近未来文明が残る惑星 第18話 |
前回のあらすじ
突如暴走するリックをなんとか止め、助太刀してくれた謎の白い着物の女性が管理する建物に行く事になった真田幸村とその忍び2人。
そこでリックの手当てを待つ間、彼はリックやこの惑星の秘密を女性の口から聞き出そうとしていた。
「リック・アーガストという謎の来訪者についての事、日ノ本の各地に存在する謎の物体の事、そして……美月殿、貴女の正体だ」
私は覚悟を決めて美月という謎の女性に、長年疑問を聞こうとした。
奇妙にも風が吹かない建物の中のはずなのに、ロウソクの炎が一瞬揺らめいた。
「……まず、リック・アーガストという来訪者ですが……
一言で言うなら、彼の正体はおよそ700年後の世界から来た未来人です」
一同騒然とした。
「…やはり、そうだったか。あの人の予言は本当だったんだ……」
「幸村様、知っていたんですか!?それに……未来?700年後?」
「分かんねーよ!もっと詳しく話してくれよ!」
(私は頭を抱え、松利は疑問だらけ、短気な那岐は怒りで怒鳴っている。
まあ何も知らない人がこれを聞いたらそうなるだろうな。)
「……混乱しているようですが、話すのを中断しますか?」
「いや!続けてくれ!私には知る『権利』があるはずだ!」
「承知いたしました」
ここまで来て引き下がるわけにはいかない。
どんなに衝撃的な真実だろうと、過酷な事実だろうと知らなくては。
そして、美月殿はまた静かに語り始める――――――。
リック・アーガストは700年後の未来から来た人間、勿論過去の事も知っている。
日ノ本の各地に存在する謎の物体、アスファルト、ハンドガンや天体望遠鏡などの未来の産物だと一瞬にして分かった。
こんな高度な技術を持っている未来の世界ではよほど良い世界なのかというと、決してそうではない。
戦争よりも圧倒的に自然災害の方が多く、人類は過酷な環境で生きていく事を強いられてきた、その為に過酷な環境でも耐える為に科学という学問によって、人間の身体は徐々に進化していった。
医学の進歩で寿命が平均150歳まで生きられるようになった事、急激な温度変化に耐えられるように人の身体を、恒温動物から変温動物に変えていった事など……
「……未来から来たって事は、我々のこの先の事も知っているのかい?」
私は美月殿がまだ話をしている最中なのに、疑問を投げかけてしまった。
「……申し訳ありませんが、それについては正確にお答え出来ません」
「っ何故だ!未来を知っているのだろう?この先の未来はどうなるんだ!?」
一番肝心な事をはぐらかす彼女に、腹を立ててしまった。
怒鳴ってしまったせいか、3人とも静まり返る―――――――やってしまった。
「……私の旧友が言っていた。秀吉様が病で倒れ、また乱世に戻ると……それは本当なのか?」
出来るだけ小声で話した。
「…さあ、どうでしょう?……その旧友の方はどこにいるのですか?」
「亡くなってしまった。いや……正確には暗殺されたんだ。だからこの事は内密で頼む」
「……はい。勿論です!」
「…承知しました」
松利と那岐は顔を見合わせて、しっかりと私の目を見て返事をしてくれた。
「……その旧友は昔から変人だった。突然突拍子もない事をへらへら笑いながら呟く。
しかし悪い人ではないんだ。彼の言う事は8割ほどの確率で当たる。
そんな彼を気味が悪いと怖がる人もいた―――――しかし、今回は言ってはいけないことを言ってしまった」
「それがさっきの事ですか?」
「ああ、そうだよ。そんな事誰も信じないし、寧ろ死罪に当るほどの無礼だ。彼を消されたのは理解できる」
「……話はこれで終わりでしょうか?とにかく私の口からこの国の未来について話すことはできません」
「なっ……分かった、続きを頼む。話を逸らせてしまい、すまなかった」
淡々と話す彼女にまた怒りそうになったが、ぐっと抑えた。きっと彼女は冷淡なのだろう。
ふと、また私は疑問に思った。
「……しかしリック・アーガスト、彼本人からは『月よりも遠い星から来た』事を否定しなかった。700年後の未来から来たというのは、おかしいんじゃないか?どっちが正しいんだ?」
「そうですね、未来の地球環境の事も言わないといけませんね」
――――――700年後の地球は度重なる自然災害で、崩壊の危機に面していた。
地球温暖化による海面上昇、火山の噴火、大地震……数々の災害で徐々に人が居住できる土地が少なくなっていった。
そして人類は宇宙進出によって生き残る事を考えた。
人類が地球を旅立ってから、150年後の遠い遙か宇宙の先に、居住できる惑星、コロニーから彼はやって来た。
「……なるほどな……いや、全く分からない事だらけだが、リック・アーガストという未来人の事は分かった」
「次は、日ノ本にある謎の物体の事……―――――――まさか!?」
「はい、お察しの通り、ほとんど未来で作られた文明の産物です。
ほとんどが長期間使用されなかった為、廃れた状態になっていますが」
(信じられない、彼の訪問により一気に謎が解けてしまうなんて……
もしかしたら彼の知識があれば、未来文明の道具を使うことが出来るのか?)
……この感情は単なる純粋な好奇心だ。決して悪知恵ではない。
「リック・アーガストの治療が終わったら、色々彼に聞くといいでしょう。
今、彼の体の中には外来種の生命体が入り込んでおり、先ほどの落雷で体を乗っ取り暴走したのでしょう」
「……その外来種とは?」
「―――――地球には存在しない生命、いわゆる宇宙生命体ですよ」
「はあ!?……なにがなんだか……その宇宙…生命とやらは安全なのかい?」
「ええ、大丈夫、安全ですよ。この前大怪我した時、彼の身体を少し診察しました。その時に判明したのです。この生物は他の生物の体に寄生し、大人しく宿り主と共存しているのですが、落雷により驚いて先ほどの攻撃をしてしまったのでしょう」
「……寄生か、気持ち悪いな。我々の身体にも寄生するのかい?」
「いいえ、この生命体はあくまで未来人のリックさんだけです」
「その言い方だと、其方は同じ未来人ではない言い方だな?勿論、この時代の人ではないだろう?」
私は、3つ目の質問に繋げるよう話した。
美月殿の表情は変わらず、淡々と話す。
「……私は未来で言う『アンドロイド』という人型ロボットです。この時代なら、からくりと言えばいいのでしょうか……?」
「からくり?……普通の人に見えるが!?」
でも確かに、蛍色の珍しい髪色、不可思議に感情がこもってない声、けもの道を歩いても傷一つ付いてない肌……よく考えれば不思議な所は沢山あった。
人ならざる者が目の前に存在し、こうして会話しているのに不思議と不気味さや嫌悪感は感じなかった。
「……益々未来の話が聞きたくなった。もっと聞かせてほしい!」
童心に帰るようにキラキラと目を輝かせる。
しかし、その期待とは裏腹に美月殿は突然、不可解な一言を言った。
「私も人間ではありませんが、あなた方も人間ではありません―――――。
だって、この惑星は未来人によって作られた偽りの地球なのですから」
次回に続く
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閲覧有難うございます。 今回も伏線回収回です。 SFやミステリーの壮大な謎が解き明かされる時のワクワク感好きで、書きました。 良ければ感想やアドバイス等あれば宜しくお願いします。 |
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