恋姫英雄譚 鎮魂の修羅34の3
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拠点・穏、亞莎、百合

 

 

 

穏「はああああああん、しゅごい、しゅごいでしゅ〜〜〜〜〜♪♪♪/////////」

 

建業のとある執務室で嬌声とも取れる艶のある声が響き渡る

 

語尾もはわわ、あわわ化してしまっている有様である

 

亞莎「これは、想像を超える内容ですね・・・・・」

 

そんな本能を直撃しそうな声が響く中で、冷静に資料に目を通していくキョンシー服に袖を通す片眼鏡の少女

 

百合「それは、そんなに凄い物なのですかぁ〜?」

 

そして、その二人を手伝う三つ編みの物腰柔らかい雰囲気の女性がいた

 

亞莎「はい、これは後々にこの孫呉はおろか、国全体に多大な利益を齎し兼ねないものです」

 

百合「それは凄いですぅ〜♪あの人には感謝しないといけませんねぇ〜♪」

 

亞莎「いいえ、それは早計過ぎます!この方策はあくまで世が太平になっているのが前提であって・・・・・」

 

穏「んふんうううううううううん、もう私は、わらひはあああああ???//////////」

 

亞莎「って、うわわわわわわ、穏様、お気を確かに!!穏様、穏様あああああ!!」

 

穏「はっ!!??・・・・・これは、お見苦しいところを見せてしまい、申し訳ありません〜///////」

 

危うく服を脱ぎそうになり、そそくさと乱れを整えた

 

穏「はぁ〜〜、私としたことが、愛弟子の前で恥ずかしい姿を晒してしまいましたねぇ〜・・・・・」

 

亞莎「いえ、そのお気持ちはわかります、私もこれまでに見たことのない方策の数々に興奮を隠せませんでした」

 

師の痴態に暫く気付けない

 

それほどまでに一刀が持ってきた資料に釘付けになってしまっていた自分を省みるしかなかった

 

百合「そんなにもその本に書かれていることは凄いことなのですかかぁ〜?」

 

穏「それはもう〜♪・・・・・ただし、今すぐには使えないというのが難点ですけどね〜・・・・・」

 

亞莎「はい、漢王朝の腐敗がここまで激しいと、仮にこの政策を実施したところで効果は半分以下となるでしょう・・・・・」

 

穏「効果の大半は、宦官達によって吸い上げられる結果にしかならないでしょうね〜・・・・・」

 

亞莎「その為に、あのお方は漢王朝を復興することに躍起になっているのでしょうね、私達がこの政策を実施し易くなるように・・・・・」

 

穏「涙が出てくるほどありがたい計らいですね〜・・・・・」

 

百合「それなら、この同盟は受け入れるべきなんでしょうねぇ〜♪」

 

亞莎「いいえ、この資料はそのような単純な代物ではありません」

 

穏「はい〜、確かにこの資料に書かれていることは私もつい我を忘れてしまいそうなほど革新的な政策ばっかりなのは否定しません〜、しかし仮に漢王朝を復興出来たとしても実現できるかと言えば、微妙と言わざるを得ません〜・・・・・」

 

百合「それはなぜなのでしょ〜?」

 

穏「それは・・・・・」

 

言葉の続きを紡ごうとした時、突然扉を軽く叩く音がした

 

亞莎「あれ、これって・・・・・」

 

百合「確か、のっく・・・・・とかいう・・・・」

 

穏「来ちゃいましたよ〜!」

 

以前に、一刀のことを梨晏から聞いていたため、天の世界の風習もいくつか聞いていた

 

穏「とりあえず、冷静になってください、亞莎ちゃん、百合さん〜!」

 

亞莎「わわわわ、分かりました!」

 

百合「はぁ〜〜い、今開けますよぉ〜♪」

 

のほほんとした様で対応する百合

 

ある種の場違いとも取られかねない彼女だが、彼女の存在にこの二人はかなり救われている

 

どんな時でも彼女はこの態度を余り崩さない、崩した所を見たことがないのだ

 

ある意味では冷静沈着、度胸が据わっているともいえるのだ

 

一刀「あ、百合さんもいたんだ、こんにちは」

 

百合「はぁ〜〜い、こんにちはぁ〜、一刀君〜♪」

 

穏「あれ〜?百合さんって、この人に真名を預けたんですか〜?」

 

百合「はい〜、一刀君が大殿様と試合をした後、心配になってお部屋にお邪魔したときにぃ〜」

 

亞莎「どういった理由で預けたんですか?」

 

百合「だって、一刀君って凄く優しいんですもん〜♪きっとこの子は、この世界の誰よりも私たち皆のことを考えてくれていますよぉ〜♪」

 

穏「・・・・・・・・・・」

 

亞莎「・・・・・・・・・・」

 

彼女の言葉は、まさに正解といえるのであろう

 

二人も、一刀が持ってきた資料を読んでいるため、一刀がどれだけの思いでこの資料を作成し、同盟締結のために大陸を練り歩いているのかが分かる

 

ある意味、博愛ここに極まれり、である

 

一刀「それはいくら何でも言い過ぎだって・・・・・それで俺が持ってきた資料には目を通してくれたか?」

 

穏「はい〜・・・・・」

 

亞莎「一応は・・・・・」

 

一刀「それじゃあ、陸遜と呂蒙の意見を聞かせてくれるか?」

 

穏「では、僭越ながら〜・・・・・正直、これほどまでに良く出来た資料はこれまで見たことがありません〜」

 

亞莎「はい、とても斬新的で、画期的で、なおかつ端的で分かりやすく、条件さえ整えば実現できそうです」

 

穏「問題はその条件なんですけどね〜・・・・・」

 

一刀「それは、漢王朝に関してのことか・・・・・なら問題ない、俺が空丹様に働きかけ悪政を敷いている宦官達を処罰する、そして・・・・・」

 

穏「ちょっと待って下さい〜!!それって、帝の真名ですか〜!!?」

 

一刀「ああ、黄巾の乱の時に預かったけど・・・・・そんなに驚くことか?」

 

穏「驚きも驚きですよ〜!!」

 

亞莎「はい、帝から真名を預かるなど、全幅の信頼を得ていなければ決してあり得ないことです・・・・・」

 

百合「一刀君って本当に凄い子だったのねぇ〜・・・・・」

 

これには、さすがの百合も表情が崩れ、驚愕の様を見せた

 

一刀「それはそうと、漢王朝は俺が必ず正して見せる、だからこの資料に書かれていることを実践してくれればそれでいいんだ」

 

穏「・・・・・・・・・・」

 

亞莎「・・・・・・・・・・」

 

帝から真名を拝命する

 

それがこの大陸ではどういうことを指すか、それを知っているが故に二人は困惑する

 

ひょっとしたら、このまま何も言わずに一刀の言う通りにしていればこの大陸に安寧が訪れるのではないか

 

そう思ってしまいそうなほど、心の天秤が一刀に傾いてしまいそうになった

 

しかし、問題はここからである

 

亞莎「・・・・・今さっき、宦官を処罰するとおっしゃいましたね、どう処罰するんですか?」

 

一刀「簡単に言うと、まず法の改正を行う、その法にのっとり、汚職に手を染めた宦官達を洗い出し、極刑に処す・・・・・その後、新たな帝側近制度の下に二度と腐敗政治が起きない体制を構築するんだ」

 

亞莎「極刑と言いましたが、それは粛清ではなく・・・・・」

 

一刀「もちろん違う!粛清なんて政変と同じことをしてしまえば、後の世でも同じことが繰り返されるだけになってしまう!法という誰しもが納得する形で成さねば意味がないんだ!」

 

穏「・・・・・はっきり言って、お話になりませんね〜」

 

一刀「な、なにを言っているんだ・・・・・法による裁定ほど公平なものはないだろう」

 

穏「そもそも、その法の改正自体を宦官達が許すはずがありません〜」

 

一刀「それは、空丹様の協力も得て・・・・・」

 

穏「宦官というものを甘く見過ぎです、あの手この手で帝を言い包めるに決まっています〜」

 

一刀「そうさせないために俺が空丹様の補佐に付く、すでに幽州宰相の席を候補に譲り、空丹様の召還に答える準備をしているところだ」

 

百合「まあまあまあまあ、帝直々の呼び出しだなんて、一刀君って本当に凄いわねぇ〜」

 

一刀「だから、これ以上戦争で各地を統合したり、ましてや覇道による天下統一なんて野蛮なことをしなくても済むんだ」

 

穏「ますます持ってお話になりません〜、あなたは今の漢王朝の信用がどれほど落ちているか分かっていませんよ〜」

 

亞莎「はい、仮に御遣い様の思惑通りに宦官の排斥に成功したとしても、その後の結末は目に見えています」

 

一刀「漢王朝の信用は、俺が一生を掛けて回復して見せる、だからこれ以上戦争なんて状況を悪化させるだけの解決法はしないでくれ」

 

穏「理想論ですよー!!!」

 

亞莎「の、穏様・・・・・」

 

百合「・・・・・・・・・・」

 

ここまで声を荒げる穏を二人は初めて見た

 

普段おっとりしているのが常の穏が語尾を緩やかにしていないだけでも、驚愕ものだった

 

穏「あなたは、相当に戦争を毛嫌いしている様ですけど、戦争というのは人の世の発展には必要不可欠なものなんです」

 

一刀「ひ、必要不可欠だって・・・・・」

 

ここでも決して許すことのできない言動が飛び出てきて、一刀は目の端を釣り上げた

 

一刀「どうしてそんな野蛮な考え方しかできないんだ!それが状況の悪化しか齎さないと何故分からないんだ!?」

 

穏「状況の悪化ですって!?違います、戦争は人にとって何物にも代えがたい財産です!」

 

確かに戦争ほどの経済や科学の発展に貢献するものはないであろう

 

戦争は発明の母とも呼ばれる所以である

 

しかし、戦争は劇薬である

 

これほどなく人類の発展に貢献するものであったとしても、それで後の世に病的なまでの禍根や怨嗟を残しては意味がない

 

想像してみてほしい、仮に自分が病気に掛かり、医師から処方箋を受け取りそれを飲み当初の病気は治った

 

しかしその後、その服用した薬により激しい副作用や後遺症が出てきたらどうする?

 

そのことを処方箋を渡した医師に伝えても、「病気は治ったんだから文句を言うな!」と言われるのと同じことである

 

納得ができるか?

 

戦争はその最たるものなのだ

 

まさに政治が生み出す科学実験場、公的な人体実験の宝庫、それが戦争の正体である

 

ここでこの怨嗟を断ち切らねば、後の世で一刀の祖国である日本が西欧列強の争いに巻き込まれてしまうし、あの忌々しい世界大戦が起きてしまうのだ

 

これらの争いは、人類史上一番ともいえる汚点である

 

だから現代の日本では戦争は決して行ってはならない非道の行為と認識され、二度と引き起こされないよう教育の現場でも子供達にそれを常日頃教えているのだ

 

違うか?

 

一刀は、それを何としてでも防ぎたいのだ

 

日本だけではない、世界中のありとあらゆる大戦に発展しかねない残虐な行いもである

 

あの第一次、第二次大戦が起きた責任がドイツ一国、ましてやヒトラー一人の責任として片付けられるというなら、それは大きな間違いである

 

そこに至るまでに起きた小さな争いが一つ一つ積み重なった結果が、あの大惨事なのだから

 

もちろん、人は幸せを求める生き物である

 

幸せを求める余り、残虐な行いに手を染めてしまうこともある

 

しかし、それにより結果的に自分の幸せをもぶち壊してしまっていては元も子もない

 

皮肉なことに、幸せを求める行為そのものが無益な争いを引き起こし、幸せを遠ざけてしまうという悪循環に陥ってしまうのだ

 

そうならない為には、飢えに苦しむような状況を作り出さないのが必須条件である

 

一番理想的なのは、かつての縄文時代であろう

 

自然と共に生き、自然との調和を完璧に成した縄文人の暮らしは、環境破壊を決して起こさない好循環を作り出していた

 

事実彼らの暮らしは、一万年以上も続く人類史上最長ともいえる文明を築いている

 

今の日本は邪馬台国のはずであるから、彼らは既に・・・・・

 

そんな彼らを滅ぼした自分たち日本人の先祖である弥生人は、余りに愚かなことをしたといえよう

 

彼らこそが、人類の模範となるべき、人としてのあるべき姿を体現していたのだから

 

しかし、一刀とて人類の発展を望んでいないわけではないのだ

 

ただし一刀が目指すのはあくまで、痛みを伴わない発展である

 

自分が知っている歴史とは圧倒的に遅い発展となるであろうが、それでも人類は戦争無しで自分の知っているあの現代へと必ず辿り着ける

 

現代でそれが出来ているのだから、たとえ二千年前の時代だろうと可能なはずである

 

現代だろうと二千年前だろうと同じ人間なのだから、決して無理難題では無いはずなのだ

 

一刀「財産なんてとんでもない!負の遺産が財産なんて考えているから、いつまでたっても同じことが繰り返されてしまうんだ!陸遜だってそうだろう、これまで戦争を続けて、それが途絶えたことがただの一度でもあったのか!?」

 

穏「そ、それは・・・・・」

 

一刀「呂蒙もそうだ、陸遜達が現在この揚州を平定する過程で状況は良くなっていると思うのか!?」

 

亞莎「・・・・・・・・・・」

 

事実そうである、この揚州を平定する過程で今に至るまで気の休まる時はこの建業に帰還している時くらいである

 

孫呉に敵対する勢力を殲滅し領土を広げたかに見えて、それが元で逆に敵に回す人間、豪族が増えているのではと錯覚しそうになる時もある

 

いつ終わるとも知れない揚州平定に、一体自分達はなんの為に戦っているのか、と思う時もざらにある

 

それでもこれまでやってこれたのは、孫呉の為、いつかきっと訪れる太平の世の為と自分を必死に鼓舞してきたからと言っていい

 

穏「分かっていますとも・・・・・ええ分かっています、私達がどれだけ愚かで愚鈍で滑稽な事しかしていないか・・・・・」

 

一刀「そこまで分かっているなら「もう何も言わないでください!!」・・・・・」

 

穏「これ以上私達を哀れまないでください!!どうしてそこまで上から目線でものが言えるんですか!!?」

 

一刀「上から目線だって!!?どの口が言っているんだ!!?責任転嫁をして被害者面を決め込む決まり文句じゃないか!!」

 

百合「穏さん、一刀君!もうそこまでにしてください!」

 

亞莎「そそそそうです!こここんな議論無意味です!」

 

一刀「・・・・・そうだな、すまなかった」

 

穏「お見苦しいところを見せてしまいすみませんでした〜・・・・・」

 

子供の喧嘩一歩手前にまで行ってしまったことを自覚し、二人とも深く息を付き自分を省みた

 

穏「ですか、これ以上の言葉は無意味です、お引き取り下さい〜・・・・・」

 

一刀「・・・・・そうか、残念だよ」

 

そして踵を返し、一刀は部屋のドアへと向かう

 

亞莎「お待ちください、御遣い様!」

 

一刀「・・・・・なんだ、呂蒙」

 

亞莎「御遣い様は、どうしてそこまで戦を卑下なさるんですか!?」

 

一刀「決まっている、そんなものは何の解決にもならないからだ」

 

亞莎「しかし、私達が何をしようと、何もしなかろうと、敵は現れます!敵は倒さねばなりません!そうでなければ、私達は安心して暮らせないのです!」

 

一刀「それで、その後はどうする?」

 

亞莎「その後って・・・・・」

 

一刀「敵を倒した後だ」

 

亞莎「それは、今言ったように、平穏な日々が訪れて・・・・・」

 

一刀「それが誤りだ、仮に平穏な日々が訪れても、決して長続きなんてしない、呂蒙の言う倒した敵が自分の家族、友達、肉親を持っていないとでも思ったのか?」

 

亞莎「・・・・・・・・・・」

 

一刀「そんな人達も呂蒙は敵として認識し、また倒すとでも言うんだろう・・・・・一体いつになったら終わるんだ・・・・・」

 

この時代では、始皇帝がいい例であろう

 

大陸に覇を唱え、敵を屠り、安寧を築こうとした秦王朝は周囲の反発を買い僅か二代で終わった

 

おそらく彼女達は、その次の王朝、劉邦が作った漢帝国のような長寿の王朝を目指そうとしているのだろう

 

しかし、その漢帝国も一度新に滅ぼされかけ、今こうして滅亡の瀬戸際に立っているのだ

 

とても参考にはならない

 

一刀「だから俺は、戦争のない世の中、誰しもが優しく、他人を敬い、慈しむことが出来る、そんな世界を目指しているんだ」

 

百合「それは、本気で言っているの、一刀君・・・・・」

 

一刀「俺はいつだって本気だよ、じゃないとこの口から出た言葉は、誰にも本気と思ってもらえない、この胸の中にある思いも、誰にも届かないんだから」

 

穏「・・・・・・・・・・」

 

亞莎「・・・・・・・・・・」

 

百合「・・・・・・・・・・」

 

まさに覚悟が溢れ出る言葉である

 

もはや止めるのも無粋な気持ちが心を支配し、三人は一刀の退出を黙って見送るしかなかった

 

百合「・・・・・本当に凄い子ねぇ〜、一刀君ってぇ〜」

 

亞莎「はい、まるで漢帝国始祖、劉邦のようです」

 

穏「亞莎ちゃん、百合さん、あの人の言葉を鵜呑みにしてはいけませんよ〜・・・・・」

 

亞莎「でも、あそこまでの気概を見せられては、何も言えません」

 

百合「はい〜、いっそのことこのまま一刀君に協力して新しい形の太平の世を作るのもいいのではありませんかぁ〜?私も一刀君が心配でなりませんしぃ〜」

 

穏「この際、亞莎ちゃんと百合さんには言っておきます・・・・・私は、戦争が嫌いです、大っ嫌いです!」

 

亞莎「・・・・・・・・・・」

 

百合「・・・・・・・・・・」

 

はっきり、きっぱりと言い放つ穏に二人は戸惑うと共に唖然とした

 

穏「あの人の言う通りです、戦争なんて非生産的なだけの行為であって憎むべきものであり、殺すのも殺されるのも大嫌いです・・・・・本当なら亞莎ちゃんや百合さんにだってそんな厄介な業を背負わず、穏やかに普通の暮らしをしてほしいと、心の内では思ってます」

 

亞莎「穏様、私は別に・・・・・」

 

百合「はい、私たちのことは気にせず・・・・・」

 

穏「分かってます、お二人の気持ちも、気遣いも・・・・・だからこそ私は心苦しいんです・・・・・」

 

亞莎「・・・・・・・・・・」

 

百合「・・・・・・・・・・」

 

穏「私はこの孫呉に仕えだした当初、きっと戦争のない世界を作れると思って勇んで仕官しました・・・・・でも、仕官しても現実は変わりませんでした、それどころか現実を知れば知るほど自分の考えがどれだけ浅はかだったかを思い知らされる毎日の繰り返しでした・・・・・」

 

亞莎「・・・・・・・・・・」

 

百合「・・・・・・・・・・」

 

穏「正直、私はあの人が眩し過ぎます・・・・・どれだけの権力を得ようと、どれだけの地位を獲得しようと、決して初心を忘れないあの人が・・・・・羨ましくてなりません・・・・・」

 

亞莎「・・・・・なんとか、御遣い様をお止めする事は出来ないのでしょうか」

 

穏「無駄な事でしょう、戦狂いも愚かですが、あれは真逆の意味で愚か者です・・・・・」

 

百合「私は、これから一刀君になんて言葉をかければいいのでしょう・・・・・」

 

結局のところ、人間は自分が一番いいと思うことをやるしかないのだ

 

たとえそれが他人からどう映っていようと

 

そして一度決めたら、状況がどうなろうと信じるしかないのだ

 

愚かという意味では、自分達も一刀と同類なのであろう

 

それは分かっている、嫌というほど、痛いほどよく分かっている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拠点・思春、明命、鴎

 

 

 

一刀「断る」

 

明命「はうあ!!?」

 

思春「ちょっと待て、早すぎるだろう!!」

 

鴎「私達まだ何も言ってない気がするんだけど!!?」

 

客間に押し掛けてきた褌三人組をいきなり拒絶する

 

どうやら勇んで来たようで、振り上げた拳のやり場に困っているようだ

 

一刀「言っただろうが、決闘方式で一人ずつ試合をしてくれとか」

 

思春「あの日お前に負けた時から、私達はずっと鍛錬を続けてきたのだ!」

 

鴎「私達が内心どれだけ悔しかったか分かる!?受けてくれないと今までの努力が水の泡よ!」

 

明命「そうです!一刀様は大殿様と、それに雪蓮様とも試合をしたと聞いています!」

 

一刀「そんなものそっちの勝手な都合だろうが、それに炎蓮さんは無理やりで、孫策は試合じゃなくて稽古だったんだ」

 

やはりこうなってしまった、一度許すと次から次へと申し込みが殺到してしまう

 

いきなり客間に押し掛けてきたと思ったら、速攻で勝負を申し込まれ、溜め息しか出ない

 

同じ轍を踏まない為にも、今度こそ試合だろうが稽古だろうが断らねばならない

 

そもそも決闘方式という時点で一から百までNGである

 

当然の如く、彼女達は訓練用の武器じゃ決闘方式にならないなどと言って真剣を用いて挑んでくるだろう

 

悪しき習慣を、平和を作ろうとしている自分が行っていては、それこそ後の世に悪い影響しか与えない

 

古来決闘は、神聖な行事として各国で重宝されてきた節があるが、一刀からしてみれば、どんな妄想だと呆れ果てる思考回路である

 

過去には過去の習慣があるから仕方ないとでもいうのか?

 

ならばなぜ現代の法では決闘なる行いは禁止とされ、銃刀法なる武器の所持を禁ずる法が定められているのか?

 

神聖なものなら禁止にする方がおかしいであろう

 

やればいいだろうに、神聖なものなら、あちこちで決闘をすれば世界は神聖なもので一杯となる

 

銃刀法も廃止にし、みんなが武器を所持すれば、神聖なものの発生確率が飛躍的に上がる

 

なのに、なぜ禁止にされているのか、答えは明白、決闘など神聖でも何でもない何の解決法でもないからである

 

むしろ問題はややこしくなるだけである

 

決闘によって殺された者の肉親は、殺した者、そしてその親族を必ず恨むからだ

 

人間の感情はそんな単純なものではない

 

神聖なものだの勝敗は兵家の常などといった理屈を用いたところで、そんな理屈など関係なく親族同士の間柄に致命的な亀裂を生じさせるのだ

 

そしてその亀裂は、二度と修復されることはない

 

日本の戦国時代などその典型である

 

戦乱の世が終わり、徳川家康によって天下が統一されたように見える

 

しかし、その禍根は明治の時代にまで残る

 

薩摩や長州といった、かつて家康によって迫害を受けた人達の怨念が明治維新という名の報復によって爆発するのだ

 

まさに世代を何代も越えた敵討ちである、その禍根を残した本人達はもうこの世にはいないというのに

 

やはり下法な手段による物事の解決など、永遠に癒えない傷跡しか残さないのだ

 

昔は昔、今は今、などという言い訳で済まされる問題ではない

 

一刀「とにかく、そんな粗暴な事には付き合えない」

 

思春「なんという頭の固い奴だ!」

 

鴎「そうよそうよ、その年でそんなに頑固だと、すぐに剥げるわよ!」

 

一刀「なんとでも言え」

 

どんな憎まれ口も今の一刀の頭の中はスルーするだけである

 

これで、雪蓮の時のような轍を踏まずに済む

 

そう思って机の上に用意していたティーセットでお茶を入れようとした

 

その矢先

 

明命「・・・・・では、一刀様の言う粗暴なことでなければいいのですよね?」

 

一刀「なんだって?」

 

明命「粗暴でなかったり、野蛮でないことであれば、お付き合いくださるのですよね?」

 

思春「いったい何を考えているんだ、明命」

 

鴎「ええ・・・・・あ、もしかして!」

 

明命「ふふ〜〜ん、そのもしかしてです♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鴎「やっぱり、これだったのね♪」

 

思春「なるほど、確かに野蛮なものではないな♪」

 

明命「そうでしょう、これなら一刀様も納得していただけるはずです♪」

 

一刀「話が見えてこないぞ、こんな森に連れてきていったい何をしようって言うんだ?」

 

不敵な笑みのままの明命に案内されたのは、割と大きな森の前だった

 

まさかガチのサバイバルゲームでもやるつもりか、と内心身構えてしまう

 

明命「ここは、私達が普段訓練に使っている森です」

 

思春「森に隠れている細作を見つけ出すことを想定した訓練だ」

 

鴎「その逆もあるわ、この森に隠れて入ってきた敵兵に不意打ちする、細作自身の訓練とかね」

 

一刀「つまり、この森に隠れた人間を見つけ出す勝負ということか」

 

鴎「ご名答♪」

 

思春「その通り♪」

 

明命「これなら、受けてくださいますよね♪」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

細作、それはこの時代では日本でいうところの忍者

 

他国の諜報活動やら破壊工作やらを目的とした生業である

 

正直これも気が引ける、なにせ忍者と言えば暗殺を最も得意とする一刀が毛嫌いする生き物その一でもあるのだから

 

実際この訓練を積んでいたからこそ、彼女達は幽州の城への侵入を難無くこなし、自分を攫いに来たのだから

 

今後こういった訓練などもしなくて済む体制作りをしなくてはならないと、気苦労がまた増える

 

しかし、それらを抜きにして考えれば、これはかくれんぼや鬼ごっこの上位互換といったところだ

 

一刀「・・・・・分かった、それなら受けてやる」

 

鴎「あら〜一刀ったら、そんな軽い返事をしていいのかしら〜♪」

 

一刀「別に軽い気持ちで受けたつもりもないんだけどな」

 

思春「そんな余裕を張っていられるのも今のうちだ♪」

 

明命「はい、負けたら一刀様には罰を受けてもらいます♪」

 

一刀「は?罰だって」

 

鴎「明命の罰は恐ろしいわよ〜、なにせ墨で顔に落書きされるんだから♪」

 

思春「しかもその墨は特別製でな、一度塗ると三日は消えん♪」

 

鴎「想像してみなさいよ、落書きされた顔のまま城に帰るのを♪」

 

一刀「・・・・・確かに、これは恐ろしいな」

 

簡単に想像が付く、落書きされた顔を町の人々に見られ笑いものになる様を

 

はっきり言ってこれは屈辱である、下手をすれば末代までの物笑いのネタにされかねない

 

思春「後悔してももう遅いぞ、一度受けた以上は付き合ってもらうからな♪」

 

鴎「一刀が笑いものになる様が目に浮かぶわ♪」

 

明命「はい、幽州での借り、しっかり返させていただきます、覚悟してください〜♪」

 

一刀「それはいいんだが、俺が勝った場合は、お前達はどんな罰を受けるんだ?」

 

鴎「は?」

 

明命「え?」

 

思春「なに?」

 

この言葉に三人はキョトンとした顔を見せる

 

一刀「当然だろう、一方的な罰の押し付けなら、それこそ受けるわけにはいかないぞ」

 

鴎「え、え〜〜と・・・・・」

 

思春「・・・・・・・・・・」

 

明命「う〜〜〜ん・・・・・」

 

どうやら自分達が負けることを全く想定していなかったようだ

 

呆れてものも言えないが、このままでは話が全く進まない

 

一刀「・・・・・それじゃあ俺が勝ったら、一人一回づつ何でも言うことを聞く、でどうだ?」

 

思春「なに!!?まさか貴様!!?////////」

 

鴎「私達に、とんでもなくいやらしいことを!!?////////」

 

明命「あうあう、あうぅぅぅぅ/////////」

 

一刀「お前らは俺を何だと思ってるんだ・・・・・まさか自分達で勝負を吹っかけておいて逃げ出すのか?」

 

鴎「っ!・・・・・上等よ」

 

思春「後悔させてやるぞ」

 

明命「はい、幽州での雪辱戦です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・そろそろか」

 

森の中に三人が散って三分経って一刀は動き出す

 

軽くルール説明をすると、今回の勝負は一刀が森に隠れた鴎、思春、明命を一時間以内に一人で見つけ捕まえるものだ

 

唯一、一刀が出した条件に武器の使用禁止があった

 

細作三人は、持っている武器を全て決めた場所に隠し、公平を期すために一刀も兼元を同じ場所に置き、今現在四者は衣服以外は身に着けていない状態である

 

しかし、これは装備的な条件が同じとなっただけで、状況的に見れば、一刀が一方的に不利なルールである

 

なにせ今回は、相手を倒すことが目的の勝負ではないのだから

 

普段訓練に使っているだけあって地の利は向こうにあるし、細作だけあって気配を消す術を彼女達は心得ている

 

一刀「(・・・・・言うだけあって、気配を隠すのが上手いな)」

 

森に入り辺りの気配を探るが、動物の気配がするくらいで人の気配は少しも感じられない

 

完全に森と一体となっているようで、普通に探したのではまず見つからないであろう

 

明命「(一刀様が、森に入りました)」

 

鴎「(さ〜て、お手並み拝見よ)」

 

思春「(私たちを相手に、どう出る)」

 

三方向に散らばった三人は、木の上、岩の影、草叢から一刀を覗き見る

 

かなり距離が離れていて生い茂る木々が対象の姿を隠してしまうが、彼女達の目は相当に良いため、たとえ森林の中であろうと少しの隙間さえあれば対象を見失うことはない

 

鴎「(一刀には悪いけど、今回の勝負はもらったわ♪)」

 

思春「(いくら北郷といえど、私達を見つけることは容易ではあるまい♪)」

 

明命「(相手は一刀様、油断は禁物です、しかし・・・・・この勝負だけは負ける気がしません♪)」

 

内心余裕を見せる三人だった

 

それもそのはずである、この訓練は本来、細作一人が十人以上の部隊を相手に行うものなのだから

 

なにせ広大な森の中に隠れた人間一人を見つけ出す以上、人手という頭数が確実に必要なのだ

 

実際彼女達は、この手の訓練で負けたことは未だかつて無い

 

相手がたとえ、祭や粋怜といった孫呉が誇る大ベテランの将達が何時間も掛け部隊を率いても、彼女達を見つけ出し捕まえるのは至難の業なのだ

 

しかし今回は真逆、一刀は頼る相手が誰一人いない状態で三人の最上級ともいえる細作を見つけ出し、捕えねばならないのだ

 

一刀「(ベトナム戦争も、こんな環境だったんだろうな)」

 

いつ奇襲を受け、一瞬後には自分の命が尽きているとも知れない、そんな極限を通り越した状況

 

あんな悲惨を通り越した悲劇が未来に起こることがないことを願いつつ、一刀は目を瞑り集中する

 

鴎「(っ!・・・・・氣!)」

 

思春「(いったい何をするつもりだ!?)」

 

明命「(はうあ!?なんだか拙そうです!)」

 

視界に入る男の全身から湧き上がる波動に三人の細作は警戒を跳ね上げ、より気配を隠すことに集中する

 

そして、ゆっくりとその場で360度くるりと体を回したかと思うと、目を開けた

 

一刀「っ!」

 

明命「え!?」

 

何の迷いもなく、一刀は明命が隠れる岩場へと飛んで行った

 

縮地で一気に距離を詰め、岩を飛び越し岩陰に隠れる明命を捉えた

 

一刀「そこだ!!」

 

明命「な!!?」

 

そして、何も抵抗することもできず、明命は一刀に肩を掴まれ地面に押し倒された

 

一刀「これで明命は脱落だ」

 

明命「そ、そんな!!?どうして私の場所が分かったんですか!!?」

 

一刀「それは秘密だ、自分で考えてみろ・・・・・っ!」

 

そして、捕えた明命をその場に残し一刀は駆け出した

 

明命「思春さん、鴎さん!!!一刀様がそっちに行きました!!!」

 

思春「(なに、明命の奴、捕まったのか!!?)」

 

鴎「(うそでしょ!!?あの明命がこんなにもあっさりと!!?)」

 

残った二人も状況が呑み込めず、軽い混乱状態に陥った

 

一刀「そこだ思春!!」

 

思春「くっ!!」

 

こうまで迷いなく来られては、こちらの場所は完全にばれていると考えた方がいい

 

草叢から飛び出し、逃走を図るが

 

一刀「遅い!!」

 

思春「うあ!!がっ!!」

 

判断が一瞬遅く腕を掴まれ背中に捻り込まれ、思春は草叢にうつ伏せに倒れ込んだ

 

思春「う、ぐ・・・・・どうして・・・・・」

 

一刀「どうして分かったのか・・・・・明命にも言ったけど、自分で想像してみろ・・・・・後は鴎だけだな」

 

思春「っ!!逃げろ鴎!!!こいつは私達の居所を分かっている!!!」

 

大声で鴎に警告を発するが、それよりも早く一刀は動いていた

 

鴎「うそ!!?本当に来た!!」

 

生い茂る木々の間を縮地ですり抜けるように、しかし確実に最短ルートで自分に直進してくる一刀に鴎は戦慄する

 

鴎「くっ!!逃げるしかないわね!!」

 

隠れていた木の上から他の木に飛び移ることを繰り返し、鴎は一刀から逃げる

 

木の上を逃げ回っていれば、地面を移動する一刀は絶対に自分を捕まえることはできないと安心していた

 

しかし

 

鴎「う、うそでしょ!!?」

 

後ろを振り向くと、一刀も自分と同じように木々に飛び移り見る間に迫ってきていた

 

周知のとおり、北郷流には忍術の概念がふんだんに盛り込まれている

 

寧ろこっちが細作の上位互換と言えよう、相手が悪い

 

一刀「そこまでだ!!」

 

鴎「もう、なんでそんなに何でも出来るのーーーー!!!??」

 

いくら何でも万能が過ぎるだろうと、心の内で反則だと叫んでいた鴎

 

その焦りが、前と同じ悲劇を生む

 

鴎「わあっ!!」

 

一刀「おいっ!!?」

 

次の木に飛び移った鴎が足を滑らせる

 

いきなり相手が失速したため、一刀は鴎の背中に激突し二人は揉みくちゃになりながら木から落下した

 

明命「お二人とも、大丈夫ですか!!?」

 

思春「無事か!!?鴎、北郷!!?」

 

そして、その場に明命と思春が駆けつける

 

一刀「くぅ〜〜〜〜、無事だ・・・・・」

 

運良く、落ちたのは草叢で衝撃を吸収してくれたらしく二人とも無事だった

 

一刀「鴎、大丈夫・・・・・か・・・・・」

 

鴎「ええ、大丈・・・・・夫・・・・・」

 

明命「あ・・・・・」

 

思春「・・・・・・・・・・」

 

草叢に落ちた一刀、鴎を見て明命、思春は固まる

 

一刀「あ、ああああ///////」

 

鴎「うあ、ああああ///////」

 

一刀が鴎に覆いかぶさるようにして、鴎の左胸に自身の右手を沈み込ませていた

 

幽州での誘拐未遂と全く同じ形となり、軽くデジャブを感じる

 

モニュウ

 

鴎「ンふぅっ!///////」

 

細作三人の中で一番大きい果実を持っている為、一刀の揉み込みを押し返すように鴎の果実は形を変える

 

一刀「わ、悪い、鴎!!///////」

 

完全に襲っている形となっていることを認識した一刀は咄嗟に鴎から離れた

 

鴎「うわああああああん!!!また一刀におっぱい揉まれたああああああああ!!!//////////」

 

そして、自身の胸を腕で隠し、鴎が叫ぶ

 

明命「破廉恥です、一刀様///////」

 

思春「下種め、死ねばいい」

 

一刀「待てい、どう見ても事故だろう!!そのゴミを見るような目は止めろ!!」

 

鴎「なら、どうして私達の居場所が分かったのか教えなさい!!///////」

 

明命「そうです、それで許して差し上げます!!」

 

思春「きりきり吐け!!」

 

一刀「それは教えるわけにはいかない!!自分で考えろって言ったじゃないか!!」

 

ネタばらしをすると、一刀が使ったのは、縮地法戌の型、湫歩である

 

ただし使ったといっても、一刀が使ったのは湫歩とも呼べない湫歩、似非湫歩である

 

それはどういうことかというと、一刀の使う湫歩は実戦ではとても役に立たない代物だからだ

 

元々湫歩というのは、自らの氣を回りに放出しレーダーとすることで相手の居場所や地形を把握し、相手の不意打ちを事前に察知したりする歩法である

 

今の一刀が使う湫歩は、自らの正面のみに展開可能で、全方位に展開できないのだ

 

その為、一刀はその場でファッションモデルのような一回転するという遠回しなことをしなくてはならなかったのである

 

これでは、とても実戦では使えない、祖父も一刀の湫歩には及第点も与えていないのだ

 

それは他の歩法でも同じで、唯一及第点を獲得しているのが申の型、苑歩である

 

一刀「それじゃあ、何でも言うことを聞いてもらう権限を使おう・・・・・許してくれ、これでいいだろう?」

 

鴎「・・・・・仕方ないわね」

 

明命「はい、仕方ありません・・・・・」

 

思春「約束である以上、違えはせん・・・・・」

 

どうやら納得してもらえたようだ

 

これでお開きにしようと、帰ることを提案しようとしたが

 

鴎「一刀、もう一勝負よ!」

 

一刀「は?」

 

思春「そうだ、こんな一方的な結果で納得できるか!」

 

明命「はい、せめてどんな方法を使っているのかを確かめないことには、終われません!」

 

一刀「・・・・・別に構わないけど、そっちが負けた場合、何でも言うことを聞いてもらう権限が復活するが、いいのか?」

 

鴎「え・・・・・」

 

思春「な・・・・・」

 

明命「はう・・・・・」

 

一刀「当たり前だろうが、まさかタダで勝負しろとか虫のいいことを言うつもりじゃないだろうな?」

 

鴎「の、望むところよ!//////」

 

思春「二言はない!///////」

 

明命「よ、よろしくお願いします!///////」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、再び勝負を申し込む褌三人組だったが、結果は惨敗もいいところだった

 

一刀が使う氣を警戒しそれぞれが違う潜伏法を使うが、そもそも一刀の手法は北郷流だけではない

 

五斗米道の透視も身に着けているのだ

 

おまけに北郷流をフル活用すれば、こんな森などあっという間に灰燼に帰すことが出来、隠れる場所すらも無くせるのである

 

もちろん、そんな環境を破壊するだけの行為はしなかったが

 

どのような潜伏法も効果はなく、一刀がどんな手法を使っているのかを確かめることもできず、気付けば後には引けず何回も勝負を挑むこととなり、その全てに敗北を期した

 

結果、何でも言うことを聞いてもらう権限を一刀が十回以上獲得すだけとなり、その後建業への帰路、褌三人組は後悔と絶望の念に苛まれ意気消沈しっぱなしだった

説明
揚州拠点・パート3
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コメント
明治維新は江戸幕府の怨みよりも、アメリカやイギリスといった欧米列強が開国を迫ってきたことが通説です。平和な鎖国路線をしていた日本は技術も軍事も遅れていました。しかも隣の清国はアヘン戦争に負けて不平等な条約を受けていたので新しい国づくりの為に起こしました。一刀はそうならないように、漢王朝の信頼回復を生涯かけて行うようですが、それを内心誰も頼んでいないことに気づいてますでしょうか?(戦記好きな視聴者)
更新ありがとうございます。この作品を楽しみにしていますので、ゆっくりでいいので続けてください(戦記好きな視聴者)
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鎮魂の修羅 恋姫英雄譚 北郷一刀 ファンタジー 恋姫†無双 

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