英雄伝説〜灰の騎士の成り上がり〜
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〜クロスベル帝国・帝都クロスベル・特務支援課〜

 

「ごちそうさまでした。――――――凄く美味しかったよ、キーアちゃん。」

「えへへ、どういたしましてー♪」

一方その頃セティ達に装備の点検をしてもらう為に支援課のビルに訪れていた紫髪の娘――――――ロイドの恋人の一人にして東方の伝説の暗殺者――――――銀(イン)であるリーシャ・マオは二人のキーアが作った夕食をロイド達と共にごちそうしてもらい、リーシャの感想にキーアは嬉しそうな表情を浮かべた。

「それにしても未来の方のキーアには驚いたな……旧共和国風の料理まで作れるとは驚いたよ。」

「しかも旧共和国だけじゃなく、エレボニアにリベールを含めたゼムリア大陸の各国の料理までできるとの事だものね。」

「アハハ、シスターじゃなく、料理人の方が向いているかもね。」

「うんうん!キーアちゃんが料理のお店を出したら、あたしなら絶対毎日通いますよ!」

「ふふっ、各国のお料理はイーリュンのシスターとして各国を周って活動していた時にそれぞれの国の人達から教えてもらって覚えただけだから、褒めすぎだよ〜。」

ロイドやエリィ、ノエルとユウナの賞賛に対して未来のキーアは苦笑しながら答えた。

 

「――――――ごめんください。」

「今の声は確か………」

するとその時出入口からリィンの声が聞こえ、声に聞き覚えがあるティオが目を丸くして呟いたその時リィンがビルに入ってきた。

「リィン……!どうして君がここに?」

「”黒の工房”の件の後は確か”黒の工房”の本拠地を潰した時のメンツ――――――”灰獅子隊”とやらを率いてメンフィルのアルセイユで帝国の各地を転戦しているって話じゃなかったか?」

「ああ。実は今日クロスベルに用事があって、クロスベルを訪れていたんだが……ちょっとある出来事があって、仲間の得物が壊れてしまったからその修理をセティ達に頼むためにこうして訊ねさせてもらったんだ。」

仲間達と共にリィンに近づいたロイドは驚きの表情で、ランディは戸惑いの表情で訊ね、二人の疑問にリィンは気まずそうな表情で答えた。

「セティちゃん達に?」

「ええ。実は先程リィンさんから連絡がきていたんです。仲間の得物の緊急修理の為に今夜このビルを訪れてもいいかって。」

「それで修理して欲しいという得物はどんな得物なんでしょうか?」

リィンの話を聞いて首を傾げているエリィの疑問にセティが答え、エリナがリィンに訊ね

「えっと、それなんだが……」

「その件については私の方から説明させてもらうよ。」

エリナの疑問にリィンが答えを濁しているとリィンの背後からシズナが現れてロイド達と対峙した。

 

「貴女は一体……」

「リィンさんと一緒にいてる女の子たちもそうだけど”灰獅子隊”の中にもいなかったよね〜?」

「おおっ!中々のカワイ子ちゃんじゃねぇか。このヤロウ、ただでさえ綺麗所をロイド以上に侍らせている癖に更に増やすとか、お前のリア充度には限度ってものがないのかよ!?」

「いやいやいやいやっ!シズナとは”そういう関係”じゃないし、そもそも俺が女性を連れているだけで、何でそんな風に見るんだよ……」

「それと何気に何で俺を比較対象にするんだ……」

シズナを目にしたティオとシャマーラは不思議そうな表情を浮かべ、シズナの整った容姿に興奮したランディは悔しそうな表情でリィンを睨み、ランディの言葉に対してリィンは必死に否定した後ロイドと共に疲れた表情で溜息を吐いた。

「君達がリィンの話にあった”特務支援課”か………ふふっ、”警察”なのに中々の使い手が揃っているみたいだけど……君が彼らと仲がいいのはかなり意外だったかな――――――今代の銀(イン)。」

「へ…………」

「――――――――――――」

「ええっ!?ど、どうしてリーシャさんの正体を……!?」

ロイド達を見回したシズナは興味ありげな表情を浮かべてリーシャに視線を向けて声をかけ、シズナの言葉にリィンが呆けている中シズナに声をかけられたリーシャは初対面であるシズナが自身が銀である事を確信しているシズナの言葉に信じられない表情を浮かべ、ユウナは驚きの表情で声をあげた。

 

「リーシャちゃんの正体を知っているかつ、メンフィル帝国軍所属のリィンと一緒にいるという事はもしかしてメンフィル帝国の上層部の関係者か?」

「いや………リーシャと俺達が親しい事を不思議に思っているような先程の言動を考えるとそれは違うと思う。あの時――――――ベルガード門でリーシャが正式に俺達の仲間になった所はリウイ陛下達も目にしていたからな。」

「………貴女は何者ですか?」

目を細めてシズナを睨むランディの推測に対してロイドは真剣な表情で否定し、リーシャはシズナを警戒した様子で見つめながら問いかけた。

「――――――シズナ・レム・ミスルギ。”斑鳩”の”副長”を務めさせてもらっているよ。銀の君なら”私達”の噂くらいは知っているよね?」

「!!」

「い、”斑鳩”……?」

「何らかの”組織”でしょうか……?」

「し、しかも”副長”という事はその”斑鳩”という名前の”組織”らしき存在のナンバー2という事にもなりますよね……?」

「あ………」

シズナの名乗りを聞いたリーシャが目を見開いて驚いている中初めて聞く言葉にエリィは困惑し、ティオは真剣な表情でシズナを見つめ、ノエルは不安そうな表情でシズナを見つめながら呟き、未来のキーアは呆けた声を出した。

 

「ふふ、そう警戒しなくても銀もそうだけど君達にも用はないよ。さっきリィンも言ったように用があるのはリィンが手配してくれた私の得物を修理してくれる”匠王”の娘達だよ。」

「えっと、それじゃあシズナさんの得物をあたし達が修理すればいいの〜?」

ロイド達を見回して苦笑したシズナはセティ達に視線を向け、視線を向けられたシャマーラは不思議そうな表情で訊ねた。

「その前に君達の”鍛冶師”としての腕前を知りたいかな。幾ら可愛い弟弟子の紹介とはいえ、私にとっては”命”の次に大切な相棒を預ける事になるんだから、生半可な腕前の鍛冶師に預けるつもりは毛頭ないからね。」

「ええっ!?」

「リィンさんをお、”弟弟子”と呼んだって事はまさか……」

「アリオスさんと同じ”八葉一刀流”の方ですか………」

シズナの答えを聞いてある事に気づいたロイドは驚きの表情を浮かべ、エリィは信じられない表情でシズナを見つめ、ティオは真剣な表情で呟いた。

 

「フフ、なるほど。そういう事ですか。でしたら、私達が鍛えた武器を見て頂いた方がいいでしょうね。」

「そうですね。……ちなみに私達が鍛えた武器ならどんな武器でもいいんですか?」

一方シズナの要求にセティは苦笑しながらある提案をし、セティの提案に頷いたエリナはシズルに訊ねた。

「できれば私の得物に近い武器がいいかな。――――――ちなみにこれが修理して欲しい私の”相棒”だよ。」

エリナの疑問に答えたシズナは折れた漆黒の大太刀をセティ達に見せた。

 

「綺麗な剣ですね………」

「ああ……それに相当な業物(わざもの)だ。それこそ叔父貴やアリオスのオッサンの得物以上の業物だぜ。」

「ええっ!?ア、アリオスさんが使っていた得物よりも……!?そんな凄い武器に一体何があって、真っ二つに折れてしまったんでしょうね……?」

シズナが見せた折れた漆黒の大太刀にノエルは見惚れ、ノエルの言葉に頷いて真剣な表情で答えたランディの評価を聞いたユウナは驚いた後困惑の表情で折れた太刀を見つめた。

「………なるほど、東方の剣の一つ――――――”大太刀”ですか。でしたら、リーシャさんが扱っている得物が近いですね。リーシャさん、得物を少しだけ借りても構いませんか。」

「は、はい。……どうぞ。」

折れた大太刀を見つめて呟いたセティはリーシャからリーシャの得物にしてセティ達が生み出した斬魔刀――――――霊剣『天業雲剣(あまのむらぐものつるぎ)』を借りた。

「こちらが私達姉妹が生み出した斬魔刀――――――霊剣『天業雲剣』です。よければ、手に取って確かめてみてください。」

「なら、遠慮なく確かめさせてもらうかな。ふむ…………………………君は先程”私達姉妹が生み出した”と言っていたが、この得物を生み出したのは君だけじゃなく、他の二人との合作なのかな?」

セティから斬魔刀を受け取ったシズルは少しの間真剣な表情で斬魔刀を手に取って色々と確かめた後セティ達に訊ねた。

「はい、その得物もそうですがロイドさん達や私達自身が扱っている武装も全て私達姉妹が協力して生み出した武装ですよ。」

「どれも様々な魔法効果が付与されているから、この世界にとっては古代遺物(アーティファクト)と同等の武装らしいけどね〜。」

シズナの疑問にエリナとシャマーラはそれぞれ答え

「なるほど……………………ふふっ、正直驚いたよ。その若さで”この子”に勝てる得物を生み出すとはね。――――――貸してくれてありがとう。」

「いえ…………」

二人の説明を聞いて静かな表情で呟いたシズナは感心した様子でセティ達を見つめた後リーシャから借りていた得物を返し、シズナにお礼を言われたリーシャは静かな表情で答えた。

「”合格”。早速で悪いけど、”この子”を蘇らせて欲しいかな。」

「その依頼、引き受けました。シャマーラ、エリナ。工房に行きますよ。」

「はい!」

「は〜い!」

そしてシズナの依頼を引き受けたセティはシャマーラとエリナに声をかけ

「それと私が君達が”この子”を修理している所を見学させてもらってもいいかな。」

「ええ、シズナさんさえよければ構いませんよ。――――――では私達は一旦失礼しますね。」

更にシズルの提案にも頷いたセティはシャマーラ達とシズナと共に地下にある工房へと向かった。

 

「えっと、リィン。彼女――――――シズナさんは一体何者なんだ……?」

「”斑鳩”という名前の組織の”副長”を務めていると言っていたけど……」

「しかもお前の事を”弟弟子”とも呼んだ事を考えると、アリオスのオッサンやエリゼちゃん、それにお前と同じ”八葉”の関係者か?」

仲間達と共にセティ達が地下にある工房へと向かう所を見守ったロイド、エリィ、ランディはそれぞれリィンに訊ねた。

「……シズナについては正直謎だらけで俺も詳しい事は知らないんだが――――――」

そしてリィンはロイド達にシズナとの出会い等についての説明をした。

 

「リィンさんとシズナさんの”師匠”は同一人物であるにも関わらずシズナさんの扱う剣術は”八葉一刀流”ではなく、”黒~一刀流”……」

「そ、それも”皆伝”――――――”剣聖”ですか………」

「シズナさんって見た所ロイド先輩やエリィ先輩、リィンさんと同じくらいの年齢ですよね?その若さでアリオスさんと同じ”剣聖”だなんて、エリゼさん並みに凄い女性ですね……」

リィンの説明を聞いたエリィは呆けた表情で呟き、ノエルは信じられない表情で呟き、ユウナは驚きの表情で呟いた。

「いや――――――実際に剣を合わせてみてわかったけど、シズナの剣士としての腕は俺もそうだがエリゼを遥かに超えている。恐らく彼女の戦闘能力はレーヴェさんクラスで、もしかしたらサンドロット卿にも届くかもしれない。」

「なあっ!?」

「おいおいおい……!あの”剣帝”クラス所か、”鋼の聖女”にも届くとか、マジかよ……!?」

「よくそんな”化物”相手に一騎打ちで戦って、得物を折る事ができましたね……」

真剣な表情で答えたリィンの答えを聞いた仲間達がそれぞれ血相を変えている中ロイドとランディは驚きの表情で声を上げ、ティオは疲れた表情で呟いた。

 

「ハハ、それはアイドスのお陰だよ。」

「え……何でそこでアイドスさんが出てくるんですか?アイドスさんがロイドさん達みたいにリィンさんと”契約”している事は知っていますが……」

苦笑しながら答えたリィンの答えが気になったノエルは不思議そうな表情で訊ねた。

「エステルを知っている君達だったら既に知っているだろうけど、”神”と契約している者達は契約の際にその”神”の力を宿して、自身の意志で解放する事ができるんだ。そして俺はシズナとの一騎打ちの最中に俺自身に宿っているアイドスの力を解放する事で何とか対抗できたんだ。シズナの太刀を折る事ができたのも、”女神”であるアイドス自身が宿っている俺のこの太刀のお陰のようなものさ。」

「………なるほど。エステルさんもサティアさんやフェミリンスさんの力を解放した時はそれこそ”人外じみた力”を見せていましたからね。そこに加えてアイドスさん―――――女神自身が宿る得物が相手ならば、幾らどれ程の業物だろうと相手が悪すぎますね。」

「た、確かに幾らどれ程の名刀であろうとも、神自身が宿った得物とまともにぶつかり合い続けたら折れるでしょうね……」

リィンの説明を聞いたティオは静かな表情で呟き、エリィは苦笑していた。

 

「それよりも、どうしてシズナさんはリーシャさんの正体が”銀”である事を知っていたんでしょう……?シズナさんはリーシャさんでしたら、シズナさんの組織の事を知っているんじゃないかとは言っていましたが………」

「………ええ、実際に相まみえた事はありませんけど、彼女の組織――――――”斑鳩”については話だけだけど聞いた事があります。」

不安そうな表情で疑問を口にしたユウナに視線を向けられたリーシャは静かな表情で答えた。

「旧共和国出身のリーシャが知っているという事は、もしかして黒月のような旧共和国方面の裏の組織か?」

「はい。――――――”斑鳩”。大陸東部の何処かに本拠地を置いている”侍衆”です。ちなみに”侍”とは太刀を得物とする東方風の”騎士”の事で、”侍衆”とはその集まりの事を示します。」

「ほえ〜……それじゃ、リィンやエリゼもその”サムライ”なんだ〜!」

「ハハ、確かに改めて考えてみるとそうなるだろうな。」

ロイドの指摘に頷いた後真剣な表情で答えたリーシャの話を聞いて呆けたキーアは無邪気な笑顔を浮かべてリィンを見つめて指摘し、キーアの指摘にリィンは苦笑しながら同意した。

 

「それでその”斑鳩”なのですが……私が聞いた話によると、彼らは達人(マスター)クラスの侍達を多く抱えている事に加えて、変幻自在の戦闘術・情報収集に長けた“忍び”と呼ばれる隠密部隊を擁しているらしく、”斑鳩”の戦闘力は大陸東部において”最強”と”裏”の勢力からはささやかれているんです。」

「大陸東部における”最強の裏の組織”………」

「確かに達人(マスター)クラスの使い手がゴロゴロいる事に加えてあの”鋼の聖女”にも届くレベルまでいる組織とか、”最強”と呼ばれて当然だろうな。――――――そんで、リーシャちゃんの正体を知っていたのはその”忍び”とかいう連中によるものなんだろうな。リーシャちゃんの話だとそいつらは情報収集に長けているらしいからな。」

説明を続けたリーシャの話を聞いたノエルは呆け、ランディは目を細めて推測した。

「ええ、恐らくは。それにリィンさんの言っていた通り、確かに彼女は相当な使い手です。――――――実際彼女と対峙した私も、湿地帯での時――――――”鋼の聖女”の時のように全く勝ち目が見えませんでしたから。」

「リーシャさんがそこまで言うなんて………」

「ちなみにキーア達は彼女の事については識(し)っているのか?」

「うん。けど、キーアが識っているのはシズナがZ組に協力している人達を纏めて相手した事と、最後までリィン達と一緒に戦った事くらいだよー。」

リーシャの説明を聞いたエリィは不安そうな表情を浮かべ、真剣な表情で訊ねたロイドの疑問にキーアは首を縦に振って答えた。

 

「ええっ!?シズナさんがZ組の人達に協力している人達の相手を……!?」

「…………………………」

「ちなみに未来のキーアの方はシズナさんの事について今のキーアが知っている事以上の何かを知っているんじゃないですか?

キーアの答えを聞いたノエルが驚いている中リィンは静かな表情で目を伏せて黙り込み、ティオは真剣な表情で未来のキーアを見つめて訊ねた。

「んー……”この時代”以外だったらシズナとは会った事はないけど、シズナに関する有名な話は聞いたことがあるよー。」

「それってどんな話なんだ?」

未来のキーアの答えを聞いたロイドは真剣な表情で訊ねた。

 

「えっとねー……ロイド達にとっては未来の事だから詳細は教えられないけど、世界各国の人達が集まる武闘大会にシズナが出て、その大会に参加していたオーレリアと戦って引き分けた事で有名だからキーアも知っていたんだー。」

「ええっ!?あ、あのオ、オーレリア将軍――――――”黄金の羅刹”と戦って引き分けるなんて……」

「しかも”武闘大会”って事を考えると、多分タイマンでの戦闘だろうから、タイマンであの化物と引き分けるとかどんな化物なんだよ、あのお嬢さんは……」

「将来はあのオーレリア将軍と引き分ける程の凄まじい使い手へと成長する事になる事が決まっているシズナさんに”神”の力があったとはいえ、一人で勝利したリィンさんも凄いですけどね……」

「ハハ、さっきも言ったようにアイドスの力で勝てたようなものだから、賞賛されるような勝利じゃないさ。」

未来のキーアの話を聞いたエリィは驚きの声を上げ、ランディとノエルは疲れた表情で呟き、ノエルの指摘にリィンは苦笑しながら答えた。

 

「それにしても、リィンさん達――――――”灰獅子隊”も既に”戦力過剰”と言っていい程戦力が充実しているにも関わらず、Z組の人達対策にそんな化物を協力者として新たに引き入れるとか、元クラスメイト相手に容赦しなさすぎじゃありませんか?」

「いや、さっきも説明したようにシズナの件は別に俺自身の考えによるものではなく、レン皇女殿下の考えによってアリサ達に協力している旧共和国出身の遊撃士対策として、その遊撃士と顔見知りの裏解決屋(スプリガン)を雇う事になった事が切っ掛けなんだが……」

ジト目のティオに見つめられて指摘されたリィンは困った表情を浮かべて答え

「裏解決屋(スプリガン)か……旧共和国に住んでいる親戚の元でお世話になっていた頃にもそんな存在は耳にしたことが無かったな……」

「まあ、裏解決屋(スプリガン)も”猟兵”のように”裏”に属する人達ですから、一般家庭である親戚の方達の元でお世話になっていたロイドさんが知らないのも無理はありませんよ。」

「だけど、その旧共和国の領土がクロスベルの領土となった事で、私達もいずれは何らかの形で彼らと関わる事になるかもしれないわね……」

「そうだな……」

考え込みながら呟いたロイドの言葉にリーシャは静かな表情で指摘し、エリィは複雑そうな表情で推測し、エリィの推測にロイドは複雑そうな表情で同意した。

 

その後リィンとロイド達は互いの近況を報告し合っていると大太刀の修理を終えたセティ達がシズナと共にその場に姿を現した。

 

「―――――お待たせしました。」

「3人とも、お疲れ様。シズナさんの得物の修理は終わったのか?」

セティがロイド達に声をかけると、ロイドはセティ達を労った後訊ねた。

「うん!修理どころか強化もしておいたよー!」

「ええっ!?あんな綺麗に真っ二つに折れていた得物をこんな短時間で直した所か、強化までしたんですか、セティ先輩たちは……!?」

「フフ、シズナさんについでに強化もするかどうかを訊ねた時に『できるのならやってみろ』みたいな言われ方をされましたので、私達も工匠として応える必要があると思って張り切ってしまいました。」

シャマーラの答えを聞いて驚いているユウナの指摘にエリナは苦笑しながら答えた。

 

「ふふっ、冗談抜きで君達姉妹の鍛冶師――――――いや、”工匠”としての腕には脱帽したよ。リィン、彼女達を紹介してくれた事、本当に感謝しているよ。」

「俺は当然の事をしたまでさ。――――――えっと、それで代金についてなんだが―――――」

満足げな笑みを浮かべてセティ達を見つめて呟いたシズナはリィンに視線を向けて感謝の言葉をかけ、シズナに感謝されたリィンが静かな表情で答えた後セティ達に修理代について尋ねようとしたその時

「ああ、代金は私の方で支払うから、君が支払う必要はないよ。」

「へ……だが、得物を折ったのは俺なんだから、俺が修理代を支払うべきじゃ……」

シズナがリィンが代金を支払う必要は無い事を指摘し、シズナの指摘に一瞬呆けたリィンは戸惑いの表情で答えた。

 

「”この子”を折られたのは君のその得物が”この子”を折る程優れている事を見抜けなかった私の未熟さなんだから、気にする必要はないよ。……………この子の修理、そして強化代金はこのくらいでいいかな?」

リィンの答えに対して苦笑しながら答えたシズナは懐から小切手を取り出した後小切手に金額とサインをしてからセティに手渡して訊ねた。

「ええっ!?い、幾ら何でもこの金額は……」

「いいも何も貰い過ぎだよね〜?」

「ええ…………修理と強化だけで、これほどの大金を頂く訳には……」

シズナから手渡された小切手の金額を確認したセティは驚き、シャマーラとエリナは困惑していた。

「ねえねえ、セティ達、どのくらいのお金をシズナから貰ったの〜?」

「キ、キーアちゃん。」

その様子を見守っていたキーアは興味ありげな様子で訊ね、キーアの質問にエリィは冷や汗をかいた。

 

「その……1000万ミラです……」

「い、1000万ミラ……!?」

「1000万ミラもあったら導力車……ううん、家も買えるんじゃないんですか……!?」

「ええ……それも、高級住宅街である西区にある家も買えるレベルだと思うわ。」

「家どころか”赤い星座”や”西風の旅団”のような高位の猟兵団も雇えるし、ツァオやラギール商会の店主ちゃんがリーシャちゃんを雇った金額もそのくらいなんじゃねぇのか?」

「アハハ……詳細な金額は秘密にさせて頂きますけど、”桁が同じ事”は否定できませんね……」

「さ、さすが大陸東部の最強と恐れられている裏の組織の”副長”を務めているだけあって、とてつもない資産家でもあるようですね。」

気まずそうな表情で答えたセティの答えを聞いたロイドとユウナは信じられない表情で声を上げ、エリィは疲れた表情で呟き、ランディの指摘にリーシャは苦笑しながら答え、ノエルは表情を引き攣らせながらシズナを見つめた。

 

「遠慮せず受け取って構わないよ。私にとってはその金額が”この子”の修理と強化に対する”正当な対価”だからね。」

「セティ姉様、どうする〜?」

「ここまで言われると、受け取らない方がむしろ失礼になる気が……」

「……………わかりました。そこまで仰られると受け取らない方が失礼になりますから、ありがたく受け取らせて頂きます。ですがその代わり、アフターサービスとしてその太刀の修理や調整を今後無料にさせて頂く上太刀以外の新武装の作成等も通常より大幅に割引にさせて頂きますので、私達に用があればいつでも私達を訊ねてきてください。」

シズナの話を聞いてそれぞれ迷いの表情を浮かべているシャマーラとエリナに訊ねられたセティは少しの間考え込んだ後シズナから莫大な報酬を受け取る代わりに様々なサービスをすることを決めてそれをシズナに伝えた。

「ふふっ、ありがとう。だったら次に君達を訊ねてくるときはついでに私の部下達も連れてきて君達に紹介させてもらうよ。”客”が増える事は職人である君達にとってもメリットになるだろう?」

「シ、シズナさんの”部下達”という事は……」

「”斑鳩”という組織に所属している”裏”の使い手達がクロスベルを訪れるという事にもなりますよね。」

「ハハ………」

セティの答えに対して微笑みながら答えたシズナの答えを聞いたある事を察したロイド達がそれぞれ冷や汗をかいている中ノエルは表情を引き攣らせながら呟き、ティオはジト目で答え、その様子を見ていたリィンは苦笑していた。

 

そしてリィンとシズナはロイド達に見送られようとしていた。

 

「わざわざこんな夜遅くに訪ねてきてすまない。短い間だけど世話になったよ。」

「ハハ、俺達は別に気にしていないからそんなに気にしないでくれ。」

「”灰獅子隊”としてエレボニアの各地を転戦しているリィンさんとの情報交換は私達にとってもありがたかったから、私達もリィンさんの急な訪問には感謝しているわ。」

「あたしも機会があればまたアル達と話したいですから、次にここを訊ねる時は是非アル達も一緒に連れてきてくださいね!」

リィンの言葉に対してロイドは苦笑しながら、エリィは静かな笑みを浮かべ、ユウナはいつもの元気そうな様子でそれぞれ答えた。

「ああ、そうさせてもらうよ。」

「まあ、次に会える頃には少なくても連合とエレボニアの戦争に決着がついているんじゃねぇのか?エレボニアも連合との戦争で今でも相当追い詰められている状況のようだからな。」

「そうですね………連合がエレボニアの四州の内の三州を既に占領下に置いた上、帝国正規軍の兵器や武器の開発、量産を担っているRF(ラインフォルトグループ)まで掌握したのですから、この戦争に決着がつく時は近いでしょうね。――――――”連合の勝利”と言う形で決着がつく事が。」

「「……………………」」

ランディの推測にリーシャは静かな表情で同意し、二人のキーアはそれぞれ複雑そうな表情で黙り込んでいた。

 

「………………――――――君達の予想通り、”次の戦い”がこの戦争の勝敗を決定付ける大規模な戦いになるだろうな。」

「!!」

「リィンさんのその口ぶりから察するに、もしかして連合とエレボニアによる大規模な戦いが起こる事が近いのかしら……?」

静かな表情で答えたリィンの答えを聞いたロイドは目を見開き、エリィは不安そうな表情で訊ねた。

「ああ。その件については軍事機密の為、詳細な内容は答える事はできないが近日中に発生する事は確かだ。」

「そいつは………」

「そういう言い方をしたという事はリィンさんもその戦いがいつ起こるかも既にご存じなのかもしれませんね……」

「そして連合の上層部の方達しか知らないような情報をリィンさんも知っているという事は、恐らく”灰獅子隊”も何らかの形でその大規模な戦いに参加されるのでしょうね………」

「フフ、なるほどね。つまり今は”嵐の前の静けさ”か。」

リィンの答えを聞いたその場にいる多くの者達が血相を変えている中ランディは目を細め、ノエルは不安そうな表情で呟き、セティは複雑そうな表情でリィンを見つめ、シズナは静かな笑みを浮かべて呟いた。

 

「”次の戦い”が無事連合の勝利という形で終われば、この戦争を本当の意味で終結させる”決戦”の日も近いだろう。そしてその時にはセリカ殿達や”空の女神”達も俺達連合側に加勢する予定の上、君達”特務支援課”もクロスベル帝国政府から”緊急支援要請”が出されると思うから君達も今の内に”決戦”に向けての準備や覚悟をしておいた方がいいと思う。」

「せ、”戦争の決戦”にあたし達”特務支援課”――――――いえ、”警察”までリィンさん達………ううん、連合に協力する要請を出されるって事はもしかして、あたし達も戦争に参加するって事なんでしょうか……?」

「いえ、戦力で考えればその時点でどう考えても連合側が圧倒的に上なのですから、劣勢でもないのに、わざわざ”戦争に関しては素人”のわたし達を戦争に参加させるような事はないかと。」

「そもそも課長達の話では局長――――――ヴァイスハイト陛下は特務支援課を含めた”クロスベル警察”を戦争に参加させるような事はしないと明言されていたとの事ですから、その点に関しては心配する必要はないと思いますよ。」

リィンの説明を聞いて不安そうな表情を浮かべて呟いたユウナの推測にティオとノエルはそれぞれ否定の意見とその理由を口にした。

「それじゃあ何の為にあたし達まで”決戦”に協力させようとするのだろうね〜?」

「……それについては恐らく、”裏の協力者達の制圧”でしょうね。」

「”裏の協力者達”――――――二大猟兵団の関係者達に黒の工房の関係者達の事ね。」

シャマーラの疑問に答えたエリナの答えを聞いたエリィは複雑そうな表情で呟いた。

「………貴重な情報を教えてくれてありがとう。お陰で俺達も”その時”が来ることに備えて万全の準備をしておくことができるよ。お互い無事にこの戦争を乗り越える為にも、君達の武運を祈っているよ。」

「ありがとう。――――――それじゃ俺達はこれで失礼させてもらうよ。行こう、シズナ。」

「了解。」

そしてロイドとの挨拶を交わしたリィンはシズナと共にその場から去って行った。

 

「………ロイドさん。決戦もそうですが、先程のリィンさんの説明にあった連合とエレボニアの大規模な戦いに何らかの形で関わるの事があるのでしたら、私にも声をかけてください。その時は私も皆さんに加勢させて頂きます。」

リィン達が去った後リーシャは真剣な表情でロイドを見つめて加勢を申し出た。

「リーシャさん………」

「……セティちゃん達に装備の点検を頼みに来た時から何となく察してはいましたけど………」

リーシャの申し出を聞いたエリィとノエルはそれぞれ複雑そうな表情でリーシャを見つめ

「………――――――わかった。その時が来れば遠慮なく君の力にも頼らせてもらうよ。……まあ、決戦はともかく、さっきのリィンの話にあった連合とエレボニアの大規模な戦いに”警察”である俺達が関わる事はないと思うけどな、ハハ……」

ロイドは少しの間目を伏せて黙って考え込んだ後目を見開いてリーシャの申し出を受ける事を答えた後苦笑した。

「――――――どうやらそういう訳にもいかなくなったみたいよ。」

するとその時人間の姿に変化したルファディエルがロイド達に近づいてきて声をかけた。

 

「あ、ルファディエルだ。」

「おっかえり〜!」

ルファディエルの帰還に未来のキーアは目を丸くし、キーアは無邪気な笑顔を浮かべてルファディエルに突撃した。

「ええ、ただいま。」

「ルファ姉、今の言葉は一体どういう事なんだ?ラギール商会に寄ってから帰るって言っていたけど………もしかして、チキさんから今回の戦争関連で俺達が関係する情報を教えてもらったのか?」

突撃してきたキーアを受け止めてキーアの頭を優しく撫でているルファディエルにロイドは真剣な表情で訊ねた。

「ええ。とはいっても、どちらかというと特務支援課(あなたたち)というよりも、彼ら――――――Z組が関係する情報なんだけどね。」

「え……あたし達じゃなくて、Z組の人達が関係する情報ですか……?その情報とは一体どんな情報なんですか?」

ルファディエルの答えを聞いて一瞬呆けたユウナは不思議そうな表情で訊ねた。

「それは――――――」

そしてルファディエルはロイド達にある情報を伝え始めた。

 

その後レンとヴァンと合流したリィン達はヴァリマールの精霊の道を使ってレヴォリューションへと帰還した――――――

 

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外伝〜灰と白銀の邂逅〜後篇
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