかった。

 

「あの、皆さん、どうかしました?」

 

堪らなくなって聞いてみることにした。何か無礼があったのならば、頭を下げるつもりだ。

 

「どうかってねぇ。人の真名を許可なく呼んで、どうかしたって言うんだ?」

 

そこで初めて笑みを浮かべてくれた夏夜だが、如何せん目が笑っていない。

さらにどこかから取り出したのか右手には小ぶりな剣が握られていた。

 

「剣は捨てたつもりだけど……流石にこれは見逃せないよね」

 

「うおぉい! ちょっと待てえ! 謝るから! とりあえず謝るから!」

 

剣の切っ先を向けられて、これが演技ではないと悟る。

野盗に襲われた時は、外見が外見だった故に予め多少なりの覚悟を持って臨めたから臆すことはなかった。

しかし、この場面は急展開過ぎて覚悟する暇もない。あからさまな殺意を浴びせられて切羽詰る。

今の信也は、野盗を相手に冷静に状況判断を努め、生き延びる算段をしてみせた度胸がなかった。

 

「人の真名を軽々しく呼んで、謝れば済む問題じゃないでしょう。

 首か心臓か、どっちを突き刺されるかの選択ぐらいは許してあ・げ・る」

 

「マジで殺す気か!? 謝るから! その、よく分からないけど真名で呼んで、御免なさい!」

 

本日二度目の土下座を決め込む。最早恥も外聞もへったくれもなかった。

それに対して、夏夜は疑問を挟まざるを得ない言葉を聞き逃すことなく捉えていた。

 

「はあ? 真名を知らないとか言うんじゃないでしょうね」

 

「知りません! 俺の国には真名とかありませんでしたから!」

 

「……嘘言ってたらどっちも刺すけど。じわじわと」

 

「嘘じゃありませんって! 」

 

左手の中にはいつの間に右手の剣と同一の剣が収まっていた。

言葉通りにどちらにも刺そうとする夏夜にこれこそ必死に弁解する。

 

「あ、あの、夏夜ちゃん。不動さんの言っていることは本当かもしれません」

 

「朱里。この兄さんの肩を持つの?」

 

ギラリと視線で人を殺せそうなほど鋭い視線を朱里に飛ばし、受けた孔明はビクッと肩を震わせるが気丈にも受け止めてみせる。

先程部屋の隅でガタガタと体を震わせていた少女だとは思えなかった。士元の方も小さな口を引き締めて、真っ向に対峙している。

 

「先程、不動さんは字がないと言ってました。それから考え得るには真名がなくても可笑しくありません」

 

「字がないから真名もないって、字なんて庶民なら持たない人もいるし、なくても可笑しくないでしょ?」

 

夏夜の反論に士元が切り返す。

 

「不動さんは『天の国では』と言ってましたから……天の国は、わたしたちとは違う命名の仕方なのかもしれません。

 実際に不動さんの名は、姓は不動、名は信也と、このような複姓は聞いたことありません」

 

この時代の姓は、一文字の単姓と二文字の複姓である。三文字以上の姓は、漢民族以外の少数民族の姓がもっぱらである。

ならば、複姓は一般的な姓かと言うと厳密には違う。複姓は地名と人名を合せたもの、役職、身分とモデルとなる物がある。

諸葛ならば『諸県の葛氏』からで、司馬は軍事を司る官職、公孫は公(諸侯)の孫だからである。

その中で不動という複姓は、当然ながら膨大な知識を有する孔明と士元は勿論、状況を見守るだけの水鏡も聞いたことがない。

 

「……本当に天の国の人なの? どう見ても普通の人だけど」

 

孔明に向けられていた視線が再度信也に向けられる。

ここで何か証明出来る物でも出せればいいが、生憎手持ちの物は全て孔明の部屋に保管されている。

それ以上に今は孔明たちに任せた方が問題なく進む――自信や予感などではなく、確信だ。

彼女たちの手には既に答えを手に入れているのだから。

 

「はい。この服を見てください。不動さんがここに運ばれた時に着ていた服ですよ」

 

孔明は手にしていた信也の制服を夏夜に差し出す。

夏夜もまだ胡散臭げに制服を取るが、その手触りから今までとは違う感触と分かったのかまじまじと見出す。

 

「何これ。なんか、ツルツルした感じがする。上等な絹を使ってもこうはならないよね。

 それにこのギザギザとした歯の部分。これ、飾りにしては変な感じ。あ、この取っ手、動くんだ」

 

両手の剣は既にどこかに仕舞われ、ファスナーの金具を上下に動かし、物珍しそうにする夏夜。

一先ず矛先が収まったことで信也は安堵の溜め息を出したかったが、おくびにも出さない。

 

「それ、この部分を取っ手に挿して動かすと……ほら、閉じることが出来るんですよ」

 

孔明は、水鏡に見せてやったように夏夜にも実演してみせる。

それを見て、夏夜も「へぇ」と感嘆の声を上げる。

 

「なるほどね。確かにこの国にはない意匠だよね。他にも小物入れが服についてあるし」

 

「それじゃあ……!」

 

孔明と士元はパァッと顔を綻ばせる。夏夜もその表情を見せられたら流石に柔和するしかないだろう。

 

「兄さん」

 

「はい」

 

「ホントに真名を知らない?」

 

「知りません。真名という響きから、なんとなくって言った感じしか」

 

「よしよし。夏夜もそこまでにしなさい」

 

今まで状況を見守るだけだった水鏡が仲裁に入る。夏夜は渋々といった感じに引き下がる。

 

「助かります。欲を言えば、もう少し早く仲裁に来てくれたら嬉しかったですけど」

 

「本当に真名を知らないかどうか分からなかったから静観させてもらったの。

 知っていたら、私の口出しが出来る領域ではないから。御免なさいね」

 

「真名ってそこまでなんですか?」

 

信也の疑問に水鏡の門下生三人が揃えて声を出す。

 

「そうよ! 真名ってのは、あたしたちが持つ本当の名前。家族や親友、仕える者しか呼んじゃいけない神聖な名前」

 

「ですので、例え知っていても許された者以外が口をしてはいけないんです」

 

「不動さんはそれを破ったことになりますから……斬首になっても可笑しくないかと」

 

「そうか……なら、失礼をしたのは俺の方だ。頭を下げなくちゃならないな」

 

土下座の大サービスになるが、日本人の謝罪はこれしか思い浮かばないから三度目の土下座をする。

 

「知らずとは言え、君の大切な真名で口にして申し訳なかった」

 

「はぁ、分かったわ。許してあげる」

 

「よしよし。それじゃあ、夏夜も自己紹介をしなさい。このままじゃ、不動さんも呼びたくとも呼べないしね」

 

「はーい」

 

これで一件落着と感じた信也は、下げていた頭を戻して溜め込んでいた溜め息を吐く。

長く、深い溜め息になったが、それだけ緊張していたのだろう。

居住まいを正して、軽く咳払いした夏夜が信也と対面する。

 

「姓は徐、名は庶、字は元直。これからは元直と呼んでよね」

 

徐庶――劉備に仕え、劉備に孔明を推薦した、まさしく劉備にとってのターニングポイントとなる人物との対面だった。

 

 

 

 

 

      二話、完

 

 

 

 

 

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あとがき

 

初めまして。もちら真央と言います。このTINAMIにて真・恋姫無双の二次創作SSを載せさせてもらっています。

二話目であとがきかよって感じですけど、楽屋裏的な話が出来ればと思います。

今回は場面展開が少ないのでページ数も少なく、一話と比べたら短めです。

まあ、この水鏡塾でのメインキャラの紹介的な意味合いもあったから仕方ないですけど。

 

さて、信也を除けばオリキャラと呼べる人物が二人。

水鏡先生こそ司馬徽と徐庶ですねー。

 

水鏡先生は原作では名前のみの登場ですが、アニメだと出ていてどうしようかと悩んだ。

でもアニメを見たのも一年も前だし、これは原作の二次創作だからオリジナルで行こうとケテーイ。

史実では「よしよし」が口癖だったので、入れてみようと思ったが入れられる場面があまりなかった。

 

徐庶も原作では名前のみの登場ですねー。

朱里にお菓子作りを教えている→お菓子大好き→現代で言うと女子高生的な→恋姫で言えば沙和っぽい感じかって言う具合で作りました。

後は史実では撃剣の使い手で、義侠心が厚く友の仇討ちを引き受けちゃうなど侠客っぽいですね。

でも役人に捕まってしまうんだけど友人に助けられ、「これからは剣ちゃう! 学や!」ときっぱりと鞍替えしてみせる剛毅な方です。

 

これから先ですが、本筋はあまり進みません。

信也君の療養生活となりますので、動かしたくても動けません。

というか、水鏡先生が認めてくれません。

信也君も無茶しない人間ですのでさらに動きません。

なので、二話か三話ぐらいの日常シーン――原作で言えば、拠点フェイズに当たりますかね。

それが終えてから物語は進み始めます。

 

では、長々とあとがきを読んで頂き、ありがとうございました。

またみt(ry

説明
本作品は真・恋姫無双の二次創作SSでオリキャラが主人公のために、以下の条件の下で大丈夫な方のみお読みください。

・オリキャラが中心となる物語
・北郷一刀は存在
・蜀√を軸に『三国志』『三国志演義』を交えていきます
・本作品にて三国志のことも触れていくつもりです
 そのため、『三国志』モデルのオリジナル武将、軍師が出てきます
・作者の力不足による描写不足

後、登場人物の名前の表記に関しましては原作準拠です。
例えば、鳳統ですと「鳳」の部分は「?」が正しいです。
公孫賛ならば「賛」の部分は「?」が正しいです。
ですが、原作と違うことで違和感を感じる読者もいらっしゃるだろうと思い、原作に登場している人物に関しては原作準拠です。
それ以外の三国志の人物に関しては本来の表記で書かせていただきます。

以上の条件を受け入れられる読者の方だけ、引き続き本作品を楽しんでいただければ幸いです。
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コメント
ホント真名って初見殺しですよねw(ちまき)
拠点楽しみだ。(ブックマン)
キラ・リョウさん > 真名で呼び合われたら真名で呼ばざるを得ないですよねーwww(もちら真央)
真名を呼ぶのはお約束ですねwww(キラ・リョウ)
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