英雄伝説〜灰の騎士の成り上がり〜 |
休養日の夜、夕食をすませたリィンはレンから急用ができた為、自分と共にある場所に向かう必要がある事を伝えられた為、レンと共にヴァリマールの”精霊の道”を使って目的地――――――クロスベル郊外の東クロスベル街道のボート小屋の傍に転移した。
〜東クロスベル街道・ボート小屋〜
「ここがレン皇女殿下の”急用”の”目的地”………――――――!……………それでレン皇女殿下、”急用”とは一体何なのでしょうか?」
「うふふ、すぐにわかるわ。」
ヴァリマールから降りて周囲を見回したリィンはある事に気づくと表情を引き締めたが、すぐに気を取り直してレンに問いかけ、リィンに問いかけられたレンがボート小屋に視線を向けたその時
「瞬間移動までできるとか、何でもアリなんだな、帝国の”巨いなる騎士”とやらは。」
ボート小屋から蒼のメッシュが入った黒髪と深い蒼色の瞳の青年が出てきてリィンとレンと対峙した。
「貴方は一体……?」
「―――――ヴァン・アークライド。裏解決屋(スプリガン)……になったばかりの野郎だ。俺みたいな”小物”がアンタ達みたいな有名人にお近づきになれて光栄だぜ、”灰色の騎士”に”殲滅天使”。」
リィンに訊ねられた青年――――――ヴァンは自己紹介をした後口元に笑みを浮かべて肩をすくめた。
「裏解決屋(スプリガン)……?」
「裏解決屋(スプリガン)は旧共和国――――――カルバード共和国という多様性の坩堝(るつぼ)から生まれた“裏稼業”の事よ。ある時は探偵ディテクティブとして、ある時は交渉人(ネゴシエイター)として、またある時は賞金稼ぎ(バウンティハンター)として”どんな、誰からの依頼でも受けることを流儀としている人達”との事よ。」
ヴァンの口から出た初めて聞く言葉に首を傾げているリィンにレンが説明し
「……話を聞いた感じでは、遊撃士協会(ブレイサーギルド)と似ているようですが………」
「そうね。でもそれは”表向き”の仕事の話の場合。裏解決屋(スプリガン)は”誰からの依頼でも受ける”から、公的機関がギルドに回したくない案件や表沙汰にできない市民の相談事もそうだけど、犯罪者やアンダーグラウンド勢力からの”筋の通った依頼”等といったミステリアスな仕事の話になると、裏解決屋(スプリガン)の出番になるって事よ♪」
「ま、さっきも言ったように俺は裏解決屋(スプリガン)になってそんなに経ってねぇから、”そっち方面の顔見知り”は少ないがな。」
リィンの疑問にレンが答えるとヴァンは肩をすくめて答えた。
「……それでその裏解決屋(スプリガン)が自分達に一体何の目的で接触したんですか?」
「それは勿論俺が”とある人物達からの依頼”を達成する為だよ。」
「……”とある人物達からの依頼”……?無理を承知で訊ねますが、依頼者や依頼内容を教えて頂く事は?」
自分の疑問に対して答えたヴァンの答えを聞いて更なる疑問が出てきたリィンは眉を顰めてヴァンに問いかけた。
「別にいいぜ。俺が”最初に請けた依頼”はアンタ達の協力がないと、達成が厳しい依頼内容だからアンタ達にも最初からこっちの事情を話すつもりだったからな。」
「(最初の依頼……?)――――――それでその依頼内容、依頼した人物達とは一体……?」
ヴァンが答えたある言葉が気になったリィンは眉を顰めたがすぐに気を取り直して続きを促した。
「お前達、”不動”と一緒に帝国の”放蕩皇子”と皇太子率いる”紅き翼”に協力しているエレインって名前の見た目に関しては文句なしの女遊撃士を知っているだろう?」
「へ……?え、ええ。オルディスの時にオリヴァルト殿下達の援軍として乱入してレン皇女殿下達がやり合った話は聞いていますが。」
「…………………………」
ヴァンの問いかけに一瞬呆けたリィンは頷いてレンに視線を向け、視線を向けられたレンは意味ありげな笑みを浮かべて黙り込んでいた。
「実はそのエレインと俺は”幼馴染”なんだが……エレインの両親は元々アイツが遊撃士をやる事に反対していてな。で、エレインはその反対を押し切って遊撃士協会(ブレイサーギルド)の門を叩いて僅かな期間で既に正遊撃士とも遜色ないレベルの遊撃士へと成長したから、両親も渋々認めざるを得なかったんだが………さすがに”戦争”に関わるのは完全に許容範囲外だから、両親が俺にアイツを両親の元に五体無事な状態で連れ戻して欲しいって頼んできたんだよ。」
「なるほど………エレインさんは殿下達――――――”紅き翼”に協力していて、”紅き翼”は過去俺達の軍事作戦に介入してきましたから、エレインさんを連れ戻す為には俺達と共に行動した方がエレインさんと接触したいヴァンさんにとっては都合がいいという事ですね。」
「だけど、幾ら幼馴染だからと言って説得に応じるかしら?あくまでレンの見立てだけど、エレインお姉さんは一度自分で決めた事は絶対に曲げないタイプに見えたけど。」
ヴァンの説明を聞いたリィンが納得した表情で考え込んでいる中、レンはヴァンにある指摘をした。
「ああ、まさにアンタの言う通り、アイツは昔から頭が固くてクソ真面目だから、口で言っても説得に応じるような奴じゃないなのは百も承知だ。だから、アイツを五体無事に連れ戻すには”最終手段”しかねぇだろうな。」
「”最終手段”というのはまさか……」
「クスクス、間違いなく”力づく”でしょうね。――――でも、ヴァンお兄さんにエレインお姉さんを無力化できるかしら?実際、レンもエレインお姉さんと刃を交えからわかるけど、彼女、準遊撃士でありながらも高位の正遊撃士に届くほどの使い手よ。」
ヴァンの話を聞いて察しがついたリィンは複雑そうな表情を浮かべ、レンは小悪魔な笑みを浮かべて答えた後表情を引き締めて指摘した。
「裏解決屋(スプリガン)をやるからには”荒事”が起こる事も当然想定しているから、それなりに鍛えているから心配無用だし、俺がエレインの両親から受けた依頼内容は”エレインを五体無事でエレインの実家に連れ戻す事”だ。だから、俺の役目はアイツを”戦場に介入させなければいいだけだ。”この戦争が終結すれば、アイツも故郷である旧カルバード共和国領に帰るだろうからな。」
「………なるほど。所で今までの話を聞いて新たな疑問が出てきたんですが……ヴァンさんは一体どうやってメンフィル帝国軍の関係者に接触し、俺達をこの場に呼び寄せるような手配をしたんですか?」
ヴァンの説明を聞いて納得したリィンだったがある疑問を抱いていたのでヴァン似問いかけた。
「逆だ。アンタ達のお仲間――――――メンフィル帝国軍に所属している連中から俺に話を持って来たんだよ。」
「メ、メンフィル帝国軍自身がヴァンさんに……!?一体何故……」
ヴァンの答えを聞いたリィンは困惑の表情を浮かべて呟いた。
「クスクス、それに関してはレンのちょっとした”親切心”よ♪」
「へ………それは一体どういう事なんでしょうか?」
小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの答えを聞いたリィンは呆けた声を出した後戸惑いの表情で訊ねた。
「うふふ、ヴァンお兄さんって実は幼馴染のエレインお姉さんに何も告げずに行方をくらましていてね。そんなヴァンお兄さんを心配したエレインお姉さんは遊撃士家業を務めつつヴァンお兄さんを探していたのよ。だから、レンは”ちょっとした親切心”で西ゼムリア大陸の各地に散っているメンフィル帝国軍の諜報部隊を使ってヴァンお兄さんを行方を追って、ヴァンお兄さんの居場所を突き止めた後ヴァンお兄さんもレン達との接触をしようとしている事実も突き止めたから、諜報部隊の一員にヴァンお兄さんに接触してもらってここまで来るように手配してもらったって事よ♪」
「………あの、レン皇女殿下。もしかしてオルディスでの件を結構気にしていらっしゃって、アリサ達――――――いえ、エレインさんに対する”意趣返し”をする為にヴァンさんと俺達を接触するように手配をしたんですか?」
レンの答えを聞いて察しがついたリィンは冷や汗をかいて困った表情を浮かべながらレンに確認した。
「や〜ね、そんな私事(プライベート)の為だけに諜報部隊を動かすみたいな大人げない事をする訳がないでしょう?あくまで今まで灰獅子隊の活動に介入して妨害までしてきた紅き翼に協力している遊撃士の一人であるエレインお姉さんを動揺させられる可能性が高い人物の協力を取り付けて、今後の作戦をスムーズにする為よ♪」
「クク、物は言いようだな。アンタに目をつけられたエレインには同情するぜ。――――――ま、そういう訳で俺とアンタ達の利害は一致していると思うんだが?」
レンの説明を聞いたリィンが冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中口元に笑みを浮かべたヴァンは気を取り直してリィンに問いかけた。
「………そうですね。とはいえ、軍属でもないヴァンさんに俺達のように”戦争”に参加してもらう訳にもいきませんから、灰獅子隊――――――いえ、”メンフィル・クロスベル連合の軍事作戦を妨害する勢力と戦ってくれる協力者”という扱いで灰獅子隊(おれたち)に同行してもらうのがお互いにとっていいのではないでしょうか?」
「そうね。レンもその案で構わないわ。――――――そちらはどうかしら?」
「こちらもその案で構わない。――――――取引成立だ、灰色の騎士。短い間になると思うが、よろしく頼む。」
「ええ、こちらこそ。――――――それで、俺達に関する依頼は後どれ程受けたからは知りませんが、”俺達に関する他の依頼は先程から気配を断ち続けて俺達の様子を伺っている人物が関係しているのでしょうか?”」
ヴァンと握手をしたリィンは表情を引き締めて誰もいないはずの物陰に視線を向けてヴァンに問いかけ
「おいおい、マジかよ………」
「!……なんですって……?レンには他の人の気配なんて感じ取れないけど……」
リィンの問いかけを聞いたヴァンが驚いている中リィンの言葉に驚いたレンは困惑の表情でリィンが視線を向けている方向に視線を向けたその時
「フフ、老師(せんせい)直伝の”観の眼”………その若さで”そこまで到っている”なんて君の元々の才能か、もしくは戦争による成長なのか……そして何よりも私の”この子”をも超えるその尋常ならざる気配を纏ったその得物………実に興味深い。食えない兄弟子たちと違って、なかなか可愛げのある”弟弟子”じゃないか。」
リィン達が視線を向けた方向からあまりにも異質な存在が現れた。東方風と最新技術が混ざり合ったような強化スーツを身に包んだ長い銀髪の娘でああり、年齢はおよそリィンと同じくらいか、それ以下にも見える整った顔立ちにはあどけなさが残るものの、瞳の奥には底知れない冷徹も隠されている。穢れを知らない深窓の令嬢にも、無数の血で手を染めて来た戦士にも見えるその姿は、相反するイメージが同居している危うさも含め、彼女の異質さを際立たせる。そして左手には底冷えするような存在感を放つ漆黒の大太刀が握られている。
「(彼女……この太刀にアイドスが宿っている事にも気づいている……!?しかも俺の事を”弟弟子”と言ったという事はまさか彼女は……!)………レン皇女殿下が彼女の気配を感じ取れなかったのも無理はありません。彼女の実力は恐らく――――――いえ、”間違いなく剣聖の域です”……!」
「……”剣聖”ですって?確かにそれならレンですらも気配を感じ取れなかった事にも納得がいくけど、それよりもお姉さん、リィンお兄さんの事を”弟弟子”と言ったという事はまさかお姉さんは――――――」
娘を警戒した様子で睨むリィンの推測を聞いたレンは信じられない表情で女性を見つめた後ある事を思い出して真剣な表情で娘に問いかけたが
「悪いけど、外野は黙っていて欲しいかな。今私が用があるのは老師(せんせい)最後の弟子にして私にとっては弟弟子にも当たる”灰色の騎士”なのだから。」
「……ッ!」
「―――俺に用があると言っていたが……一体どんな用だ?そして――――――貴女が言う老師(せんせい)とは八葉一刀流の開祖――――――”剣仙”ユン・カーファイ老師の事で、俺の事を”弟弟子”と言ったという事は貴女は”八葉”の者か?」
娘は凄まじい闘気をさらけ出してレンを威圧し、娘に威圧されたレンがリィンが今まで見た事のない姿――――――敵の威圧によって圧されているレンの様子を見たリィンはレンをかばうかのようにレンの前に出て娘に問いかけた。
「ふふ、私が君を呼び出したとはいえ、まずは君の実力を見せてもらうよ――――――私に対する君が知りたい情報を知る事ができるのはその”資格”があるかどうかを”示して”からかな。」
「………ッ!」
しかし娘は既にリィンと対峙して不敵な笑みを浮かべながら戦闘態勢に入り、娘の行動と言葉に息をのんだリィンも戦闘態勢に入り
「八葉一刀流中伝――――――リィン・シュバルツァー……」
「黒~一刀流零の型、奥義皆伝―――――シズナ・レム・ミスルギ………」
「「推して参る!!」」
そしてリィンと娘――――――シズルはそれぞれ名乗り上げた後一騎打ちを開始した――――――!
という訳で予想できていた人達もいるかと思いますが、エレインに続いてヴァンもフライング登場&リィン陣営に加わり、更にまさかのシズナのフライング登場&原作でも実現ほしいであろうリィンとの一騎討ちですwwシズル戦のBGMは創のNO END NO WORLD -Instrumental Ver.-かSword of Swords、もしくは黎の軌跡でのシズナ戦のBGMのどれかだと思ってください♪
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外伝〜灰と白銀の邂逅〜前篇 | ||
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コメント | ||
完全ROM専様 誤字指摘ありがとうございます((sorano) シズ[ル]じゃなくて、シズ[ナ]ですね。正しくは[シズナ・レム・ミスルギ]です。(完全ROM専) |
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