オリジナル小説 小鳥の空 |
もし全てを失ったら・・・・・・お前らはどうする・・・・?
東京都
某区
私立景天高等学校・・・2-C教室
「ねぇ、これ見てよ!!」 (バサッ)
突然、明るい声がかかり私の前に新聞紙が広げられた。
顔を上げると沙夜の大きく黒い瞳が飛び込んでくる。
「さ、沙夜・・。びっくりさせないでよぉ・・・。」
「にはは!ゴメンゴメン!ってソレよりもほら!!これ見てよ!!」
そう言うが早く、沙夜は新聞紙の上の右端の記事を指で指した。
「えっ・・と何々?『お手柄!連続一家惨殺犯を捕まえた少年!』?」
「そうっ!!ソレ!!あの指名手配犯捕まったんだって!!」
「・・・・・・・・え、え〜と、その連続一家惨殺犯って・・・・・何?」
「ぇ、えーーー!?知らないの!?」
沙夜のオーバーなリアクションに苦笑しながら私は首を横にふった。
知らないものは知らない。
「さ、3軒も被害が出て大ニュースになったのに・・・・・!」
「私あまりニュース見ないから・・・・。」
放課後は部活、夜は・・・いろいろありすぎてわかんないや。まぁ、テレビを見る暇はない。
新聞も朝はバイトで忙しいから時々沙夜が見せてくれる新聞しか見ない。そんな状況でニュースを知ってるほうがすごいと思うのは私だけかしら?
↑みたいな事を考えながら私はその記事にもう一度目をやった。
えーと3家族(総被害者14名)を惨殺した容疑者・坂下 和輝(さかした かずき)(32歳)をたった一人で捕まえた・・・らしい。で、その人の名前は迫 迫(はさま さこ)(16歳)って私と同年代だぁ。うわぁ〜すごいなこの人。わたしだったら絶対無理だよぅ。
ガラッ
「はい、席についてー。」
「うおっ(クシャ)。じゃ、ことり。また後でね。」
いきなり先生が入ってきたことにびっくりした沙夜は新聞を私から剥ぎ取り自分の席へ走った。
私も急いで前を向くと、先生の隣に夕陽のような色の髪の毛を掻きながら歩く人がいることに気付いた。
転校生?ってか赤毛?染めてんの?
等々、教室の各地から疑問の声があがった。ちなみに左端のは私のだよ。
「HRの前に転校生(あ、やっぱりだ)を紹介する。彼は・・・・・」
そこまで言って先生は口ごもった。どうやら名前を忘れたらしい。
転校生は不機嫌そうに眉をゆがめ、静かに言った。
「水無月大附属から転校してきた迫迫です。」
・・・・・・・・・・え?
私と沙夜は一瞬フリーズした。さっき新聞で見た名前と一文字もたがわない名なのだ。それは、驚きもする。
思考が停止している間に迫と名乗った彼は無言で礼をして先生に席の場所を聞いた。
「あ、あぁ。えーと、束紗の隣が空いている。そこに行きなさい。」
そう言われると彼はクラスメートの視線を浴びながら無言で私の隣の席に座った。
わ、私の隣ーーーー!!?(パニック)
ここ、こんな無愛想(あくまで見た目で判断)っぽそうな転校生の相手なんてどうすればいいの!?
私は友人に助けを求めるため沙夜の方を向いた。が、沙夜は、同情半分、おもしろさ半分の目で見てくるだけで助け舟は1隻も貸し出さなかった。ちゃんちゃん♪
ってちゃんちゃん♪って簡単に見捨てないでよーー!!沙夜の裏切り者ーー!!
・・・・どうやら自分でどうにかしないといけないらしい。先生が今日の予定とか出席状況とかいかにもHRらしいことを話している間に私はこっそり迫君に話しかけてみた。
「あ、あの〜・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
ゆっくりとこちらを向き無言で見つめる迫さん。うぅ、沈黙が重い・・・。(BGM 先生のHR)
「わ、私束紗ことり。よろしくね。」(ス・・)
「・・・・・・・・・・・・・・。」(ぷいっ)
「・・・・・・・・・・・・・・。」(ガーン)
握手のために手を差し出したけど、迫さんは華麗にそっぽを向いた。ショックでした。
「・・・〜〜・・以上だ。休み時間の間に授業の準備をしておきなさい。では。」
そう締めて先生は教室を出て行った。沙夜の目は完全に同情の色になっていた。