恋姫英雄譚 鎮魂の修羅34の5
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拠点・蓮華、小蓮

 

 

 

蓮華「次はあっちに行きましょう、一刀♪」

 

小蓮「か〜〜〜ずと、あっちに美味しそうなお菓子が売ってるよ♪」

 

一刀「分かった分かったから、順番な」

 

現在、一刀は蓮華、小蓮と共に逢引の真っ最中であった

 

何故にこの様な両手に花状態なのかというと、蓮華はこの孫呉での数少ない一刀の理解者であるのは周知のとおり

 

小蓮は、お転婆であると同時に好奇心旺盛な性格が功を成したのか、一刀と意気投合し真名まで預け今に至っている

 

一刀「ん、これは美味いな♪」

 

蓮華「ええ、お茶が進みそうね♪」

 

小蓮「幽州のお土産に買っていったら、一刀♪」

 

一刀「それはいい提案だな♪」

 

なんとも仲睦まじい雰囲気である

 

傍から見れば、仲のいい兄妹か恋人に見えてこよう

 

炎蓮「お、いい感じに和気藹々じゃねぇか♪」

 

百合「あらあら、お仲がよろしいことでぇ〜♪」

 

そこに、余り絡みがなさそうなこの二人がやって来た

 

蓮華「お母様、百合、どうしたんですか、こんなところで」

 

小蓮「うん、二人が一緒にいるのって結構珍しいね」

 

炎蓮「百合がな、お前らの仲がかなりいいって吹聴していてな♪」

 

百合「ええ、それはもう長年連れ添ったオシドリ夫婦のようにぃ〜♪」

 

蓮華「そんな、オシドリなんて////////」

 

炎蓮「にしても蓮華は知ってたが、シャオはいつの間に一刀と仲良くなったんだ?」

 

小蓮「だって、一刀ってばシャオ好みのいい男だし、何よりすごく優しいんだもん〜♪」

 

百合「ですよねぇ〜、一刀君って凄く優しいですから、私も真名を預けちゃいましたぁ〜♪」

 

蓮華「ええ、私も早く一刀に真名を預けられてよかったと思うわ♪」

 

小蓮「むぅ〜〜、一刀の赤ちゃんを一番に産むのはシャオなんだからねぇ〜!」

 

炎蓮「お、いいぞシャオ、その意気だ♪」

 

蓮華「もう、お母様も百合も、余り煽らないでください」

 

一刀「まぁね、余り煽るとあっちの怖いのが襲ってきそうだ」

 

視線を明後日の方向に向けると

 

 

 

思春「・・・・・・・・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

鴎「・・・・・・・・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

 

物陰から、細作二人が怒りやら嫉妬やらを入り交ぜた視線をぶつけてきていた

 

炎蓮「ああ、あの二人な・・・・・あいつらは無駄に蓮華の側近の自負があるからな」

 

小蓮「うん、変に水面下で争っているもん・・・・・」

 

百合「思春さんも鴎さんも、蓮華様のことが大好きですもんねぇ〜♪」

 

蓮華と一緒にいる一刀に対してもそうであるが、無駄に牽制しあっている部分がちらほら見える

 

それぞれ別の場所に隠れている為、お互いにチラチラと視線を移しては逸らすを繰り返している

 

変な三角関係である

 

一刀「あんな息苦しいことをしているくらいなら、こっちに来ればいいのに」

 

百合「一刀君〜、そんなこと言っちゃだめよぉ〜、乙女心は複雑なんだからぁ〜」

 

炎蓮「いいじゃね〜か、あいつ等とも逢引きしときゃあ、あいつ等も一刀の子供を身籠る確率が上がるんだ、万々歳だぜ♪」

 

小蓮「もっと乙女心を分かってないのがいた〜・・・・・」

 

蓮華「・・・・・お母様らしいと言えるけれどね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小蓮「ん〜〜〜〜っ!楽しかったぁ〜〜♪♪」

 

蓮華「ええ、久しぶりに羽を伸ばせたわ♪」

 

城に帰ってくるなり、二人はご機嫌だった

 

あの後、様々な所を巡り親睦を深めた三人は城の廊下を共に歩いていた

 

一刀「シャオの紹介でいろんな穴場に行けたな、お蔭でお土産には困らなそうだ♪」

 

小蓮「ふふ〜ん、も〜〜〜っと褒めてもいいよ〜♪」

 

一刀「ああ、ありがとうな♪」

 

小蓮「えへへ〜♪も〜〜っと撫でて〜♪///////」

 

頭を撫でられた小蓮は、強請るように一刀に抱き着いた

 

蓮華「うふふ♪・・・・・・・・・・うっ!!?」

 

一刀「っ!どうした蓮華!?」

 

小蓮「お姉ちゃん!?」

 

そんな二人を微笑ましく見ていた蓮華が、突然腹部を抑え蹲った

 

蓮華「だ、大丈夫よ、大したことないから・・・・・」

 

小蓮「大丈夫じゃないでしょう!」

 

一刀「ああ、腹がどうかしたのか!?」

 

蓮華「本当に、大したことじゃないわ・・・・・」

 

大したことはないと言いつつも、その表情は青く険しい

 

まさかさっきの逢引き中に食べた何かに当たったのか

 

一刀「っ・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

蓮華「え、一刀!?」

 

小蓮「いきなりどうしたの!?」

 

意を決し、五斗米道の透視を発動する

 

突然気合を入れる一刀に蓮華も小蓮も何事かと驚く

 

一刀「ああなるほど、月経か」

 

そして、蓮華の体を透視し終え一刀は安堵した

 

小蓮「月経・・・・・ああ、赤ちゃんを産む準備なんだね♪」

 

蓮華「ちょっと小蓮、嬉しそうに言わないで!///////」

 

一刀「まぁな、こればっかりは女性特有の悩みだからな」

 

蓮華「ごめんなさい・・・・・普段はもうちょっと先だけど、思っていたより早かったわ・・・・・」

 

一刀「ということは、体の循環に異常が出ている可能性があるな・・・・・最近、私生活や仕事で悩んでいることはあるか?」

 

蓮華「・・・・・これといって・・・・・あ、そういえば」

 

小蓮「なに、何かあるの?」

 

蓮華「・・・・・お母様のことで」

 

一刀「まさか、炎蓮さんのやり方に関してか?」

 

蓮華「ええ・・・・・」

 

普段表に出さないようにしているが、蓮華の中で一刀と炎蓮のやり方の違いがこうやって症状で表れているのであろう

 

密かに恋心を寄せる一刀か、血を分けた親である炎蓮か、そのジレンマが蓮華の精神をぐら付かせているのだ

 

一刀「そうか、心労が原因だな」

 

小蓮「でも、お姉ちゃんはそんな素振り少しも・・・・・」

 

一刀「心労っていうのは、自分でも気付かないうちに溜まるんだ、そして気付いた時にはとんでもない病気の原因になる時もある」

 

小蓮「それじゃあどうすればいいの?」

 

一番いいのは、炎蓮が蓮華の気持ちを理解し己の行いを悔い改めることだが、いきなりそれは難しかろう

 

蓮華の為にも、一日も早く漢王朝の正常化を成しえなければならない

 

一刀「それじゃあ、この薬をあげよう」

 

小蓮「それって、何の薬?」

 

一刀「ここに来る間に漢中に寄ってな、そこの張魯という人に作ってもらった万能薬だ」

 

蓮華「張魯ですって!?」

 

一刀「ん、知ってるのか?」

 

小蓮「知ってるも何も、この大陸で三本の指に入る高名なお医者さんだよ!」

 

どうやら、張魯の名はこの大陸では有名らしい

 

華佗の師匠であることとか、作る為に不眠不休で南蛮に赴いたこととか、龍の角を使っていることとか、それは言わないでおこう

 

蓮華「あの張魯氏が作った物なら信用できるわ、喜んでもらっておくわね♪」

 

一刀「ただし少量ずつ飲むんだ、あの人曰く、かなりの劇薬らしいから」

 

セットでもらった説明書に、大した病気でないなら指先に付いた粉末を一舐めする程度の量で充分だそうだ

 

なにせ余命一か月と宣告された梨晏の病気を立ちどころに回復させたのだ

 

多飲すれば毒にしかならないだろうことは想像に難くない

 

一刀「ひと月に一度飲む程度でだいぶ違うと思うぞ」

 

蓮華「本当に感謝するわ、一刀♪」

 

小蓮「シャオからもお礼を言わせてもらうよ、ありがとう一刀〜♪」

 

そしてその後、万能薬を飲んだついでに一刀に鍼を打ってもらった蓮華の症状はみるみる改善していき、前よりも調子が良くなったくらいだった

 

お蔭で、更に仕事に精を出すようになり、かえって周りの心配を買うようになってしまったのは割愛である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拠点・美羽、七乃、巴

 

 

 

美羽「う〜〜ん一刀や〜、ここがどうしても分からんのじゃ〜〜」

 

一刀「そこはね、ここをこうして」

 

美羽「おお、そうかそういうことか、わかったのじゃ〜♪」

 

七乃「ああん、お勉強に励むお嬢様もなんて可愛らしいのでしょ〜〜♪//////」

 

現在、一刀は美羽の部屋にて勉学の手伝いをしていた

 

家庭教師と生徒の掛け合いは、七乃のツボにハマっているようで、変に悶えて勉強を見辛い

 

美羽「ふぅ〜〜〜、疲れたのじゃ〜〜・・・・・」

 

一刀「そうだな、今日はこれでお開きにしようか」

 

かれこれ三時間ほどぶっ通しで勉強に精を出していたため美羽は机に突っ伏すした

 

人間の集中力は三時間が限界と言われているので、彼女くらいの年齢であればかなり頑張った方であろう

 

巴「美羽様、七乃・・・・・ああ、一刀もいましたか」

 

そこに、袁術軍の将軍がやって来た

 

一刀「お疲れ様、巴」

 

七乃「巴さん、お疲れ様です〜」

 

巴「ええ、お疲れ・・・・・美羽様、如何しました!?」

 

七乃「大丈夫ですよ〜、勉強で疲れただけですから〜」

 

巴「そう、ですか・・・・・それは良かった」

 

机に突っ伏すしている美羽を見て何事かと思ったが、心配には及ばなかった

 

長年美羽に仕えているだけあって、巴も美羽の身を相当に案じているようだ

 

七乃「それでは、頑張ったお嬢様にはご褒美に蜂蜜水を淹れて差し上げましょうね〜♪」

 

美羽「あ、妾がやるのじゃ♪」

 

淹れてあげようとしたら、自分で作ろうとしている美羽を七乃と巴は、まるで成長した我が子のように愛おしげに見つめていた

 

七乃「お嬢様も成長なさいましたね」

 

巴「ええ、今では何でもご自分から率先してやろうとしています・・・・・寂しくも感じますね」

 

一刀「いいじゃないか、以前は甘やかし過ぎてたんだろ、これも立派な教育だ」

 

巴「・・・・・正直、私は一刀が訪ねてきた時、心配だったんです」

 

七乃「はい、お嬢様を叱り付けるんじゃないかと思いまして・・・・・」

 

一刀「それは、南陽の件か?」

 

七乃「はい・・・・・」

 

巴「ええ・・・・・」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

涙から見せてもらった報告書に目を通していたため、一刀も南陽の現状については知っている

 

はっきり言って酷いものである、子供が太守になっただけでここまでの悪循環を生み出せるのかと

 

美羽自身も、ちょっと煽てられると有頂天になってしまう癖がある為、そこに付け入られてしまったのだろう

 

持ち前の純粋さも相まって、災いしか齎さなかった

 

こんな年端もいかない子供を祀り上げている時点で、大人達は最初から腐っていたと言える

 

一刀「・・・・・俺も正直、どうしようか迷っていた、でも美羽も自分の行いを反省しているみたいだし、頭ごなしに叱っても何も解決しない」

 

七乃「・・・・・ありがとうございます」

 

巴「全ては、私達の力が及ばなかった次第です、美羽様に責はありません・・・・・」

 

一刀「まぁ、南陽についてはたぶん大丈夫だろう、涙・・・・・劉度には会ってるから」

 

七乃「え、劉度さんに会ったんですか?」

 

一刀「ええ、お蔭で荊州州牧の黄忠にも会えました」

 

巴「大丈夫とは、何をもって大丈夫というのです?」

 

一刀「俺が同盟先に渡している資料をあげたんだ、あれの中身を順序良く実行すればな」

 

巴「劉度殿には、悪いことをしてしまいましたね・・・・・」

 

七乃「はい、何もかもを悪くして、あの人に丸投げしたも同然ですから・・・・・」

 

一刀「劉度は零陵の元太守だし、ここ数年で南陽は良くなるだろう」

 

七乃「・・・・・もっと早く、一刀さんと出会っていれば」

 

巴「七乃、それは言ってはいけません、一刀の体は一つしかないのです」

 

七乃「・・・・・そう、ですよね」

 

こればっかりは巡り会わせというものだ

 

過去を悔やんでばかりもいられない、今は先を見据える時である

 

美羽「出来たのじゃ〜〜♪一刀と七乃と巴の分もあるのじゃ〜〜♪」

 

しんみりしていた空気が、華やかな笑顔によって吹き飛んだ

 

七乃「あらあら〜、甘くて美味しそうな匂いですね〜♪」

 

巴「自分だけでなく、他人(ひと)の分まで・・・・・本当に成長なさったのですね」

 

御盆の上には四つの茶碗があり、その茶碗からは湯気が立ち上っていた

 

巴「おまけに、熱い湯でお飲みになられて・・・・・」

 

七乃「はい〜、ちょっと前まで冷たいお水でしか飲めなかったのにですね〜♪」

 

美羽「む〜、巴も七乃も失礼なのじゃ〜、妾だって成長しているのじゃ〜、今はこっちじゃないと満足できないのじゃ〜!」

 

巴「失礼いたしました、美羽様・・・・・」

 

七乃「そうですよね〜、お嬢様だって、子供のままじゃありませんもんね〜♪」

 

一刀「それじゃあ、いただきます」

 

そして一同は、美羽の淹れてくれた蜂蜜水を喉に流し込んだ

 

七乃「ん〜〜〜〜っ、お嬢様の淹れてくれた蜂蜜水、沁みます〜〜♪♪」

 

巴「美羽様が淹れたものだと、また格別ですね♪」

 

一刀「ん、美味い・・・・・ごちそうさま、美羽」

 

美羽「どういたしましてなのじゃ〜♪・・・・・あちちち!!」

 

七乃「ああ、お嬢様!?」

 

巴「大丈夫ですか!?」

 

美羽「あふ、少し熱くし過ぎたのじゃ〜・・・・・」

 

一刀「ん、こっちじゃないと満足できないとか言ってなかったか?」

 

七乃「も〜〜一刀さん、意地悪ですよ〜」

 

巴「そうです、美羽様も背伸びをしたいお年頃なんです!」

 

一刀「そうか、すまなかった・・・・・ちょっと口を開けて見せてみろ」

 

美羽「ん、あ〜〜〜〜ん・・・・・」

 

素直に美羽は一刀に向かって口を開けて見せた

 

一刀「・・・・・これなら放っておいてもすぐ治るけど・・・・・っ」

 

両手を美羽の頬に触れると、その手から淡い氣が美羽の口に移っていった

 

一刀「よし、これで大丈夫だ」

 

美羽「・・・・・おお、痛くなくなったのじゃ!」

 

一刀「これからは自分が飲める温度にするんだぞ」

 

美羽「分かったのじゃ〜〜♪ふ〜〜、ふ〜〜!」

 

息を吹きかけ冷ましていき、美羽は自分で淹れた蜂蜜水に舌鼓を打った

 

七乃「ありがとうございます、一刀さん〜」

 

巴「本当に何でもできるんですね、私や七乃ではなく一刀が美羽様の御側に付いていれば・・・・・」

 

一刀「止めてくれ、俺一人で何ができるんだよ、皆がいてこそこの世界は回るんだ」

 

巴「・・・・・そう、ですよね」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巴「(歯がゆいです・・・・・自分の非力さが)」

 

部屋を退出した巴は庭を歩いていた

 

その表情は、どこか切なそうだ

 

巴「(・・・・・本当に、一刀さえいてくれればもっといい結果になっていたのでしょうね)」

 

七乃のことは言えない、自分とて、もし一刀がいなかったらと思うとぞっとする

 

もし彼がいなかったら、美羽はそのまま南陽の太守であり続け、国を駄目にした張本人の一人というレッテルを張られ、祀り上げた者達に全ての責任を擦り付けられていただろう

 

それを防ぐことが出来なかった自分が、余りに不甲斐ない

 

巴「(とはいえ、これで一段落です・・・・・美羽様は、私がいなくてもやっていけるでしょう)」

 

無事に成長をしている美羽を見ると、これからは七乃だけがいればいいと思えてしまう

 

誰よりも、あの一刀がいるのだから、もはや何の心配もないと思えてくる

 

これで、心おきなく美羽の為にどこでも後腐れなく討ち死にを果たすことが出来る

 

巴「(・・・・・なんだか眠くなってきました)」

 

つきものが落ちたせいか、突然睡魔が襲ってきた

 

庭に生えている木の下にいい感じの木陰を発見すると、自然と足がそちらに向かった

 

巴「(少しだけ、少しだけ休みましょう・・・・・)」

 

その木陰の中に寝転び、体を丸めた

 

巴「(七乃、一刀・・・・・美羽様を、お願い申し上げます)」

 

そして、まるで死にゆく者のように、巴はゆっくりと瞼を閉じていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巴「(ああ、なんて気持ちがいいのでしょう)」

 

まるで天国に居るかのような心地良さが、巴を包み込んでいた

 

巴「(このまま何も気にすることなく、この甘美な感覚に身を委ねたい)」

 

愉悦とは、まさにこのことである

 

今まで味わったことのない感覚が全身を満たしていく

 

巴「(特に頭が・・・・・ふにゅ〜〜〜、もっとしてほしいです♪)///////」

 

これまでの苦労を労うどころか、全てを洗い流してくれるかのような感触に自然と顔が緩んでしまう

 

しかし

 

巴「(・・・・・ちょっと待って下さい、私は寝ていたはず)」

 

別に自分は死んだわけではない、少々仮眠を取ろうと思っただけだ

 

これまでに味わったことのない心地良さにかえって疑問が湧き、そっと目を開けると

 

一刀「・・・・・お、起きたか?」

 

巴「一刀?・・・・・これは・・・・・」

 

流し目で上を向くと、そこには一刀がいた

 

一刀「だいぶ疲れているみたいだな、氣を通してみたけど、これは明らかな睡眠不足だぞ」

 

巴「え、あ、う、ええええ////////」

 

見る間に巴の顔が赤く染まっていく

 

今の自分の状態を確認すると、一刀に膝枕をしてもらっている状態だった

 

それと同時に頭を撫でられていて、それが感触の原因であることを目の当たりにした

 

巴「な、何を!?////////」

 

人には見せられない恥ずかしい状況が進行中であることを認識した巴は、すかさず体を起こそうとするが

 

一刀「おっと、もう少し寝てろ」

 

巴「あう!うううう////////」

 

大した力も込められていないソフトタッチだが、巴はあっけなく再び一刀の膝に頭を預けることになった

 

よくよく見てみると、一刀の全身から淡い氣が放出されそれが自分自身を包み込んでいる

 

特に手から放出される氣が一段と濃く、それが心地良さの原因だと認識した

 

一刀「それにしても、こんな所で寝ることないだろう、だいぶ寝入っていたみたいだから起こさなかったけど、疲れが取れないぞ」

 

巴「私は、いつどこだろうと仮眠を取れるように訓練しています、これでも疲れはちゃんと取れます////////」

 

一刀「七乃さんから聞いているけど、巴はかなり多忙な身なんだってな」

 

巴「私は文官と武官、両方を務めていますから///////」

 

一刀「確か、朱雀公と呼ばれているんだとか」

 

巴「はい、そのようなあだ名で呼ばれることも多いです////////」

 

一刀「無理をしていたんじゃないか?大分心労が溜まっていると思うぞ」

 

巴「・・・・・そう、ですね・・・・・そうではないと言えば、嘘になるでしょう///////」

 

自分でも驚くほどスラスラと悩みを吐露してしまっている

 

それくらいに頭を撫でられるのが気持ちよく、日々の疲れが癒されていく感覚が心地いい

 

一刀「さっきも心配したんだぞ、まるでこれから死にに行くみたいな雰囲気だった」

 

史実の紀霊が一刀の頭の中で思い起こされる

 

呂布が袁術と劉備の仲裁に出た際に「地面に挿した戟の小枝に矢を射当てたら軍を引き揚げよ」と申し渡し、見事そこに矢を射当てた

 

紀霊は約束により止むを得ず兵を引いたが、その後の動向は不明である

 

演義では三尖刀の使い手として登場しており、袁術が帝を僭称し、敗戦と暴政のため人心を失い孤立すると、多くの配下は袁術を見限る中で、最後まで袁術に付き従っている

 

しかし、袁術が領土を捨て袁紹の下へ落ち延びる途中、曹操から追討を命じられた劉備軍と戦い、張飛との一騎討ちで10合余り渡り合った後に討ち取られてしまっている

 

前半はかなりの強者として描かれているが、後半は完全に張飛の武勇の引き立て役にまわされている

 

このように、史実でも演義でも紀霊は碌な生涯を送っていない為、一刀は巴の行く末が心配でならなかった

 

巴「死にに行く、そのようなつもりはなかったのですが・・・・・そう、ですね、なにもかもを七乃と一刀に任せて休みたいと心の何処かで思ったことは否定しません///////」

 

一刀「おいおい、俺が美羽の傍にずっといてやれる身だと思ったのか?」

 

今の一刀は漢王朝の正常化に忙しいし、それが終わったとしても、その後も国を立て直す大仕事が控えているのだ

 

何もかも自分と七乃に投げ出して、トンズラされてはたまったものではない

 

一刀「俺が一日でも早く漢王朝を正して見せるから、そうしたら巴も文官の仕事だけに精を出せるようになるさ」

 

巴「・・・・・一刀は、本気で漢王朝をどうにかしようとしているのですね」

 

文官兼武官の身だけあって、巴も一刀が持参した資料に目を通していた

 

正直、あれほどよく出来た文献を見たのは初めてであった

 

ひょっとしたら、彼なら落ちに落ちた漢帝国を復活させられるのではと思ってしまうほどに

 

一刀「当たり前だ、巴だって美羽の成長を少しでも長く見届けたいだろう」

 

巴「そうですね、本音を言ってしまえば、その通りです」

 

一刀「なら、巴も協力してくれ・・・・・俺が各州で結んでいる同盟は、皆が幸せになるための物なんだから」

 

巴「はい、美羽様の為にもまだまだ頑張ります♪」

 

どうやら、つきものは完全に取れたようだ

 

これまで見せたことのない満面の笑顔を見せるが

 

一刀「・・・・・それにしても、さっきの巴は可愛かったな♪」

 

巴「な、何を・・・・・」

 

一刀「だって、まるで子猫のように丸くなって、ふにゅ〜〜〜って可愛い声で鳴いていたぞ♪」

 

巴「な、なな、な//////////」

 

どうやら、余りの気持ちよさに寝言が漏れてしまっていたようだ

 

彼女は自覚していない、この仮眠姿が袁術軍(男共)の統率力を高めていることを

 

その容姿も相まって城内外の、特に女性層に異様な人気があり、曰く「紀霊御姉様は素晴らしい御方よ!!」だそうである

 

巴「も、もういいです、ありがとうございます!////////」

 

今度は本気で一刀の膝から頭を離そうとする

 

しかし

 

一刀「あ、おい!いきなり起きたら、うわっ!?」

 

巴「きゃあっ!///////」

 

氣による癒しによって力が入らず、足をもつれさせた巴が一刀にダイブした

 

美羽「七乃や〜、一刀と巴はどこに行ってしまったのじゃ〜?」

 

七乃「う〜〜〜ん、こっちに行ったってさっき聞いたんですけど・・・・・あ、居ました〜、あの木の下です〜」

 

美羽「本当なのじゃ、一刀や〜、巴や〜、何をしておるのじゃ〜♪」

 

丁度、一刀と巴を探していた美羽と七乃がやって来た

 

美羽「な、なな、何をしとるんじゃ、二人とも・・・・・」

 

七乃「あらあら〜、よ、この熱々夫婦め〜、末永く爆発しろ、この〜?/////」

 

一刀「あ、いや、これは、その!!///////」

 

巴「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!///////」

 

一刀の胸に飛び込み押し倒した巴、そのせいでお互いに抱き合う形となってしまった

 

大胆にも、巴はその充分に男を魅了できる果実を一刀の胸板に押し付けていた

 

一刀はなんとか言い訳の言葉を探し、巴はこのような痴態を美羽と七乃に見られ目を回しながら耳まで真っ赤に染まった

 

しかし

 

美羽「妾も一緒に昼寝をするのじゃ〜〜!!」

 

そのような二人の状況などまったく目に入ってないのか、美羽が突撃してきた

 

七乃「では私も〜、え〜〜〜〜い♪///////」

 

一刀「ちょっ、美羽、七乃さん!!?////////」

 

巴「美羽様、七乃、無茶は止めて!!////////」

 

二人の静止の言葉も空しく、美羽は巴を押しのけ、一刀の胸に抱き着き七乃は巴の反対側に陣取った

 

図でいうと、一刀から見て右側に巴、左に七乃、正面に美羽という形である

 

美羽「巴だけズルいのじゃ〜〜、妾も一刀と昼寝をしたいのじゃ〜〜」

 

巴「美羽様・・・・・分かりました、一緒に寝ましょうか///////」

 

上目遣いの上に涙目のウルウルで懇願されては、首を縦に振るしかなかった

 

七乃「あらあら〜、さすがは熱々夫婦ですね、きゃ〜〜??//////」

 

巴「七乃、熱々でも夫婦でもありません!!////////」

 

美羽「あったかいのじゃ、一刀〜♪・・・・・あそうじゃ、思い出したのじゃ」

 

一刀「ん、それは・・・・・」

 

美羽は、懐からあるものを取り出し、一刀に見せた

 

それは、一刀が美羽に挙げた五百円硬貨だった

 

しかし、かつて回天丹田の氣を放ち続けていたその硬貨は、今では白銀の羽を散らすことなく淡く輝くに留まっている

 

美羽「一刀からもらったこのお金、最近あまり光らなくなったのじゃ〜・・・・・」

 

一刀「あれからけっこう経っているからな、流石に氣も尽きてくる頃合いか・・・・・ちょっと貸して」

 

そして、美羽から五百円玉を受け取った一刀は、それを強く握りしめた

 

一刀「ふっ!!!」

 

美羽「・・・・・凄いのじゃ〜〜」

 

七乃「なんて熱いのでしょ〜・・・・・」

 

巴「なんという氣、相変わらず一刀は凄いですね///////」

 

一瞬で氣のメーターを振り切らせ、その熱が三人に嫌でも伝わっていく

 

天地陰陽と同じ要領で回天丹田の力が注ぎ込まれ、五百円硬貨は再び白銀の羽を散らしていた

 

美羽「ありがとうなのじゃ、一刀〜♪」

 

七乃「またこれでいい夢が見れますね〜♪」

 

巴「その技は、そうそう使えるものではないのでしょう、大丈夫なのですか?」

 

一刀「一日に一回だけならなんてことないさ」

 

巴「そうですか・・・・・ありがとう、一刀///////」

 

お礼の言葉を紡ぎながら、巴は一刀の右肩に頭を預けた

 

七乃「うふふふ〜、やっぱり熱々夫婦ですね〜、この〜?//////」

 

巴「もう、七乃は人をからかい過ぎです!///////」

 

美羽「むぅ〜〜〜、もう寝たいのじゃ〜〜・・・・・」

 

巴「申し訳ありません、美羽様・・・・・お休みなさい」

 

七乃「おやすみなさい、お嬢様〜♪」

 

美羽「くぅ〜〜、すぅ〜〜」

 

七乃「んぅ〜〜、お嬢様ぁ〜〜♪・・・・・すぅ〜〜」

 

巴「・・・・・美羽様・・・・・一刀ぉ?・・・・・くぅ〜〜〜♪/////////」

 

すぐに寝息が聞こえてきた

 

一刀「・・・・・ま、いいか」

 

勢いのままに三人で昼寝をすることになってしまったが、三人の寝顔を見るとそんな細かいことはどうでもよくなってくる

 

三人の体温に身を任せ、一刀もゆっくりと目を閉じたのだった

 

回天丹田の力を取り戻した五百円玉と一刀が居るのも相まってなのか、三人はこれまでで一,二を争ういい夢が見れたそうな

説明
揚州拠点・パート5
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鎮魂の修羅 恋姫英雄譚 恋姫無双 恋姫†無双 北郷一刀 ファンタジー 

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