おとボク2SS 「3月の練習曲(エチュード)」 |
「ひなた おはよう」
「あ、おはよう!優雨ちゃん」
私の名前は宮藤(くどう)陽向
この春から、ついに聖應女学園の3年になる
ピチピチ?の女子高生だ。
かといって、私ははっきりいって凡人で
アニメや漫画は得意だけど、
このお嬢様学校には不釣り合いな趣味で
正直、学校でも浮いているような気がする……
でも、そんな私にも、親友がいるんだ。
それは同じ寮に暮らしている、柏木優雨ちゃん。
背は小さく、幼い言葉遣いに
一見、同じ高校生には見えないけど、
そのミステリアスな雰囲気に、最近は
隠れた下級生のファンまでついているみたい。
まあ、本人はぜんぜん、そんな認識はしてなさ
そうなんだけどね。
そして、今日は私が紅茶を淹れ、彼女と
二つ分、テーブルに出してあげた。
香織里お姉さまは、とっくに卒業してしまわれたけど
お茶の淹れ方は、お姉さまにとことん仕込まれたので私は得意なのだ。
この間まで、史お姉さまが淹れてくれていたので
それには、やっぱり敵わないのだけどね。
本当にこの寮にはすごい人達しかいなかったから
時より気後れしちゃいます。
私はまだまだだな〜って。
そんなこんなで、今日も午後のひと時を優雨ちゃんと過ごしている。
「ついに、この寮も二人だけになっちゃったわね」
「うん、ひなた。でも、ひなたがいるから大丈夫だよ」
優雨ちゃんは、ときより、天然でこんな事を言ってくるから
ときどき、私はドキっとしてしまう、
でも、裏表なく、なんでも話してくれる、優雨ちゃんは
私にとって、かけがいのない『親友』なんだ。
そして、この日は史さまも退寮され、2人きりになってしまった
この寮で、3月も半ばとなり、とくにやる事もなく、
私は優雨ちゃんと一緒に寮の食堂で創作活動に取り組んでいた。
といっても、優雨ちゃんは趣味の絵画で、
私はというと、好きな漫画の二次創作なんだけどね。
でも、ひとりで部屋で籠ってするよりは、
こうして、優雨ちゃんと他愛のない会話をして
まったりと、過ごすのがとても心地いいんだ。
外は、少し暖かくなり、それが眠気を誘うような
朝のひと時、優雨ちゃんが私に、こんな相談を投げかけてきたのである。
「ねぇ、ひなた、私どうしたら、普通に喋れるかな?」
「えっ優雨ちゃんは、そのままでいいんじゃない?
私はなんとも思ってないよ?むしろ、優雨ちゃんが、
香織里お姉さまみたいになったら、私、困るよ〜〜 ウ、梅干しは勘弁……」
ある、トラウマが呼び覚まされて、可笑しな顔をすると
すかさず、優雨ちゃんが私の真似をしてきた。
「ひなた、おもしろい、私ひなたみたいになる」
「えーーやめてくださいよ!私なんかの真似しちゃダメです。
そうだ、優雨ちゃんは千早お姉さまが、理想なんですよね?
千早お姉さまを目指してみてはどうかな?」
「それはむりー、ちはやはてんし様だもん」
「あは、やっぱり今でもそうなんだ。じゃあ、薫子お姉さまは?」
「ひなたちゃん、トランプしない?みんなで勝負しよっ!」
「あは、似てる〜、それ薫子お姉さま、よく言ってた」
「どうしよう?ひなた」
「う〜ん、じゃあ、やっぱり、初音お姉さまみたいに、だって優雨ちゃんは
初音さまの妹だもん」
「ひなたちゃん、お勉強ちゃんとしてますか?わからない事が
あったら、私、教えてあげましょうか?」
「うーお勉強はご勘弁〜って!それ初音お姉さまっぽい!やっぱり、
優雨ちゃんは、初音さまの妹ですよね、その路線でいきましょう!」
「わーい、わたしははつね!」
「あら、いつもの優雨ちゃんに戻っちゃいましたか、でもそれが
いいと思うよ、ちょっとずつみんなのよいとこ、真似するといいよ。
だってこの寮にはいっぱい、お手本がいたのですからね!」
「うん、そうする!」
「優雨ちゃん、えらいえらい、じゃあ朝ごはんの
お片付けの手伝いお願いしますね」
「あは、いまのひなた、とってもはつねみたいだった」
「あはは」
そんな、春のいぶきが聞こえてきた初春のある日。
寮の中はたった二人だけど、4月になると、
新入生や転入生が入って来るかもしれない。
それまでに優雨ちゃんと私はお姉さまらしくなれるのでしょうか?
まだまだ私には、修行が必要なのは確かみたいだけど……
今年も櫻の季節は、つい、そこまで迫っている。
説明 | ||
おとボクの初代アニメがBlu-ray化されると言う事で 懐かしくなって、一晩で書きました。(史っぽく・笑) でも、舞台は2です(汗) おとボク2では陽向が好きで、優雨ちゃんとの掛け合いを 想像して書いてみました(10年前の自分の作品を参考に……) 舞台は二人が3年になる直前のお話です。 陽向もあの香織理お姉さまを相手にしていたくらいなので ポテンシャルは高いはず!ひょっとして3年になると 生徒会長なんかになってそうな想像も…… すると、優雨ちゃんがエルダー!?エトワールでの奏ちゃんも まさかのまさかだったので、ありえなくはない……? 10年経ってもこんな楽しい想像(妄想)をさせてくれる おとボク、名作です! |
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