連載小説96?100 |
来て欲しいと、楓に連行された私。
一体どこのお店に行こうって言うの?
「このお店なんだけど〜、いい服があってね〜」
「Beuche(ボイシェ)か。ほうほう」
私の判断を仰ぎたいわけだね? 殊勝でよろしい。
「で、見るのは値段? デザインや色?」
「値段。センスに関しては、誰のアドバイスも受けない事にしてるし」
そういえばそうだった。似合ってようと似合ってなかろうと、
楓は自分のセンスを大事にするんだった。
「ま、とりあえず見せてよ」
「うん。えーと…」
お店の中を物色して、店員さんを捜し出すと、楓は何かしら話しかけた。
「ちょっと待っててくださいね」
「もしかして、お取り置き?」
「おうよ」
一歩進化したな? 楓。
「お待たせしました〜」
「あ、どうもー。で、これ、どうよ」
「これ?」
このお店のカラーは無地を中心にしたデザインのはず。どれどれ?
「これかぁ…うわっ! ちょっと楓…これが欲しいわけ?」
「そうだよ」
私は思わず絶句しちゃった。
〜つづく〜
楓に見せられた「欲しい服」。
私は思わず絶句してしまった。
「ちょっと楓…」
楓を引っ張りだして、店員さんに聴こえないように言った。
「本当にこれが欲しいわけ?」
「当然」
楓の目線は揺るいでない。本気だ…
「だってこれ…」
「何か問題でもある?」
緑色に鱗柄。正直、魚? て思うし、そもそもここの売りは無地中心。
なんで? なんで?? なんで???
「問題っていうか…仮装パーティじゃないんだから…」
「でも、面白いでしょ?」
お、面白いってのは認めてるのか。というか、そういう問題でもない気が…
「で、欲しいって気持ちはよしとしよう。問題は値段だ…」
私は値札をチェックする。
「ご、五千円? ちょっとさぁ、あり得ないんだけど。この値段でこのネタ柄?」
「ど、どう思う? 私としては、ここを外したら他には手に入らないと思うんだけど…」
無駄な買い物になるか、はたまた大満足になるか。紙一重だなあ。
「予算的にはどうなの?」
「予算的には大丈夫。だけど、高い事には変わりないから」
そこまで分かってるなら…諦めるって選択肢もあるだろうに…
「で、楓さん的には後悔しないんだね?」
「うむ。後悔するくらいなら選んでない」
だったらもう、私から言える事はないかな。
「じゃ、買いな。納得できる買い物なんでしょ?」
「よし、やたー!」
私の判断を仰ごうって言う所はかわいいけど、このセンスは理解できん!
「じゃ、買って来るから」
「おーう。私は通路で待ってるからねー」
私は通路に出て、嬉々としてお金を払ってる楓を見ていた。
〜つづく〜
あの変な服を無事(?)買った楓。
私の所に戻って来るその姿は、とても嬉しそうだった。
「えりかー。買ったよー!」
「あー、はいはい、よかったですねぃ」
私は乾いた返事を返すしかできない。何しろ、魚の服だ。
「で、楓は他に見たい所あるの?」
「んー、ないや」
そっか。じゃあ加藤君の所に戻るか。
「りょーかい。加藤君待たせてるし、行こうか」
「うむ」
私達はベンチのある所まで戻って行った。
「お待たせー」
「おう。随分待たせたな」
「卑屈な言い方だねぇ、それ」
とは思う物の、待たせたのは私達の都合もあるから、何も言わないでおこう。
「この階の買い物は済んだし、次に行こうと思うんだけど、いいよね?」
「そりゃ、お任せだ」
よし、次の階に行こう。
「とその前に、お腹空かない?」
「腹か…確かにもう昼だよな」
五階はカフェがある。私はそこでご飯を食べるつもりだった。
「楓は大丈夫?」
「大丈夫。飯にしよう」
「で、どこに行って何を食うんだ? 俺、この辺詳しくないぞ?」
行くのは下の階、余裕だ。
「ま、私について来なさいって」
「お、おう」
「えりかさんにお任せしよう」
私はパーティのリーダーとなって、エスカレーターに向かった。
〜つづく〜
食事をすべく五階に降りて来た私達一行。
さて、何を食べようかな。
「加藤君、嫌いな物とかアレルギーとか、ある?」
「俺か? いや、なんもねーつもり」
つもりって、なんやねん。
「ちょっと、なんで私には訊かないのさ」
「え? だって、楓の好き嫌いはとうに把握済みだもの」
この言葉で納得する楓。そりゃそうだ。これで納得できないとすると、
一体この短期間に何があったのかと思うし。
「じゃ、どのお店でもいいね?」
「ああ」
「私も」
ふむ、じゃあどれにしようかな。っと、もう一個あったんだった。
「二人とも、お腹の好き具合は? 量の少ないお店だったら困るとか、
量の多いお店だったら困るとか、どう?」
「あー、俺は多めの方が」
「あー、私は少なめの方がいいなー」
ちょっと、なんで違う事言うんだよ、この二人。
「楓、わざとじゃないよね?」
「当然。だって、私か弱い小娘ですもの」
うさんくさい言葉だよ、全く。
「か弱い小娘が聞いて呆れるようなエピソード、私はいくつも知ってるけど?」
「いいのいいの。とにかく、どこにいくわけ?」
ふむ、やっぱり問題はそこか。
「えーっと、完全に私のセレクトで大丈夫?」
「俺はどこでもいい」
「私も美味しければどこでもいい」
楓はどちらかと言うと、口に入れば何でも美味しいってタイプだ、
心配はないって事になるな。
「じゃ、付いて来て」
私は二人を案内して、行った事のあるお店への案内を決めた。
やっぱ、行った事のあるお店が無難だし。
〜つづく〜
私はお昼ご飯を取る為に、とあるお店に入った。
さて、二人の反応やいかに。
「ここ」
「おお!」
「すげえ」
お店の名前は「Calib」どうやらカリブの海賊を意識してるっぽい。
入り口はクロスボーンになってるんだけど、某王国のイメージだろうか。
とにかく雰囲気がいいのである。
「いらっしゃいませ。三名様でよろしいでしょうか」
「はい」
店員さんに案内されるまま、私達はテーブルへ通される。
「中も凄いね、これ」
「海賊船って感じなのか?」
「そうそう。船室だって」
床はフローリング、壁も木造。窓はあるけど飾り窓。その窓の先には、
夜空と水面、それに水平線が見える。
「だけど、ホントいい感じだねー」
「でしょ? ここは外れはない」
「男の冒険心をくすぐる感じだよな」
よしよし、好評だ。
「天井にシャンデリアが見える」
「その割にまぶしくねーんだな」
飾りじゃないけど、照明を落としたシャンデリアからは、緩やかに光が。
「でね、耳を澄ましてみて?」
「耳?」
「何かあるのか?」
周りの声をできるだけ追い払うように、二人はそっと耳を澄ましている。
「波音か? これ」
「木の音もするねえ」
「でしょう?」
そうなのだ、ここはあくまでも船の中って事で、それを意識した音がするのだ。
「こってるねー、ここ」
「そう。だから連れて来たんだけどね」
「で、メニューはどうなってるんだ?」
加藤君はやっぱりそっちが先か。ロマンの欠片しかない奴め。
「メニュー? はいどーぞ」
「お、悪い」
メニューはメニューで、昔風になってる。
「さ、好きなの選んで。リーズナブルだから、そんなに遠慮はいらないはず」
「おう」
「どれどれぇ?」
メニューは二冊しかない。私は楓と一緒にメニューを眺めた。
〜つづく〜
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第96回から第100回 | ||
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