連載小説91?95
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ひとしきり買い物を楽しんだ私。

気付いたら一時間経っていて、

いくつかのお店で、いくつかの買い物をしていた。

 

 

 さて、楓の様子を確認するか。

「まずはメールで呼び出すか」

『楓〜、こっちは買い物終了。

そっちはどう?

どっかで落ち合おう』

 こんな内容のメールを打った。考えるまでもない、単純なものだ。

「さて、返事は来るかな」

 ブーン ブーン

 ケータイのバイブが鳴る。

「お、早い」

 楓は結構ケータイ不精だ。こんなにさっさと返事が来るなんて珍しい。

 私は早速ケータイを開いた。

「何々?」

『場所は?』

 う! なんて手短な。ま、それが楓らしいんだけど…

「さて、どこにするかな」

 私は買い物済んだし、加藤君の所まで行ってもいいんだけど、問題は楓だ。

楓は今戸のお店で買い物をしてるか分からない。真っ最中だとすると…

「下手にお店は出られないか…」

 じゃあ…

『場所は今いるお店の中でいいよ。お店の名前を教えて』

 これなら大丈夫だろう。

「さて…」

 私はネイル用の小粒たちを物色しながら返事を待った。

「…」

 ブーン ブーン

「お、来た」

 どれどれ? 私は再びケータイを開いた。

『店の名前が分からん。なんか、Bで始まる名前』

 な!

「何これ…」

 どうしよう。どうしよう、この楓の適当っぷり。

 私は途方に暮れながら、案内板に向かった。

 

 

〜つづく〜

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キーワードは「B」

楓は「B」で始まるブランド名のお店にいる、て言って来た。

ま、それはいいんだけど…

 

 

「はぁ」

 案内板を前に、私はため息一つ。だって…

「このフロア、全部Bで始まる名前だっつの…」

 フロアごとにお店の名前やブランド名の頭文字を統一させるのが、

ここのやり方。これじゃあ、探しようがない。

「仕方ない。案内板を写メすれば伝わるっしょ」

 幸い、案内板に載ってるお店の名前は、全部それぞれの字体で書かれてる。

これを写メすれば、ぱっと見で分かるはずだ。

「えいっと」

 いやぁ、技術の進歩はすごいもんだ。後は、楓の返事を待つばかり。

「………」

 少しして、楓からの返信が来た。少し、遅いかな?

「えぇっと?」

『分からん』

 げ。何だって!

「わからんって…どんだけいい加減なのさあの子…」

 えぇい! こうなりゃ片っ端から回るしかない!

 それが効率的かどうかなんて、私には見えなかった。とにかく探すのみ、

その思考に支配されていた。

 お店を片っ端から回れば、絶対再会できる。一応、

『そのお店から動かないで』

 とは伝えておく。

「さて、探すぞ!」

 私は早足でフロアを駆け抜けた。

 

 

〜つづく〜

-3ページ-

フロアを駆け抜ける私。

さあ、どこの店にいるんだ!

 

 「Bosh」「Breche」「Benty」「Bwelg」…

「えーい、一体どこにいるんじゃ!」

 駆け抜ける駆け抜ける。お店の人にしてみれば、「さっきのお客さん、

なんで急いでるんだろう」なんて変な人に映ってるだろうな。

「次は『Brosso』、ここで最後のはず!」

 どこだ! さっそくお店の中に入り、中を探してみた。

「えぇと…ここが最後だから、絶対いるはず!」

 楓〜、どこだ〜!

「て、なんでいないの?」

 あれ? おかしくない? ねえ。

 私は焦るよりも何よりも、クエスチョンマークだった。

「えーと…?」

 仕方ない。お店の人に訊こう。私はケータイを開いて、前楓からもらった

自分撮り写真を開いた。

「あのー」

「はい」

 そして、おもむろにその画像を見せる。

「この子、来ませんでした?」

「あぁ、そのお客様でしたら、他のお店に行かれましたよ?」

 えぇっ! 動かないでって言ったのに!

「それって…いつ頃ですか?」

「ん〜、五分くらい前でしたね」

 五分前か! じゃあ微妙だ! 気付くタイミングにもよるだろうし。

「ありがとうございました!」

 でも、今まで会わなかった上にここにいないとすると、どこだ?

 どこにいるのか、私は思案を巡らせた。

(楓が移動するとしたらどこだ。楓が私のメールに気付いたのはいつだろう)

 よし、あそこしかない!

 

 

 私は狙いを定めてあのお店に向かった。

 

 

〜つづく〜

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一つの確信を持って私が向かったのは、「Benty」。

ここは、スポーツカジュアルな服を売ってるんだ。

 

 

「ここなら!」

 まずは店の中を探す。

「えぇと…?」

 いない?

「なんで?」

 なんでいないんだ? もちろん、ここが正解だって保証はないけど…

「あの〜」

 私はここでも例の作戦に出た。これなら確実だ。

「はい、なんでしょう」

「あの、この子、いませんでした?」

 楓の自分撮り画像に、店員さんは訳知り顔になった。よし!

「あぁ、このお客さんでしたか。このお客さんなら立った今…」

「え?」

 た、立った今? ちょっとそれ、どういう事?

「立った今、出て行ったんですよね?」

「えぇ」

 なんで言う事きかないんだ! 楓は!

「あの、どこに行ったか、分かりませんか?」

「あぁ、そこまでは…でも、エレベーターの方に出て行きましたよ?」

 ふむ。

「ありがとうございます!」

「え? ??」

 くそー! 行き違いも、言うことを聞いてないのも、なんでなんだー!

 

 

私は再び駆け出した。

 

 

〜つづく〜

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エレベーター方面に向かったと言う情報を元に駆け出す私。

とりあえず、エレベーターへ一直線だ。

 

 

「他のお店に行く可能性もあるけど、今は除外!」

 エレベーターまではすぐだ。駆け足、てわけには行かないけど、

早足で言ったらすぐにたどり着く。

「ん、あれは!」

 エレベーター脇の案内板の前に、見慣れた小娘がいる。

「楓!」

「? おぉ、えりか。どしたの」

 ようやく会えた楓は、随分ひょうひょうとしてる。

「どしたのじゃないよ! なんで一つ所にいないのさ!」

「へ。なんで?」

 ぬなっ! まさかメールをチェックしてない、て可能性はないはずだ、

なのにこの反応はなんでじゃ!

「メールしたじゃん! 動かないでって」

「あぁ、そういえば。すっかり忘れてた」

 え?

「忘れてた? そんなの通じないよ、全く…」

「でもなぁ〜」

 でも? 何か言い分でもあるんだろうか。

「でも、何」

「メール見た時は、動かないでいようって思ったんだよ。でもさー、

服見てたらついついいても立ってもいられなくなっちゃって、忘れちった」

 はぁ、ため息だよ。

「楓…もういいや」

「もういいの?」

 楓に何かを期待するのは、それだけで難しいって、改めて悟った私。

「で、買い物は大丈夫?」

「ああ、そうだった! それそれ! 来て!」

 え?

 

 

私は楓に引っ張られるままに、どこぞのお店へと連行されて行った。

 

 

〜つづく〜

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第91回から第95回
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