真・恋姫†無双〜物語は俺が書く〜 第13幕
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―――その服が放つ光は神々しかった。

 

 

 

 青年は敵を見据え、恥じる事無く高らかに宣言する。

 

 

 

―――それら全てが、私たちの瞳に彼を。

 

 

 

「降臨……満を持して…」

 

 

 

―――幻想的に映させた。

 

 

 

「さて?俺の事を呼んだかい、美声の歌姫?」

 

 

 

 

 今回の話はこの時より、少し遡ったところから始まる。

 

 

 

 

 

 

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真・恋姫†無双〜物語は俺が書く〜

 

第13幕「光×闇+強さ×弱さ=新たな力?」

 

―――街の外、数分前―――

 

 

 

 

 

 

 「一つ目はデメリット。二つ目はメリットとして、重い分遠心力を利用して振れば大人数の敵を一度に吹き飛ばせるし、防御している上から叩けば相手も押し返すだけの力が必要。さらにうまくいけば……」

 

 

 『狼襲』は勢いが無くなり、その刀身の頭を地面へと埋もれさせる。一刀はそれを見て走り出し、自分の得物に向かい跳躍した。

 

 『狼襲』の柄を取り、空中で反転してその勢いを持って地面から『狼襲』を抜き取る。

 

 

「敵の防御…得物ごと……」

 

 

 運悪く目の前にいた敵にそのまま、降り抜く。敵もやられまいと、剣で受けようとする。

 

 

〈(あ〜あ。そんな細い剣で、大刀を受けようなんて…。無知とは罪ですねぇ〜、クスクスッ)〉

 

 

その行動を見ていた朔が、クスリッと憐みを込めて哂った。

 

 そして。

 

 

「斬り……“潰す”!!!」

 

 

 

?――ガシャ、グシュァァァ!!

 

 

 

 一刀は言葉と共に、『狼襲』で敵を武器ごと斬り“潰した”。

 

 その際に一刀の顔にピシャっと、生温かい液体が飛び散った。

 

 

「…………」

 

 

それを、確かめようともせずに腕で拭う。それと共に後ろから、気に食わない気配が幾つか感じた。

 

 

「くそっ!?良い気になってんじゃ…ね……えぇ?」

 

 

仲間が斬られて、仇を取ろうと一刀に呼びかけたが振り向いた一刀の顔を見た瞬間、思考が停止した。

 

一刀の顔には敵を斬った際に、飛び散った血が一刀の顔を赤く染め上げていた。

 

何より、黄巾党を凍りつかせたのはその眼であった。

 

別に、感情が無いとか濁っているとかでは無い。ただ、その眼は純粋に楽しんでいるような……子供が新しい遊び[殺し]方を見つけたような目をしていた。

 

 

「…クックッ……クックックッ…」

 

 

なにがそれほど“愉しい”のか、一刀は返り血で染まった顔を歪め、自分と同じく赤黒い血を滴らせている『狼襲』を引きずりながら、恐怖で動けない黄巾党に近づく。更に近くにいた黄巾党どころか味方の兵も、動けなかった。

 

しかも、近くにいた者達は一刀が小さな声で何かを言っているのを聞いてしまった。

 

 

 

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「……どう殺そうか?惨殺?瞬殺?鈍殺?圧殺?刺殺?虐殺?抹殺?裂殺?殴殺も捨てがたい…。滅殺、それともグチャグチャにミンチ?焼死、溺死、凍死、感電死、墜落死……あぁ、この世には言い表せないほどの殺し方、死に方が満ち溢れている…」

 

 

 その呪詛と言い換えても、おかしくないほどの言葉を聞いた者は敵味方関係無く、呪詛と共に放たれる殺気にあてられ一人、また一人と泡を吹きながら失神していく。

 

 肝心の敵の前に立つ。一刀に向かって暴言はいた者は、いつの間にか震えが止まっていた。更に一刀が近づいても引かぬ、その胆力に敵であるはずの一刀の兵からも驚きの声が挙がる。

 

 しかし、一刀はと言うと『狼襲』を持っていない手で指鉄砲を作り、人差し指を黄巾党に押しつけた。

 

 

「バーンッ」

 

 

 という、世界のお宝を求めて旅をしている“カイトウ”(二重の意味)と同じ声で効果音を真似て小突く。

 

 

 

?――ヒュー、ドスン。

 

 

 すると、小突かれた黄巾党はそのまま地面に倒れこんでいった。

 

 

 

『はぁ?はっ!?は〜〜〜っ!!?』

 

 

 

 周りから驚きと落胆の声が上がった。

 

 

 そう、この黄巾党は一刀の只ならぬ殺気に中てられ絶命………まではいかないが、失神してしまっていた。しかし、近くにいた者でさえ気絶しているのに直接殺気を向けられたのにも関わらず、同じ症状で済んでいるのは奇跡であった。(実は殺気を向けられた瞬間と同時に、失神した。故に被害は最小限に収まっていた)

 

 つまらなそう見た後、一刀は素早く頭の上に手を振り上げて何かを掴んだ。

 

 

「なっ、なにっ!?」

 

 

一刀が掴んだのは、殺気も感じ取ることが出来ない者が背後から近づき、振り下ろしてきた剣であった。

 

周りから、歓声が響く中で一刀は驚いていた。

 

―――素手で剣を掴んでいる自分に…。

 

確かに自分は此方に来て……氣を修得してから、正史にいた時よりも格段に強くなっている。

 

しかし、だからと言ってタイミング良くこんな事が出来るか?

 

それに先ほどから、何かがおかしかった。血を見てから頭が朦朧とし、“勝手に身体”が動く。そして、“また勝手”に口が開く。

 

 

「…何処ノ“世界”ニモ、ドノ時代ニモ、無謀ト勇敢ヲ吐キ違エル者ハ、イルモノダ」

 

 

 

――― 俺は何を言ってんだ? ―――

 

 

 何かが変である。霞かかっている頭では、漠然としか理解出来ない。敵を殺した自分への嫌気も、敵を殺す覚悟も……自分が“自分なのか”すらも、ただ漠然であった。

 

 

 

 そんな頭であっても、身体だけはしっかりと動いていた。

 

 一刀は掴んでいた敵を思いっきり引き、自分の目の前の地面へ叩きつける。

 

 叩きつけられた敵は、肺に在った酸素を吐き出そうとするが、その前に一刀が間髪を入れずに宙へと蹴り上げた。

 

 

「がっ!?ぁ、あっ!っは!」

 

 

 必要以上の酸素を吐き出した為、黄巾党は一瞬呼吸困難に陥り着地の事も考えずに、何とか息を整えようとするが。

 

 

 

―――ガシッ。

 

 

 

 誰かに脚を掴まれる。と言っても、この状況で宙に舞ってる者の脚を掴む何て所業をするのは、この場には一人[一刀]しかいないが。

 

 その掴んだ脚を今度は自分の後方……黄巾党が元いた方へ投げる。

 

 

「―――壊レチマエ[壊れちまえ]―――」

 

 

 

 

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―――ドスンッ!ボキャッ!

 

 

 一刀には誰の言葉なのかは、判らなかった。自分の口から出ていた事は分かっていても…。

 

 叩きつけられた黄巾党がまず最初にしたかったことは、地面に叩きつけられた痛みに耐える事よりも……呼吸が出来ない苦しいから、酸素を取り入れるよりも……まず、ここから…一刀から逃げる事であった。

 

 最初は感じていなかった殺気が、今になって、殺し合って初めて理解した。殺意を…今相手にしているのは“人の皮を被った鬼”という事が。

 

 

「ぎっ、はぁ、ぐぎゅ…くっ、はっ!」

 

 

 必死に脚に力を入れるが、うまく力が入らない。黄巾党は地面に叩きつけられた際に、脚が折れてしまいあり得ない方向に向いてしまっている事に気づいていなかった。

 

 なんとか、動いても匍匐〔ほふく〕前進のように、更に一刀[地獄]が居る[在る]方に進んでしまう。

 

 

 

「―――火ノ型[火の型]―――」

 

 

 

何処からか声が聴こえ、黄巾党は意図せず、上を見上げればそこには………。

 

 

 

「――― 懺炎牙[ザンエンガ] ―――」

 

 

 

 『朔夜』の時と同じように『狼襲』の刀身から紅蓮の炎が噴き上がり、深紅に燃え上がっていた。その『狼襲』を肩に担ぎ、そのまま敵に振り下ろす。

 

 

――― その場所の付近では爆発によって、発生した爆風で吹き飛んで行った北郷将軍…基、軍師が街の方に跳んで行くのを見た者が後を絶たなかった。当の黄巾党が居た場所には誰も、何もなくただ、地面が燃えていた。

 

 

 

 

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――― オキロ… ―――

 

「(……誰だ?)」

 

 

 一刀はまどろみの中、誰かが起こして来るのを感じつつ…。

 

 

「(俺、“また”気絶かよ…死合いに勝って勝負に負けている気分だ。…軽く死にたい)」

 

――― ソンナ事ハ、ドウデモイイ ―――

 

 

 ここ最近、命の取り合いには勝利は納めているモノの気を失う事が多い事に、落ち込むが“誰か”がそれをバッサリと切り捨てる。

 

 一刀は“誰か”を睨もうとしたが姿が見えない上に今、自分が目を開けているのか解らなかった。取り敢えず、相手の事を知ろうと話しかけてみる。

 

 

「取り敢えず、お前は誰だ?姿が見えない事から人じゃないよな?朔のような擬似人格を持った武器か、それとも左慈のような道術・妖術類の使い手か?それとも…」

 

――― 知ラン。寧ロ我ノ事ナド、ソノ辺ニ捨テ置ケ。“今ノオ前”ニ言ッテモ何モ理解出来ン。其レヨリモ ―――

 

「(また、“今”の俺か…。)どうしてだ…?なぜ、朔も貂蝉も左慈もお前も…!!今の俺じゃ何なんだよ!?お前は、お前達は俺に、どんな俺を望んでんだ!?」

 

――― 成長シ、『真ノ存在[役割]』ヲ知ッタオ前。今ノオ前デハ、本当ノ“世界[真実]”ヲ知レバ自殺サレカネン ―――

 

 

 真実を知りたい。この世界に呼ばれた、そして自分が選ばれた理由。一刀が一番知りたく求めるもの。しかし、それを知っていそうな者達はいつもそれを隠す。朔、貂蝉、そして左慈。いや、左慈時の時には聞きそびれただけである。そして、この“誰か”。

 

 真実を知ろうとすれば深みに嵌り、隠される。知れば一刀が自殺しかねないこの世界の真実とは…。

 

 だが、“誰か”はそれさえも。

 

 

――― …マァ、ソレモドウデモイイ。貴様ガ死ノウガ生キヨウガ…ナ ―――

 

 

 どうでもいいと、答えた。

 

ふと、気になった。朔・貂蝉は一刀を生かそうとして真実を…何かを隠している。

 

左慈、白装束達は一刀を殺そうとしている。真実を隠す気はなさそうではあったが。

 

そして、この“誰か”は一刀の事をどうでも良いと答える。

 

 

「朔・貂蝉にとっては必要…。左慈にとっては邪魔者…。こいつにとってはどうでもいい?俺っていったい……」

 

――― 考エルノハ後ニシロ。コノママデハ、本当ニ死ヌゾ?我ハ、一向ニ構ワヌガナ ―――

 

 

いったい自分はどういう存在なのか考えているが、“誰か”の『死ぬぞ』で思考を切断し不本意ながらも耳を貸す。

 

 

 

――― 用件ダケ手短ニ言ウ。我ハ、話スノガ苦手ダカラナ… ―――

 

「……道理で聞きとり難い訳だ」

 

――― 貴様ト我ハ、表裏一体。貴様ガ聡明ナ分、我ハ馬鹿ニナル。逆ニ貴様ガ弱イ分、我ハ最強ダ ―――

 

 

 後者がとても気に入らないのか、一刀の額に青筋が立つ。しかし、その前に言った『表裏一体』と言う物に惹かれた。

 

 つまり、それはこの“誰か”が自分と何かしらに因果を持っている事だから。

 

 

――― 思考ヲ展開スルナ、話ヲ戻ス。我ノ用件ハ『焔[ほむら]』…刀カラ出タ炎ニツイテト、顕現ノ仕方。オ手軽ニ簡単ニ指南シテヤル。崇〔あが〕メ、拝〔おが〕メ、奉〔たてまつ〕レ ―――

 

「急に冗談が織り交ざって来やがった…(実は朔の親戚だろ、若しくは朔が俺に似た?…後者で有りません様に)」

 

――― 貴様ガソウイウ性[サガ〔性格〕]ダカラナ。〈しりあす〉ハ嫌イダ ―――

 

 

 心の中で『御尤[ごもっと]も』と相槌を打ちつつ、“誰か”の話に耳を傾けた。

 

 

 

 

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――― 以上ガ『焔』ニ付イテダ。質問ハ受ケ付ツケン ―――

 

「いや、質問する箇所など無かったぞ?」

 

 

 実際に『焔』の説明を受けたが、様は『稲妻の氣』の炎ver.であった。肝心なのは発動の仕方だけ。其れを間違えれば、必要な時に違う氣を発動してしまうという事だ。

 

あと、『焔』能力について教わった後に『後ハ、貴様ノ使イ方次第』と言われた。

 

 

「俺次第か…」

 

――― ソレヨリモ貴様ハ、自分ノ状況ヲ把握スベキダ。異変ニ気ヅカヌノカ? ―――

 

「それよりもって…お前、何でもかんでも『そんな事』とか『それよりも』とか。お前にとって大事な事は無いのか?」

 

 

 一刀も口では呆れたように言いつつも、自分の異変を探す。特に何も感じなかったが、先ほどから、なにか浮遊感のようなものを感じていた。こう自分が死んで天に昇っているような?

 

 そして、“誰か”がとんでも無い事を口にした。

 

 

――― 長話ニナル思ッテ、高ク跳ンダノハ良イガ……着地ノ事マデ頭ガ回ラナカッタ ―――

 

「……One more please?[ワン モア プリーズ?〔もう一度、お願いします。〕]」

 

――― …マァ、後ハ貴様ニ任セタ。着地ニ失敗シテモ痛イノハ貴様ダ ―――

 

「更に責任転換と来たよ、これ!つか、俺、飛んでる!? I am frying!?」

 

――― No. You are jumping.〔違ウ。貴様ハ“跳”ンデイルノダ。〕It, and it is not "I am frying" and "Am I frying"〔ソレト、”I am frying”デワナクテ”Am I frying”ダ。〕 ―――

 

「宙に浮いてんのは変わんねぇだろっ!?しかも、英語だとスゲェ聴き取りやすいな、おい!#」

 

――― This made one clever again.〔コレデマタ一ツ、利口ニナッタナ。〕 ―――

 

 

 どこかの芸人も真っ青な程のコントをしつつ、“誰か”の評価を落とす一刀。現在、一刀はかなり高く浮いている事が解る。

 

 同時に背中が冷たくなってくる。

 

 

 

 

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Q.人は何故飛べないか?

 

 

 

A.翼が無いからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 この時ほど、一刀は世の真理を呪った事は無いだろう。

 

 五感の感覚が戻り始め、自分が地球の重力に惹かれて落下速度が速くなっている事を悟り、油汗をかきながら顔を引き攣らせる。

 

 最後に視力が戻り、目を開けると下に街が見えた。

 

 

 

――― 全てを見渡せる大きさで…。

 

 

 それからの一刀の行動は速かった。身体に『稲妻の氣』で身体を強化及び、腰に着いた布を広げてパラシュートのように広げた。これで少しは減速するだろう。

 

 その行動とっている最中でも、“誰か”は話しかけていた。

 

 

――― ソレト…自我ヲ決シテ見失ウナヨ?一度、見失エバ本能ニ喰イ殺サレルゾ ―――

 

「本能、テメェの事か!?喰い殺される前に、蟇蛙〔ヒキガエル〕のように潰れそうだから後にしろ!」

 

 

 一刀はこの状況を作り出した元兇に、怒りを感じつつ焦った声で答えた。

 

 

――― 我デハ無イ。我ハ貴様ノ裏…簡単ニ言ウナレバ理性ノ裏ダ ―――

 

「理性!?俺に理性があったとは、驚きだな…っと!」

 

――― 茶化スナ。例エルナラ、貴様ガ『優シイ一刀』ナラ裏デアルナラ我ハ『極悪非道ノ―――』。我ガ『殺戮ヲ好ム―――』ナラ貴様ハ『人ノ死ヲ悲シム一刀』ト言ウ事ダ ―――

 

 

 一刀はこの言葉で確信した。この“誰か”は一刀の………。

 

 

――― コレニハ、少ナクトモ理性ガアルガ…本能ハ違ウ。風ノ吹クママ、気ノ向クママ。動物ト変ワラヌ…イヤ、動物ナラ取リ押サエレルガ我達ハ更ニ性質[タチ]ガ悪イ『化ケ物』ダカラナ。後ハ言ウマデモ無イ。健闘祈ルゼ、相棒? ―――

 

「やはり、お前は…」

 

――― 最後ニ御節介者カラノ忠告ダ ―――

 

 

一刀が“誰か”の確信し呼ぼうとした時して、本人に阻まれた。

 

 

――― 我ト慣レ合オウト思ウナ。本能ホドデハナクトモ、我モ相当性質ガ悪イゾ? ―――

 

 

 “誰か”が消えそうになっているのか、最後が聴き取り難くなっているが、そんな事関係なく一刀が質問する。

 

 

「ちょっと待て!お前にとって俺の生死など、どうでもいいのに何故、助言をした!?」

 

――― イズレ、分カル時ガ来ル。ソノ時マデノ、御愉シミダ。…ジャ…アナ……… ―――

 

 

 しばらく呼びかけてみたが、全く反応が無かったので一刀はすぐに着陸手段を考えた。

 

 

「くそっ、本当に厭な事を押しつけやがって!…どうする北郷 一刀。頭を高速回転させて考えろ…」

 

 

 その時、一筋の風が吹いた。

 

 閃きを乗せて。

 

 

「風…?………っ!?もうこれしかない!てか、時間が無い!?朔、起きろ!Wake up!!」

 

 

 

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〈………現在、この刀に擬似人格は宿っておりません〉

 

 

 

 

 

 

「…………はっ?」

 

 

 この状況下で何の冗談かと考えたが、このような事をされる覚えは無かった。

 

 

〈…決して、余りの出番の無さにフテキされた訳ではありませんよ。決・し・て!〉

 

「……はぁ」

 

〈そうです!えぇ、出番の無さよりもマイスターに相手にされない事に苛立っている訳ではありませんよっ!?〉

 

 

どうやら、愛しの一刀が自分[朔夜]ではなく『狼襲』を使い更に“誰か”と話しっぱなしで、相手にされなかった事に苛立ちと嫉妬をしているようであった。

 

取り敢えず、一刀は宙に浮いているのにも関わらず、正坐をして。

 

 

「…すみません。力を貸して下さい」

 

〈…分かれば良いのですよ。…ですが、世にも奇妙ですね。空中土下座って〉

 

 

 

 

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―――同時刻・街の西門―――

 

 

 

―――ビュン。

 

 

 

「ぐぁ!?」

 

 

 また一人の兵が命を落とした。

 

 秋蘭の命により、西側の門を任された防衛隊。

 

 この兵隊たちは、一刀達将軍が直に鍛え上げた兵たち。そう簡単に負ける筈もなく、最初は善戦していた。

 

 目の前にいる猿のようにすばしっこい黄巾党が現れるまでは…。

 

 

「ウッキッキキー、こいつらマジ弱ぇなー。あぁ、俺が強すぎんのか?ごめんなー、強くてさぁ!」

 

 

 その者は手足が異様に長く、素早い動きで兵たちを始末して言っていた。

 

 そのせいで、五十人近くいた兵は半数に…。

 

 しかし、残った兵たちは希望を捨てはしなかった。

 

 

『怖ければ、逃げろ。だが、最後まで希望を捨てずに戦い抜いた者のみは必ず、助けてやる』

 

 

自分たちの隊長…北郷軍師が言っていた言葉があるからこそ、今も兵は逃げずに戦い続けていた。

 

 張宝が居れば、またくだらないと笑うだろう。

 

 それでも兵たちは、今、この瞬間も信じている。

 

 

――― 奇跡…希望(一刀の言葉)を。

 

 

 

――― そして、希望は天(本人)へと届く。

 

 

――― ズンッ。

 

 

 

 突然、何か上から圧力がかかり、手長猿のような黄巾党…チビがその場から動けず、それどころか地面に引きつけられる。

 

 

「ッ!!?…なっ、なんだ!?」

 

 

 チビは訳が解らず、混乱する。

 

 周りの者たちも状況がつかめず、狼狽する。

 

 そして………。

 

 

 

――― ボオォォォン!!

 

 

 

 いきなり何かが弾けた。そのせいか、周りに有ったモノ全てが上空へと弾け上がった。

 

 

 

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―――― 一刀seid ――――

 

 

「よし…、こちらカズート、こちらカズート。策の第一段階終了。これより、第二段階へ移行する…」

 

〈此方本部。了解しました。そのまま、作戦を続行してください。………何処の軍人ですか?寧ろ、私も何故悪乗りを…〉

 

 

 どこかの蛇の諜報員〔スパイ〕の影響か、気分は正に蛇さん気分の一刀。

 

 それに冷めながらも、主人に付き合う妖刀―朔夜―。

 

 その『朔夜』の刀身には微かながら風が纏っていた。

 

 一刀の策…。それは余りにも、狂っていると言われてもしょうがないイカれているモノであった。

 

 一刀は風が吹いた際に鳥がその風に乗り、滑空している所を見て昔に観た…スカイサーフィンを思い出した。

 

 

――― そして、ピンと来た。

 

 

 このまま、垂直に落ちても衝撃は緩和されないが滑空した方が受け身も取りやすく、衝撃も逃がしやすい。

 

表現は下手かもしれないが、例えるならボールを下に叩きつけるのと、同じ力・高さで角度を付けて投げるのでは地面に着いた時の衝撃はどちらが弱いか?

 

そう言う事であった。因みに下に叩きつけた際にはボールは同じ方向に帰ろうとする力…弾力がある。様はそのままの力で帰ってくる。

 

角度を付けた場合、その方向に進んでいく。……威力が落ちるまで。

 

簡単に言えば、こういう事になる。何故、このような話をするかと言うと、察しの良い人は気づくであろう。同時に無理・あり得ないと否定するだろう…。

 

 

――― 何かをサーフボードに見立てて滑空する気ではないか? ――― っと。

 

 

普通の人間には無理である。某史上最強の弟子の御友達である、北欧神話の『ニーベルンゲンの指輪』に出て来る英雄の名を名乗っている、“後の先”の極めた人は同じような事をしているが…真似はしてはいけないぞ?

 

 

「…実際上手くいくかと訊かれれば………無理だ」

 

 

 現実面を考えれば、それが正解。

 

しかし、一刀の瞳にはやる気の炎が漲っていた。

 

 

「しかし、やる前に諦める事はしない。それにどんなものにも、例外は存在する」

 

 

 一刀には“氣”と言うアドバンテージ〔有利〕がある。『稲妻の氣』と言う反則技法もある。

 

 そして…朔と言う頼れる仲間が居る。

 

 覚悟は決まった。後は…肝心なボード―板―であった。こんな空中に浮いている訳は無い、ならば…。

 

 

「ある場所から、持ち出す…。この場合は下の街、しかし、届く訳がない。てか、その前に着いたらバッド・エンド確定…なのか?」

 

 

 腕を組み、最近の自分を振り返る…。浮かぶは仲間に殺されかけた事ばかり…。

 

 

―――仲間に殺されかける事が多いなんて…流石、三国志だな。恐るべし…。

 

 

 取り敢えず、頭を振るい邪念を振り払う。

 

 

「いや、死亡確率が高い事は変わりないのだから考えるな」

 

 

 そして、届かない物を取り寄せるにはどうすればいいか?

 

 

 

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答えは簡単である。

 

見えざる手を使う。

 

それは…“風”。

 

一刀は、――風の型・龍咆[りゅうほう]――という氣で竜巻を発生させて敵を飲み込み、最終的には相手に絡み付き爆発…暴風を起こす。尚、元々は“北郷 小十郎”の技であり、一度しか見た事が無い上に初めて使用してここまで出来るのはさすが『神童』と言う事であろう。

 

因みに小十郎の『龍砲』は相手との距離が長い程、技の威力が高く、最後の暴風も桁違いとか…最大射程距離は“1km”とかなんとか。

  (※距離が長くても、命中精度が良い訳ではない。敵が一人だと中り難い上、仲間を巻き込む可能性あり。)

 

 そんな訳で、放ってみた。

 

 結果はと言うと…。一刀の思惑道理に暴風で下の街に有った木材・機材などが宙へと舞い上がってきた。

 

 

 

―――勿論、サーフボード代わりになりそうな“板”も。(『狼襲』は十分成りえない事もないが、重すぎる為に却下。『朔夜』と『災厄』は論外であった)

 

 

 

 その中から、丈夫かつ面積が大きくて軽い物を選定する為に探す。

 

 同時に飛んでいるモノの中から、殺気がとんできた。

 

 

「…なんだ?」

 

 

 不思議に思い、空中に散乱しているモノの中から探そうとした時、目の前から机が飛んできた。

 

 しかし、一刀が慌てる事は無かった。

 

 まず、一刀は『朔夜』を宙に投げ、空いた手で飛んできた机の角を掴む。そして、その手を引いて机の上に飛び乗り、落ちて来る『朔夜』掴む。そして、一刀は机が飛んできた方を見ると黄色い頭巾を被った。異形の人“らしき”者が居た。

 

 そう。あの手長猿のような黄巾党…チビであった。怒り狂ったのか顔を真っ赤にした。

 

 

「やいっ!テメー仕業かっ!?いきなり宙に飛ばしやがって!!覚悟しやが…」

 

「知るか雑魚。黙れ雑魚。消えろ雑魚。掘られろ雑魚。まだ居るのか雑魚?消滅しろ雑魚。息するな雑種?」

 

 

 黄巾党…チビが理不尽な扱いに文句を言うが、それ以前に一刀がまともに相手する訳も無く、チビを一刀両断にする。

 

 その扱いを見た朔が一言、一刀に進言する。

 

 

〈マイスター?最近、性格が私に似てきてませんか?〉

 

「…きっと、気のせいじゃないかな?かな?」

 

 

 一刀の目からハイライトが消えかけている為に、朔はそれ以上は何も言わなかった。

 

 

「…てっ、めぇ…もか?そこいらの奴みたいに俺を馬鹿にしやがって!俺は雑魚じゃねぇ!!証明してやるッッッ!!!!」

 

「………踏んではいけない地雷を踏んだ?」

 

〈逆鱗に触れた。もしくは『お前は俺を怒らせた』ってやつですかね?〉

 

 

 チビの顔は、真赤を超えて赤銅色に変化していた。

 

 そして、手を伸ばして近くに有った飛来物を自分の足元に持ってきて、それを足場にして一刀の方へ飛んで行く。

 

 その動きは正に、森の中で飛びまわる猿。この速さで幾人もの兵を葬ってきた訳だが………別段、一刀には余り苦となる事はなかった。一刀の瞳は、しっかりとチビを捕らえていた。更にチビ幾つか勘違いをしている。

 

 

「シャッ!」

 

 

チビの腕が一刀に迫る。

 

 

 

――― 一つ。空中では思うように動けない為、敵は身動きが取れないという事。

 

 

 

「阿呆か?」

 

 

 一刀は受けるのが面倒で“机の上”で身体を回転させ、回避する。

 

 この行動にチビが焦る。すぐに近くの飛来物を引き寄せ、足場を作ろうとする。

 

 

 

―――二つ。敵は動けずとも自分は手を伸ばせば、何時でも足場を作れる。そして、奇襲する事が出来る。

 

 

 

 チビは手を伸ばす…が。

 

 

「あれ…?」

 

 

 足場に成りえるモノは何も無かった。

 

それはそうだ。その足場[飛来物]は“先ほど”までチビが居た場所にしか無い。

 

 

 

 

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Q,では、今チビは何処にいる?

 

 

A, 一刀を通り越して“何も無い”空。

 

 

 

 

「やはり、阿呆か…」

 

 

チビの後ろからは一刀が、呆れたような声で小馬鹿にしていた。

 

チビは何とか身体を反転し、一刀が起っている足場に手を伸ばし掴む。しかし、

 

 

 

―――バシンッ!

 

 

 

一刀が、その掴んだ手を蹴り離す。

 

そして、焦ったチビがその時にみた一刀の顔は…。

 

 

「悪い、定員及び重量越え[オーバー]だ♪」

 

 

 

―――とても残酷な笑みをしていた。

 

 

 

 

 ここで黄巾党のチビに対しての補足を加えておきたいと思う。

 

 

 地和こと張宝の妖術によって、チビは猿のような俊敏性と手足が人の1.5倍ほど長くなっている。様は一刀の『雷の型』の速さのみを追求したようなものである。

 

しかし、その速さは普段の一刀と互角かその一ランク劣るかであり、『稲妻の氣』を使用している時にいたっては到底及ばない。

 

だが、今回強調したいのは『手足』の事についてである。チビの手足は“長いだけ”であり、某海賊王を目指す護謨[ゴム]人間の船長やの二人で一人の探偵某ライダー、半分こ怪人の『月』のように“伸縮”する訳ではない。

 

 つまり、チビの手は最初から届く範囲が決まっており、それを過ぎれば…掴めない。

 

 そして今、一刀に蹴られた時には手を思い切り伸ばした状態である。

 

 

 以上の条件を持って言える事。それは………。

 

 

 

 

 

-14ページ-

 

 

 

 

―――もう、落ちるしか無いでしょ?♪

 

 

 

 

 

 

「いやだぁぁぁぁ!!!!??」

 

 

 チビは物凄い勢いで落ち…落下していた。

 

 今、チビの脳内では今まであった事が走馬灯のように、駆け廻っていた。

 

 

―――デブに出遭ったあの日。

 

――――アニキに負けて、手下…子分になったあの日。

 

 

「(厭な思いでばかりだな!?)」

 

 

 しかし、そうでもなかった。確かに厭な出遭いではあった、何度も縁を切りたいと思った。でも、そうしなかった。

 

 それはきっと、心の片隅ででも楽しいと思っていたからであろう。

 

 

 

―――そう言えば、こんな事があった。

 

 

 皆と出遭って日が浅い時、街の酒場でチビが一人で酒盛りをしていると、自分と同じような風貌の者たちがチビにイチャモンを付けてきた。

 

 相手は六人。どうみても勝ち目はなく、チビは隙を見て逃げようとした。しかし、何の切っ掛けも無く相手が突然に殴りかかった。チビは避ける事も出来ず、その拳を顔面に受けて倒れる。そして、次々と相手はチビに暴行を加えて行く。

 

 何かの腹いせだろうか?チビは謂われも無い暴力に耐えつつ、周りの者に視線を送る。

 

 しかし、皆観てみぬフリを決め込んでいた。今、暴行を加えている者達はここの官軍[警察]ですら手を焼く者達。一般の者である彼らでは到底及ばぬ。

 

 更に言えば、チビも小汚い風貌である故に彼らと同じ、腫れものに触るような態度を執っていた。

 

 

「(…所詮、はみ出し者の俺にはこれがお似合いって事か…?)…あ、ははっ、はぁ…」

 

「なに笑ってんだ?気持ちわりぃ!おい、喋れねぇ様に喉を潰そうぜ?」

 

「おっ、いいねぇ!その案、採用〜なんちて、キャッハッハッ!」

 

 

 チビがこの世の中に“絶望”して嗤っているのが癇に障ったのか、仲間にチビの喉を潰すように指示した。その指示された者は面白そうに嘲笑いながら、懐から短剣を取り出して鞘から刀身を抜き出す。

 

 その刀身からは妖しい光を放っていたが、今のチビにとってはどうでも良かった。

 

 

「(寧ろ、人思いに殺してくれればいいのに…。アニキにやられ、こいつらにやられて…惨[みじ]めだ。そもそも、こんな身体で、こんな身分で生まれる事がおかしんだ)」

 

「(気がついた時には、親に捨てられ、兄弟に見限られ…。次、生まれ変わるなら大名や豪族がいいなぁ。あぁ、でも俺はモノとか盗んだりしているから、まずは地獄かなぁ?)」

 

 

 現実逃避。それもまた、人の“心の防衛”。誰であろうと…心が癒せる者が居ない以上、これもまた人の生き方。

 

 短剣が掲げられる。其れを他人事のように見つめる。

 

 そして、天高く掲げられた。

 

 

 

-15ページ-

 

 

 

―――パシッ。

 

 

 

 しかし、そこまで振り下ろされる事は無かった。

 

 何故なら―――

 

 

―――グッグッ!

 

 

 後ろから、その腕を物凄い力で掴んでいる者が居たからだ。

 

 

「おい、てめぇー」

 

 

 掴んでいる者が後ろから声を掛け、短剣を持った男が機嫌悪そうに振り向き。

 

 

「何、しくさってんだ!?」

 

 

 

―――ガスッ!!

 

 

 

 思い切り殴られ、吹き飛んだ。

 

 周りが静まりかえる。チビも良く理解出来なかった。

 

――― 理解出来た事と言えば、自分は生きている事。

 

――― 短剣を持った男が、殴られた事。

 

――― そして、殴ったのは怒りの形相をしている………アニキである事。

 

この場で素早く動いたもは、またもアニキであった。アニキは振り向き、大声で叫んだ。

 

 

「デクッ!やっちまえ!」

 

 

 

―――ズン!

 

 

 

 重い足音と共に暴行を加えた内の、二人の身体が中に浮いた。いや、正確には持ち上げられていた。デクの両腕によって。

 

 男たちは未だに放心していた。そして、アニキが顎でデクに宣言[死の宣告]する。『ヤレッ』っと。

 

 デクは頷き、両腕を振り下げた。

 

 

「うぉおぉぉ!チビの仕返しなんだなっ〜!!!」

 

 

 そのまま、二人を床に叩きつけて悶絶させた。

 

 これで、相手は三人になった。その内の頭格の者が前に出てきた。

 

 

「貴様ら!こんな事していいと思ってんのかっ!?俺らはここら辺じゃ有名な集団。その名も『露毛津斗だ…ん』…」

 

「じゃかしい!そんなの知るか!?」

 

 

 アニキはデクと共にチビを護るように前へ立ち、一喝で相手が黙った。未だにチビは放心していた。何故、自分を助けたのかが判らなかったからだ。

 

 そんなチビを余所にアニキは敵を見据え、こう言った。

 

 

「てめぇーがどんな奴で、どんな集まりなのかは知らん。だが、分かる事が一つある。………貴様らが俺の子分を、仲間を傷つけた!殴る理由なんてそれで十分だ!!!」

 

 

 チビの心に光が差した。皆が見捨て、観て見ぬ振りをする中で、自分が嫌いな相手が助けてくれた。この行為がチビの心に救いをもたらした。

 

 どれだけ、下らなくて単純な理由で世間から嫌われ者であろうとも、それが事実であった。

 

 

 

人の心を救うのは“光”でも“闇”でもなく、

 

“正義”でも“悪”でもない。

 

増してや、同じ“人間”でもない。

 

 

 

―――同じ志を持った者…“仲間”である―――

 

 

 

敵の頭格が苛立ちながらアニキに訊いた。

 

 

「おまえ、なんなんだ?」

 

 

 アニキとデク、そして…チビの目が光った。皆が手を組み、胸を張る。

 

 

「『お前、何なんだ?』っと訊かれれば…!」

 

「こ、答えてやるが“余”の情けなんだな!」

 

「この世の摂理を壊す為!」

 

「この世に乱世をもたらす為!」

 

「に、憎しみと憎悪の悪を貫く」

 

「憎い奴な敵役」

 

「デクッ!」

 

「チビッ!」

 

「そして、この俺。アニキ!」

 

「この乱世を駆ける、三人には!」

 

「輝く“黄色”ッ!酒池肉林な明日がまってるぜ!」

 

 

 

―――ドーンッッ!!!

 

 

 

 何処からか、大きな音が聞こえたが気にせずに頭格の者が罵倒した。

 

 

「下らねぇ事を空かしてんじゃねぇよ、後ろから襲ってきた卑怯者が!?」

 

「それがどうした?やられる方がわりぃんだよ!それに一人に対して、六人で集[たか]った奴の言う言葉じゃねぇな!」

 

 

――― この後、三対三の勝負となったが…どっちが勝ったかなんてどうでも良い事。

 

――― 大事なのは、俺の心がアニキ達…仲間に救われたって事だけ。

 

 

それから俺たちは張三姉妹と出会い、彼女たちの崇拝者となった。

 

そして、張宝様にこの力を頂き、三人で約束したんだ。

 

 

「お前ら、この力で天和ちゃん達を護るぞ!」

 

「う、うんだな!?ちーちゃんを護る!」

 

「応っ!人和ちゃんを護るぜ!」

 

 

 

 

-16ページ-

 

 

 

 

―――だから…。

 

 

「死にたくねぇえぇぇぇぐふぉ!?」

 

 

 死にたくない。その一心で叫んでいる最中の事。いきなり、物凄い勢いで後ろの襟首を掴まれた。

 

チビはせき込みながらも、自分を掴んでいる犯人を見る。

 

 と、言ってもこの場でそんな事が出来る者は、ただ一人[一刀]しかいないが。

 

 

「予定変更だ。貴様には俺が下に降りる際………降臨する際の“人柱”になってもらおう」

 

 チビは今の言葉に恐怖を覚えて、一刀の顔を見る事が出来ないがきっとさっきよりも良い笑顔であることを感じた。

 

 余りの恐怖に、一刀の手を振り払おうと暴れるが“速さに特化”しているチビでは、力が足りない上に『稲妻の氣』で強化している一刀に勝てる訳も無く、正に為されるがままであった。

 

 そして、チビが悪あがきをしている際も、落下速度はグングンと上がっていく。

 

 

「あははっ!さぁ!いざ開かん、冥府の扉ぁあぁぁぁぁっっっ!!!!!!」

 

「あ、アニキィィィィィ!!!??た〜すけ〜て〜〜〜っっっ!!!??」

 

(わりぃ…無理だ…)

 

 

 こうして、一刀にとって楽しい[愉しい]、チビにとっての地獄のジェットコースター…いや、ノーバンジージャンプが始まった。

 

 

 

-17ページ-

 

 

 

 

長くなってしまいますた。後篇に続く。また会いましょう。

 

 

説明
私は帰ってきた…のか?

 とりあえず、これからは俺のターン!!!

 俺自重するということでこれからもお願いいたします!!!!

 コメント・誤字脱字の指摘を頂ければ幸いです。
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真・恋姫†無双〜物語は俺が書く〜 北郷一刀  チビ デク 張宝? 

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