真剣で私と戦いなさい! 7話:明日の為に |
エゴから知識を得た事により、姉さんたちが使う『気』と言うものを体得することに成功した。
応用が利き、気で覆うことで強度が増したり、身体能力を強化できたりできるらしい。
無論、無限にあるわけもなく現在の俺ではうかつに使えばすぐに息切れするらしい。
総量を増やすのも結局は体力同様に修行あるのみ。
当面の俺の活動は変化ないだろう。
しかし、すべての知識を吸収したわけではない。
どうやら一度に大量の情報を送られてしまった所為で大半を思い出せないでいる状態になってしまったようだ。
気づいたのは家に帰ってから業者に提出するために用紙に記入している時だ。
『気』の時のように、切っ掛けがあれば思い出せるようだが、切っ掛けがなければ早々に思い出すことは出来ないだろう。
『気』も基本的なことのみで応用が全く思い出せないでいる、ただ流れ出る感じから初めての戦闘のときのエゴが使った特殊な空気砲が気を打ち出していることだけは理解した。
百代「届いてないぞ…」
理解したからといって実践できるものではないようだ。
打ち出した気の塊は2メートルほどで霧散してしまい、ただの空気砲と大差ない状態。
姉さんが見本に手のひらにソフトボールほどの気の塊を作り出して見せてくれるが、俺の全身の気を総動員したらようやく姉さんが作ったものと同じ位のものが出来るらしい。
鉄心「まあ、修行あるのみじゃ」
俺のトレーニングメニューが増えたとだけ言っておく。
5月15日(金)
昼休み。
最近では放課後の殆どを川神院で拘束されている為、コネを伸ばせないでいる。
唯一昼休みに葵たちを介してS組の奴らと多少知り合えた程度だ。
知り合いと言えば未だに友人がいn…『少ない』まゆっちを思い出す。
友達の少ないまゆっちのために葵たちのグループと会わせてあげようと1年の教室に向かう。
同年代の友達を増やした方が良いだろうけど、まずは他人と話すことになれないといけない。
教室を見回すがまゆっちが見当たらない、ネコ食いをしている子が目に付いたのでその子にまゆっちのことを聴いてみることにする。
大和「ねえ、君。黛さんどこ行ったか知らない?」
伊予「私ですか?さっき着物姿の先輩に連れられて食堂の方に行きましたよ」
大和「そうか、ありがとう。ごめんね、食事の邪魔して」
着物姿で学校に来る奴と言えば2-Sの不死川心だろう。
あまり好ましい状況じゃないな。
しかし、食堂についてみれば不死川とまゆっちが丁度握手をしているところだった。
まゆっちの態度から察するに友達になろうとか言われたんだろう。
不死川は俺たち2-Fを毛嫌いしているから、後々面倒ごとになるかもしれない。
かわいそうだが止めておくか…
大和「まゆっち」
由紀江「あれ?大和さん」
心「む、直江大和」
どうやらこの間の麻雀の件で俺のことは覚えているようだ。
後は勝手に不死川が自爆してくれると助かるんだが…
由紀江「何か御用でしょうか?」
大和「いや、ちょっと一緒にご飯でもどうかと思ってね」
心「ふん、なら底の席にでも座れば良い」
大和「は?」
心「此方と一緒に食事が取れるのじゃ、光栄に思うが良い」
思いの外嫌悪が少ない、葵と一勝一敗の結果であることで少しは認められてると見るのが妥当だろう。
大和「(…不死川連れてっても大丈夫かな…まあ、まゆっちのためだし)そうか、でも俺は屋上に人を待たせてるんでな」
心「ふむ、F組の山猿たちと食事を取るつもりはないぞ」
大和「安心しろ、葵たちだ。寧ろ急がないと井上あたりが暴走しかねん」
心「葵君か。ならばよい、たまには日の下で食事をするのも良かろう」
先ほどよりも乗り気になる不死川。
一応は名門だったはずだしコネがあっても問題ないだろう。
準「遅〜い!!恐れをなして逃げ出したかと思ったぞ!」
大和「人を誘ってたら遅くなったんだよ」
由紀江「あうあう、よろしくお願いします」
心「うむ、苦しゅうない」
後ろを指差せばまゆっちと不死川が反応を返す。
井上が若干嫌そうな顔をした。
不死川の奴同じクラスの奴からも嫌がられてるのかね…
準「流石に知らん人間の前で講習するのは引かれるぞ?」
心「同じクラスじゃろうが!」
松風「っちゅ〜か、講習って何よ?」
小雪「おぉ〜、トーマ、ストラップが喋ったよ」
冬馬「そうですね…確か風間ファミリーに新規に入った一年生の方ですね」
由紀江「は、はは、はい、1年C組黛由紀江です。特技は剣じゅt…大和「まゆっち、落ちけ。テンパるな…まあ、良い子だからさ…よろしく頼むわ」
冬馬「ええ、女性にはやさしく接するようにしてますから…大和君にも優しくしますよ?」
大和「のーさんきゅう」
井上「では少し遅れたが始めるか…」
結局いつも通りのロリ講習は行われ二人に白い目で見られた。
まゆっちの方は何とか誤解を解いたが不死川のほうは後日でもやるか…
放課後、金曜集会だが一度は川神院に来るように言われているので川神院へ行くことに、ヴァンプさんたちの方にはキャップが行くらしいので大丈夫だろう。
百代「とりあえず私の出番が少ない気がするのだが…」
大和「メタなことを…今日は何するんですか?」
鉄心「明後日の件について話がある」
大和「明後日ですか?」
鉄心「うむ、ヴァンプさんたちと対峙するわけじゃが、ヴァンプさんに頼んで最初は真剣で戦ってもらうことになっておる」
大和「へ?」
元々ある程段取りを決め、最終的に僅差で俺が勝つ様にするはずだった。
それを最初だけ真剣とは一体…
鉄心「お前が今どれほど戦えるのか、己の体で体感してくるが良い」
大和「待ってください!そんなこと言われても…」
鉄心「お前が本当に戦うべき相手は手加減なんぞせんはずじゃ、百代が与えた傷のおかげか知らんが活動をしておらぬようじゃが…いずれは戦うことになる。」
百代「まあ、今のうちに戦いになれておけ…それに…(あのクロウとか言うやつなら今のお前でも倒せなくもないからな)ボソッ」
大和「姉さん、何か言った?」
百代「いや、気にする必要はないぞ(このまま黙っていた方が面白そうだからな…)ボソリ」
鉄心「まあ、お前はわしら指導通りに訓練を続けておればよい(それに正義の味方を一から育ててみるのも面白そうじゃしな)ボソボソ」
そういいながら姉さんと総代は笑っていた。
もう逃げ道はなさそうだ。
ヴァンプさんが連れてくる怪人が弱いことを祈ろう。
祈りは届かなかった。
ヴァンプさんと一緒に来た怪人はランニングシャツを着たトラだった。
ヴァンプ「大和君、鉄心さんから聞いてるけど大丈夫なの?」
アーマー「自分、手加減とか苦手なんすけど…」
よりにもよってアーマータイガーさんとは…
アーマータイガーさんもヴァンプさんも寝耳に水だったらしくおろおろと顔を青くしている。
百代「大和、良い情報をやろう。クロウとか言うのよりもアーマータイガーさんの方が強いぞ」
大和「怪我にだけは気をつけるさ…」
クリス「勝負は水際ものだ、何が起こるかわからないぞ」
モロ「いや、これほど目に見えた戦いはないね」
岳人「俺様が百先輩に挑むようなもんだろ」
キャップ「何弱気なこと言ってるんだよ!そういう時こそ必殺技だろ!!」
ヴァンプ「あるのかい!ならぜひ使ってほしいんだけど」
なぜか必殺技と言う言葉にヴァンプさんが反応した。
レッドさんって普段は正拳突きだけで倒してるからな…
大和「いや、現在使用不可能です」
松風「功夫が足りねーんだよな」
由紀江「まあ、大和さんはちょっと前まで一般人でしたから…」
岳人「でもよ、変身すれば結構強くなるんじゃなかったか?」
ワン子「避けるのは凄いわよ」
大和「常に命がけだからな、回避以外の行動は命取りだ」
百代「手加減してるって言ってるだろうが…」
大和「手加減していようが岩が砕ける拳には当たりたくないよ。それに変身すると手足の長さが変わるんだよな…おかげで時々こける」
百代「その時は迷わず追撃してやったな」
クリス「時間に余裕があるときは常に変身して体に慣れたらどうだ?」
モロ「変身した後が問題でしょ。元に戻ったら一時間ぐらい目の色とか変わってるしさ」
百代「そういえば肌の変化が徐々に広がってるみたいだが…まさか侵食されて最後には本当に怪人になるなんて落ちはないだろうな?」
大和「それはないらしいけど、それ以外思い出せないんだよ」
身体の変化が何故起こるのか思い出せないが、使いすぎて完全に怪人になることはないということは『思い出した』。
キャップ「やっぱりまだ思い出せないこと多いみたいだな」
アーマー「とりあえず、自分は鉄心先生から言われてるんでぎりぎりまでは全力でいかせて貰います。じゃないと、自分が…」
ヴァンプ「でもあまりひどくやったらだめだよ。学生さんなんだからさ」
クリス「そういえば、このシナリオはどうするんだ?」
そういいながらクリスがB5サイズの紙の束を指差す。
表紙には『プロモーションビデオシナリオ』と書いてある。
最初の登場から戦闘時の立ち振る舞いまで綿密に書かれたものらしいが、総代からの命令により真剣で戦うように言われているため大半は使用不可能だろう。
ヴァンプ「とりあえず、最初の方と、とどめにレッドさんから借りてるサンシューターを使うところはあったほうが良いね。一応私たちってレッドさんが主な敵なわけだしさ」
キャップ「自信作だぜ、見てみろよ」
そういわれて登場シーンのページを見てみる。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
廃ビルの中で佇むヴァンプたち
ヴァンプ「くっくっく、サンレッドが不在の今の内にこの地を征服してくれよう!行くぞ、アーマータイガーよ」
アーマー「はっ!」
??「おばあちゃんが言っていた…不味い料理屋と悪が栄えた例は無いと…」
そこに謎の声が響き渡る。
ヴァンプ「だ、誰だ!?
??「太陽の戦士の代理人だ」
右手の人差し指を天に掲げながら不適に笑う青年が立っていた。
ヴァンプ「面白い!アーマータイガーよ、まずはアヤツから血祭りにあげるのだ!!」
アーマー「このアーマータイガーにお任せください!!…行くぞ小僧!」
ヴァンプの命に従い前に出るアーマータイガー。
掲げられていた青年の右手の親指から指輪が現れる。
そのまま右手を顔の前に持っていき、拳を握り青年が叫ぶ。
??「纏・身ッ!!!」
掛け声と共に青年から眩い光が放たれる。
咄嗟の事に目を覆うヴァンプたち、光が収まった先には群青色の鎧を纏った戦士が佇んでいた。
エゴ「俺は指輪の戦士『エゴ』。フロシャイムよ、サンレッドに変わり貴様らを討つ!!」
アーマー「我が名はアーマータイガー、我がタイガー殺法の前に屍を晒すが良い!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
大和「顔ばれするじゃないか、変身した状態で出てば良いだろ…台詞もいちいち恥ずかしいしさ」
キャップ「バッキャロー!変身ヒーローの変身シーンないなんてラーメンに麺が入ってないようなもんだろうが!」
クリス「そうだそうだ、それにちゃんと逆光で顔がよく見えないようにする予定だから問題ない」
ヴァンプ「大和君、私たちからもお願いだよ。レッドさんなんて普段戦闘スーツだって着てくれないんで…たまにはちゃんとした戦いを…」
アーマー「そうッス、レッドさんは様式美ってのが分かってないッス」
ヴァンプさんとアーマータイガーさんが感慨深そうに頷く。
そんなアーマータイガーさんは今日はランニングシャツにジャージのズボン、流石にランニングシャツは早い気がするが毛皮に覆われているから大丈夫なのだろう。
百代「それに台詞が恥ずかしいって…昔はもっと恥ずかしいこと言ってただろ」
大和「昔の話はやめててくれ…」
京「いじめられる方にも問題があるんだYO」
大和「うぐぅ…」
百代「”愛なんて言葉は幻想にすぎない”とか言ってたよな」
大和「( ゚∀゚)・∵. グハッ!!」
松風「痛ーな…でもよ厨二病は不治の病だZE」
由紀江「こら、松風」
モロ「流石にかわいそうになってきたよ…」
いじめられる側の気持ちがほんの僅かでも分かった気がした。
結局皆に押し切られて台本を覚えることになった。
本番でもしやらなかった場合は俺が太宰にかぶれていた時の名言集がばらまかれるらしい。
全力でやらなくては…
番外編
レッド「あれ?何処にしまったけな…」
かよ子「何探してるの?」
レッド「あぁ、サンシューターだよ。確か工具箱にしまったんだけどな」
かよ子「何?ヴァンプさんたちとの戦いには必要ないとか言ってたじゃない」
レッド「俺が使うんじゃね〜よ。…新人がヴァンプたちと戦うから貸してやるんだよ」
かよ子「新人ね…あんた引退でもするの?」
レッド「いや、それはないな。明日からの旅行のために代打頼んだんだよ、頼んだからにはちっとは力かしてやんないとな」
かよ子「え?用事あったの?なんならキャンセルしても良いのよ?」
レッド「冗談。その…なんだ…お前との用事のほうが大切だろ」
かよ子「……そう」
レッド「お!あったあった。とりあえずあいつらのとこに持って行って来るわ」
かよ子「いってらっしゃい」
番外編
〜レッドの物探し〜
完
あとがき
ここまで読んでいただきありがとうございました。
コメントとか頂けると励みになります。
ついでに登場させてほしいキャラとか書いていただけるとうれしいです。
次回は鎌倉へ、ついにジガが登場。
姉しよ知ってる人はどんな人物か分かりますね?
当然井上の好みど真ん中のあの人も出演です。
ついでに絵とか描いてみました。
モチーフはトンボです。
キャプたちと川原で遊んでいるイメージがあったためこうなりました。
台本内での大和の台詞に覚えがある人もいるのでは?
説明 | ||
知識を手に入れた大和、しかし得たはずの知識は不完全だった… ついに7話、いい加減キング○リムゾンの出番か… |
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コメント | ||
アイン様、楽しんでいただけると幸いです。(ろしあ) なんか迫力ある物語で楽しいです^^(アイン) |
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