真・恋姫†無双〜黒の御使いと鬼子の少女〜 109
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 翠と共に馬に乗りながら俺は逸る気持ちが抑えられなかった。

 

(頼む、頼むっ! 無事でいてくれっ!)

 

 小町が雪華の蛇から救援を求められ、跳んで行ってから嫌な想像ばかりが頭を回る。何度振り切ろうとしても湧いてくる。だが、翠の言葉がそれを断ち切ってくれた。

 

「心配すんなよ。お前の仲間なんだろ?」

「っ!」

「あたしに“俺を信じろ”って言ったんだ。玄輝が自分を信じないってんならあたしも自分を信じるのやめるからな」

 

 そう悪戯っぽい口調で言ってくれた彼女に感謝の言葉を返す。

 

「……わりぃ、助かった」

「なら、今度昼飯奢りな」

 

 昼飯程度で済むなら破格だ。そう返して俺は先を見る。夜叉になった影響でどうやら神経だけでなく、視力も劇的に上がっているようで、意識を集中させれば500mぐらい先までは見えるようになっていた。

 

「ん?」

 

 そんな俺の視界に忌々しい白い装束が見えた。

 

「翠っ! 白装束だっ!」

「どっちっ!?」

「正面っ!」

「了解っ!」

 

 返事を返した翠はすぐさま全軍に速度を上げるように指示して、全員の足が速くなる。

 

 近づいてくると、どうやら囲われているようだった。そこへ意識を集中させると見慣れた武器が見えた。

 

「あれは……っ!」

 

 龍の装飾が施された武器だ。そんなものを使っているのは、一人しかいない。

 

(愛紗っ!?)

 

 まずいっ!

 

「翠っ! あっちへっ!」

「おうっ!」

 

 俺は速度を上げつつ戦況を凝視する。距離はおおよそ150m。白装束が邪魔すぎて良くは見えないが、長髪の女性と背を合わせながら戦っている。ちらと見えた感じだと女性の武器は弓の様だが、すでに矢がないのだろう。素手で戦っている。が、長くはもちそうになさそうだ。

 

「……翠っ!」

「なんだっ!」

「槍で飛ばしてくれっ!」

「……はぁ!?」

「時間がないっ! 俺が槍に飛び乗るっ! そしたら思いっきりぶん投げろっ!」

「お、おまっ!」

 

 まぁ、無茶な注文なのは分かってるが……!

 

「……頼んだっ!」

 

 俺は彼女を信じて、馬の背から前方に飛び出す。

 

「ちょっ! ああもうくそっ! 知らないぞっ!」

 

 翠は俺の落下点を推測して右腕の槍を水平に構えて馬の速度を調節する。

 

(ドンピシャっ!)

 

 俺は空中で姿勢を整え、槍の上に着地する。俺の重みを乗せた槍を翠は両手で持って全身に力をみなぎらせる。

 

「どっ、せぇええええええいっ!」

 

 そして、気合いの一言と共に俺を空へ打ち出した。さっきと同じように空中で姿勢を整えながらも愛紗たちからは視線を逸らさないようにする。すると、白装束が愛紗に襲い掛かる。二人目まではどうにか捌いた愛紗だが、三人目はどう見ても捌けない。

 

「玄輝さまぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

「愛紗ぁぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 愛紗の叫びと同時に俺は懐の暗器を取り出して三人目の白装束の頭を穿つ。動きが止まったのを確認して、着地するともう一人の女性に襲い掛かろうとしていた白装束を斬り伏せて愛紗の目の前に移動する。

 

「あ、ああ……」

「愛紗っ! 無事かっ!?」

 

 白装束を視界に捉えつつ、安否を確認するとすぐに凛とした、頼もしい返事が返ってきた。

 

「はいっ!」

 

 その声に間に合ったことを実感して、安堵した。

 

「……よかった」

 

 だが、すぐに気持ちを引き締める。

 

「愛紗、西涼の仲間が今突撃をかけているっ! それに乗じて本陣まで下がるんだっ!」

「西涼がっ!? なぜ……」

「説明は後だっ! できる限りでいい。その女性と一緒に下がるんだっ!」

 

 だが、愛紗は首を横に振った。

 

「雪華が城にっ!」

「なんだってっ!?」

「人質を助けるために単身でっ! 私が頼んだばかりにっ!」

 

 その言葉を聞いて思わず嫌な想像がバッと浮かぶが、首を振って切り替える。

 

「そっちには別の奴が向かってるっ! とりあえずここを切り抜けるぞっ!」

「っ! はいっ!」

 

 返事は元気に思えるが、かなり疲労しているのが目に見える。それに一緒にいる女性も同じだ。

 

(なら……)

 

 俺がすることは一つだ。

 

「俺が散らばってる兵をこっちに移動させるっ! それまで耐えてくれっ!」

 

 かなり酷な願いだ。だが、

 

「はいっ!」

 

 愛紗の凛とした返事が俺の背中を押す。

 

「頼んだっ!」

 

 ならば、全力でそれに答えねばならない。俺は視界に映っている兵たちを把握して駆ける。

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「はぁああああああああああああっ!」

 

 刀を振るい、白装束を切り伏せる。

 

「あ、あなた様は……!?」

 

 兵が俺の名を聞こうとするが、生憎そんな時間はない。

 

「後でいくらでも名乗ってやるっ! さっさとお前の大将の所へ行けっ!」

 

 言葉だけ残し、俺は次の兵の所へ。移動している兵に襲い掛かろうとするならば、一足で追いつき、切り伏せてまた戻る。

 

 それをどのくらい繰り返しただろうか? 気が付けば俺の周りは白装束だけになっていた。兵たちは無事に愛紗たちと合流できたようで即席の陣を作って対応している。

 

「ふぅ……」

 

 どうにかなった。あとは簡単な仕事だ。

 

「…………来いよ式神ども。てめぇらの依代ごと切り裂いてやる」

 

 俺の一言を合図に白装束どもが一斉に襲い掛かる。

 

「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 全力で軌道を思い描き、三撃一体の刀を白い壁へと振るう。切り裂くは式神の核のみ。他の物は斬るに能わず。

 

「しゃらぁあああああああああああああっ!」

 

 敵は無限にあらず。なれば、ただ無心で一つ残らずっ!

 

(斬るっ!!!)

 

 と、そこで壁が乱れる。翠が吶喊してきたのだ。

 

「どけどけどけどけぇえええええええええええええええ!!!」

 

 ここにいても聞こえるくらいの翠の声を聞いて思わず笑みが浮かぶ。もうこの場の勝利は決まった。俺は鞘を引き抜いてあることを試す。

 

(今の俺なら、できるはずだっ!)

 

 意識を集中して、襲い来る白装束を視界に収める。

 

(……いけるっ!)

 

 俺は両手の武器の軌道を想像して、振るった。

 

(参刃夜叉、両の手っ!)

 

 左手の鞘で三体の首を砕き、右手の刀で三体を切り裂く。想像は現実となり、三体の白装束は紙くずへと還り、地面に横たわった残りも素早く刀で紙を突き刺して同じ運命を辿らせる。

 

「……………っ!」

 

 何が起こったのか分からないのだろう。白装束どもは後ずさりする。だが、

 

「……逃がすと思ってんのか?」

「っ!」

「お前らはもう狩る側じゃねぇ。狩られる側だっ!」

 

 俺は残っていた白装束を途中で合流した翠と共に蹴散らし、愛紗の元へ駆け寄る。

 

 愛紗たちは俺たちが合流するまで耐え抜き、無事に白装束達を仕留め終えた。

 

「はぁっ! はぁっ! はぁっ……!」

 

 さっきまで戦っていた兵も愛紗も、大将と思われる女性も疲労困憊だった。

 

「愛紗、俺たちはこれから雪華の援護に行く。お前はこの人たちと、」

「いいえっ! 行きますっ!」

 

 俺が言いきるより早く愛紗は断じた。

 

「しかし」

「行かせてくださいっ!」

 

 その眼はまだいけると言っているが……

 

「玄輝」

「翠」

「俺はこの人の事は分かんねぇけどさ。少なくともここで退かせることほど酷な物はないってのはわかるぜ」

「お主……」

 

 愛紗に顔を向けられたところで翠は名を名乗る。

 

「名乗るのが遅れちまったな。あたしは馬超。字は孟起。西涼太守、馬騰の娘だ」

「馬超、あの錦馬超殿か?」

「……あたし、意外と有名なのか?」

 

 何をいまさら、と思うが、そこら辺の自信はまだないのか天然か。

 

「お前なぁ、俺が言うのもなんだがもうちょい自分の評価知っといた方がいいぞ」

「お前に言われるのなんか癪だな」

「だからさっき一言言っておいたろ」

 

 と、話していると冷たい視線が首筋を差す。

 

「……ずいぶん親しい様で?」

「ま、まぁ、しばらく世話になってたしねっ!?」

 

 そこはご容赦いただきたい。って、今はそれどころじゃない。

 

「ごほんっ! で、愛紗。本当に行けるか?」

 

 俺の問いに若干不満そうな表情を見せるが、質問の答えを返す時には凛とした表情に戻る。

 

「ええ。行けますとも」

「……わかった。翠、悪いが誰かから馬を貸してもらえないか?」

「分かった」

 

 返事をして彼女は兵に指示をして、馬を降りてもらう。

 

「かたじけない」

「気にすんなって」

 

 そして、愛紗が馬の背に跨ったのを確認して城へ目線を向ける。

 

「よし、行くぞっ!」

「って、お前はどうすんだよ」

 

 と翠に突っ込まれたところで頬を掻いてその理由を告げた。

 

「……実は、今の俺、走ったほうが早いっぽいんだよな」

「んなっ!?」

 

 驚きを見せる翠だが、今は話す時間が惜しい。

 

「じゃあ、悪いが先に行かせてもらう」

 

 そして、俺は全力で城を目掛け駆けだす。二人の驚いた声が少しだけ聞こえたが、構う暇はない。

 

 風を切り、ひたすら前へ前へ駆けていく。

 

「……見えたっ!」

 

 城門を塞ぐ白い壁が見えた。

 

「おぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 気合いと共に白い壁へ切り込み、両方の武器で切り裂き、壁を抜けると鬼の女性が女の子を抱いて立っていた。その姿を見て直感的に声を出す。

 

「雪華っ! 無事かっ!?」

「げ、ゲンキ……」

 

 呆然として答える雪華を見て安心した俺は笑顔で答えた。

 

「おう。無事そうでよかった」

 

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はいどうもおはこんばんにゃにゃにゃちわ。作者の風猫です。

 

と、いうわけで過去の回想はここまでとなります。

 

4月が終わり、5月跳んで6月。この間にもいろいろなことがありました。個人的には、

 

・マジカルミライ東京全日チケット確保

・MEGA39'sのsteam版発売&即購入

・マジミラ1次通販購入

 

が大きいことでしたかね〜

 

特に今年は初めてツアーのチケット買っちゃいました。正直、千秋楽のを買いたかったんですけどね〜……

 

チェックインがライブ後なのが…… まぁ、ライブが終わる時間を考えれば仕方ないんですがね。

 

とまぁ、色々と楽しみにしてます。

 

あと三カ月が本当に待ち遠しいです。早く来ないだろうか……

 

と、そんな楽しみな心境を吐露したところでまた次回となります。

 

ではでは〜

説明
オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話です。

大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。
































ちゃんとオリジナルの話もありますよ?(´・ω・)
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オリジナルキャラクター 鬼子 蜀√ 真・恋姫†無双 

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