異世界雑貨店ルドベキア6 |
【サモナン王の手紙】
10年ほど前、私がサモナンに来た頃の手紙を見せてもらったことがある。
サモナン王からバーバラさんに宛てた手紙だ。
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拝啓 バーバラ・ステラゴルド殿。
おそらくこの世界に一箇所だけの桜並木が満開を迎える春の日和、相変わらず息災だろうか。
王の身で君に手紙をだそうとすると、どうしても兵士たちの手紙に紛れ込ませる必要がある。
普段厳重に書面のやりとりをする身からすると、無事に届いているか心配だ。
さて、予定通りこの手紙が君の元へ届いていれば君の誕生日のはずだ。
特別な誕生日。君は今日で1000歳を迎える。
普通女性に年齢など・・・と嫌厭(けんえん)するものだが、君は本当にそういうものを気にしない。
だからこそ、今日が誕生日であることすら忘れているのではないか?
ともに異世界の、現代の者が日本と呼ぶ国からともに来た仲であるが、人間に生まれ変わった私と、君は吸血鬼に生まれ変わった。
いつまでも若く美しい君に、不老となったがすでに老ぼれの身となっていた私。
今私たちが再び並んで歩くことがあれば、祖父と孫のようだとかつての仲間達に笑われてしまいそうだ。
王と王妃として国を建てようと誓った若かれし頃が本当に懐かしい。
国こそ建ったが、玉座の間に王座が二つある光景をいまだに夢に見る。
もう何百年も昔の話であるが、魔族や神族との戦いで日本から来た仲間たちは皆倒れ、私と君だけになってしまった。
今でも私は君が愛おしい。
また、以前のように城に足を運んでくれはしないだろうか?
王の身では街の辺境へ忍んで訪ねることが難しいのだ。
(中略)
近頃、君は「ビーエル」なる奇怪なものを生み出していると聞く。
あれが原因で、私の元に来ていないことも想像がついている。
あれに触れている君は見るに耐えない。
くれぐれも、あの姿を公然に晒すことだけは決してないようにしてほしい。
君の美しい姿をどうして自ら汚していくのだ?
今まで自分の好きなことを押し殺し我慢してきた君にこれ以上我慢を強いたくない、それだけに非常に心苦しい限りである。
さまざまな異世界を渡り歩く力を身につけた君は、数多の世界を目にしたのだろう。
ビーエルも、その中で見つけたものだったのだろうか。
まさか日本ではないだろうな。
※手紙のこの部分に「黙れクソジジイ」と殴り書いてある。そうまでしていて、なんでこの手紙を取って置いてあるんだろう?
(中略)
最近この国に住み着いた風変わりなエルフの娘と懇意にしていると聞く。
騎士団長のテンマも気に入っているようで、私も気になっている。
来月の建国記念の祭りの際は是非そのエルフの娘とともに城に来てはくれまいか。
(以下略)
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◆
風変わりのエルフって私(ルドベキア)のことで、バーバラさんを城に出向かせる口実にされたんだって。
結果として、エルフなのに人間の街に住む場所をもらえたから、助かったんだけど・・・。
バーバラさんは初めから私のことでお願いするために城に行ってくれたみたい。
王様に掛け合ってくれたバーバラさんには頭が上がらないんだけど、気に入ったから助けたって同じ目線で接するように言ってくれたんだ。
それを真に受けた当時の私は本当に子供だったなあ・・・。
同じ目線って言ったって、年長者のバーバラさんにほぼタメで話してたもんね。
それまでアリスと散々放浪していて、ようやく定住できる場所をもらった恩は無礼講で飲み込んでいいものじゃない。
穴があったら入りたいわ・・・。
・・・さて、明日はいよいよバーバラさんのBL本の販売日。
戦争だ!
今日は早く寝て英気を養わないとね。
これだけ凄まじい販売会になると、どこでも請け負ってくれないんだよね。
こう言う時こそ、バーバラさんに恩返しをしなければ。
バーバラさん作「ゲイを殺すは薔薇」の新巻発売なり。
みなさま深夜列を作るのはどうかご遠慮くださいませ・・・。
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