剣帝?夢想 第五話
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白蓮の下を離れてからレーヴェは広い大地を八千の兵を連れて行軍していた。細作を放ち、黄巾党の動向を探る。レーヴェとしてはヨシュア並の技術を持った細作が欲しいのだがそれは高望みしすぎだろう、と自戒する。すでに自分と短時間ではあるがそれなりに渡り合えるようになった弟ほどの実力になるにはかなりの時間をかけねばならないだろう。それでもレーヴェは折を見て適性のあるものを育てていこうと密かに決めていた。

 

「しかし、戦いの前とは思えぬほどのいい天気だ」

 

レーヴェは目を細めて空を見上げた。細作の報告でそろそろどこかしらの黄巾党の一軍と出会うということなので気を引き締めてはいるが空は青く澄み切って暖かい日差しを振り注がせていた。

 

「ご主人様はいつも適度な余裕を持っていらっしゃるようですね」

 

そんなレーヴェに愛紗が感心したような声をかけてきた。

 

「はい、ご主人様のその何事にも余裕を持っている態度は兵士の皆さんにとってとても頼もしく見えると思います。ご主人様は武のほうでも兵士の皆さんの憧れですし」

 

雛里が帽子を押さえて愛紗に同意するように口を開いた。レーヴェとしては余裕をなくしてもいいことは特にないし、さりとてそう気負うようなこともないので自然体でいただけではあったのだが。もちろん自分が兵の命を預かっているのは十分理解しているが。そのとき、

 

「申し上げます!ここより前方五里の地点に黄巾党と思しき集団を発見!その数およそ一万!」

 

それを聞いてから伝令に労いの言葉をかけて下がらせるとレーヴェは頷いて口を開いた。

 

「一万か、十分に戦えるな。しかしできるだけ被害を抑えたい、朱里、雛里、何か策はあるか?」

 

レーヴェの言葉に朱里と雛里は笑顔で頷いた。

 

「はい、こういうときのために私たちは勉強してきましたから」

 

「べんきょーって…朱里たちは何のべんきょーをしてたのだ?」

 

鈴々が多少興味を持ったようで手を頭の後ろで組みながら尋ねてきた。

 

「えと、孫子、呉子、六韜、三略、司馬法などといくつかの経済書と民政書を勉強しました」

 

「…それ全部勉強して覚えたんだ」

 

朱里の言葉に桃香が呆気にとられたような顔で呟いた。レーヴェも表情にこそ出してはいなかったがかなり驚いていた。どれもどんなものかレーヴェには分からないが、彼女たちが覚えるに値すると判断したものなのならかなりの兵法書かなにかなのだろう。それをいくつも名前を上げるところを見ると彼女たちの知識の深さが窺えた。智謀という一点のみにおいて彼女たちはレーヴェを超えているだろう、そう感じていた。

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「それで、策を聞かせてもらえるか?」

 

「はい、伝令さんの言葉から判断してここから五里先は兵法でいうところの衢地となっているんです」

 

「くちー?それってなんなのだ?」

 

雛里の言葉に鈴々が首をかしげて口を開いた。レーヴェは鈴々にももう少し知恵をつけさせるべきか、という考えが浮かんだが、今はそれを振り払った。

 

「衢地とは、各方面に伸びた道が収束する場所で交通の要所というべきところなんです」

 

「そこに物資や兵を配備しておけば各方面に素早く補給物資を届けられるな。しかし、そんな場所にたった一万か…雑兵だな」

 

レーヴェは相手の何も考えていないとしか思えない行動に呆れていた。こっちとしてはありがたいのだが、あまりにも拍子抜けだ。

 

「はい、雑兵だとはいえ、彼らが守っているのは全軍に影響を及ぼすであろう重要な地」

 

雛里が真剣な目でレーヴェを見ながら説明をしてくる。そしてそれを朱里が引き継いだ。

 

「そこを破れば私たちの名は否応なく高まります。これは千載一遇のチャンスなんです。」

 

そして再び雛里が口を開いた。

 

「更に私たちは敵よりも兵の数が少ないので多少なりとも敵は油断します。しかし、そこが付け目なんです」

 

「なるほど、朱里たちのいいたいことが大体わかったぞ」

 

愛紗の感心した声に雛里は一瞬びくっとするがすぐに立ち直った。

 

「それで策なんですけどまずは敵を引っ張り出したあと、野戦に持ち込まなければいけません。しかし数はこちらのほうが少ないので平地で対峙してはいけません」

 

「ふむ、そのためには道の狭い場所に誘導しなければならないが…条件に合う場所はあるのか?地図には商人が使うような道だけが書いてあってそう役には立たないんだが」

 

レーヴェは街で買った地図を振りながら口を開いた。地図を買う時に、作戦を立てるのに必要な小さな道などが載っていないことにレーヴェは気づいていたが、詳しい地図を入手するあてがなかったのでないよりまし、ということで買った地図だった。

 

「大丈夫です。幸い私たちは水鏡先生のつてで詳しい地図を見ることができました。だから地図はわたしたちが覚えています。」

 

「ほう」

 

レーヴェは感心した声を上げた。つてで見たと言ってもそう何度も見る機会などないだろうし、地図すべてを覚えるなどということは誰にでもできるような芸当ではないだろう。横を見やれば桃香たちも驚いているようだった。そして思ったことが、この世界では男よりも女のほうが優秀なのか、ということだった。それはともかく、今の問題はいかに犠牲を少なく黄巾党を殲滅するか、ということだ。

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「それで策を教えてくれるか?」

 

「はい、ここから北東に二里ほど行ったところに川が干上がってできた谷があるんです。そこに誘導するために一度全軍で姿を現してあとは逃げて谷に誘導するだけです」

 

「オレたちは正規軍に全く見えない分強そうにも見えない。その分相手も調子に乗って追ってくるか」

 

「武器は白蓮お姉ちゃんからもらったけどあとはみんな着の身着のままの義勇兵だもんな〜」

 

「黄巾党の中でも主義主張を持っているのは中心の人たちだけなので末端の人は私たちを殺しつくそうと追ってくるでしょう」

 

「だから私たちがコテンパンにやっつけなきゃいけないの」

 

桃香がその瞳に強い光を宿した桃香がきっぱりと言い切った。そんな桃香にレーヴェは密かに感心していた。このメンバーの中でいつもは最も頼りないがいざというときにはこういう表情もできるものなのだということに。

 

「そうだな…ではオレと愛紗は前衛で敵をひきつけ状況を見て反転。鈴々は後衛で反転したオレたちの殿を護衛してくれ。朱里は鈴々の補佐、雛里は桃香の補佐だ。桃香は本陣だ」

 

「なりません!ご主人様も本陣で待機していてください!もしものことがあったらどうするのですか!?戦うのは我ら臣下にお任せください!」

 

レーヴェの指示に愛紗が険しい表情で否を唱えた。レーヴェは確実に愛紗や鈴々よりも強い。だが、戦いの中で絶対ということはない。戦場では何があるのか分からないのだ。もしかしたらレーヴェに流れ矢が当たるかもしれない、もしかしたら地面に転がる死体に足を取られ、致命的な隙を晒してしまうかもしれない。レーヴェに限ってそんなことはないと断言できるが、それでも愛紗はそんな最悪の場合が頭の中に浮かんでしまっていた。

 

「愛紗、オレは人に守られてばかりというのは我慢できない。それに二人を軽んじているわけではないが…オレは愛紗と鈴々二人合わせてもそれを軽く凌駕する頃ができる。そんなオレが出るからこそ犠牲を少なくできる。それに、オレは二度と、あの場所にオレがいれば、という後悔はしたくない」

 

最後の愛紗には理解できないが、とてつもない重みを持った言葉に呑まれていた。桃香たちも同様だった。そして愛紗は悟った。ああ、この人は退いてはくれない。何を言っても自分たちを守るために前線で剣をふるい続けてしまう、ということを。彼のことを、自分の主のことを何も知らない自分には何が彼を駆り立てるのか知らない、なぜ、いつも悲しみを含んだ瞳をしているのかを知らない。だから何も知らない愛紗は一言だけ言葉を紡いだ。

 

「…ならば、貴方の背中は私たちが守りますから」

 

「ふっ…ありがとう」

 

レーヴェは自分を守る、という言葉に驚いたが、すぐに軽く笑って愛紗の頭に手を載せて礼を言った。思えば剣帝と呼ばれていた自分に守るなどという言葉をかけられたのは初めてかもしれない。目の前の少女は自分が下手をすればレーヴェの本気の前では足元にも及ばないかもしれない、それを理解していながらも守ると言った少女が愛しく思えていた。カリンは自分にとって特別だったが彼女たちも自分が守る価値がある、そう思った。

 

「では行こう。戦闘を開始する!」

 

「おおおーーーーーーーー!!」

 

レーヴェは黄巾党がいるという方角へ視線を向け高らかに言った。レーヴェたちのやり取りを見ていた兵士たちはなにか感じるところがあったのか士気が上がっており、天をも震えよとばかりの声で雄叫びを上げた。

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「これより戦闘に入る!初陣の者もいるだろうがお前たちとともに戦う仲間を信じろ!必ずお前たちを助けてくれるはずだ!」

 

敵の陣地が目視できるような距離まで進軍したころ、レーヴェが激励の声を兵士たちに向かって叫んだ。そして愛紗も武人としての顔つきで口を開いた。

 

「これより二里先に峡間がある!そこへ退くまでは戦いを極力避けて移動する!各人指示を決して聞き洩らすな!」

 

「おおおーーーー!」

 

「敵陣開門!」

 

斥候の人間がこちらへと情報を回してくる。それを聞いてレーヴェは頷くと剣を抜き放った。

 

「レオンハルト隊、オレについてこい!」

 

「勇敢なる戦士たちよ!我に続け!!」

 

レーヴェ、愛紗両名が率いる軍が雄叫びをあげて敵に向かって突進していく。そして両軍が激突し、戦闘を開始した。

 

「我々にはレオンハルト様という天の御使い様がついてるんだ!お前たちに負けるわけないだろ!!」

 

「うるせええ!てめえらなんか殺してやるよ!」

 

各所で激しい罵りあいと剣戟の音が鳴り響く。そのなかで絶叫が起こるたび、どちらかが倒れ、地面にその体液をぶちまける。

 

「この関雲長の一撃!耐えられるものなら耐えてみよ!」

 

愛紗の鋭い一撃が目の前に立つ黄巾党の構成員を斬り倒す。だが、黄巾党の構成員は次々とわいてきて愛紗の前を塞ぐ。愛紗はその数の多さに舌打ちしながら素早く周りの状況を確認した。周りの兵はなんとか持っているが、半分の半分を桃香と鈴々のところへ残しているのでそう長くは持ちこたえられないだろう。そしてレーヴェは、というと、そこには異様な光景が広がっていた。レーヴェの周りにはすべて一撃のもとに斃された敵兵が転がっており、生きている敵兵は武器を構えて遠巻きにレーヴェを取り囲んでいた。そこまでならまだ他の武将でも見られる光景だろう。だが、レーヴェの場合、敵陣地の中からどんどん増援が送られてきているのにかかわらず、誰もレーヴェに向かっていかないのだった。そしてレーヴェを囲む人垣はさらに増えていく。そしてレーヴェがこちらに視線を向けたのに気づいた。

 

「…退いて一度態勢を整えるぞ!」

 

レーヴェの声が響くと同時に銅鑼が鳴り響く。それと同時に愛紗とレーヴェの部隊が反転し、後退を始めた。普通なら今まで難なく自分たちを退けていた男がいきなり撤退を始めたりすれば何かあると疑うところだが、黄巾党の兵士たちは恐ろしい相手が後退した安心感からと、ここで追撃しなければ今度こそ殺される、という恐怖から後退する敵を追いかけていた。

 

 

 

「前線よりレオンハルト隊、関羽隊ともに後退中!張飛様はその後退を援護しつつ作戦を実行に移せとのことです!」

 

「やっと出番なのだ!」

 

「頑張ってね!」

 

後方で待機していた鈴々の元へ伝令が駆けてくる。鈴々は一度伸びをすると傍らに置いていた武器を手に取った。そしてやる気にあふれた顔で朱里とともに殿を務めるために行動を開始した。

 

 

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「華琳様。西方に砂塵を確認しました。恐らく黄巾党とどこかの軍が戦っているのかと」

 

「そう、このあたりの敵に目をつけたとなると、その軍は愚かな官軍ではないようね」

 

「恐らくは…主戦場より離れた地であるのに戦略上重要な拠点となりうるこの地に目を付けるなど愚昧な官軍にできるはずがありません」

 

長身で黒髪の女の報告に背が低いが覇気に溢れた少女、そしてフードを被った少女が口を開いた。

 

「諸侯にも見所がある人物がいるということか」

 

青髪の前髪で右目が隠れた女が感心したような声音で口を開いた。

 

「一度顔を見てみたいわね。向かいましょう。しかしその前にやるべきことを終わらせましょう。春蘭、秋蘭」

 

「「はっ!」」

 

 

「躾のなっていないケダモノに恐怖というものを教えてあげなさい」

 

華琳と呼ばれた少女の言葉に黒髪と青髪の女は頷き、行動を開始した。

 

 

 

「雛里!目標地点まであとどのくらいだ!?」

 

レーヴェは敵兵がつかず離れずの距離で追いかけてくるのを確認しながら雛里へと声をかけた。

 

「もう目の前です!」

 

「伝令!先行の部隊に反転の準備をさせろ!峡間にて部隊を二手に分けて待機。その間を敵が通ったところで反撃に移る!」

 

「御意に!」

 

レーヴェの言葉に伝令が大きく返事をして前方へと駆けていく。そしてレーヴェは雛里と桃香にアイコンタクトを送った。それに桃香と雛里は大きく頷いた。

 

「では皆さん、峡間を過ぎたところで一斉にまわれ右しましょう!それから深呼吸した後殿の人たちと交代します!」

 

雛里は小さい体から精いっぱい大きな声を出して兵士に指示を出した。

 

「勢いづいた敵の初撃をはじき返して、そのまま谷の狭さを利用して各個撃破するからね!みんな一緒に頑張ろう!」

 

「おおおおおおおおおおおお!!」

 

桃香の声に兵士たちは士気の高い返事を返した。戦いの雰囲気に高揚感を感じ、皆が決戦の時を待つ。そしてすぐに谷が見え、そしてその中へと突入する。

 

「みんな、まわれーーー右!」

 

そして桃香の言葉と同時に一斉に反転した。そして一同が雛里の指示に従い深呼吸を開始する。それは高まった興奮を程よく抑えてくれた。

 

「これより味方を迎え入れ、敵を討つ!総員、迎撃用意!」

 

そして武器を構えた兵士が開けた道の間をサポートに行っていた愛紗と鈴々の部隊がすり抜けると同時にその道を閉ざし、前線を構築した。そして追ってきた敵の初撃を迎え撃った。

 

「お兄ちゃん!もう暴れてもいいのか?」

 

「構わない、本気でやってやれ」

 

先ほどから戦いたいのを我慢していた鈴々のうずうずした様子にレーヴェは苦笑を浮かべる。それを聞いた鈴々は愛紗とともに敵へと向かっていった。そしてレーヴェも朱里に労いの言葉をかけると大きく跳躍し、敵のまっただ中へと突っ込んでいった。

 

勝敗は既に決していた。数は多いが、レーヴェや愛紗たちのような武将のいない黄巾党の兵士は一度崩された隊列を整えることはできなかった。黄巾党は各個撃破され、逃げようとしてもレーヴェたちの兵士に次々と討ち取られていった。それはもはやただの殺戮だったが、レーヴェたちに手を緩める道理はなかった。いくら理由があるとはいえ、自身は同じことを罪のない人々にやってきたのだ。今はそれが自分に返ってきたに過ぎなかった。

 

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黄巾党を追い払ったレーヴェたちは敵陣地へと侵入していた。

 

「敗残兵が潜んでいるかもしれん。隈なく調査しろ!」

 

「見つけた物資には手をつけずに報告してください」

 

まだ元気の残っている兵とともに中を調査していく。今のところは敵兵が隠れていたという報告はなく、ようやく少しは気を抜いてもよさそうであった。

 

「なんとか一段落したみたいだね、お疲れさまでした」

 

桃香が笑顔でこちらを見やり労いの言葉をかけてくる。レーヴェはそれに頷きながらも一応は周りを警戒していた。

 

「桃香様こそ。本陣の指揮お疲れ様でした」

 

「天然なお姉ちゃんにしてはなかなかいい指揮だったのだ」

 

「う…ほとんど雛里ちゃんのおかげだったりするんだけどね、あははははは」

 

桃香たちが和気藹々と話し、雛里が桃香のフォローをし、鈴々は朱里に指揮を丸投げしていたというような声を聞きながらレーヴェは引き締めていた表情を少しだけ和らげた。

 

「それで、愛紗たちは朱里と雛里の能力には納得したのか」

 

「ええ、あれだけの手腕を見せつけられれば認めないわけにはいかないでしょう」

 

「兵隊さんを手足のごとく指揮してたもんね」

 

「心強い仲間なのだ」

 

「はわわ、別にそんなことありませんよ」

 

「あわわ」

 

桃香たちの賞賛に朱里たちは謙遜しているが、その顔は真っ赤だし、嬉しそうな様子が見て取れた。これならちゃんと仲間としてやっていけるだろう、そう思っていたとき、伝令が息を切らして走りこんできた。

 

「申し上げます!陣地の南方に官軍らしき軍団が現れ部隊の指揮官にお会いしたいと…。その…官軍らしきというのは通常使用する旗を用いず、曹と書かれた旗を掲げているのです」

 

恐らくレーヴェの官軍らしき、という言葉のところで怪訝そうな顔になったのを見たのだろうか、聞く前に伝令は答えを言ってくれていた。しかし、レーヴェにはまだ旗だけでどこの誰か判断することはできなかった。だが、それを朱里が解決してくれる。

 

「曹、といえば…許昌を中心に勢力を拡大している曹操さんかと」

 

「ふむ、一応はどんな人物か見定めておくべきか…。桃香。一度会ってみるのがいいかと思うがいいか?」

 

「うん、曹操さんって味方でしょ?なら挨拶しておいたほうがいいと思う」

 

「そうですね、うまくいけば共同戦線を張れる可能性もありますし」

 

桃香とついで朱里が賛同してくる。だが愛紗は警戒した顔で異論を挟んできた。

 

「手柄を横取りされる可能性もあるのでは?」

 

「いえ、普通の官軍ならいざしらず、誇り高き覇者、とまでいわれる曹操さんならそんなことはしないと思います。曹操さんは器量、能力、兵力、財力全てを兼ね備えていると言ってもいいですし」

 

愛紗の言葉を否定したのは雛里で、雛里は曹操がどんな人物であるかを簡単にだが説明してくれた。桃香は驚いているようだが、レーヴェは特に大した感想も持っていなかった。レーヴェは相手を見て態度を変えるつもりなどないし、実際に会ってみるまでは評価をしないからだった。

 

「とにかく会ってみれば何の目的があってオレたちに接触してきたのか、どんな人物なのかもわかるだろう」

 

そしてレーヴェは伝令に返答を伝え、曹操を待つことにした。伝令はここであうのか、ということを聞き返してきたが、向こうから訪ねてきたのだからこちらから出向く必要はないと伝令に伝える。伝令は一礼するとすぐに走り去っていった。

 

「さて、曹操という人物が来る前にその人物について知っていることを教えてもらえるか?」

 

レーヴェは判断材料は多いに越したことはないだろうと思い、朱里と雛里に説明を求めた。朱里と雛里は少しだけ考え込んでやがて口を開いた。

 

「噂では治政の能臣であり、詩人であり、そして何より乱世を生き抜く奸雄でもあるって噂です」

 

「あと一点だけ分かっているのが自分にも他者にも、誇りを求めるということです」

雛里の誇りという言葉に桃香が首を傾げた。そのとき、聞き覚えのない声が辺りんび響いた。

 

「誇りとは、天へと示す己の存在意義。誇り無きものは、例えそれが有能であれ、人としては下品。そのような下郎は我が覇道に必要なし。…そういうことよ」

 

レーヴェは既にその存在に気が付いていたのだが、桃香はいきなりのことで驚いているようだった。そして改めて視線を向ければそこには金髪の少女と黒髪の女、そして青髪の女がいた。見たところ三人とも武に関しては覚えがあるようだった。

 

「誰だ貴様!」

 

愛紗が厳しい顔で誰何の声を上げるが、黒髪の女がそれを一喝した。

 

「控えろ下郎!この御方こそ我らの盟主、曹孟徳様だ!」

 

「オレたちが会うということを読んだ上での行動か。なるほど」

 

「そういうことよ。改めて名乗りましょう。我が名は曹操。官軍に請われ、黄巾党を征伐するために軍を率いて転戦している人間よ」

 

淡々と、しかしどこか誇らしげに曹操は自己紹介をして見せた。

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あとがき

 

長かった、今回は自分にしては長い文章を書きました。他の作家さんのと比べるとまだまだなのですが。

 

次回でおそらく黄巾党編は終了の予定です。レーヴェのクラフトはあんまりでてないんでゲームで確認しながらの作業になるので執筆があまり進んでなかったり。

 

それはともかくこの辺りであとがきは終わっておきます。苦手なので。

それではまた次回に

説明
お久しぶりです、へたれ雷電です。

まずは一つ報告を。ヨシュア編ですが、近いうちに執筆に取り掛かることにしました。レーヴェとの二足わらじですが頑張ります。

そして今回ようやく人気の高いあの少女が少しだけ登場sます。
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コメント
なっとぅ様>…自分でも気づいていなかったです。明らかにミスですね(へたれ雷電)
朱里がチャンスと言っているがレーヴェが教えたのかな。(なっとぅ)
レーヴェ様>確かに第七はレーヴェに期待していたようですね(へたれ雷電)
蒼様>クローゼは好きですがそれはなんとも言えませんね(へたれ雷電)
レーヴェ様>一応出す予定の人物はいます(へたれ雷電)
森番長様>それは考えてましたがどうしようかは検討中です(へたれ雷電)
ニシ様>やっと?って感じです(へたれ雷電)
黒様>お気づかいありがとうございます(へたれ雷電)
たしか第七柱は剣帝以上の剣士みたいだしオリキャラとしてだしてみるとか(レーヴェ)
ヨシュア編の方はエステルの代わりにクローゼを・・・(蒼)
次回楽しみにしています。ところで敵として蛇の使徒や執行者は出てくるのでしょうか?(レーヴェ)
次回はきっと春蘭が華琳の真名」を呼んでレーヴェが反応するに違いない(多分!!次作期待bb(森番長)
更新キターーーー!!!(^o^) ついに曹操登場ですね。頑張ってください。(ニシ)
ゲームと執筆頑張ってください(後体調を壊されぬようお気をつけて(明夏羽)
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