ある日のおもちゃばこ |
この世界には「しゅんかしゅうとう」というものがない。
ついでに「あさ」「ひる」「よる」もなかった。あさごはんやばんごはんなんて知らない。
スキなときに寝て、スキなときに食べる。それがここでの「ふつう」で「あたりまえ」なんだ。
大自然なんてものも無く、空だって見ることはない。
何故ならば、ここはおもちゃばこの中だからだ。
木々や草原なんてなくても、大きなつみ木があって、パズルのようなたてものがあって、無料であそべるでっかいスロットがあって、おもちゃの線路はどこまでも伸びていっているようで………
イシツなところかもしれないけども、ボクたちヘイホーの大切な「いばしょ」であり、「あそびば」であるのは間違いなかった。
「しょうぐん!しょうぐん、聞きましたよ。クッパさま、ちかぢかスッゴイことをされるとか!しかもしょうぐんにおっきな仕事をまかせられるとか!」
ばたーん!と、効果音も景気よく、ボクは積み木でできたトビラをひらいた。
そのさきには、毛布にくるまったしょうぐんがいた。ボクたちのとりまとめ役で、おもちゃばこのリーダー、そしてわれらがクッパさまの部下!である「しょうぐんヘイホー」さまだ。ボクはヘイホーのなかでも1番おおい赤色だけど、彼はゆいいつの白色ヘイホーなんだ。
しょうぐんはどうやらグッスリねむっていたようだけど、ボクの興奮さめやらぬ声に目をさましたようだった。
むくーっとおきあがり、ボクらと同じマスクの目元をゴジゴジこすっている。
帽子をかぶっていない今、ただの白いヘイホーにしか見えないと思ったのはナイショだ。
「むぅー…?」
「すごいです!あのクッパさまじきじきにご命令していただけるなんて、しょうぐんの力もようやっと認められたんですね、ボクうれしいです!」
「……う、うるさいなぁ……ぼくは今すっごくねむたいんだよん、静かにしてほしいのよん…」
「そんなこと見ればわかります」
「んもーっ…わかってるんなら黙っててほしいんだよん」
ボクのすがすがしい即答っぷりにしょうぐんもいらだちのためか、だんだん眠気がさめてきたようだった。
でもただいまゼッサン大興奮中のボクをしばらくまじまじとみて、これはしばらく黙らないだろうと判断したのか、しょうぐんは「はあぁ〜〜〜っ」とわざとらしい大きなためいきをつく。それから、ちかくに置いてあった帽子をかぶっていた。
キラリッ!とまんなかの金色がうつくしく光るミリタリーハット……これがなきゃ、しょうぐんとしてやっぱりしまらないなぁとボクはあらためて思う。
これでこそボクらのしょうぐんヘイホーだ。
「……さっき言ってたことは合ってるよん。クッパさまはスターのつえをうばいとって、おじゃまむしな星のせいたちはカードにふうじこめちゃって、何人かの部下にくばるって言われたんだよん」
「スターのつえを!?星の国にケンカをうるだなんて、すごーい。さすがはクッパさま!」
おもわずボクは拍手してしまった。クッパさまは今ここにいないけど、仕方がない。
だってスターのつえをうばいとるってことは、みんなのねがいごとをかなえなくするってことだ。そんなすごいパワーを手に入れられたら、ピーチひめもマリオもクッパさまの思うがままになるハズだ。
ボクらがいっしょうけんめい考えるイタズラの、なんばいもなんばいもスケールの大きい、すごーーーいことだ。とにかく、とってもすごいことなんだ。
「ぼくは星のせいさえ見張ってれば、あとはスキ勝手にしていいらしいよん……で、それがどうかし…」
「しょうぐん!いい機会だし、しょうぐんもなんかやりましょうよ!ボクもてつだいますから!」
「はぁ〜〜〜っ?」
しょうぐんのおはなしをきいて、がぜんヤル気のでてきたボクとは対照てきに、しょうぐんはどこまでも冷め気味だ。
もしかしたら、せっかくのリラックスタイムをボクが全力でジャマしちゃったから、ごきげんななめになってしまっているのかもしれない。
マスクで表情はわからないけど、背後からなんかイヤ〜なオーラがでてる。素顔がわからなくたって、あいてがしょうぐんさまだからって、けっきょくはおんなじヘイホーだ。ボクにはわかる。
「あーのーねー。はなし、ちゃんと聴いてた?星のせいさえ見張ってれば……」
「だからこそです、しょうぐん!そこまでやって、あのマリオがだまってると思えません。星のせいをとりもどしに、おもちゃばこまでやって来るかもしれない!」
「う、うぅ〜ん……マリオなんてクッパさまがスターのつえでケチョンケチョンに……でも、ちょっとやそっとのことでやっつけられるヤツじゃないのは、たしかだよん…」
むうう〜〜と、しょうぐんはマスクの上のちょうどアゴ付近に手をそえてかんがえこんでいる。
なんたって相手はあのマリオだ。おもちゃばこ暮らしのながいボクはよくしらないけど、あのクッパさまをなんどもなんどもやっつけている相手だそうだ。
だとしたら、ぜったい油断はできないだろう。
「でしょう。『ねんにはねんを』ですよ、しょうぐん!今のうちに、ボクらヘイホーいっちだんげつして!マリオにタチウチできるよう準備しておきましょう!」
「……みんなスキ勝手なヤツらだよん。そんなカンタンにまとめられるとも……」
「しょうぐんなら大丈夫です。ヘイホーしょうぐんはあなた、しょうぐんヘイホーはあなたなんですから!」
「……よ、よくわかんない励ましだけど、とりあえずはありがとうと言っておくよん」
しょうぐんは後ろあたまをちいさく?いていた。どうやら褒められてテレちゃったようだ。
でもそれはしかたない。なんだかんだいって、ボクらヘイホーはみんなコドモっぽい。褒められるとスナオにテレちゃうのだ。
ボクにも自覚があるし、カメックババさまにも以前「イゲンがない」とダメ出しされたことがあった。しょうぐんは「イゲン?」とクビをかしげ、他のヘイホーたちも意味がわからなかった。……ついでにいうと、ボクもしらない。
「じゃ、さっそく『しさつ』にレッツゴー!」
「おおっ、カッコイイんだよん…しょうぐんっぽいんだよん…!」
こうして、ボクたちはこの世界「おもちゃばこ」のしさつへと向かったのである。
「しさつ」といっても具体的になにをすればいいのか分からなかったので、とりあえずピンク駅てまえにいたヘイホーにハナシをしてみた。
彼は赤色のヘイホー。ボクと同じ色であり、1番オーソドックスなヘイホーである。
「マリオ対策?……ふっふっふ、しょうぐんったら今更だね。もうすでに『ガイテキタイサク』は、ばっちりよん!」
「ほ、ホントかよん!?」
「みんなしょうぐんよりマジメなんですよ」
「ううっ、のんきに眠ってた自分がなさけないよん…!」
ボクの一言がおいうちになったらしく、しょうぐんはさめざめとマスクを両手でおおっていた。
いっぽう相手の赤いヘイホーはいうと、どこからともなく長い2本の棒をとりだしている。
いまだになんか落ち込んでいるしょうぐんはほっといて、ボクは「どういうことなのだろう?」と、頭上にクエスチョンマークをうかべていた。
そうすると、彼は2本の棒のでっぱり(?)に足をかけて、こう断言した。
「じゃじゃーん!みておどろけぇ、この竹馬のたかさを!」
「す、すごい!すごいぞっ!ぼくにはマネできないんだよん…」
「これでマリオをふみつぶしちゃえば、プチッでおわっちゃうぞ!」
すごい。たしかにたかい。ボクらヘイホー2倍のたかさはある。
すごく見下ろされているかんじもするし、いあつ感もじゅうぶんだ。
でもボクは、なんかこうモヤモヤしていた。心にひっかかることがあった。
「………マリオ、ジャンプすうっごくたかいって聞いたことがあるから、逆にふみつけられて落っこちたりしませんかね?」
「あっ」
「あっ」
そしてひろがる無言空間。
「しょうぐん!もっともっとがんばるよん、マリオの届かないたかさの竹馬にのってみせる!」
「お、おおっ!応援するんだよん、がんばれー!」
「……つ、次いきましょうか…」
そういうモンダイなの?とか、けっきょく竹馬なんだ…といろいろ思うところはあったけども、これ以上ゴチャゴチャ言ってもメンドクサイし、なによりせっかくの彼のヤル気をそいでしまうんじゃないかと思って、ボクはとくになにも言わず立ち去った。
しょうぐんは「竹馬であそぶのもたのしそうだよん」とかなんとか独り言を言っている。ボクが言うのもなんだけど、このひとホントーにキンチョーカンが無い。
「しょうぐんしょうぐん!みてみて、トーテムヘイホー!」
つぎはどこに行こうかと、つみ木のカラフルなアーチをくぐったりしていると、とつぜん声をかけられた。
たくさん重なっていた声に背中をふるわせてボクらはおどろき、うしろをふりむく。
「わたしたち、やっと3人まで乗ることができたのー!」
「目標は4人でトーテムだよ!すごいでしょ!」
そこにはアタマの上に1人、また1人と、たてに3人乗っかっている赤いヘイホーがいた。
アタマのうえに乗っかるだなんて、バランスかんかくバツグンだなぁとボクは思う。
しょうぐんは手をパタパタうごかしていた。すごく感心しているみたいだ。
「おおおおっ、たしかにすごいんだよん!4人もヘイホーが重なれば、マリオなんてこわくないよん!」
「たしかにバランスはすごいけど、これもただ単にたかいだけ………いだぁっ!!?」
ボクがれいせいにツッコミを入れようとすると、ゴツンッ!とアタマに強い3回しょうげきがはしった。
いったい何なのかと下を見たら、銀色にひかるなにか3つがコロコロとゆかをころがっていっている。
ボクには、ひどく見おぼえがあった。
「パチンコめいちゅー!」
うれしそうな声をトーテムヘイホーがあげている。
………そう、これはバチンコ玉だ。
パチンコを武器としてつかうヘイホーを、ボクは見たことがある。おもちゃばこに住むヘイホーからしたら、とくにめずらしいものではない。
「1人につき、こうげきりょく1で合計3よ!」
「4人になったら4ダメージのえんきょりこうげきが出来るようになるよ!」
きゃいきゃいとトーテムヘイホーはもりあがっている。
たしかにこれはすごい。ボクのアクロバティックなこうげきでも、こうげきりょくは2しかないのに、それの4倍だなんて。
でもイタイものはイタイ。ボクは頭上をさすった。マスクは無表情をつらぬいているけど、正直なところじつは涙目だ。なんたって3ダメージもくらっちゃったんだから。
そんなボクをよそに、しょうぐんはケラケラと笑っている。
「……たかいだけじゃないってことだよん。身をもって知れてよかったのよん」
「うぅ、しょうぐんまでひどい…」
そのあとも、おもちゃばこの中をいろいろまわって、みんながおもいおもいに強くなっていってるというのはよくわかった。
ダンシングヘイホーはよりいっそうダンスがうまくなって、新曲でのダンスをれんしゅう中らしいし、ファイアヘイホーは火力をちょうせつして美味しい焼きイモがつくれるようになったと喜んでいた。たしかに、ホクホクしていてとってもおいしかったし、しょうぐんもご満悦だった。
ビッグカンテラくんにも会いにいったけど、あかるいところで話したくないといつもに暗い部屋にとじこもってしまった。
「あいつ、ニガテなんだよん。せんしゃの電球さえイヤがるんだよん」と、しょうぐんもグチをいっていた。
すごくたのしい時間は確かにすごせてるんだけど、これって「しさつ」なの?とボクが思い始めているころ………
「しょうぐん、しょうぐん、たいへんたいへん!だーいたーいへーん!!」
おおあわて、かつ涙声で走ってやってきたのは水色のヘイホーだ。両手をくちもとにそえて、わんわんと声をあげている。
ホントにたいへんなのか、彼はものすごい大声をだしていて、ボクもしょうぐんも耳がキーンとしてしまった。つぎのしゅんかん、やっぱりしょうぐんはどなっていた。
「うるっさい!コマクがやぶれるじゃない!そんなに叫ばなくても、きこえてるの!!……で、いったい何があったのよん?」
「うわぁああん、ブラックヘイホーとグルメヘイホーがケンカしちゃったぁ!ボクらもとめようとしたんだけど、みんなブラックヘイホーに負けちゃってぇ!!」
「な、なんだってぇ!?あんのメンドクサイのと、メンドクサイのが……考えただけでアタマが痛くなってくるよん…!」
「しょうぐん!はやく向かいましょう!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
水色のヘイホーのあんないで、ボクらは2人のもとにたどりついた。
たしかに、いた。くろい容姿とそのキッツイこうげきから「しにがみヘイホー」とも呼ばれているブラックヘイホーと、食べ物好きがこうじてボクが見たヘイホーのなかでいっちばーんポッチャリしているグルメヘイホー。
そして2人のケンカを止めようとして、やっつけられたのであろうバルーンヘイホーやコマンドヘイホーたちをかいふくヘイホーがいっしょうけんめい手当していた。
「じごくえず」ってこういうことを言うんじゃないだろうか。ボクはブルルと、さむけがする。
あらためて、ブラックヘイホーは敵にまわしてはいけないというのを実感していた。
「だからぁ〜、ワタチはぁ〜、レモンあめをさっさとわたちてって言ってるのぉ〜♪」
「いやなのねん。これはもともとボクのものなのねん。おいしいお菓子はだれにも渡さないってきめてるのねん」
「えぇえ〜〜?そんなこと言っちゃっていいのぉ〜?ワタチは、つよいんだぞぅ〜?そこのコイツらみたいにしちゃってもいいんだぞぅ〜??」
そんな2人のものすごいシリアスそうに見えたあらそいは、まさかの……
「……えええ…まさかのレモンあめ…ですか……」
レモンあめ1つで、しにがみにニラみつけられるくらいなら、さっさと渡しちゃえばよいのにとボクは言おうとしたが、その前にしょうぐんはボクの肩をぽんぽんとたたいた。
どうやら話があるようで、ボクはしょうぐんの方を見やる。
「しょーもないと思ってナメたらダメなのよん。ブラックヘイホーのレモンあめ、グルメヘイホーのお菓子にたいするパッションはナメるととイタイ目にあっちゃうレベルだし」
「うわぁぁん、さっきよりヒドイことになってるぅ!しょ、しょうぐん、なんとかしてぇ!」
「いわれなくても何とかするよん。……まったく、マリオでもないのにぼくのかわいいヘイホーたちをいたぶってくれちゃって…」
やれやれ、としょうぐんは肩をすくめていた。
さっきよりアタフタして、もうすでに泣いちゃっている水色ヘイホーのアタマをしずかになででから、しょうぐんはブラックヘイホーにあゆみよる。
まっすぐブラックヘイホーをみすえているその凛々しいすがたに、ボクは「コレがカメックババさまのおっしゃってたイゲン?」という気持ちになっていた。
「ブラックヘイホー、レモンあめはあきらめるんだよん」
「ええーっ!?しょうぐんは、ワタチの味方だとおもってたのにぃ!もういいっ、せんしゃごとボッコボコにしてやるんだからぁ!!」
「ひいいぃぃーっ!そ、そんなこわいこと言うなっ!!」
ジョーダンなのかホンキなのかよくわからない……というか多分ホンキだろう。口調だけはかわいらしい女の子のものだけど、コキコキと手を鳴らしているブラックヘイホーにボクらは、おそれおののいた。
しょうぐんもやっぱりすごく怖かったようで、アタマをおさえ全身をふるわせている……けど、少ししたらしきりなおしと言わんばかりにコホンとせきをしてみせた。
「……ザンネンながら、ぼく今レモンあめ持ってないからあげられないよん。でもそのかわり、おたからをあげるんだよん」
「おたからぁ?だいじょーぶぅ??しょうぐんって、ロクなもの持ってなさそうぅ〜…」
「ムッキィー!し、失礼なヤツ!ぼくはなんたってしょうぐんヘイホーだよん、おたからの1つや2つもってるよ〜〜ん!!」
しょうぐんの言葉を鼻であしらうブタックヘイホー。それに手をバタバタさせつつプンスカと怒りながら、しょうぐんはどこからともなく取り出した木製のたからばこを思いっきり投げつける。
渡し方がらんぼう!?とボクも水色ヘイホーも声をあげようとしたけれど、ブラックヘイホーにしたらそれは「こうげき」とすらいえるものでもないようで軽々とうけとめていた。
しょうぐんは、しょうぐんなりにおもいっきり投げたらしいので、ガッカリしている。ふびんだ。
そんなしょうぐんをブラックヘイホーはムシして、さっそくルンルンとはなうたを歌いながら、たからばこを開いていた。
パカっと開いたそれからは、オレンジのさんかくが入っていた。
なんだろうこれ。しょうぐんがおたからっていうんだから、おたからなのだろうか。でもたのしそうなオモチャにも見えないし……ホントにおたからなのかなぁ?
そんな考えのボクをよそに、ブラックヘイホーは1人もりあがっていた。グルメヘイホーはというと、レモンあめをなめている。さっきからしずかだと思ったら…!!
「……これは!?なんとぉ、パワープラスのバッジ〜!!」
「な、なんですかそれ…」
「身につけるだけで、こうげきりょくが1アップする優れものなんだよん。す〜〜〜っごくおしいけど、これくらいあげないとブラックヘイホーはなっとくしてくれないよん」
いつの間にかたちなおっていたしょうぐんが、ボクにせつめいをしてくれた。
たしかに身につけるだけでこうげきりょく1アップなら、すごくいい。
ボクの通常こうげきのいりょくが2になるってことなんだから。なんてった2倍だ!
「んん〜〜っ、たしかにコレはおたからね!ふふふっ、ありがとうしょうぐん。レモンあめないんだったら、ちょうがないもんねぇ。たからばこにしまって、大事に大事にとっておくよ♪」
「………身につけないのかよん?」
「わかってないなぁ。おたからはしまって、自分がまもるものなんだぞ〜っ!」
そう述べるとブラックヘイホーはパワープラスのバッジとやらを再びたからばこにしまって、両手でもってピューーーッと走り出してしまった。はたして、どこにむかったのやら。
ぼそぼそと、しょうぐんがボクにむかってつぶやいてくる。
「………あいつのやりたいことがよく分からないよん」
「まあまあ。ナットクしてくれたんだし、いいじゃありませんか」
「ケンカがおさまって良かったぁ!ありがとう、しょうぐん〜!」
「ふぅー、ボクからもお礼を言うのねん、ありがとうなのねん。ブラックヘイホーが相手じゃあ、さすがのボクもいのちがアブないと思ったのねん」
ようやく涙がとまったらしい水色のヘイホーと、レモンあめをなめ終わったらしいグルメヘイホーがアタマをぺこりと下げてくる。
水色のヘイホーはともかく、グルメヘイホーは脂肪がつっかえてうまく一礼できていなかったけども。
「いいのいいの。もともとよこどりしようとしたのはブラックヘイホーなのよん、だからあいつが悪いのよん」
「でもパワープラスのバッジ、あげるのはちょっと惜しかったんじゃないです?しょうぐん」
「………過ぎたことだよん」
ちょっとの間だまったということは、やっぱり惜しかったみたいだ。レアものみたいだからなぁ、あのバッジ。
でもこれいじょうは何もいわない。せっかく今、しょうぐんがすごくカッコイイんだもの。
終始マイペースだったグルメヘイホーも、さすがにかんどうしているようだ。
「こんどレモンあめをゲットしたら、しょうぐんにあげるのねん」
「あっ、ええと、お菓子づくりならトクイだよ!レモンあめ、今度つくってくるね!」
「やったぁー!」
……と、バンザイして喜んだのもつかの間、しょうぐんはゆっくりと手をおろす。
次にでたことばは、こころなしかひくいひくい声だった。
「……じゃなかった、こわすぎるからブラックヘイホーにあげてほしいのよん」
「つ、つかれたんだよん……でもみんな、自分なりにがんばってることはわかったよん」
「そうですね……ボクも考えすぎなぶぶんがあったかもしれません」
「ホーホホホホッ!気にしないでいいんだよん、だれだって考えすぎちゃうことはあるんだよん。じゃあ、ぼくはまたリラックスタイ……」
ボクをさりげなくフォローしてくれたところで、しょうぐんはまた寝室かわりの部屋に戻ろうとしていた。
いや、そうはさせない!とボクはさきまわりをする。ボクのうごきに、しょうぐんはキョトンとしていた。
「しょうぐん!みんなの意気にまけないよう、ボクらもとっくんしましょう!『ひみつとっくん』なんてカッコイイですよ!まずはかけっこ、なわとび、とびばこ、さかだち……」
「……………」
またまたつくりだされる無言空間。
しょうぐんはきっとボクの言葉にかんどうして、寝るのをおもいとどまってくれたんだろうと、ボクは感慨にふけっていた。
そうしたらしょうぐん、クルリと「まわれうしろ」。それから、急いでピューーッとダッシュをしていってしまった!ボクはいそいで追いかける。
「んもーーーっ、ヤダ〜!カンベンしてぇ〜〜!!」
「あっ、しょうぐんさっそくかけっこですか!?さすがです、ボクも負けないぞぉ!」
「ちっがーーーう!!」
そんなヘイホー2人の声がおもちゃばこじゅうをかけめぐったとかなんとか。
【終】
説明 | ||
マリオストーリー本編前のおもちゃ箱のお話。 作中のヘイホーがしょうぐんを含めてこどもっぽかったので、あえて漢字をすくなめにしてこどもっぽさを演出しました。読みにくかったらすみません。 マリオを題材に小説を書いたのはこれが初めてでした。 |
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