魏による天下三分の計が成された。

私の呉が負けちゃったのは悔しいけれど、

でも呉の民が笑顔で暮らせるのならそれでもよかった。

それにこれで堂々と"彼"に会うことができる。

それが嬉しかった。

魏の戦勝を祝う宴が終わると、

華琳が目元を腫らせてどこからか帰ってきた。

ともに姿が見えなかった"彼"の居場所を聞きたかったけど、

聞けるような雰囲気じゃなかった。

その後聞いたのは"彼"が役目を終え、

天の国に帰ったという華琳の報告。

魏の皆は、意気消沈していた。

そんな中私は･･････。

冥琳「･･････こんなところにいたのか雪蓮」

雪蓮が城壁で街を見ながら酒を飲んでいる。

何故かその背中は悲しみで押し潰されそうに見え声を掛けるのを少し躊躇ってしまった。

雪蓮「あれ冥琳？　全然気配を感じなかった」

雪蓮の場合どんなに気配を消しても気付かれないなんてこと今までなかったのに･･････。

冥琳「？　普通に近づいただけだけど･･････」

冥琳「あなたが近づく者の気配に気付かないなんて珍しいわね」

冥琳「それにしてもあなたはまた昼間から酒なんて飲んで･･････」

雪蓮「ん･･････」

冥琳「本当にどうしたのだ？　雪蓮が大人しいと調子が狂うぞ」

雪蓮「冥琳ったらヒドイんだ〜」

冥琳「･･････ふぅ。　どれ私も一杯もらうぞ？」

雪蓮「そっちだって珍しいじゃない？」

冥琳「三国の争いが終わってこれからが大変なときだがな」

冥琳「だが、争いが終わったのも事実」

冥琳「だからたまには雪蓮に付き合っても良いだろうと思ってな」

雪蓮「ふ〜ん･･････」

冥琳「･･････」

雪蓮「･･････」

冥琳「･･････」

雪蓮「･･････好きだったんだ〜」

冥琳「うむ･･････」

天の御遣いのことだろうか？

たしかに雪蓮はことあるごとに彼に興味を示していたが･･････、

まさか本当に好意まで持っていたとはな。

雪蓮「また･･････伝えられなかった」

冥琳「雪蓮？」

雪蓮「どうして･･････、どうして華琳だったの？」

冥琳「･･････」

雪蓮「どうして私じゃなかったの？」

まさか文台様が亡くなった時でさえ涙を見せなかった雪蓮が泣くなんて･･････。

それほどまでにあの男のことを･･････。

冥琳「雪蓮･･････」

何故かこのまま雪蓮も消えてしまうのではないかという思いに囚われ、

雪蓮の体を抱きしめてしまっていた。

「もう一度･･････一刀に会いたい」