英雄伝説〜灰の騎士の成り上がり〜
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〜ハーケン平原〜

 

「ええっ!?それじゃあ彼女の推測は全て当たっているんですか、教官……!?」

「”正確に言えば90点”だけど、”残りの10点”は私のようなメンフィル帝国の上層部しか想定していない事態が関係しているから、メンフィルと何の縁が無かったにも関わらず今までの情報だけでそこまでの考えに到った彼女は文句なしの100点満点よ。」

セシリアの答えを聞いたその場にいるほとんどの者達がそれぞれ血相を変えている中フランツは信じられない表情でセシリアに訊ね、訊ねられたセシリアはトワを感心した様子で見つめながら答えた。

「フフ、”メンフィル帝国の上層部しか想定していない事態”か。弟弟子も関係しているから”斑鳩”の副長としてもそうだけど、私個人としても興味深い話だが”部外者”の私達もいるこの場で話してもいいのかな?私が想像するに自分達に”利益”があれば協力的な”黒月”はともかく、古代遺物(アーティファクト)の関係も含めて外交関係が微妙な”教会”あたりには聞かせたくない話だと思うのだけど?」

「ハハ、さすがは”白銀の剣聖”殿。見事な洞察力です。」

「あ”?”戦争”を食い物にしている上、その古代遺物(アーティファクト)を巡ってあたし達の敵になる”猟兵”のテメェらにだけは言われる筋合いはねぇぜ。」

意味あり気な笑みを浮かべたシズナのセシリアへの指摘にチョウは笑顔で指摘し、セリスは顔に青筋を立ててシズナを睨んだ。

「別に構いませんわ。七耀教会――――――いえ、”この世界の宗教組織は私達の世界の宗教組織のように自分達の信仰の為に国を滅ぼす”と言った事まではできないでしょうから。」

「い、”異世界の宗教組織は自分達の信仰の為に国を滅ぼす”って……!」

「―――――所謂”宗教戦争”ね。信仰対象が”空の女神”しか存在していなかったゼムリア大陸にとっては無縁の言葉だけど……」

「信仰の為に国を滅ぼすとか、異世界の宗教組織はどんな頭がイカレタ宗教組織だっつーの。」

セシリアの答えを聞いたエリオットは信じられない表情で声を上げ、セリーヌは目を細めて呟き、アッシュは呆れた表情で呟いた。

「……それよりもそういう事を口にしたという事はまさか、メンフィル帝国は異世界で異世界の宗教と既に戦争をしている、もしくは戦争勃発寸前の状況なのですか?」

「”小競合い程度ならそれなりの頻度”で起こっていますが、”戦争”と呼べる程の”規模”の戦いまではまだ起きていません。――――――ですが”近い将来とある宗教組織とメンフィル帝国の本格的な戦争が勃発する事は確実であると、我々メンフィル帝国の上層部達は確信していますわ。”」

「ち、”近い将来戦争が勃発する事を確信している”って……!」

「異世界には複数の神々が存在していて、それぞれの神々を崇める宗教組織も多い話は聞いていますが……一体どのような宗教組織なのですか?」

真剣な表情を浮かべたトマスの問いかけに答えたセシリアの驚愕の答えにその場にいる多くの者達が血相を変えている中、エリオットは信じられない表情で声を上げ、エマは不安そうな表情で訊ねた。

 

「――――――”マーズテリア神殿。”紅き翼の皆さんもそうですが、3年前の”リベールの異変”や”影の国”に関わった遊撃士の皆さんでしたら一度は耳にした事がある宗教組織ですわよね?」

「マ、”マーズテリア神殿”って確か………」

「現メンフィル皇帝の母親にして”メンフィルの守護神”と称えられたあの聖騎士――――――シルフィアが信仰していた宗教だな。」

「ああ………――――――そういえば皇子達の話によると確か彼女は現在の蛇の使徒――――――”鋼の聖女”と呼ばれる存在にして250年前の獅子戦役で活躍した英雄の一人でもある”槍の聖女”と呼ばれる人物に転生したのだったな。……まさかとは思うが、今の話にその件が関係しているのか?」

セシリアの話を聞いたアネラスとアガットはある人物―――――”影の国”でであった現メンフィル皇帝シルヴァンの産みの母にしてリウイの側妃の一人でもある聖騎士シルフィアを思い浮かべ、ある事に気づいたジンは真剣な表情で確認した。

「フフ、さすがは”S級候補”の一人に挙がっている”不動”殿。やはり、3年前の”リベールの異変”の解決に貢献した遊撃士の方々は”零駆動”殿や”紫電”殿のような浅はかな方々とは違いますわね。」

「ああん!?トヴァルはともかく、あたしまで例にあげるなんて、やっぱりアンタも”殲滅天使”達のようにあたしの事を”脳筋”だと馬鹿にしているのね!?」

「ちょっ、落ち着いて下さい、教官!セシリア将軍は教官の事をそこまで言ってませんよ!?」

「というか何気にトヴァルが酷い扱いをされていても否定や反論もしないで、自分の事しか反論しないサラも結構酷いよね。」

「フィ、フィーちゃん……」

「サラもそうだがフィーも、今はそんなことを気にしている場合じゃねぇだろうが……」

「ジンさんの推測に対して感心しているという事は、ジンさんの推測――――――”槍の聖女がシルフィアという聖騎士の生まれ変わりである事実とマーズテリア神殿との戦争勃発”が関係しているというのは本当なのですか?」

感心した様子でジンを賞賛したセシリアの答えにアリサ達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中顔に青筋を立てたサラは怒りの表情でセシリアを睨み、サラの様子を見たマキアスは慌てた様子でサラを諫めようとし、ジト目で呟いたフィーの言葉を聞いたエマは冷や汗をかき、クロウは呆れた表情で呟き、アンゼリカは真剣な表情でセシリアに訊ねた。

 

「ええ。あくまで私達メンフィル帝国の上層部の推測にはなりますが、”間違いなくその事実を切っ掛けにして最終的には戦争が勃発すると我々は確信していますわ。”」

「何故サンドロット卿がそのシルフィア卿という聖騎士の生まれ変わりである事実にそのマーズテリア神殿という宗教組織がメンフィル帝国に戦争を……殿下達の話によれば、シルフィア卿はメンフィル帝国の多くの人々から”メンフィルの守護神”とまで称えられる程の高潔な人物だと伺っておりますが……」

「しかもその”マーズテリア”?っていう宗教組織の聖騎士でもあったんだよね?なのに、その聖騎士の復活を知ったマーズテリアがメンフィルに戦争を仕掛けるとか意味不明だよ〜。」

アンゼリカの問いかけを肯定して答えたセシリアの話が気になったラウラは戸惑いの表情で、ミリアムは疲れた表情でそれぞれ訊ねた。

「あー………なるほど、”そういう事か。”」

「確かにシルフィア様の復活を知ったマーズテリアなら間違いなく我が国に対してシルフィア様の復活が誤りであったこと国民達に周知させろみたいな要請をするでしょうね。」

「ああ……そしてそれを拒んだ我が国にその件を理由に戦争を仕掛けてくる事は十分に考えられるな。」

「今の話だけで”ある程度を察した”黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)の皆様の反応からして、どうやらメンフィル帝国の皆様にとってはその”マーズテリア神殿”という宗教組織にシルフィア様、そしてメンフィル帝国は何らかの因縁で有名なようですわね?」

一方クロードは疲れた表情で納得し、複雑そうな表情で推測したイングリットの推測に対して頷いたディミトリは厳しい表情を浮かべ、クロード達の様子を見てある事に気づいたシャロンは静かな表情で指摘した。

 

「ええ。シルフィア様の件はディル=リフィーナにある”本国”全土でこちらの世界の”日曜学校”のように、メンフィルの民達の税金によって建てられた学術機関に通う子供達全てにメンフィル帝国の歴史の一部として必ず教えていますし、私やリィン達もそうですが、エリゼやルクセンベール卿のように軍人じゃなくてもゼムリアから”本国”に勤めに来た人達も必ず学ばされる歴史の一部ですよ。」

「メンフィルの軍人としてゼムリアからメンフィルの”本国”に勤めに来たリィンや貴女達にそのシルフィア卿という方の事を学ばすのはわかるけど、どうして”侍女”として勤めに来たエリゼさんにまで……」

「メンフィルとシルフィアという聖騎士、そしてマーズテリア神殿という宗教組織の間に一体何があったんだ?」

シャロンの指摘を肯定したリシテアの話を聞いたアリサは不安そうな表情で疑問を口にし、ガイウスは真剣な表情で訊ねた。

「――――マーズテリア神殿によるシルフィア様の”神格位剥奪”よ。」

「”神格位剥奪”って何?」

「………”神格位剥奪”とは神々から”神核”を与えられて”神格者”に到った人物がその”神核”を与えた神々、もしくはその神々を信仰する宗教組織に対する反逆行為等を行う事でその”神核”が剥奪されることを指す。」

「……ちなみに”神核”を失った”神格者”は”消滅”するんだよ。」

「それと”神核”は”魂と同化”している事から、”神格者の消滅”は”魂の消滅”をも意味しているから、”神核”を剥奪された”神格者”は”転生すらも絶対に不可能”なんだ。」

静かな表情で答えたエーデルガルトの答えが気になったフィーの疑問に対してドゥドゥーは重々しい様子を纏い、アメリアとフランツは悲しそうな表情で答えた。

 

「た、”魂の消滅”って……!」

「………”神格位剥奪”とは実質”神格者の処刑”か。」

「それも”転生すらも絶対に不可能な処刑”とか、普通の処刑よりも酷すぎだろ……」

「”神格位剥奪”が行われる理由は”神核を与えた神々やその神々を信仰する宗教組織に対する反逆行為”と言っていたが、シルフィア卿はマーズテリア神殿に対してどのような反逆行為を行ったのだ?」

ドゥドゥー達の説明を聞いた仲間達がそれぞれ血相を変えている中アリサは信じられない表情で声を上げ、ユーシスは真剣な表情で呟き、クロウは疲れた表情で呟き、アルゼイド子爵は静かな表情でセシリア達に訊ねた。

「リウイ陛下達――――――”メンフィル帝国の理想である光と闇の共存に共感し、リウイ陛下に忠誠を誓った事です。”」

「ええっ!?ど、どうしてメンフィル帝国の理想に共感し、リウイ陛下に忠誠を誓った事で、そのマーズテリア神殿という宗教組織はシルフィア卿の”神格位剥奪”を行ったのですか!?」

ステラの答えを聞いたセドリックは驚きの表情で声を上げて疑問を口にした。

「それはリウイ陛下達が建国した”メンフィルが闇夜の眷属の国であり、シルフィア様が忠誠を誓ったリウイ陛下も闇夜の眷属であるから”ですわ。」

「”メンフィルが闇夜の眷属の国であり、シルフィア卿が忠誠を誓ったリウイ陛下も闇夜の眷属であるから、シルフィア卿の神格位剥奪を行った”……?」

「意味不明だよ〜。」

「……――――――!そういえば、以前殲滅天使はディル=リフィーナは宗教や神々、それに人間や異種族もそれぞれ”光陣営”と”闇陣営”に分かれて争っている世界のような話を口にしていたわよね?」

「あ……っ!」

「そして”闇夜の眷属”は”光陣営”の宗教からすれば、”魔族”――――――つまり、”闇陣営”に値する為、その”闇夜の眷属”の血を引くリウイ陛下に忠誠を誓い、”闇夜の眷属”の国となったメンフィル帝国の”守護神”としてメンフィル帝国を支えたシルフィア卿のその行為をそのマーズテリア神殿という宗教組織は”反逆行為”と捉え、シルフィア卿の”神格位剥奪”を行ったという事ですか?」

セシリアの説明の意味がわからないガイウスが考え込み、ミリアムが疲れた表情で呟いた後ある事に気づいたサラはある事実を口にし、その事実を聞いたエリオットは声を上げ、トワは複雑そうな表情で自身の推測をセシリアに確認した。

 

「ええ、まさにその通りですわ。ちなみに今までの話の流れで既に察しているとは思いますがマーズテリア神殿は”光陣営”の宗教組織――――――それも、”筆頭”と言っても過言ではない宗教組織です。」

「そ、そんな………ただ、”敵対している勢力に所属”――――――それも、単なる敵対勢力ではなく”互いに憎しみ合っていた勢力を和解させ、共存させる事を理想とする国”とその王――――――状況によっては”中立勢力”にもなり得るメンフィル帝国とリウイ陛下に仕えただけで、そのマーズテリア神殿という宗教組織は何故そのような惨い事ができるのですか……!?相手は同じ神を崇める信徒――――――それも”聖騎士”の称号もある程信仰が篤い信徒でもあるというのに……」

「恐らくはそれが”ディル=リフィーナの宗教組織の在り方”だからなのでしょうね。結社と教会が決して相容れない関係のように、”光陣営”の”筆頭”でもあるそのマーズテリア神殿という宗教組織にとっては”闇夜の眷属”は決して相容れない存在なんでしょう。」

「ハッ、しかもそのマーズテリアとやらは”光陣営”の”筆頭”の宗教組織でもあるから、”例外は絶対に許さない”ってのもあったんだろうよ。」

トワの推測を肯定して説明を続けたセシリアの話を聞いたロジーヌは悲痛そうな表情で声を上げ、トマスは複雑そうな表情で、セリスは鼻を鳴らして忌々し気な様子でそれぞれの推測を口にした。

「あん?だが、そのシルフィアとかいう聖騎士は”槍の聖女”として生まれ変わっているのだから、その”神格位剥奪”とやらは失敗したんじゃねぇのか?」

「そ、そういえば………」

一方ある矛盾に気づいたアッシュはその矛盾を口にし、それを聞いたセドリックは困惑の表情を浮かべた。

「その件に関しては、”今の状況のように、並行世界の奇跡によるもの”でしょうね。」

「そ、それって……」

「”並行世界の零の御子による奇跡”――――――”因果改変”ね。」

「…………………」

(ヴァン………?)

セシリアの推測を聞いて察しがついたエリオットは複雑そうな表情で答えを濁し、セリーヌは目を細めて答えを口にし、寂しげな笑みを浮かべたヴァンの様子に気づいたエレインは眉を顰めてヴァンを見つめた。

 

「―――――その通りです。」

するとその時女性の声がその場に響き渡った後銀の騎神――――――アルグレオンが転位で現れた!

「銀の騎神――――――サンドロット卿……ッ!」

「おいおいおい……!この場にアンタが現れたって事は、アンタまで俺達の足止めを担当しているって事かよ!?」

「ちょっ、シズナさん達に加えて”槍の聖女”まで僕達の足止めに充てるなんて、戦力の割き方がおかしいんじゃないのか!?」

銀の騎神の登場に仲間達がそれぞれ血相を変えている中ラウラは真剣な表情で声を上げ、クロウとマキアスは表情を引き攣らせて指摘した。

「それだけ、連合もそうですが灰獅子隊も今回の要請(オーダー)を紅き翼(あなたたち)の介入によって変化する事を恐れている証拠なのでしょうね。――――――それにシュバルツァー少将達にはデュバリィ達に加えてロゼも加勢していますし、何よりもシュバルツァー少将が今までの出会いによって”絆”を結んだ心強き存在も共にいるのですから心配は無用です。」

「お祖母(ばあ)ちゃんまで直接学院長を討つつもりでいるリィンさん達に加勢しているなんて……」

「”今までの出会いによって絆を結んだ心強き存在”………ベルフェゴール達の事ね………」

「確かにただでさえリィン達にはヴァリマールに加えてエリスとエリゼ――――――”金の騎神”と”神機”の協力まであるのに、そこに鉄機隊にロゼ、ベアトリース以外のリィンの使い魔達全員まで加勢したら、学院長達にとっては分が悪すぎる相手になるだろうね。」

リアンヌの話を聞いたエマとアリサは複雑そうな表情を浮かべ、フィーは真剣な表情で分析した。

 

「………なるほど……今までの話でおぼろげではあるが、ハーシェル艦長代理が先程口にした”メンフィル帝国がエレボニア帝国の存続を許す理由を作る為に隠されているメンフィル帝国の真の思惑”が見えて来たな……」

「それはどういう事ですか、父上……!?」

するとその時考え込んでいたアルゼイド子爵が真剣な表情で呟いた言葉を聞いたラウラは驚きの表情でアルゼイド子爵に視線を向けて訊ねた。

「恐らくメンフィル帝国は将来勃発すると確信しているそのマーズテリア神殿――――――いや、最悪は”メンフィル帝国の件を切っ掛けに勃発する光陣営と闇陣営の全面戦争に全力を注ぐ為にこの戦争で滅ぼすつもりでいたエレボニアを存続させる事で、エレボニア――――――いや、ゼムリア側のメンフィル帝国の内政もそうだが、外交の絶対的な安定化”を図っているのだろう。」

「ひ、”光陣営と闇陣営との全面戦争”って……!」

「そのマーズテリア神殿は”光陣営”の”筆頭”に等しい宗教組織との事ですから、マーズテリア神殿がメンフィル帝国を滅ぼす為に同じ”光陣営”の宗教組織や国家に連合の呼びかけをして連合を組んでメンフィル帝国に戦争を仕掛けるでしょうし、対するメンフィル帝国も”闇夜の眷属”の国である事から恐らく”闇陣営”の宗教組織や国家ともある程度の親交があると思われますから、当然”闇陣営”の宗教組織や国家に連合の呼びかけをして連合を組んで対抗するでしょうね。」

「それどころか”闇陣営だけでなく、メンフィル帝国と親交がある光陣営の宗教組織や国家とも連合を組む”かもしれないな。メンフィル帝国は”光と闇の共存”を理想としている事から、”闇陣営”だけでなく”光陣営”の宗教組織の一部も自国の領土で活動する事も受け入れているようだからな。」

「あっ!」

「”癒しの女神”――――――”イーリュン”を信仰する”イーリュン神殿”かっ!!」

厳しい表情を浮かべて口にしたアルゼイド子爵の推測を聞いたアリサは信じられない表情で声を上げ、シャロンとジンは真剣な表情で推測し、ジンの話を聞いて”癒しの女神”――――――”イーリュン”の信徒にしてメンフィル帝国の皇家の関係者でもあるティナとティアを思い浮かべたアネラスとアガットはそれぞれ声を上げた。

 

「フフ、”イーリュン神殿”に限らずメンフィル帝国と親交がある”光陣営”の宗教組織や国家も”闇陣営”と比べれば数は少ないですが存在していますし、そもそもマーズテリア神殿は”光陣営”の中でも強大な勢力である事から高圧的な態度を取る事が多く、その件で同じ”光陣営”の宗教組織や国家に不快感や不信感を持たれたりしているとの事ですから、マーズテリアが連合を組んで我が国に戦争を仕掛けた所でマーズテリアの連合を崩す余地が十分にあると我が国は考えていますけどね。」

「”強大な勢力である事から高圧的な態度を取る事が多く、その件で他勢力に不快感や不信感を持たれたりしている”、ですか。フフ、まるで今のエレボニアのような宗教組織のようですね、そのマーズテリアとやらは。」

「………………」

「貴様……ッ!我が国を……皇帝陛下を侮辱しているのか!?」

「確かに今回の戦争の件を抜きにしてもエレボニア――――――オズボーン宰相による強引な政策を考えたら他勢力からそんな風に見られても仕方ないかもしれないけど、”黒月(ヘイユエ)”のあんた達にだけは言われる筋合いはないわよっ!」

セシリアの指摘を聞いて静かな笑みを浮かべて呟いたチョウの言葉を聞いたセドリックは辛そうな表情で黙り込み、ユーシスとサラは怒りの表情で反論した。

「それよりもラウラのお父さんの推測を肯定したって事は、メンフィルはその”マーズテリアを含めた光陣営との全面戦争に向けて、エレボニアの件も含めて色々と考えている事”は本当のようだね〜。」

「そ、その……シルフィアさんには失礼を承知で言いますけど、シルフィアさんの復活の公表によって戦争が勃発することがわかっているのでしたら、公表しなければ戦争は避けられるんじゃ……?」

真剣な表情で呟いたミリアムに続くようにアネラスは複雑そうな表情でセシリアに訊ねた。

 

「―――――それは絶対にありえません。”メンフィルの守護神の復活”は我が国にとっては”聖皇妃”――――――イリーナ皇妃陛下の復活に並ぶ程の慶事になりますし、何よりもリウイ陛下達によるメンフィル建国後陛下達に仕えれば、いずれ”神格位剥奪”をされると理解していながらも、陛下達の理想に共感し、”神格位剥奪”がされるその時まで”メンフィルの守護神”として我々を護り続けて頂けたのですから、そんなシルフィア様の復活を隠すといったシルフィア様にもそうですが、”神格位剥奪”後もシルフィア様を慕い続けた国民達に対する失礼な真似等陛下達もそうですが、国民達も決して許さないでしょう。――――――ましてや我らメンフィルにとっては因縁深いマーズテリア神殿。そしてマーズテリア神殿もまた、我らメンフィルをいつか必ず滅ぼさなければならない対象としているでしょう。――――――マーズテリア神殿は我らメンフィルにとってはいずれ雌雄を決さなければならない相手なのですから、今更怖気づく道理等ありませんわ。」

「……魔道軍将殿はああいっているが、”当事者”の貴女はそこの所、どう思っているんだ?」

アネラスの指摘に対する答えを口にしたセシリアの答えを聞いたジンは真剣な表情でリアンヌに問いかけた。

「………リウイ陛下達が目指す理想に共感し、陛下に忠誠を誓ったあの時から私は私が選んだ道を後悔していません。――――――例えそれが私が信仰し続けたマーズテリアに刃を向ける事になろうとも。」

「要するにそのマーズテリア神殿とやらと全面戦争になっても、”英雄王”達の理想の為に心置きなく戦うって事かよ……」

リアンヌの答えを聞いたアガットは複雑そうな表情で呟いた。

 

「そんなことよりも今の話にリィンやエレボニアの件がどう関係してくるんだ?」

「…………多分だけど、メンフィル帝国はリィン君には”ゼムリア大陸側のメンフィル帝国の英雄としての勇名”でゼムリア大陸側のメンフィル帝国の領土を内政・外交共に絶対的な安定化をしてもらって、マーズテリア神殿を含めた”光陣営”との全面戦争が勃発すれば、リィン君の勇名によって領土の状況が絶対的に安定しているゼムリア大陸側から様々な支援をしてもらう事が目的なんだと思う。そしてエレボニアの存続を許す理由は…………」

「メンフィル帝国に占領されたエレボニア帝国が”メンフィル帝国からの独立”を目指す事で、メンフィル帝国が”エレボニア帝国の独立活動への対策の為に余計な時間や戦力を割かれない為”、ですか。」

「つまり、マーズテリア神殿との全面戦争が勃発する事を確信しているメンフィルにとってはゼムリア側で余計なリソースを消費したくないから、2度とメンフィルに歯向かう事を考えないくらい叩き潰しつつも、存続を許す事でエレボニアの独立に関連する問題を発生させないようにしようとしているって事か。」

「そして”メンフィル帝国がエレボニア帝国を許す理由を作る為”にも、皇女殿下達がメンフィル帝国軍の一員としてリィン達と共に活躍する事を黙認し、”双方の犠牲を無くす為”にエレボニアの”第三の風”として活動していたオレ達の事も見逃し続けていたという事か……」

クロウの疑問にトワが答えるとトワに続くようにオリエも自身の推測を口にし、二人の推測を聞いたフィーとガイウスは真剣な表情で呟いた。

「うん。そして”灰獅子隊”の結成の”真の理由”は恐らく…………―――――将来ゼムリア側のメンフィル帝国の領土の統括領主みたいな役割に就かせる予定のリィン君にリィン君の仲間――――――ううん、”家臣”としてリィン君を支えてもらう予定の人達との”絆”を深めてもらう事で、”将来のゼムリア側のメンフィル帝国の領土の守護者”となるリィン君達の結束力を高める事もそうだけど、あわよくば現地――――――つまり、メンフィル帝国とは無関係だったゼムリア大陸の人々がリィン君と関わる事で何らかの理由でリィン君の仲間や家臣になってもらう事を目的として結成した部隊なんじゃないんですか………!?」

「ええっ!?そ、その話が本当だとしたらあたし達って……!」

「将来凄まじい出世する事が決まっているリィンを支える”家臣”の最有力候補という事になるよね……?」

真剣な表情でセシリアを見つめて問いかけたトワの推測を聞いたアメリアは驚きの表情で声を上げ、フランツは困惑の表情で呟いた。

「……そうなると…………”紅き翼(われわれ)”の活動を見逃し続けた件にも”灰獅子隊結成の真の理由”が関係しているかもしれないな………」

「はい……サラ教官は先程”灰獅子隊が請けた今までの要請(オーダー)のほとんどは、何故Z組と縁(ゆかり)ある地が多かった”かについてのセシリア将軍の問いかけに対してわたし達とリィン君達の関係を断たせる為”と言いましたが、”むしろその逆だったんだと”思います……」

「そ、それってもしかして………」

「”Z組(おれたち)と縁ある地だからこそ、俺達が灰獅子隊が請ける要請(オーダー)に介入する事でリィン達が軍務と割り切る事柄の結末――――――例えば本来は討つべきはずだったログナー侯を助命する大義名分等を俺達が作る事で、リィン達に俺達とリィン達の絆は途切れていない事をリィン達もそうだが、俺達にも自覚させる為”か……!」

重々しい様子を纏って呟いたアルゼイド子爵の推測にトワは複雑そうな表情で頷き、二人の話を聞いて察しがついたエリオットは不安そうな表情を浮かべ、ユーシスは厳しい表情で呟き

「うん………そしてその出来事によって改めて互いの”絆”は途切れていない事を自覚したわたし達が、リィン君が将来”ゼムリア側のメンフィル帝国の領土の守護者”になった時、何らかの形でリィン君に協力する――――――つまり、それが”結果的にはメンフィル帝国にとっては何らかの利益に繋がる”と判断して、紅き翼(わたし達)の事を放置し続けた”もう一つの理由”なんじゃないんですか……!?」

ユーシスの推測に頷いたトワは真剣な表情でセシリアを見つめて問いかけた。

 

「――――――素晴らしいですわ。我が国がマーズテリア神殿との全面戦争が勃発する事を確信している情報を知っただけで、その”完璧な答えに辿り着く”とは。冗談抜きで、ハーシェルさんをエレボニアから引き抜きたいですわね。」

するとその時セシリアは拍手をした後微笑みながらトワを見つめてトワを賞賛した。

「!!」

「”完璧な答えに辿り着いた”という事は、トワ様の推測は”全て正解”、という事ですわね。」

「ふふ、そうなると私――――――いや、”私達斑鳩は弟弟子の裏の協力者候補”と言った所か。」

トワの推測を肯定したセシリアの答えを聞いたアリサは目を見開き、シャロンは真剣な表情で呟き、シズナは意味ありげな笑みを浮かべて自身の推測を口にし

「あ、あんた……!リィンを含めた自分の教え子達どころか、あたしの教え子達まであんた達――――――メンフィルのふざけた思惑の為に利用するつもりだなんて、リィン達の担当教官としての”良心”すらもあんたにはないの!?」

「”良心がない”とは随分と人聞きが悪い言われようですわね。バレスタイン殿はメンフィル帝国(われわれ)が国としての思惑の為に、リィン達を利用するという点が気に入らないご様子ですが…………そもそもメンフィル帝国(われわれ)はメンフィル帝国に仕えているリィン達にメンフィル帝国に仕える臣下としてやってもらいたい事があり、それをしてもらう代わりに相応の報酬や地位――――――”対価”を用意するだけで、それはメンフィルに限らず他国――――――いえ、民間企業が雇っている人物に働いてもらう代わりに給与を与える事と同じ――――――つまりは”世界の在り方である等価交換”を行っているだけの話で、”それのどこが悪いのですか?””国の思惑の為に利用する”とはそれこそ”リィンを灰色の騎士という英雄に仕立て上げてエレボニアの為に利用するだけ利用して、相応の地位を用意するどころか報酬すらも支払わず、最後は切り捨てるつもりでいた”オズボーン宰相達――――――つまりは貴方達エレボニア帝国の事を指すのでは?」

怒りの表情で睨んで声を上げたサラの指摘に対して呆れた表情で溜息を吐いたセシリアは静かな表情で指摘し

「フフ、魔道軍将殿の仰る通り、確かにメンフィル帝国の行いは”世界の在り方である等価交換”ですね。」

「ま、”戦争の為の等価交換”ってのは趣味が悪い事は否定しないけどな。」

「………ッ!!」

「………………」

「そ、それは………」

「確かに”煌魔城”で”リィンを利用する事”を公言した”鉄血宰相”の様子からすると、”鉄血宰相”はリィンに”無償奉仕”させるつもりだったでしょうね。」

「実際、”本来の歴史”でもリィン君はオズボーン宰相によって”要請(オーダー)を請けざるを得ない状況に陥らせられて要請を請け続けた”との事だから、多分だけど”本来の歴史”では”要請を請けた事に対する報酬”すらもリィン君に支払われなかったんだろうね。」

「ああ……そんで”利用価値”がなくなったら、切り捨てただろうな。何せ、”本来の歴史”でも”黄昏”が発動した後暴走したリィンを無力化して幽閉したらしいからな。」

「確かにオジサンの性格を考えたら、”リィンにただ働きをさせた所でリィンがそれを理由に要請を断らない”だろうから、リィンには1ミラも支払わなかったんだろうね〜。」

セシリアの指摘に対して静かな笑みを浮かべて答えたチョウの言葉に続くようにヴァンは肩をすくめて呟き、”煌魔城”での出来事を思い返したサラは悔しそうな表情で唇を噛み締めて黙り込み、セドリックは辛そうな表情で黙り込み、サラのように煌魔城での出来事を思い返したエマが複雑そうな表情で答えを濁している中セリーヌは疲れた表情で呟き、アンゼリカとクロウ、ミリアムはそれぞれ複雑そうな表情で推測を口にした。

 

「―――――!待って……今の話が真実だとしたら、メンフィル帝国がクロスベルと連合を組んで共和国を滅ぼした”真の目的”は………!」

「マーズテリア神殿――――――”光陣営との全面戦争に向けてゼムリア側のメンフィル帝国の領土の外交状況の絶対的な安定化を図ると共に、光陣営との戦争勃発後ゼムリア側でのメンフィル帝国に支援してくれる大国を生まれさせる為”か……!」

「た、確かにクロスベル帝国はクロスベル帝国建国にあらゆる事柄でメンフィル帝国に対して大きな”恩”がありますから、その”恩”を返してもらう為に大規模な宗教戦争状態に陥ったメンフィル帝国から何らからの支援を求められれば、応じざるを得ないでしょうね……ディル=リフィーナ出身のヴァイスさん達はメンフィル帝国と”光陣営”の関係も知っている、もしくは気づいていたでしょうから、メンフィルにクロスベルとの連合を持ち掛ければ応じる可能性は高いと判断して、連合を持ち掛けたかもしれませんね……」

「ああ……しかも今の西ゼムリアの各国家の国力もそうだが、メンフィルとの関係を考えたらエレボニアとカルバード。この二大国を排除、もしくは2度と歯向かえない状況に陥らせれば、残った国はメンフィルと同盟を組んでいるリベールとメンフィルに対しては”中立”かつ保有戦力はリベールを下回るレミフェリア、そして七耀教会の総本山のアルテリアで、後は自治州や都市国家だけでメンフィルに戦争を仕掛ける可能性がある勢力は皆無になるな。」

「アルテリアとメンフィルは古代遺物(アーティファクト)の所有を巡って微妙な関係ではありますが……幾ら何でも宗教組織である七耀教会がメンフィルが七耀教会の信徒達を虐げた訳でもないのに、”裏”の事情だけで一国家に戦争を仕掛けるといった異世界の宗教組織のような大それたことは考えないでしょうね。」

「ハッ、アタシ達に隠れて裏でコソコソとしている”僧兵庁”の連中ならありえるかもしれねぇが、そんなことになったら教会は”僧兵庁を切り捨てる”でしょうね。――――――何せ、”エレボニアという実例”があるのですから。」

「………………」

一方ある事に気づいたエレインは厳しい表情でセシリアを睨み、エレインに続くように厳しい表情で声を上げたジンの推測を聞いたアネラスは不安そうな表情で呟き、アガットは真剣な表情で推測し、複雑そうな表情で呟いたトマスに続くように鼻を鳴らして答えたセリスの推測を聞いたロジーヌは複雑そうな表情で黙り込んだ。

「フフ、エレイン・オークレールさんでしたか。”準遊撃士”でありながら、今までの話だけで我が国がクロスベルと連合を組んだ”メンフィルの思惑の一つ”に気づくとは、相当優秀な方ですわね。やはり遊撃士という存在は、”一部”を除けば優秀な存在ばかりのようですわね。」

「……ッ!そんな理由の為に、エレボニアのようにメンフィルに対して国際問題を起こした訳でもない共和国に戦争を仕掛けて滅ぼすなんて……!」

「ま、今更”真実”を知った所で共和国は”王政”のエレボニアと違って、皇族――――――”旗印になるような血筋は既に滅んだ”から、”独立”は厳しいだろうな。」

「フフ、例え100年前の革命のようにシーナ・ディルク達のような存在が立ち上がった所で、メンフィル・クロスベル連合の前には敵わないでしょうね。」

セシリアは微笑みを浮かべてエレインを賞賛し、賞賛されたエレインは怒りの表情でセシリアを睨み、話を聞いていたヴァンは肩をすくめ、チョウは苦笑していた。

 

「テメェらは今の話を聞いて何も思わないのかよ!?」

するとその時アッシュはエーデルガルト達に問いかけ、問いかけられたエーデルガルト達は少しの間黙り込んだ後答え始めた――――――

 

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予想以上に話が長くなった為、前回の話での予告詐欺を行ってしまい申し訳ございません(汗)次回こそ、リィンの将来の話が出ます(冷や汗)

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ハーケン会戦〜メンフィルの真の思惑〜

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