仮面の御使い 劉備編 第2話 |
仮面の御使い 劉備編 第二話
『戦場』
桃園で結盟した俺たちは、公孫賛の本拠地に到着したのだが―――
「ん? なんか騒がしいな」
町の人達の様子が妙にあわただしい。桃香たちはなんだろうと首を傾げているが、俺には見覚えのある光景だった。
「まさか!」
ありえないとは思いつつも、騒ぎのするほうへと走り出す。
「ご主人様!?」
「お、お待ちください!」
後ろから桃香たちの声が聞こえるが構わず走り出す。
そこには、いるはずのない『敵』、アギトを超えようとした者の成れの果てである異形の怪人がいた。
「なんで……って、んなこと言ってる場合じゃねえ! 変身!」
慌てて変身を行い、怪人へと向かっていく。
「おりゃぁっ!!」
先制攻撃に拳を繰り出すといとも簡単に吹っ飛んでいき、爆発した。
「なんだ、レベル1か。大したことなかったな……って、アレ?」
気が付くと周りを十人以上の兵士に囲まれていた。そしてその中から青い髪の少女が歩み出てくる。
「ふむ、あの妖を倒すとは……随分腕がたつようですが……」
そう言いながらも警戒を解く様子がない。そこでようやく自分の今の姿を思い出す。とりあえず変身を解いたが、逆に驚かせてしまったらしく余計に警戒されてしまった。
(どう説明したもんかなぁ?)
そう考えていると―――
「おい星! 妖が出たってのは本当か!?」
白馬に跨りながら一人の少女がやってきた。兵隊さんたちを連れて。
「あぁ、伯珪殿。出たには出たのですが…………」
そういいながらこちらに視線を向けてくる。
「? そいつがどうかしたのか? まさか!?」
一瞬で周囲が殺気立つがその空気を聞き覚えのある声がぶち壊す。
「白蓮ちゃ〜〜〜〜〜〜ん!」
いっけね。桃香たちのこと忘れてた。めっちゃ睨んでるし。
「天の御使い、ねぇ…………。眉唾物だと思ってたけど……」
あのあと、桃香のおかげで何とか誤解は晴れたのだが――――
「確かに、見たことのない服に鎧。さらにかなりの武をお持ちのようだが…………」
今度は違う理由で注目を浴びるはめになってしまった。
「うん! ご主人様はとっても強いんだよ!」
「「ご主人様!?」」
はいソコ変な目で見ない。俺の趣味じゃありません。
「え、え〜っと。そっちの二人は?」
そう言って公孫賛はこちらを見ないようにしながら愛紗と鈴々の方に目を向ける。
無視されるのが一番辛いんですけど。
「我が名は関羽。字を雲長と申します」
「鈴々は張飛なのだ!」
「う〜〜ん。賊の討伐を手伝いに来てくれたのは嬉しいんだがまさか四人だけとは……。えっと、部隊を率いた経験とかは…………」
心配そうに聞いてくる公孫賛に対し、
「ないのだ!」
「恥ずかしながら…………」
予想通りの答えを返す二人。すると―――
「その二人ほどの腕ならば問題ありますまい」
先程の青い髪の少女が話しかけてくる。
「あぁ、名乗るのが遅れましたな。我が名は趙子龍。以後お見知りおきを」
あ〜、やっぱり趙雲も女の子なんだ。
「まぁ星がそういうんなら確かに腕は立つんだろうな」
「ええ。……そうだろう? 関羽殿」
「そういう貴女も腕が立つ……そう見たが?」
「ふふっ、さて……それはどうだろうな」
そのやり取りに思わず――
「まぁあの趙雲なら、そうだろうなあ」
「……っ!? ほお。そういう貴方こそ、なかなか油断のならぬ人のようだ。我が名をいつお知りになった?」
現代の知識を口にしてしまった。そういえば、『名』は教えてもらってなかったっけ。
「……天の知識ってやつかな。結構有名だよ?『常山の昇り龍 趙雲子龍』って」
その言葉に趙雲は一瞬目を丸くするがすぐに笑みを浮かべて。
「私の通り名まで知っているとは………。噂を聞いたときは眉に唾して聞いていたが、まさか本物の天の御使いに出会おうとは」
「ま、本物かどうかはわからないけど。信じてくれる人達のためにも本物でいようとは思うけどね」
「ふむ。……ふふっ、なかなかの器量のようだ」
とりあえず納得してもらえたようなので話を元に戻そう。
「で、どうだろう? 俺たちの参加を認めてもらうことは出来るのかな?」
「ああ、桃香の力は知っているし、星が認めるなら大丈夫だろう。よろしく頼む」
こうして、俺たちは公孫賛とともに戦うことになり――――
出陣の時がやってきた。
兵士たちがずらりと並ぶ姿に改めて違う時代に来たことを実感させられる。
「そういえば、さ。その……最近多いのか? 賊とか、あの化け物とか」
「ええ、賊の動きも活発になってきていますし、あの妖も二ヶ月くらい前からあちこちで現れているようです。私達も旅の途中で一度だけ目にしたことがあります」
「そっか」
もしかして俺が連れてきてしまったんじゃないかと思ったけどどうやら違うのかな? 単純に落ちた時間が違うだけなのかもしれないけど。ま、どっちにしろ倒すだけ、か。
「なんにせよ……間違った方向には行かせやしないさ。……この私がな」
その趙雲の呟きに――
「趙雲殿。貴女の志に深く感銘を受けた。……我が盟友になっては戴けないだろうか?」
「鈴々もおねーさんとお友達になりたいのだ!」
「私も趙雲さんとお友達になりたいです!」
三人が答える。
「ふっ……志を同じくするもの同士、考えることは同じと言うことか」
そう言いながら手を差し出し――
「友として、共にこの乱世を治めよう」
三人と手を重ねる。
「では改めて……我が名は関羽。字は雲長。真名は愛紗だ」
「鈴々は鈴々! 張飛と翼徳と鈴々なのだ!」
「劉備玄徳、真名は桃香だよ!」
「我が名は趙雲。字は子龍。真名は星という。……今後とも宜しく頼む」
四人が互いの真名を交換している横ですっかり忘れられてた公孫賛さんがしょんぼりしていた。イヤ、忘レテナイデスヨ?
そんなこんなで陣割が決まり、出陣のときが来た。白蓮(あの後真名の交換をした)は新参者である俺たちにいきなり左翼の全部隊を任せると言ってきた。
期待されてるってことだよな………。
「…………はぁ」
「どうかされましたか?」
「いや、人間相手に戦ったことってほとんどないんだよね…………」
その言葉に皆が驚く。元いた世界では基本的に怪人相手の戦闘しかしていなかったから当然と言えば当然なんだけど。
「それじゃあ……、ご主人様には後ろに下がってもらったほうがいいかなぁ?」
愛紗と鈴々もその言葉に頷く、けど――
「……いや、俺も前に出るよ。戦う力があるのに後ろで見ているだけなんてできないから」
そう言って自分に喝を入れていると
「全軍停止! これより我が軍は鶴翼の陣を敷く! 各員粛々と移動せよ!」
伝令の声が響く。いよいよ、か…………。
「それじゃあ、愛紗と鈴々は兵隊さんたちの指揮を頼む。」
「ご主人様はどうされるのですか?」
「俺は……一人で行ってくる」
当然ながら桃香たちは反対するが
「…………なあ、最初に会ったときのこと、忘れてないか?」
「「「…………あ」」」
この時代の武器では変身した俺に傷をつけることすら難しい。そのことを思い出したのか、渋々ながら了承してくれた。
「さて……、行くか。――――変身!」
兵数だけで見るとこちらが三千、向こうが五千とかなりの差があったが愛紗、鈴々、
星と優秀な将がいるおかげで戦いは終始優勢に進んでいた。
(わざわざ出る必要はなかったかな?)
ちなみに今俺は敵陣のど真ん中にいる。といっても手近にいる奴を掴んで放り投げるだけだったがいきなり攻撃が全く聞かない奴が現れたものだから周りは混乱しきっていた。
だがそこで違和感に気づく。
敵の数が少ない――――
せいぜい二、三百人ほどだが報告にあった数と明らかに差がある。
伏兵――――。そう考えた俺はすぐに周囲に目を凝らす。幸い変身している間は視力には自信がある。
中央は問題ない。右翼、星のほうは隠れる場所がない。左翼、俺たちが担当している側には―――少し離れたところに小さな森が見えた。
さらに目を凝らすと森の中に武器を構えた男たちの姿が見えた。このままでは丁度桃香のいる辺りが狙われることに気付いた俺はすぐさま伏兵目指して走り出した。
「はぁぁぁああああっっっ!!!!」
敵を薙ぎ払うために拳を、蹴りを振るう。
その度に肉が潰れ骨が砕ける感触がするがそれでも男達は止まらない。
「クソッ……なんで止まらないんだよっ!!」
信じられないほどの不快感に襲われながらも止めることは出来ない。加減をせずに人を殴ることに吐き気さえ覚えた。
なんとか最後に残った男に殴りかかるがそこで予想外のことが起こる。
「受け止めた……だと!?」
次の瞬間男の姿が本来の―怪人のものへと変わる。
「……なるほど、レベル2か……。お前が操っていたんだな?」
「…………ククク、本当ニあぎとガ現レルトハ……。‘アノ方’ノ言ッタ通リダ…………。
ソノチカラ、我等ノ進化ノタメニ戴クトシヨウ」
怪人は剣を構え襲い掛かってくるが、それを片手で掴み、握りつぶす。
「お前らに……アギトの光は似合わない!」
直後、互いに拳を繰り出す。
「はっ!!」
「グハァッ!!」
しかし、攻撃が当たったのは片方だけ。怪人の攻撃をかわしながら顔面に一撃をお見舞いすると簡単に吹っ飛ぶ。すぐさま体勢を立て直し飛び掛ってくるが――
「遅い上に……隙だらけだ!」
再び攻撃をかわし、今度はがら空きの胴体へ蹴りをお見舞いする。
「さて、そろそろ止めといこうか……」
怪人と少し距離をとり、力を引き出すための『構え』をとる。
「ハァァァ…………!!!!」
額の角飾りが展開され、地面に『アルファ』の紋章が現れ両足に収束する。
そして――――
「たぁぁぁぁあああああっっっ!!!!」
必殺の蹴り――『アルファスマッシュ』が放たれた。
直撃を受けた怪人は――
「あ……ぎ、と…………ヨコ、セ…………」
そう言い残し、爆発した。
気が付くとすでに戦いは終わっており、あちこちから勝ち鬨の声が聞こえていた。そしてその中から愛紗と鈴々が心配そうな顔をしながら駆け寄ってきた。
「ご主人様! お怪我はありませんか?!」
「にゃ〜……なんだか痛そうなお顔してるのだ……」
「ハハ……うん、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
なんとか笑顔を作り答えるが――
「…………ご主人様……」
その夜――――
「ご主人様……。ちょっといい、かな?」
桃香が俺の部屋を訪ねてきた。
「? ……どうしたんだ? こんな時間に」
「うん、あのね? 気のせいかもしれないけど……もしかして無理、してないかなぁって」
「そんなことない……って言いたいとこだけど正直、まだ体が震えてるんだよね…………。ハハッ、情けない、よな?」
自嘲気味にそう笑うと桃香は首を横に振る。
「そんなこと、ないよ。怖いのはみんな同じ。でもね? 戦わなくちゃ守れないものもあるから。だからみんな頑張れるんだよ? それに――」
不意に桃香に抱き寄せられる。
「あ…………」
「ご主人様のおかげで私は今ここにいられるんだよ?」
桃香の心臓の音が聞こえる。俺の守った音が――
その音を聞いていると不思議と震えが収まった。
「……桃香、ありがとう。」
「……え〜っと、お礼を言うのは私のほうなんだけど……」
「それでも……、ありがとう」
「……うん、どういたしまして♪」
そう言って笑いあいながら
――強くなろう、この笑顔を守れるくらいに――
そう、心に誓った。
―続―
次回予告
激しさを増す戦いの中で
俺達の下に新たな仲間が加わる。
新たな戦場。
暗躍する怪人達。
仲間に危機が迫る時、
大切な人達を守るために
眠れる力を呼び起こす。
次回 仮面の御使い 劉備編 第三話
『黄巾の乱』
今、赤き光が甦る――
あとがき
やっとこ更新。二話目です。
今回は一刀君の最初の試練って感じの話にしたかったんですけど、ちゃんと伝わったかなぁ。
元々、人々を守るために戦っていたのに今度は人と戦わなければならなくなった訳ですからその辺はちゃんと書かなきゃいけないと思ったんです。
そういえば、敵についての説明してなかったなぁと気付いたので簡単に。
※敵は改造人間。いわゆるショッ○ー。
※レベル1:戦闘員。レベル2:怪人。レベル3:幹部
※アギトになりたかったけどなれなかった人達の集まり。
※ギルス【葦原 涼】の話を聞きつけ、他人からアギトの力を奪おうとしている。
と、こんな感じです。これだけ覚えてくだされば問題なく話が進みます。
相変わらず遅筆ですので気長にお待ちください。
ではでは〜〜。
PS:番外編のコメントにリクエストを書いてくれた方へ。
これは一発ネタとしてですか? それともそれぞれのライダーで本格的にやったほうがいいですか? 後者の場合、この後『龍騎』から『キバ』までネタありますけど…………。
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投稿するの忘れてた…………。 | ||
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コメント | ||
ブックマン様。頑張ります!待っててください!(Mr、加糖) ぜひ後者でお願いします。希望は龍騎と555とブレイドです。(ブックマン) |
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