恋姫と無双 〜恋する少女と天の楯〜 其の三
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お読みいただく際の諸注意

 

この作品での主人公、北郷一刀は原作と同名のオリキャラです。

したがって、知識や武力などの能力については変更し、性格も変えています。

また、他のキャラにしても登場の仕方や主人公の能力により、主人公に対する好感度や対応を原作とは変えていますし、原作のキャラのイメージを壊すこともあります。

 

各勢力の人事異動もあり。これじゃバランスが…と思っても暖かい目で、もしくは冷たい目で見てください。

 

それと、あからさまにするつもりはないですが、ルートによる柳眉の好感度は魏>呉>蜀となっています。そのため、表現に柳眉の個人的見解がはいるかもしれません。そのときはご容赦ください。

 

原作にて『女性らしいやわらかな〜』などの表現があるので、本作では武官でありながらも、女性らしい柔らかさがあることの辻褄合わせとして『氣』と言う表現を持ち出します。氣=強さの一つの基準。武将や武の才がある者(原作のキャラ)はみな氣を遣える設定です。

 

「」の前には言葉を発した人物の名前が入ります。真名がない場合は原作で呼ばれている名が入ります。

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恋姫と無双 〜恋する少女と天の楯〜其の三

 『ハジマリのはじまり』

 

 

 

・・・・・・

すたすたすたすた

・・・・・・

スタスタスタスタ

 

 

 

 

 

 

 

沈黙が辛い。・・・・・・もう、泣いていいですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜこうも辛いと感じるほどの沈黙があるかというと、話は1,2時間ほど前に遡る。

 

 

 

…………………

 

 

 まだ、最初の頃は会話(対話?)があった。話が途切れてしまっても緊張感のある空気にはならず、見たことのない草木、花、鳥を眺めるなど景色を楽しむことが出来た。そして、その1つ1つが今までと別のところにいると実感させられていた。

 アスファルトのない所を歩く。この世界に来てそれが当たり前になった。誰かが歩き、そして踏み固められた土の上を少女と歩く。俺は近くにある邑に向うという少女に、護衛として付いて行く事になった。

 それは、この世界のことが分からない俺にとって、ここの世界の常識を知る機会が出来て渡りに船だし、一人旅をしていたという少女「荀ケ・文若」にとっては、護衛役が出来たというお互いの利益が一致した結果だった。

 

 話によると、彼女は南皮というところから陳留というところに向う途中で、陳留で刺史を務めている曹操に軍師として仕えるために旅立ったという。現在はあと3日というところまで来て、今日は近くに邑にて一夜を過ごすとのこと。

…などといわれても、この世界の常識のない俺は、3日という距離が近いのかさえ分からず、ましてさっきのように賊から襲われる危険を負ってまで、仕える為に旅をするということが分からなかった。

 そんな俺に彼女は、悪態をつきながらも1つ1つ教えてくれた。「これだから男は」「そんなことも分からないの」「まったくどうしようもないわね」などと、振り返ってみればこれまでにない悪し様な物言いに。最初こそ戸惑いはあったものの、聞いたことには答えてくれたし、言葉の節々から男嫌いが窺われたけど、それは自分個人に対して言われていないとわかった。今では言い方はきついけど、なんだかんだで面倒見のいい娘という印象になっていた。

 

 そう、今のような険悪な空気とは冬の水道水とお風呂のお湯くらい違った。

 文若―――この世界の人名はデリケートなもので、今までと同じ感覚では使えないみたいだ。名前はその人の全てを表している神聖なもので軽々しく呼ぶ事は出来ない。その人に認められないと呼ぶことが出来ないものまであるという。字を名乗られたらそちらを使うことが常識なのだそうだ・・・区切りが分からなくて姓名と字で呼んだら本気で怒鳴られた。――――の方はどうか分からないが、俺は心地よいと感じていた。初めて話す相手がものすごい美少女ということあるし、話の節々から知的な印象を受け、教えてくれる内容が理解しやすいように話してくれる、そしてこちらの話にも理解を示してくれるから話をすることが楽しかったのだ。

 また、彼女から聞かれた日本のこと、自分の住んでいたところについては、説明はしたけど信用はしてもらえなかった。それで、俺の出身地については海の向こうにある国(倭)となり、どういう訳か漢の地に流れて来たらしいとなった。これは俺も彼女も納得していないけど、なんとも説明しようがないため一先ず誰かに説明する機会があったらこう話すことになった。まぁ、自分でも胡散臭いと思うし、今手元にあるのは二振りの刀だけで、持ち物からも未来から来たと証明することが出来ないし、しょうがないとも思う。

 

 そんな居心地が良い空気が一変したのは、ぱっと思いついたままの会話(8割くらい俺からの生活について質問だった)が途切れ、俺はなんか聞くことないかと考え始め、文若は俺の長い質問攻めが終わり気が抜けていたときだった。前を行く彼女の2歩程先で何かが動いた。

 

一刀「ん〜〜、ん?……っ!ストップ!ストップ!!」

桂花「うるさいわね!なによ、突然大声出して……すと、ぷ?」

一刀「止まれってことっ!足元っ!!」

桂花「はぁ?、なん―――――ひっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桂花「へ、ヘビぃぃぃいいいいぃ〜〜」

 

 

 

 

 

 文若の金切り声が辺り一面にこだまする。

俺はその何か―20cmほどの蛇―を踏まずに避けるように声を掛けたつもりだった。しかし、文若は俺の予想の右斜め上の反応をした。

 

桂花「来るなっ!こっちにくるなぁぁぁああ〜〜〜!!」

 

 と割れるような悲鳴を上げて、足が地面に縫い付けられたように動こうとしない。

 そんなに怖いなら逃げれば、とも思ったがあまりの怖さに身が竦んでしまって動けなくなってしまったようだ。

 声に反応したのか蛇は文若に近づいていく。

 

桂花「っ――――!!」

 

 文若は声にもならない悲鳴をあげ、完全に体は固まっていた。たぶん今彼女の顔を見たら、血の気が引いていて、下手すると涙を浮かべているているかもしれない。

 流石に気の毒に思って、彼女の前に出て蛇を追い払おうとした。俺は剣を抜いて刀身を鏡のようにし、蛇が蛇自身の姿を見られるようにした。始めは舌を出して威嚇していた蛇も、刀身に映る蛇の威嚇に負けてそのまま逃げていった。

 

一刀「もう蛇は逃げたよ」

 

桂花「…………」

 

一刀「…ん?ちょっ!」

 

 文若は固まったまま動かない。気絶ではないと思うけど、たぶん気が動転しているんだと思う。

 気が動転している人には、体に直接働きかけることが効果的ということを本で見た気がする。実際に自分がそんな場面に直面するなんて思ってなかったから、うろ覚えではあるけど……。

 俺は彼女の左右の二の腕辺りを掴み、声を掛けながら揺さぶってみた。これが正しかったのかは分からないけど、彼女はすぐに気がついた。

 

桂花「へ、へびは……」

一刀「もう逃げたよ」

桂花「そ、そう…――――――っ!!」

 

 そうして、文若は息をつき、そこで俺が自分の腕を掴んでいる現状に意識がいった。

青白かった顔の色が赤へと変わり、ジタバタと力任せに俺の手を振り払って、慌てて距離をとる。

 

 

 

 

 

桂花「ち、近づくな変態!あんた、私の気が動転していた隙をついて、無理やり犯して孕ませようとしたのねっ!!」

 

 

 

 

 

 

一刀「……」

 

 

空間が凍った。そして、風が木を揺らす音さえ聞こえてこなかった。

 嗚呼、そうだった。この娘はかなり男嫌いだったことを忘れていた。それに、文若と会ってからこれほど近づいたのは今回が初めてということもあるのだろう、これまで以上の言葉の剣で俺を刺し始める。

 

 

……正直、かなり痛い。泣いてしまいそう。

 

 

 とはいえ、すぐに気がつけばここまでならなかったんじゃないか?という罪悪感があったので、とにかく彼女が落ち着くまで耐えることにした。

 落ち着いた頃合いを見計らって、ことの顛末を彼女に伝えた。すると、彼女は顔をさっきまでとは違った真っ赤にして先ほどよりも速いペースで歩き始めたのだった。

 

 

 

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……そうして今に至る。

 

 

 3歩程先を行く文若は、1時間くらい早歩きをしている。……息を切らしながら。

 流石に1時間このペースはキツイ。出発したときと比べても倍くらいのスピードはある。俺はまだ余裕あるけど、彼女は明らかにペースが落ちている。

 

一刀「なあ、もう少しゆっくりで良いんじゃないか?」

 

と、少し休むように言えば、

 

桂花「・・・・・・」

 

返事はなく。

 そして、少し休むようにとペースを落とすと

 

桂花「何ちんたらしてるのよっ!あんた護衛でしょ!?合わせなさいよ!!」

 

である。

 

 

 

……なんというか、ものすっごい居心地が悪い。原因が不可抗力で、その場に居合わせただけの俺には文若の不機嫌オーラを静めることは難しい。

 さてどうしたもんかと考えようとしたところで、自分が「いつものように」考えて始めたことに驚いた。

 

 

 気が付いたらここに居て、この少女と出遇った。そして、二言三言話しているうちに賊と遭遇して、それを追い返した。まだ意識がはっきりしてそんなに時間が経っていないのに、これまでの自分の常識があっという間に通用しなくなった。

 賊の剣の切っ先、欲望しか映っていない目。怖くなかったなどと言えば嘘になるし、相手を殺してしまうのではないか、殺すことになるのではないか、と「殺すこと」を意識したときの息苦しさは、時間を置いて何度も何度も俺をあの場にいるような感覚に陥らせる。加えて、自分はまったく見ず知らずの土地にいて、しかも、それがはるか昔の、中国の漢にいるかもしれないなどと、とんでもない状況に置かれている。

 それなのに、発狂するでもなく、パニックになることもなく、自分を失うことなく、ほとんど普段通りでいられるのは、目の前の文若のおかげかな。この少女が俺以上に感情的であるから、返って俺が冷静でいられるのだと思う。…少女のきつい言葉に助けられているという事実になんだか笑ってしまう。

 

 

 

 

桂花「・・・・・・なに気持ち悪い顔してこっち見てんのよ」

 

 どうやら顔に出ていたようだ。振り返った文若が眉を寄せてこっちを見ている。

 

一刀「いやなに、賊に勇敢に立ち向かう様は凛々しくて惚れ惚れしたけど・・・・・・女の子らしい可愛いところも持ち合わせているのな、と」

桂花「っ!うるさいっ、蒸し返すな!!」

 

 顔を真っ赤にさせて元の速さで歩き出した。誤魔化すつもりが完全に失敗した。苦笑して後を歩き始めると、10歩ほど離れたところで

 

桂花「遅いっ!あんたの腕が立ちそうだから、護衛として付いて来る事を許してるのに・・・あぁ、あの時付いていく許可を出した自分が嫌になるわ。……早くこんなところ抜けたいのに。」

 

 後の方は小さかったけど聞き取ることが出来た。

……なるほどね。嫌いな蛇がいたここから、早く抜け出したいってことか。なんつかホント面白いなこの娘。

 

一刀「悪い悪い。そういやさ、近くにある邑ってあとどれ位なんだ?」

桂花「……そうね、あと半刻ってとこよ」

 

半刻……えっと、1日は12刻って話だったから、1刻は2時間で半刻は1時間か。

結構歩くな。まぁ、ここでは当たり前なのかな?

そうして、あと彼女まで2歩程の距離まで来たら、

 

一刀「そっか。じゃあ、あと少しかな?」

桂花「そうね」

 

 素っ気無く答えた文若は前を向いて歩き出した。そして俺も後に続く。もう見慣れてきた彼女の後姿を見ながら、その邑に向かった。ぎこちなさはまだあるものの、いつしか空気は和らいでいた。

 

 

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 それから、だいたい1時間位した頃だろうか、目的地である邑の近くまで来た。

 

一刀「すごいな、文若の言った通りだよ」

桂花「……ふんっ」

 

 文若は当然であるとばかりに鼻を鳴らした。何となく予想していた反応が返ってきて、苦笑してしまう。

 

一刀「ところでさ、邑に着いたのは良いとして、これからどうすればいいんだ?宿に行くのか?」

桂花「…はぁ。そうだったわね、あんた常識がないんだった。こういうときはね、まず長の家に行くの。あんたのとこではどうか知らないけど、大きな町なら宿があるけど、こういう小さな邑ではまず宿がないの。そもそも、旅をするのなんてめったな事がない限りする人がいない。」

一刀「なるほどね…じゃあ、長の家に行くのは?」

桂花「……質問ばっかね、少しは考えたらどうなの?」

一刀「ん〜と……家が大きい、とか?」

桂花「……はぁ」

 

 文若は呆れていた。「これだから男は…」と文若枕詞をつけて

 

桂花「一応はそれもあるけど…基本的にね邑の人は結束が固いの。掟があるし、これだけの規模だったらほとんどが顔見知りだしね。ということは旅をする人は完全な異物よね。もし、邑の人が旅人を泊めて、その旅人が悪さしたら、泊めた邑の人は掟によって邑を追放させられる。この時代、追放させられた者が他の邑に受け入れられるなんてまずないし、邑での生活ができないと明日を生きる保証がなくなる。そんな危険の種を呼び込む人間なんていないでしょ?だから長の許可がいるの。邑の中で一番力を持っているから」

一刀「…後ろ盾になってもらうってことか?」

桂花「そんなところね。まぁ、あんたが言ったように、たいてい長の家は大きいから、泊まるとしたらだいたいが長の家になるんだけど…」

一刀「ふ〜ん…でもさ、許可を得られない場合はどうすんだ?」

桂花「許可を得られない場合は邑にはいられないから外で野宿ね」

 

 仕える為の長い旅路の途中、ようやく辿り着いた邑で長の許可を得られず野宿している文若を思い浮かべる。

 

一刀「……そっか、文若も大変だったんだな」

桂花「今、絶対!失礼なことを考えているでしょうっ!!大体想像つくけど、許可が下りないなんてなかったから」

一刀「…は!?嘘だろ、それだけキツイ口調で許可なんて得られるわけないって……あっ!!」

桂花「……あんたも大概よね?この私に対してそんな口きけるんだから…」

 

 言ってから自分の失言に気付いた。文若は目を細めて笑みを浮かべる。ビキッと氷が割れたような音を聞いた錯覚に陥る。温度が3度は下がった気がした。背中から冷たい汗が止まらない。

 

一刀「うっ……だってさ、文若は男嫌いだろ?だったら、その邑の長が男だったらその邑での泊まる許可下りないだろ?どう考えてもさ」

 

 と、弁解の甲斐あってか、幾らかは剣呑な雰囲気は和らいだ――

 

桂花「覚えておきなさいよ」

 

――と思ったのは俺の気のせいだったらしい。ボソッと、低く一言加えた文若は気を取り直して続けた。

 

桂花「……長は基本的に女が多いのよ。有能な人物の大半が女だしね」

 

 その前の一言をなかったことにして平然を装う。

 

一刀「それでも、毎回許可なんて下りるのか?」

桂花「余程の事がない限りは下りるわよ。見返りになるようなことをしないといけないけどね」

一刀「ふ〜ん…」

 

などと話しているうちに邑に着き、邑の人に長の家を聞き、そのまま向う。

途中、ピリピリしている人を何人か見かけた。文若の話通りなら、見ず知らずの俺たちが邑にいるから警戒されているのかな?それにしては随分と物々しい印象を受けるけど……

などと思ったけど、文若は気にせず先を行くので慌てて後を追った。

 

 

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そして、長の家の前に着いた。

 

コンコン

 

一刀「旅の者ですが、こちらが邑の長のお住まいと聞いて参りました。長はいらっしゃいますか?」

 

 家の中に人の気配は感じるが、応答がない。

どうしようかと文若を見ると、怪訝な顔をしてこっちを見ていた。

 

桂花「……なんで、戸を叩くのよ?」

一刀「ん?『ノック』のことか?」

桂花「の、く?」

一刀「ノックな。これは俺の国だと……う〜んと、自分がいることを相手に知らせることで、部屋に入るときにする礼儀みたいなもの、かな?」

桂花「ふ〜ん、それで来意を知らせるの。変わった風習ね」

 

と、そんなやり取りをしていると中から、疲れた顔をした妙齢の女性が出てきた。どうやらここの長らしい。

 挨拶を交わしてから、文若はこの邑に立ち寄った理由と今晩1泊させて欲しい旨を伝えた。

すると、文若の話を聞いてすんなり許可をもらえると甘く考えていた俺は、長の拒絶の言葉にただただ驚いた。

 

長 「そうでしたか。旅の方、悪いことは言いません。長旅でお疲れのところと思いますが、早々にこの村から出てお行きなさい」

一刀「?…どういうことですか、出て行けって?」

 

 ただならない雰囲気の長の話を聞いて俺と文若はそれぞれの反応した。

 俺は言葉の真意を理解できず頭の上に???が浮いていた。さっさと出てけって?それが悪いことじゃないって?と、さっぱり訳がわかってない俺とは違い、文若は長の一言から何かを感じ取ったのか、さっきまでの年相応の女の子の雰囲気が消え、思考をめぐらせている時の凛とした冷たい雰囲気を纏っていた。

 

長 「1月ほど前から近隣の邑も賊に襲われることが増えてきてきました。そして、とうとう隣の邑もその被害にあったといいます。この邑も近いうちに賊が来ることになるでしょう。それが今日になるか明日になるか……こちらも備えはしておりますが危険であることには変わりません。ですから、早く邑から出ていかれたほうがあなた方の為なのです」

桂花「今日か明日?……賊の話は他の邑で聞いたけど少数だったはず、討伐隊はどうしたのよ?」

長 「それが討伐隊は鎮圧することが出来ず、州牧は責任を負うことを恐れて逃げました。始めは少数だったと私たちも聞いておりましたが、いつの間にかその数を増やして300を超えるほどにもなったといいます」

桂花「それでも討伐隊が鎮圧できないことはないはず……」

 

 そうつぶやいた文若は思考の海に潜る。俺はというと賊に襲われると聞いて思考が停止していた。ここが自分のいた世界とは違う世界などと分かっていたはずなのに、それなのにまだ自分の常識で考えている。賊に襲われるなど自分も経験したことなのに現実感がない。そして、邑つまり人の住んでいるところにいるのに命の危険があるということが信じられない。

 そんな呆然としている俺を置き去りにして、状況は坦々と進んでいく。

 

桂花「今日明日にもここが襲われるというのなら、たとえ今逃げたとしても追いつかれて襲われるでしょう。そんなのは御免よ、私はこんなとこで躓くつもりはないの。私は知を貸すしこの男は武を貸すわ」

長 「それはありがたい申し出ですが、2人増えたところで変わるとは思えません。それなら逃げた方があなた方のためです」

桂花「そう簡単に信用を得られるとは思ってないわ、北郷―――」

 

文若に呼ばれて、現実に意識が戻った。はっとしたものの理解が追いつかない。

 

一刀「お、おう。えっと、なんだ?」

桂花「剣を抜きなさい」

一刀「……はぁ!?」

 

 突然の文若の一言に俺は唖然としていたが、長の方は身構えて自身の得物に手を伸ばしていた。

 文若は毅然とした態度を崩さず言葉を続けた。

 

桂花「言葉が足りなかったわね。ただ武器を抜いて構えるだけよ。……長ならこれで言いたい事は分かるんじゃないかしら?」

長 「――っ!!」

一刀「ん?よくわからんが抜くだけだぞ?」

 

 そう前置きして剣を抜いた。これで良いかと文若を見ると、文若は俺を一瞥してから長に視線を向ける。そして長の方はというと、とても信じられないモノを見たという目つきで俺を、俺の目を見ていた。

 

桂花「…どうかしら?」

長 「……認めましょう。その方と一緒にいるあなたの知恵も信用するに値するでしょうし」

 

一応の信用を得て話は続く。このあとは具体的な部分を文若と長で確認しながら対策を立てていった。

終わってみれば、この場の空気は文若によって支配されていた。

間の取り方、的確さ、本質を見抜く力、話し方、それらを瞬時に組み立て同時にいくつもの考え方が出来ること。

今までの話の中でその片鱗を知ることが出来たがそれはあくまでも副産物、策を練ることそして実行することこそ文若の真価が発揮される場であるのだと。

 

俺はそんなことを文若の長とのやり取りを見てなんとなく思っていた。

 

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 そうして俺たちは、邑を護ることに協力することになった。

 俺たちは長の家の一室を借ることができ、ひとまず旅の疲れをとることようにと言われた。あてがわれた部屋に向う途中、文若と邑の長はおそらく防衛に関わることについて話していた……と思う。俺には聞こえないように二人とも話していたから内容は分からないけど、今話すことなんてそれしか浮かばないから間違ってはいないと思う。

……それにしては、文若が突然声を張り上げたり、顔を青くしたり赤くしたりしていたけど。

そして最後に、長は文若の耳元で何かを呟き、文若が俺をわなわなと指差して

 

桂花「こんなのとそんなおぞましいこと出来るわけないじゃないっ!!」

 

真っ赤に怒ったのを見て、カラカラと笑いながら戻っていった。

部屋に入ってイライラを隠すことをせずに

 

桂花「まったく!あんたのせいでとんでもない目にあったわっ!!」

 

と開口一番に文句をつけ始めた。まったく身に覚えがない……長からなにか言われたのだろうか?

 

一刀「え〜と、なんかあったの?」

桂花「なんでもないわよっ!!」

 

 

 

 

……これは流石に理不尽だと思う。

 

 

 

気を取り直して、俺は長とのやり取りに中で気になったことを口にする。

 

一刀「気になってたことなんだけど、話の途中で剣を抜くように言ったのはなんで?」

桂花「……あんた自分のこともわかんないの?」

 

文若はため息をつき、いかにもめんどくさい雰囲気を前面に出して教えてくれた、文若枕詞を忘れることなくつけて……

 

どうやら俺には武将の素質があるらしい。

武器を持って瞳が染まるのがその証……といわれても今までそんなことは無かったから、この世界に来てからのことだろうと思う。自分のことなのにどこか信じられない。変わったという実感がないからだろうか…そのくせ、今までになかった変化があるのに、それを受け入れようとしている自分がいる。

 

自分はどうなってしまったのだろうか……

 

などと考えていたら、いつの間にか文若が目の前にいた。

そして、文若はこれまでに何度か見た凛とした雰囲気を纏い

 

桂花「話を聞いていたのなら解っていると思うけど、今からここは戦場になる。だけど、逃げることは出来ない。逃げたらこれ以上に悪い条件で賊と遭遇する可能性があるから、ここで何とかしなくちゃいけない……だから、覚悟を決めなさい。北郷一刀」

 

俺の全てを見透かすようなその翡翠色の瞳で現実を突きつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生きるために、

 

 

―――奪われないために、

 

 

――――死なないために、

 

 

―――――殺されないために、

 

 

――――――守るために、護るために、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…人を殺す覚悟がいると。

 

 

……人殺しになる覚悟をしろと。

 

 

 

 

 

 

 

 

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あとがき

 

はじめましての方も、3度目の方も、

おはようございます。こんにちわ。こんばんわ。柳眉です。

 

今回の投稿ですが、0の日を過ぎてしまい期待してくださった方を裏切った結果になり申し訳ない気持ちでいっぱいです。

本当にすみませんでした。

 

え〜っと、3作目になる今回はいかがでしたか?

桂花のキャラ崩壊が止まりません。

原作とは離れて離れて取り返しがつかないとこまで行きそうです。

ホントにホントにごめんなさい、原作の桂花と桂花好きの方。

 

文章にしていく中で、どうしたら思わずニヤっってなるのか。

どうしたらいいテンポになるのか。

どうしたらキャラを巧く表現できるか。

いろいろ悩みは尽きないですが、どんどん書いて積み重ねて上達していきたいと思います。

 

もし、お読みいただいた方の中で評価していただけるのなら、アドバイスをいただけるのなら、嬉しいです。

 

 

最後になりましたが、ここまで目を通して頂きありがとうございました。

次にまみえるご縁があることを……

説明
この作品は真・恋姫†無双の二次創作です。
そして、真恋姫:恋姫無印:妄想=3:1:6の、真恋姫の魏を基に自分設定を加えたものになります。

ご都合主義や非現実的な部分、原作との違いなど、我慢できない部分は「やんわりと」ご指摘ください。

作品の感想・誤字脱字・一言言いたいなどありましたら、忌憚無く、バシッと言っていただけたら嬉しいです。「心は硝子」の柳眉が壊れないサジ加減で頼みます。

長くなりました、さあ、外史への扉を開きましょう。
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コメント
零壱式軽対選手誘導弾様 ここではなんとも……次回をば コメントありがとうございます(柳眉)
桂花にデレが入ってしまいそうな感じなのは気のせいでしょうか・・・?(零壱式軽対選手誘導弾)
jackry様 それが桂花ですっ!!…本作だと毒舌は略しがちですが  コメントありがとうございます。(柳眉)
ブックマン様 柳眉もそこを上手く書いていきたいと思ってます。 毎回コメントありがとうございます。(柳眉)
桂花の心がどう変わっていくか楽しみです。(ブックマン)
ジョン五郎様 フロイトの夢分析でしたっけ?身近なモノでも意外なモノを表していたりするんですよね〜 ツン桂花の塩梅はホントに…今後ともアドバイス頂いたら嬉しいです。 毎回コメントありがとうございます。(柳眉)
キラ・リョウ様 同感ですな。心は硝子の柳眉は凹んで喋れなくなりそうです…泣いてしまいそうで    ……なんてニヘ  毎回コメントありがとうございます。(柳眉)
閲覧して頂いた方々へ。投稿して1日、多くの方に目を通して頂きありがとうございます。ホントに嬉しいです。今後ともよろしくお願いします。(柳眉)
蛇は心理学で男性器を表すらしい。そういう意味では桂花らしいのかww 桂花のキャラですが、早いうちからアホの子みたいにデレデレしなければ大丈夫だと思いますよw(ジョン五郎)
相変わらずの毒舌ぶりでwww こんなこと言われたら誰だってへこみますよねぇ・・・(キラ・リョウ)
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真・恋姫無双 恋姫 恋姫無双 北郷一刀 桂花 

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