D.C.Uss「夏の思い出」
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「アイシア、さくらさん、準備終わりましたか?」

「もうすぐ終わるからもうちょっと待ってて」

 

 今日は初音島の夏祭りの日だ。

俺達は三人で行くことにしたのだが、さくらさんとアイシアは浴衣で行くことにしたので俺は今、ふたりが着替え終わるのを玄関で待っていた。

浴衣はこの間ふたりが夏祭りのために買いに行ったもので俺はどんなものを選んだのか知らない。

だからとても楽しみだった。

 

「義之くん、お待たせ。どうかな、この浴衣似合う?」

 

 着替えを終えたアイシアが頬を染めて上目遣いで聞いてくる。

アイシアの浴衣は黒地に青で蝶の柄が描かれているものだった。

黒地にアッシュブロンドの髪がよく映えてアイシアのかわいさをいっそ引き立てていた。

 

「あぁ、よく似合っててかわいいよ。予想以上だよ」

 

 俺がそう言うとアイシアは嬉しそうに笑った。

そうしてふたりで見つめあっていると、

 

「ほら、ふたりともこんなところで見つめあってないの。まったく、こっちが恥ずかしくなるよ。義之くん、ボクはどうかな?」

 

 いつの間にか来たさくらさんがそう言ってきた。

さくらさんは紺の生地に黄色い花柄の浴衣だった。

これがまたさくらさんの金色の髪とあって綺麗だった。

 

「さくらさんも似合ってますよ」

「にゃはは、ありがとう」

 

 そう言うとさくらさんとアイシアは左右の腕に抱きついてきた。

 

「あの……これは大変動きにくい上にかなり人目を引くと思うのですが……」

「義之くんは彼女と腕を組んで歩きたくないの?」

「ボクと腕を組むのは嫌?」

 

 ふたりは本当に悲しそうで泣きそうな顔をしていた。

 

(そんな顔をされたら断れないじゃないか……まあ、恥ずかしいだけで嫌ではないんだけどな)

 

「それじゃあ、行きましょうか」

「えへへー」

「にゃはは、浴衣を着たこんな綺麗な女性ふたりと歩けるなんてぜいたくだね」

 

 俺は満面の笑みを浮かべているふたりと腕を組みながら家を出るのだった。

 

 

 

「ほら、あんず飴にたこ焼きだぁ。向こうにはチョコバナナもあるよ」

 

 会場に着くとアイシアはすぐにいろいろと動き回っていた。

 

「まったく、アイシアにはもうちょっと落ち着いて行動してほしいよね」

 

 さくらさんはそう言っているがその両手には綿あめとかき氷が握られていた。

 

(これじゃあ、誰が年上だかわからないな。ふたりのほうが俺よりも上のはずなんだけど)

 

「ふたりとも落ち着いてくださいよ。まだまだ時間はたくさんあるんですから」

 

 そう、祭りは始まったばかりというわけではなかったが終わりまではまだ十分な時間が残っている。

 

「だって、あたしはこうやって家族とお祭りをまわることなんてほとんどなかったんだもん」

「ボクもこんな風に家族でお祭りをまわってみたかったんだ」

 

(そうだよな、ふたりともこの小さな体で背負いきれないものを抱えてきたんだもんな)

 

 俺にとってこのふたりはとても大切な存在だ。

このふたりのどちらかがいなかったら今この世界に俺はいなかっただろう。

今は枯れてしまった枯れない桜に願い、俺に生を与えてくれたさくらさん。

知り合いが次々と俺のことを忘れていく中でずっと忘れないで諦めないでいてくれたアイシア。

だから

 

「わかりました。今日はいっぱい楽しみましょう。今日は俺がおごりますから」

 

俺は感謝も込めてふたりに負けないくらい三人でまわる祭りを楽しむことにした。

 

 

 

「義之くんにもあげる」

 

 アイシアは持っている食べかけのりんご飴を差し出してきた。

 

「いや、それは……俺はそんなに腹減ってないし」

 

(っていうかそれは間接キスになるから)

 

 と考えていると、

 

「そうなの? あ、ほんとは恥ずかしいだけなんでしょ? ほら、あーん」

 

 より難易度が上がってしまったようだ。

さくらさんに助けを求めようとそちらに目をやるとさくらさんはニコニコしながら、早く食べてあげなよ、的な視線をこちらに向けていた。

助けを得られなかった俺は仕方ないので口をつけることにした。

 

「こんなこともう何回もやってるんだから、今更恥ずかしがることないのに」

 

 そうは言うけど、やはり恥ずかしいものは恥ずかしいわけで。

それに周りの人達も俺達に注目しているわけだし。

 

「義之くんは初々しいね。あ、そろそろ花火が始まるよ」

「そうだね。じゃあ、場所を移動しようか」

 

 ふたりはそう言って来た時のように腕に抱きついてきた。

 

 

 

 俺達は今、ベンチに座って花火が始まるのを待っている。

この場所は穴場なので人はそれほどいないが花火は良く見える場所だ。

 

“ヒュルルー、ドーン、ドーン”

 

 色鮮やかな花火が空を彩っていく。

その花火を見ているアイシアとさくらさんはとても神秘的に見えた。

 

「また、来年も一緒に来ましょうね」

「何言ってるの? 来年だけじゃなくて、これから来れるだけ来るんだよ」

「そうだよ、義之くん。これからずっとだよ」

「そうですね。来年だけじゃなくてもっと来ましょうね」

 

 俺達は花火を見上げながらこれから先の未来に思いをはせるのだった。

                                end

 

 

お読みいただきありがとうございました。

アイシアルート後日談その4でした。1つ1つの話につながりはないのでこれはこれだけで大丈夫だと思います。

今まで書いてあった分が終わったので、これから書く作品はもっと上手くかけるように頑張りたいと思います。

説明
D.C.Uのアイシアルート後日談その4です。
ネタばれありなのでお気をつけください。
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タグ
D.C.U アイシア 芳乃さくら 桜内義之 

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