愛することは罪ですか?
[全3ページ]
-1ページ-

 

世はままならない事ばかり。

どんなに願っても叶わない事の方が圧倒的に多い。

 

どんなに時を重ねても

             どんなに仲を深めても

                          どんなに愛を示しても

 

手に入らない、掴み取れない、この手に残らない。

それが人生だ、それが当たり前だ、などと言ってしまえばそれまでだけど

私はそんなの嫌だった。そんなものは認めたくなかった。

 

だから私は頑張った。誰よりも努力して強くなった。

だから私は頑張った。自分の価値を誰よりも知らしめて見せた。

だから私は頑張った。自分と等価値な物にお金を選んだ。

 

大切なものを失った。

大好きな人は遠くに行ってしまった。

そんな私を慰めてくれるのはお金だけだった。

お金は裏切らない。自分の価値はこれだけある!と知らしめてくれる。

お金は裏切らない。努力しただけの価値を私にくれた。

お金は裏切らない。裏切りようなんか無い、だってただの紙切れだもの…

 

それでも一人じゃ限界があった。

力の問題じゃない。この仕事をしていく上で、使える人材が欲しかった。

自分以下の価値で自分の為に役に立つ。いつでも切り捨てられる駒を。

 

そして私は彼に出会った。

安い時給で好きなだけ扱き使える都合のいい駒。

頭も悪くて、見た目もそんなに良くはなかったが、私の能力を

フルに発揮させるには十分だった。

どうせ、使えなくなったら捨てればいいんだから。

この世で大事なものはもうお金だけ…

 

-2ページ-

 

何時ごろからだろう?

私はちょっとだけ変わっていた。

一銭の得にもならない幽霊を雇ってからか?

人の良すぎる神父の手伝いをしてからか?

いや違う……

 

あいつのせいだ。

 

馬鹿なくせに愚直に私につき従う呈の良い駒。

 

そいつが初め裏切ったときは、あぁ、所詮こんな奴かと

ほんの少しだけ寂しくなった。いやきっと気のせいだけど。

 

あいつがどんな給料でもいいからと戻って来た時。

何故だろう、ほんの少しだけ寂しく無くなった。

 

馬鹿で

スケベで

本当にどうしようもない奴

 

横島忠夫

 

何時ごろからだろう?

アイツの価値が私の中で少しずつ変わって行ったのは?

初めはただの駒。

 

エミの所から戻ってきたときは

情け無いけど、思ったより使えそうな奴。

 

パイパーのときは

情け無いのは相変わらずだけど、多少は頼りになる奴。

 

GS試験のときに

少し使える馬鹿になって。

 

原始風水盤のときに

結構使える馬鹿になっていた。

 

中世期に行った時に

お金より価値は低いけど、多少は大事な馬鹿になり。

 

死津喪比女と戦うときに

それなりに大事な奴になり。

 

魔族の襲来のときに

お金より大事な奴が出来たと、心の奥で思い始めていた。

 

-3ページ-

 

横島忠夫

 

今では事務所の大切で掛け替えの無い仲間。

私と同程度…いや、こと戦闘力に関して言うならば

私以上になった、それでも変わらなかった馬鹿。

 

平安京に来たときに

あいつが死ぬのが怖くなって。

 

おキヌちゃんが戻ってきたときに

多少強くなっても変わらないあいつに安堵した。

 

月に行った時には

心の其処では頼りにしていて。

 

アシュタロスが攻めてきた時には

大好きな人になっていた。

 

アイツのおかげで私は変われた。

お金は相変わらず大事だが、それは私の価値を決めるものじゃなくなっている。

アイツのお陰で仲間ができた。

アイツのお陰で一人じゃなくなった。

アイツのお陰で少しずつ素直になれてきたと思う。

 

でも…

世は本当にままならない事ばかりだ。

アイツを好きになっても、それはもう叶わない。

アイツの心を砕いてしまったから。

アイツの最愛の人を見殺しにしてしまったから。

 

今の横島君を見ていると心が痛い。

あれはまるで昔の私だ。

私は誰も信用できないから、一人になった。

あいつは誰も信用できなくなってしまったから、演技を始めた。

 

あの、こっちの気分まで安らげてくれるはずの笑顔は

今では見るもの総てを傷つける。

知らない奴にはただの笑顔。何時も通りの馬鹿。

何も変わって無い、愛すべき馬鹿。

 

其れを信じているやつは大馬鹿者だ。

あいつの絶望を見た後で其れを信じているやつは屑だ。

私は、あの笑顔が怖い。

私は、彼が離れてしまうのが怖い。

 

横島君のお陰で私は強くなったけど。

横島君のせいで私は弱くなってしまった。

 

ほんとうにままならない…

どんなに願っても叶わない事の方が圧倒的に多い。

 

でも。この気持ちはどうしたらいいんだろう。

彼が好きだ。

彼を愛したい。

彼を護りたい。

そして…

彼に愛して欲しい。

彼に護ってもらいたい。

彼と共に歩んで生きたい。

 

でも無理だ、どんなに願っても、どんなにすがっても。

あの時になんて戻れない。神様にだってそんなことできやしない。

ほんとうに…ほんとうに人生はままならない。

 

愛する事は罪なんだろうか。

私は人を愛したらいけないのだろうか?

やっと…やっと、人を愛する事ができるようになったのに…

もう総ては遅すぎた。

 

だけど…あぁ……

其れでも私は彼を愛しています。

 

彼を愛する事が罪になるのなら、どんな罰でも喜んで受けよう。

 

一歩を踏み出そう。

これ以上壊れる前に、これ以上離れる前に。

勇気を出して。

 

「あのね…横島君………」

 

―End

 

説明
明日は何と休みなのです(歓喜
そのせいか、浮かれてしまってこんなものを書いてしまいました(汗
ほとんど何も考えないで書いたので。
30分で書けてしまいました、その分内容はしょぼいですが…

どこにでもある普通のお話ですが、良ければどうぞです。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
3924 3793 7
タグ
GS美神 美神 

白亜さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com