剣帝?夢想 |
「さらばだ、ヨシュア」
「さよなら…レーヴェ」
大切な弟分と本当に最後の別れを告げる。幻影である自分は、すでに肉体のない自分はただ消え去るのみ。空の女神(エイドス)の気まぐれなのかどうかわからないが死んだはずのこの身が再び実体を持ち、一応敵という立場ではあったが弟分と再会し、ちゃんとした別れを告げることができた。それだけで彼は満足し、そして弟分の姿をその意識が消え去るまで見続け、消滅した。
「ねえねえ二人とも早く〜!」
広大な大地の上で一人の少女が背後に向かって声を上げた。後ろからは二人の少女が慌てて走り寄ってきていた。
「お待ちください桃香様!一人で先にいかれては危険です」
黒髪の少女が厳しい顔で桃香と呼んだ少女を諭す。
「そうなのだ、こんな昼間から流星が落ちてくるなんておかしいのだ」
小さな子どもと見間違えるような少女が黒髪の少女に同意する。
「鈴々の言うとおりです。妖の類かもしれないのですから慎重に近づくべきです」
「そうかな〜?関雲長と張翼徳っていう凄い女の子が言うのならそうなのかもしれないけど…みんなで行けば大丈夫だよ!」
桃香と呼ばれた少女は一度首を捻ったあと笑顔で言った。それを聞いた二人の少女は呆れたように、いや、実際呆れているのだが溜め息を吐いた。
「…分かってないのだ」
「全く。…鈴々。先を急ぐぞ」
「了解なのだ」
三人の少女は少しばかりにぎやかにその場を立ち去り先へと進んでいった。
「このあたりだよね、流星が落ちたのって」
「ええ、このあたりのはずなのですが…」
三人は辺りを見回した。しかし辺りには広大な大地が広がるだけで特に目立つようなものはなかった三人はさらに辺りを見回すと鈴々と呼ばれた少女が大きな声を上げた。
「こんなところに人が倒れてるのだ!」
その言葉に少女たちは鈴々の元へと駆け寄った。そこには二十代と思われる銀髪の青年が倒れていた。その傍らには金色の変わった形の剣が落ちている。
「私たちより…ちょっとだけ上ぐらいの人かな愛紗ちゃん?」
「ええ、そのようですが…お下がりください桃香様。まだ彼の正体が何者か分かったわけではありませんから」
「悪い人には見えないけどなぁ」
桃香は首を傾げながらも愛紗の背中に守られる形に落ち着いた。そして三人の見つめる中青年は意識を取り戻した。そして辺りを見回し、自分の体を確認するような動きを見せたかと思うとなにやら驚いたような口調で何事かを呟いた。
「オレは…んだ…ず。…に…生きて…」
何を言っているのか聞き取れはしなかったが桃香は話しかけてみることにした。
「あの…大丈夫ですか?」
「あ、ああ、問題はない…はずだ」
青年は驚きの抜けない顔で頷き、隙のない動きで立ち上がった。そして再度周りを見渡した後、桃香に視線を向けた。桃香はその視線をまともに受け止め、一瞬身震いした。
(澄んだ瞳…なのにとても深い悲しみを感じる)
桃香はなんとなくだがそんなことを感じていた。どうやら愛紗たちも同じような感想を抱いているような気もしていた。
「一つ聞かせてもらいたい。ここはどこだ?リベールでもエレボニアでもないようだが」
「りべえる?えれぼにあ?」
青年は怪訝な顔を浮かべた。少女の言葉と顔からして全く聞いたことはないらしい。ということはぜムリア大陸ではないことは確かなようだ。
「ここは幽州啄郡。五台山の麓だ」
黒髪の少女がここの地名を教えてくれるが青年には全く聞き覚えがなかった。
「ゆうしゅう?聞いたことはないな。それに見慣れない格好もしている」
「お兄ちゃんのほうが見慣れない服装なのだ。それでお兄ちゃんは何者なのだ?」
小さな少女が笑顔で聞いてくる。なんとなくその笑顔に青年も表情を僅かに柔らかくすると口を開いた。
「オレはレオンハルト。親しいものからはレーヴェと呼ばれている。剣帝と呼ぶ人間もいるがな。エレボニア帝国出身の…今は流れ者だ。それで…君たちは?」
本当はとっくの昔に死んでいるはずなのだがな、という言葉は胸のなかでのみ呟いてレーヴェは簡単に自分のことを告げた。やはり不思議そうな顔をしていた少女は表情を柔らかくすると口を開いた。
「私は劉備。字は玄徳!」
「鈴々は張飛なのだ!」
「関雲長とは私のことだ」
やはり聞いたことがない。そもそもそんな響きの名前自体耳にしたことがない。いや、確かヴァルターの昔の知り合いはそんな響きの名前だったような…レーヴェは頭を振った。
「それで聞いていいですか?お兄さんはどうして倒れていたんですか?それとえれ…なんとかっていうのは?」
劉備、という名前らしい少女の問いにレーヴェは答えを一つしか持っていなかった。
「分からない。気が付いたらここにいて君たちがいたというわけだ。」
「ということはこの国のことを何も知らないというわけですか?」
関雲長と名乗った少女の問いにレーヴェは頷いた。自分が<身食らう蛇>にいた時にはこのような国があるという報告は聞いたことはなかった。その答えに劉備はなにかとても喜んで口を開いた。
「やっぱりこの人だよ鈴々ちゃん、愛紗ちゃん!この国のことを知らないし私たちの知らない言葉を知ってるしなにより服が変!」
「な…」
レーヴェは劉備の言葉に愕然とした。別にかっこいいと言われたいわけでは決してないのだが変といわれるとは全く思っていなかった。
「この人きっと天の御使いだよ!この乱世の大陸を平和にするために舞い降りた愛の天使様だよ!」
いきなり劉備はおかしなことを言い始めた。突発的におかしなことをいうことに関しては弟分の恋人である少女と少し似ているかもしれない、レーヴェはなんとなくそう思っていた。
「管輅が言っていた天の御使い。あれはエセ占い師の戯言では?」
関雲長が否定するようなことを言い、張飛もそれに同意した。
「でも管輅ちゃん言ってたよ?空から軌跡を描いて飛来する流星は天の御使いの乗り物だって」
「確かに…。だとすればこのお方が天の御使いということになりますね。確かに英雄たる雰囲気は感じられます」
「ただ立ってるだけなのに全然隙がないのだ」
二人はそういうがレーヴェにも、劉備はともかく二人もそれなりの使い手に見えた。レーヴェには大体の話を掴めてはいたのだがレーヴェを置いて話が進んでいく。
「それで天の御使いはさておき、乱世とはどういうことなんだ?」
「今の世の中のことなのだ。漢王朝が腐敗して弱い人たちからたくさん税金を取って、好き勝手してるのだ!それに盗賊たちも弱い人を苛めてるのだ!」
張飛の言葉に僅かにレーヴェの拳に力が入る。国が起こしたハーメルの悲劇、それにより自分は故郷と最愛の恋人を亡くし、弟分を闇に堕としてしまったのだから。
「それで私たち三人で立ち上がったんだけど…」
「三人だけではどうしようもなくどうしようかと思案していたところ占いを聞きここに来てみれば」
「オレがいたということか」
レーヴェはおおよその事情を察していた。間違いなく彼女たちは自分に天の御使いとなってほしいと言ってくるだろう。レーヴェとしては天の御使いはともかく、国に人が虐げられているのなら見逃す通りはない。だが
「ともかく詳しい話を聞かせてほしい」
「ならばこんなところで立ち話もなんですし近くの街に移動しましょう」
関雲長の言葉に桃香たちは笑顔で頷いた。そして四人はその場を後にして街へと向かった。
あとがき
拙い文章で申し訳ありませんがいかがでしたでしょうか?
レーヴェ自身が本来の口調で喋るということがゲーム内でもあまり多くはなかったためレーヴェの口調には今ひとつ自信がありませんが指摘あればよろしくお願いします。
ちなみに蜀をなぜ選んだかというとそう大した理由はありません。桃香の理想は偽善にも思えますが曹操の覇道のために、というのはレーヴェにはあまりあわないような気がしましたし、呉もなんか違うな、と思ったこと、そして弱小からスタートすることでレーヴェの強さを際立たせることができるかな、と思ったためです。
それではまた次の機会にお会いしましょう。
説明 | ||
はじめましてへたれ雷電です。ただなんとなく書いてみたくなった恋姫と空の軌跡のクロスものです。 主人公は剣帝ことレーヴェです。自分自身文章を書くということが得意ではないので拙いものではありますが楽しんでいただけたら幸いです。 ここをこうしたらいいという意見があればどんどんしてくれたらうれしいです。 |
||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
15713 | 14140 | 27 |
コメント | ||
蒼様>それは自分も思っています(へたれ雷電) 私的にヒロインはクローゼが大好きだなぁ〜(蒼) 黒様>エステルは嫌いではないが少し頭が弱いですね(へたれ雷電) そうですねwwwww個人的にはヨシュア単体で呼ぶことを希望します(明夏羽) 黒様>ですね。しかしヨシュア単体で呼ぶかエステル付属で呼ぶかが悩みどころです。エステルはいらない面倒起こしそうですし(へたれ雷電) エステルなら呉か蜀が王との性格的に合いそうですねww(明夏羽) 黒様>予定としては書くつもりです。エステルと所属はどうしようかと思っていますが(へたれ雷電) レーヴェ版一段落したらヨシュア版書いてほしい・・・・(魏がいいかなぁ・・・(明夏羽) レーヴェ様>アニメの方はほとんど見ていないのでストーリーが…(へたれ雷電) いっそアニメ√でいくとか(レーヴェ) TOX様>レーヴェとヨシュアで迷ったのですが個人的にレーヴェの方が好きなのでレーヴェに。番外編で簡単なヨシュア編でも書いてみようかと思っています。(へたれ雷電) まさかのレーヴェww楽しみです。ヨシュア版も見たかった気が・・・(TOX) |
||
タグ | ||
真・恋姫†無双 空の軌跡 レーヴェ 蜀 | ||
へたれ雷電さんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |