孤高の御使い 北郷流無刀術阿修羅伝 君の真名を呼ぶ 30
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別に、目の前の相手を恨んでいるわけではない

 

 

 

 

 

 

ひょっとしたら、もっと別の出会い方をしていたら、こんな事にはならなかったのでは

 

 

 

 

 

 

しかし、あの始まりの外史で出会ってしまったのだ

 

 

 

 

 

 

もう後戻りはできない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                       だから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「おおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

咆哮と共に左慈に突貫する

 

左慈「ふっ!」

 

繰り出される右回し蹴りを左慈は躱す

 

一刀「はっ!!」

 

宙に飛んだ左慈に雷針砲を放つ

 

左慈「ふんっ!」

 

その高速氣弾は、同等の氣の壁にあっさりかき消される

 

左慈「その技はもはや通じんぞ」

 

一刀「だろうな」

 

この外史に左慈と于吉が来た時から強い視線を常に感じていたため、千里眼の事も織り込み済みである

 

雷針砲だって通用するとは思っていなかった、只確認の為に使っただけである

 

左慈「つおっっ!!」

 

一刀「っ!!」

 

一気に間合いを詰め、唐竹割で手刀を落とす

 

それを腕で防ぐも、衝撃で踏み締めた床が陥没する

 

一刀「〜〜〜〜〜っ・・・・・強くなったな、この短期間でどうやったらここまで力を付けられるんだ?」

 

左慈「貴様に教える義理はない・・・・・ずあっ!!!」

 

一刀「っ!!!」

 

いきなり左慈の全身から雪崩の様な氣が解放される

 

その圧力に押され、一刀は神殿内の柱にまで押し退けられた

 

一刀「・・・・・本当に強くなったな、冗談抜きで嬉しいぞ♪」

 

左慈「ふんっ、死にたがりが・・・・・」

 

あの秘密の部屋で何があったかは定かではないが、左慈の力は以前とは比べ物にならないバージョンアップを果たしていた

 

ただでさえ力で勝っている一刀に対して、基礎力と氣力、この二つの底上げを軸に真っ向勝負を挑んできたのだ

 

これまで権謀術策で相手の力を削ぐことに意識を向けていたが、ここに来て180度の方向転換をしてきた

 

あくまで実力で一刀の排除にかかって来たのだ

 

一刀「本当に嬉しいぞ!!!!」

 

左慈「本当に気色悪いぞ!!!!」

 

ズドンッッッッッ!!!!!

 

両者共に間合いを一瞬で詰め、勢いを殺さず右の当身を繰り出す

 

拳と拳がぶつかり合う衝撃は、塵や埃が舞い上がり神殿全体を揺らす程のものだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雷刀「うおりゃああああああああああ!!!!」

 

縮地で間合いを詰め、当身を繰り出す

 

于吉「くっ!!!」

 

札に力を集中し、道術にて壁を形成するもその壁ごと吹っ飛ばされる

 

于吉「くぅ・・・・・流石はあの北郷の裏なだけありますね、物理氣力共に魔の領域です」

 

雷刀「まだまだこんなものじゃないぞ、俺の力はよ!」

 

更に邪気を増大させ于吉を見据える

 

その時、衝撃と共に神殿全体が揺れた

 

雷刀「向こうも盛り上がっているみたいだな♪」

 

于吉「そうですね、左慈ももはや躊躇いはないようですね」

 

二つのでかい氣が壁二つを隔てた所でぶつかり合っているのを感じ取り、雷刀もテンションが上がってきた

 

雷刀「こっちも派手に行くか!!!」

 

吹っ飛ばした于吉に追い打ちをかける様に、再び縮地にて間合いを詰め当身を繰り出すが、その拳は空を切る

 

于吉「スピードも魔の領域ですが、この術式には及ばないでしょう」

 

目の前にいたはずの于吉は、一瞬で後ろに移動していた

 

動くそぶりは確かに無かった、あの体勢なら雷刀の当身は確実に当たっていたはず

 

雷刀「なるほど、それが転移の術ってやつか」

 

于吉「ええ、長距離の術式は一日に4回ほどしか使えませんが、これなら」

 

要するに、単距離転移の術式である

 

まるでもぐら叩きの様に、雷刀の周りを縦横無尽に行き来する

 

雷刀「なかなかトリッキーな奴だ・・・・・だがな・・・・・はっ!!」

 

于吉「うっ!!??」

 

邪気弾を明後日の方向へ放つと、見事于吉に命中した

 

雷刀「北郷流には通用しないぞ」

 

ただでさえ独特な空気の乱れで転移場所を察知できるのに、それに加え縮地法戌の型湫歩によるレーダー探知を使えば丸わかりである

 

于吉「くぅ、なかなか・・・・・分かっていたことですが、まさかここまで出来るとは・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪蓮「・・・・・一体中はどうなっているのかしら」

 

華琳「もどかしいわね、外側しか見えないというのは・・・・・」

 

桃香「うう、ご主人様ぁ・・・・・」

 

管路の水晶玉が映し出す神殿を見ながら、一同は溢れてくる不安に押し潰されそうだった

 

その時、轟音と共に神殿全体が震えた

 

翠「な、何が起きたんだ!!?」

 

卑弥呼「どうやら、ご主人様と左慈がぶつかり始めたようであるな」

 

貂蝉「あの大きい神殿をここまで揺らすなんて、二人の力はかなり拮抗している様ね」

 

冥琳「ちょっと待て、左慈の力は一刀には及ばないはずであろう!?」

 

凪「私も左慈と戦ったことがあるから分かります、一刀様の力は左慈を完全に上回っているはずです!」

 

卑弥呼「この短期間でここまで力を伸ばす方法となれば・・・・・やはりあれであろうか」

 

管路「ええ、修獄の間ね・・・・・」

 

貂蝉「左慈ちゃん、本気でご主人様を亡き者にするつもりのようね・・・・・」

 

思春「修獄の間?それは一体なんだ?」

 

貂蝉「私達神仙専用の修練所と思ってもらえればいいわ」

 

管路「確かにあそこなら短期間で強大な力を手にすることも可能でしょうけど、私達神仙でも下手をしたら廃人になりかねない危険極まりない賭けよ・・・・・」

 

卑弥呼「ただし一番過酷な修練所故に、上位の神仙であろうと入るのを躊躇う部屋である・・・・・今までにあの部屋に最後まで入ることが出来たのは、かの南華老仙、あとはあの神農だけであろうか」

 

貂蝉「確か神農も半分しか持たなかったんじゃないかしら?」

 

管路「もしあの部屋に最後まで入ったとしたら、左慈の力は北郷一刀を超えたかもしれないわね・・・・・」

 

蒲公英「・・・・・そんな」

 

杏奈「それだけが、唯一の救いだったのに・・・・・」

 

単純な力の差というアイデンティティが消滅した可能性がある

 

少なくともワンサイドゲームは無くなった

 

更に不安を募らせる一同は、祈る気持ちで水晶が映し出す神殿を見守る他なかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左慈「せあっ!!!」

 

一刀「ふっ!!!」

 

ドガガガガガガガガガ!!!!!バチバチバチバチ!!!!!

 

二人の戦いは、盛大な打撃戦に移っていた

 

お互いの氣が弾け合い、電気が迸り、火花を散らしていた

 

左慈「そこだ!!」

 

一刀「しっ!!」

 

左慈「ちぃっ!!」

 

神速に達しているであろう左慈の右回し蹴りが空を切る

 

酉の型蔦歩で跳躍しこれが躱される

 

一刀「はぁっ!!」

 

更に跳躍したまま雷針砲を放つ

 

左慈「ふんっ!・・・・・舐めているのか、その技はもはや通用しないと・・・・・なにっ!!?」

 

再び雷針砲をかき消すも、更に違う方向から雷針砲が飛来する

 

左慈「ちぃっ!!」

 

何とかこれもかき消すが、更なる氣弾が四方八方から迫る

 

左慈「くっ!・・・・・これは、そういうことか」

 

本殿を支える左右対称に三本ずつ立つ六本の柱、更には壁を駆使し縦横無尽に飛び回り、左慈に向け雷針砲を撃ちまくっているのだ

 

左慈「ちぃっ、まるで猿みたいな野郎だ!・・・・・だがな」

 

この状況を、この外史で左慈は体験している

 

あの偶然出会った凪と戦った時とまるで同じ状況である

 

左慈「ふぅ〜〜〜〜・・・・・そこだ!!!」

 

雷針砲をかき消しながら氣を集中し、縦横無尽に飛び回る一刀の動きを感じ取り氣弾を放つ

 

左慈「なっ!!?」

 

しかし、雷針砲は鳴り止まない

 

確かに氣弾による手応えはあった

 

氣の力も、かつて凪と戦った時とは段違いに上がっている

 

基礎の力も飛躍的に上がっているため、見切りを損なうこともないはず

 

左慈「・・・・・そういうことか」

 

蔦歩によって縦横無尽に飛び回りながら、その中に分歩を混ぜているのだ

 

左慈が撃ち落としたのは、分歩による分身体であった

 

おまけにその分歩は究極型で、分身体も雷針砲を撃ってきているのである

 

左慈「ぐっ!!くそっ!!」

 

かつての凪とは比較にならない速さと巧みさに動きを見切れない

 

氣弾の速さと重さも段違いで、これだけ連続で受け続ければ左慈も表情が険しくなる

 

単発ならなんてことはないが、こうあらゆる角度から連続で放たれては堪らない

 

何より戦っている環境が悪い、忍術を織り交ぜている北郷流に地の利がある

 

左慈「くそがっ、うおおおおおおおおおお!!!!!」

 

一刀「っ!!」

 

気合一声で左慈は柱に飛び蹴りを放つ

 

その太い柱は、一撃でくの字に折れる

 

他の柱にも次々と一撃を見舞っていき、全ての柱が床に横たわってしまった

 

一刀「・・・・・状況を好転させる為とはいえ無茶するな、下手をしたら神殿が崩れるぞ」

 

左慈「貴様を殺す為なら安いものだ・・・・・これでさっきの動きは通じんぞ」

 

一刀「だろうな」

 

足場が減ってしまったため、先ほどの様な動きはもう出来ない

 

なにせさっきの動きでも分身体の一つを撃ち落とされてしまったのだから、壁だけでは確実に見切られる

 

おまけに柱という支えを失ったせいで神殿全体がミシミシと音を立てている、いつ崩壊してもおかしくない

 

下手に振動を与えたら二人そろって瓦礫に埋まるであろう

 

この二人がそんな程度のことでくたばるとも思えないが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雷刀「おらおらどうした、さっきから防戦一方だぞ!!!」

 

于吉「くうぅっ!!まさかここまで我々神仙の術式が通じないとは・・・・・」

 

あらゆる状況に対処できるように構成されている北郷流

 

その万能性の前に、于吉の術式は悉く破られていく

 

雷刀「つまんねぇな、このままじゃワンサイドゲームに・・・・・お」

 

その時、先ほどより更に大きく神殿全体が揺れる

 

どこかしこがメキメキと音を立て壁にヒビが無数に走っていく

 

雷刀「おいおい、あっちも相当無茶やってんな、将来世界遺産になるかもしれないってのに壊してどうすんだよ・・・・・」

 

于吉「その心配はありませんよ、外史とはいずれは終わりが来るもの、その時が来ればこの神殿どころかこの世界そのものが消滅しますからね」

 

雷刀「ほほう、そいつは良い事を聞いたぜ、ならここからは遠慮しなくてもいいってことだな♪」

 

于吉「ええ、いかようにもしてくださって結構です」

 

雷刀「なんだ、そんな余裕かましていいのか?さっきから攻められてばかりなのによ」

 

于吉「気遣い無用です、こちらの準備は整いましたから」

 

雷刀「あ、準備だ?」

 

于吉「攻めてくればお分かりになるかと」

 

雷刀「・・・・・っ!!!」

 

割と本気の縮地で于吉に突貫する

 

右拳を于吉の顔面に直撃させ、即死させる気持ちで繰り出す

 

 

雷刀「っ!!?・・・・・なんだと」

 

繰り出された拳は、于吉には当たらなかった

 

顔面すれすれで、右に躱されていた

 

雷刀「っ!!!」

 

今度は連続で当身蹴り当てを繰り出し、タコ殴りにしにいく

 

雷刀「(なんだこれは、どういう事だ?)」

 

完全に于吉の動きを見切った上で攻撃を仕掛けているはずなのに、当たらない

 

これまで札による道術によって防いでいたはずなのに、それを一切使わず全てが紙一重で躱されている

 

雷刀「(なら!)」

 

であれば、懐に潜り込み組技に持っていけばいいと踏み、于吉の襟や袖を掴みに行くが

 

雷刀「(・・・・・そうか、そうゆうことか)」

 

しかし、それすらも躱されるどころか遠ざかる

 

于吉「ふっ!!」

 

雷刀「っと!!」

 

札による道術の衝撃で雷刀は吹っ飛ばされるが、まるで初めて方程式を解いた子供の様な顔だった

 

雷刀「な〜るほど、お前が躱していたんじゃなく、俺の攻撃がお前を遠ざけているという事か♪」

 

于吉「もう気付かれましたか」

 

雷刀「そりゃあな、まるで綿毛でも相手にしてる感覚だからな」

 

ちょっとした空気の流れであっちへこっちへ飛び回り、掴もうとしてもなかなか掴めない、あの感覚に酷似している

 

北郷流にも打撃技を全て受け流す、縮地法卯の型、流歩があるが向こうはその上位互換である

 

流歩が受け流せるのはあくまで打撃であり、掴み技や組技は物理的に防げない

 

于吉「(裏の北郷の氣を記憶させるのに少し手間取りましたが、これでなんとかなりますか・・・・・)」

 

懐に忍ばせた札が怪しく光る

 

これが、神農が用意した神仙の道具であろう

 

対象の氣の質と流れを記憶させ、その氣から身を守るお守りと言ったところである

 

雷刀「ならこれはどうだ・・・・・ふぅぅぅぅ・・・・・はっ!!!」

 

左右の手刀を同時に落とし、疑似的な邪氣の斬撃を作り出す

 

忠久を振るう時と比べると切れ味は格段に落ちるが、威力だけでいえば大して違いは無い

 

于吉「無駄ですよ」

 

これも、まるで風になびく風船のように躱されてしまう

 

雷刀「(こりゃ厄介だな、管理者が使う道術なんだろうが、攻略法が見えてこねぇな)」

 

于吉「(どうやら気付いていないようですね、からくりに気付かれる前に勝負を付けましょう)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズガガガガ!!!バシバシ!!ドガドガドガドガ!!!!

 

お互いにヒットアンドアウェイを繰り返しての乱打戦

 

柱が無くなり広くなった正殿内を生かし、両者は打撃を繰り出しては受け流し捌く

 

左慈「うおらっ!!!」

 

床に転がった力士の胴回りはありそうな太い柱を蹴り飛ばす

 

一刀「せあっ!!!」

 

氣が十分に乗った拳により、顔面に迫って来た柱を粉々に粉砕する

 

左慈「(ちぃっ、こんなチンタラやっていちゃ朝になっちまいそうだ)」

 

速くけりをつけ、次の外史に行きたい左慈は大分じれていた

 

左慈「(五年間実戦に入り浸っていただけあるか)」

 

経験では自分の方が勝っていると思っていたが、両者の間にその差は殆んどない様だ

 

長年神仙としてやってきた自分とここまでタメを張れるということは、五年間に渡る休み無しの実戦はそれと同等ということである

 

このままでは無駄に時間を浪費するだけと判断し、左慈は大股で床を踏みしめる

 

左慈「こぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

一刀「っ!!!」

 

あの雪崩の様な氣が左慈の両手に集中していく

 

バリバリと電撃が走り、僅かに髪の毛が総毛立つ

 

左慈「ずあっっっ!!!!!」

 

ありったけの氣を手に集中させ氣弾を放つ

 

そのでかさはこれまでの比ではなく、人間など丸呑みにできるくらいにでかい

 

速度も尋常じゃなく、一刀の雷針砲かそれ以上の速さであり躱すことも困難である

 

だが

 

一刀「せやっっっ!!!!!」

 

バシュウウウウウウウウン!!!

 

左慈「なにっ!!!??」

 

自分の渾身の氣弾があっさりかき消されたことに驚愕を見せる

 

しかし、その驚愕は正殿内に降り注ぐ白銀の羽によって消え去る

 

左慈「とうとう来たか、回天丹田」

 

一刀「驚いたな、北郷流に回天丹田が無ければ、今の一撃で終わっていただろうな」

 

修獄の間とやらでの修行によって、基礎的な力は左慈は一刀を上回ってきていた

 

しかし悲しいかな、回天丹田という戦闘力倍増という技がある限り、力そのものでは左慈は一刀に及ばない

 

さっきの渾身の氣弾の消滅も、相手の圧倒的な氣があってこそなのだから

 

一刀「こいつを使うからには加減は効かないぞ・・・・・死んでくれるなよ、左慈」

 

左慈「ふん、いらん気遣いだ」

 

回天丹田を纏い、左慈を見据える

 

一刀「・・・・・っ!!!」

 

これで決まることが無いように祈りながら、午の型筍歩並みの速さで左慈に突貫し拳を繰り出す

 

バシュンッッッッ!!!!

 

一刀「っ!!!???」

 

すると、薄皮一枚に絞り込んだ氣が霧散し、白銀の羽も一瞬で消滅した

 

拳にぶつかった感触にとてつもない違和感を覚える

 

一瞬ではあったが、確かに拳から体全体にかけて回天丹田が消え去ったからだ

 

左慈「ふん、その技は俺には通じないぞ」

 

拳がぶつかったのは、今の今まで左慈が持っていなかった一対のトンファーだった

 

一体どこから出したというのか、余りに一瞬過ぎて分からなかった

 

左慈「しぃっ!!!」

 

一刀「ぐっ!!」

 

当身を防いだ状態で左慈の右回し蹴りが一刀の左脇腹に決まる

 

吹っ飛ばされた一刀は、脇腹を抑えながら左慈が持つトンファーを凝視する

 

一刀「まるで俺の龍滅金剛刀みたいだな・・・・・」

 

この感触を自分は知っている

 

かつて、龍滅金剛刀を持った祖父と手合わせをした時に同じことがあったからだ

 

左慈「ああ、あの大刀か、冥土の土産に教えてやるか・・・・・あれはな、お前の先祖の南華老仙が死ぬ間際に自身から分離させた武器、いわば南華老仙の魂と言っていいものだ、俺のこのトンファーも同じ、道術によって自身から分離されることが出来る、故に同じように氣やら何やらのエネルギーをすべて消滅させることが出来るんだよ」

 

一刀「・・・・・なるほど、得心がいったよ」

 

左慈「残念だったな、せっかくの虎の子も無駄撃ちになっちまったようだな」

 

回天丹田を一回分使わせたために、若干余裕が生まれた

 

ように見えるが

 

左慈「(ったく、回天丹田対策ではあったが、こんなにも早く奥の手を披露することになるとはな・・・・・)」

 

表面とは裏腹に、内心は焦りがあった

 

いかに飛躍的に基礎的な力が向上しているとはいえ、この道術は氣の消耗が激しい事には違いない

 

遊んでいては先にガス欠に至るのはこっちなので、勝負を急ぐことにする

 

一刀「しぃっ!!!」

 

左慈「なっ、速、ぐふあっ!!!」

 

がしかし、次の瞬間、目にも止まらぬ一刀の足技が炸裂する

 

北郷流超高難度の技、如月

 

左回し蹴りを放ち、間髪入れず右回し蹴りを入れ挟み撃ちにする

 

一撃目で体が浮いた左慈は成す術なく反対側からの一撃で吹っ飛ばされた

 

左慈「くっ!!・・・・・この程度では、北郷流自体を封じるには至らないか・・・・・」

 

一刀「当たり前だ・・・・・北郷流が・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

于吉「はあああああああああああ!!!!」

 

雷刀「ぐっ!!うおわっ!!!」

 

地水火風の属性道術が雷刀を攻め立てる

 

火炎による火の壁、水圧による水攻め、土によって築かれる剣山、気圧によって作られるかまいたち

 

それらが織り交ざり、雷刀の邪気の防壁を僅かずつ突破していく

 

これらは只の自然現象ではない、于吉の道術の力が入っているため、それが手伝い邪気を貫通してくる

 

雷刀「くっ、おらあっ!!!」

 

全身に火傷やら切り傷やらを負い血だらけになりながらも、邪気を更に高め高速の邪気弾を放つ

 

于吉「無駄だと言っているでしょう」

 

その邪気の雷針砲は于吉をすり抜けるかのように空を切る

 

雷刀「はぁ、はぁ・・・・・ったく、こっちの攻撃は全て無効化されるくせに、そっちの攻撃は殆んど届いてきやがる、嫌になるぜ」

 

于吉「なんです、卑怯とかお決まりの殺し文句でも言いますか?」

 

雷刀「いんや、全然」

 

于吉「流石流石、五年間実戦に入り浸りだっただけあって、甘えは無いようですね」

 

雷刀「もともと北郷流に甘えなんざねぇよ、なにせ合計千年の歴史だからな」

 

まだまだ戦える、まだまだ粘れる

 

全身に傷を負っているとはいえ、致命傷は一つもない

 

会話をしながらも、雷刀は考えていた

 

雷刀「(こいつには、俺の攻撃は全て通じない・・・・・本当にそうか?)」

 

何か見落としがあるのではないか

 

自分がそう思っているだけで、勝手に落とし穴に落ちて藻掻いているだけではないのか

 

雷刀「・・・・・ふんっ」

 

今度は軽い氣弾を于吉に向けて放つ

 

その邪気も于吉は綿毛のように躱す

 

于吉「なんですか、この弱弱しい氣の流れは、それとももう限界ですか?」

 

雷刀「しぃっ」

 

指を小刻みに動かすと、躱された邪気が軌道を変え于吉の真上の天井に当たる

 

于吉「なっ!?」

 

天井が崩落し、瓦礫が降って来たが単距離転移で躱した

 

于吉「この程度の小細工で・・・・・っ!」

 

そこから、邪気を纏い巳の型回歩で雷刀は于吉の後ろを取る

 

于吉「馬鹿の一つ覚えですか!」

 

この手は何度も仕掛けられているため見飽きている

 

そもそも氣の流れを読む道術師にとってどれだけ早く動こうと、氣を纏って移動する以上動きを先読みできる

 

繰り出される当身を自動的に躱し、致命傷を与え終わりにする

 

その算段であったが

 

于吉「なっ!!??」

 

当身が繰り出された瞬間、雷刀の全身から邪気が消えた

 

ドガアアアアアアアン!!!

 

于吉「うぐぅっっっ!!!!」

 

まともに頬に拳がめり込み、于吉は廊下をのたうち回る様に盛大に転がった

 

雷刀「やっぱりな、お前は俺の攻撃を無効化していたんじゃなく、俺の邪気を無効化していただけという事か」

 

于吉「くぅっ!・・・・・もうバレてしまいましたか・・・・・」

 

単距離転移をする瞬間、瓦礫が于吉の体に僅かに当たるのを雷刀は見逃さなかった

 

ということは、何の氣も纏っていない純粋な物理攻撃であれば有効ということだ

 

頬を青くし、ふらつきながらも于吉は立ち上がる

 

于吉「悟られる前に決着を付けるつもりだったのですけどね・・・・・うっぐぅ・・・・・」

 

自動回避であったこともあり油断していたためクリーンヒットを許してしまい、足に来ている様だ

 

雷刀「舐められたもんだ・・・・・北郷流が・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀&雷刀「「氣が無ければ何も出来ない流派だなんて思うなよ!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Seigouです

 

久方ぶりの阿修羅伝の投稿、お待たせいたしました

 

前話の投稿が2019年6月ということで3年もの間が空いてしまったということになります

 

本当にかなり待て、になってしまい読者の皆様には平謝りする他ありません

 

その代わりに、鎮魂の修羅の構想を自分なりに深く考えることが出来たという一面もありますが

 

さて、ようやく阿修羅伝の軌道が乗って来たと思いきや、またもやハイパー焦らしタイムです

 

前にも言った通り、鎮魂の修羅の方が話数がありますので、こっちを主軸にして書いて行かないとバランスが取れません

 

阿修羅伝も今まさに佳境と言えるのですが、また長いこと鎮魂の修羅の投稿が続くかと思います

 

かなり待て、次回・・・・・

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北郷流VS神仙
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コメント
キターーーーーーーーーー(歓喜)(恋姫大好き)
徹底的に磨き上げられ(てしまっ)た基礎的な体術の賜物。地力が無ければ脆いというのは何事にも共通する原則ですね。(Jack Tlam)
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