マクロス7 〜最強女と少年の恋〜 第二話
[全4ページ]
-1ページ-

 フォールドを終えたフィリオの前にはクロエ艦隊が堂々と布陣していた。それどころかいまデフォールドしたところだというのに、既に警戒のために出撃したと思われるクァドラン・ローが展開していた。

 

 (なんて素早い展開だ。噂以上の凄腕揃いのようだな)

 

そのうちの一機から通信が入る。

 

 「接近中の未確認機につぐ。諸族と行動目的を明らかにせよ」

 

 「こちら、統合宇宙軍マクロス7船団護衛艦隊所属フィリオ・エディア・ホッセン准尉。このたび、相互交流のための人員派遣によりこちらに参りました。着艦許可をお願いします」

 

 「・・・・・・確認した。ようこそ准尉。今から誘導する。ついてきたまえ」

 

 先導するクァドラン・ローについて行くと艦隊の中でも一際大きな艦艇が見えてきた。その船のブリッジらしき場所にはまだバサラの撃ち込んだスピーカーポッドγが突き刺さっている。

 

 (あの人も無茶やるよなぁ)

 

思いっきり突き刺さったそれを見て呆れるフィリオ。ミレーヌの仲介で何度がバサラと会ったことがあるフィリオはでもあの人らしいと思った。艦隊旗艦に着艦するとすぐその足でブリッジへと案内された。

 ブリッジでは指揮所に立つクロエと参謀であるトランキルが待っていた。フィリオは機体をガウォークに変形させると、キャノピーを開き立ち上がり敬礼する。

 

 「フィリオ・エディア・ホッセン准尉! クロエ艦隊との人員交流の任を受け、ただ今着任いたしました! まだまだ若輩者ではありますが、よろしくお願いいたします!」

 

 「私が艦隊司令のクロエだ。遠路ご苦労だったな」

 

 クロエは凛々しい顔立ちに緑の瞳。薄い緑の長い髪を三つ編みにして赤いリボンで縛っている。若々しくスタイルも抜群で美女と言って差し支えのない人物だった。とても50歳直前には見えない。ミリアといい、クロエといい、自分の母といい、メルトランディには若作りの秘儀でもあるのだろうか? と思ってしまうフィリオだった。

 

 「着いてそうそうで悪いが、貴様の腕前を見せてもらう」

 

 「・・・・・は?」

 

 いきなりの展開に若干ついていけていないフィリオ。そんなことは知らないクロエはどんどん話を進めていく。

 

 「私の艦隊に弱い奴はいらん。ミリアからは十分な素質があると聞いている。期待しているぞ准尉。すぐに模擬弾に換装して旗艦の前で待て。以上だ」

 

 一方的に話を終わらせ歩いて行ってしまうクロエ。

 

 (力を試されるだろうとは聞いていたけどいきなりかよ。・・・・・はぁ。とりあえず今は頑張るしかないか)

 

 そう考えたフィリオはとりあえず先んじて送られているはずの物資のありかを案内してくれた兵士に尋ねるのだった。

-2ページ-

 一時間後、あらかじめ模擬弾が装填されているガンポッドを装備して指定宙域で待機していると三機のクァドラン・ローを引き連れたクロエが現れた。その黄金の機体は一際異彩を放っている。

 

 「待たせたな」

 

 「いえ。私も今来たところであります」

 

 「そうか。内容を説明する。お前にはこの三機と戦ってもらう。貴様の勝利条件は三つ。一つはこの三機を撃墜すること。二つ目は三機を突破して私に一撃当てること。最後は一時間以上生存することだ」

 

 「は!」

 

 「言っておくがこの三機は艦隊の周囲警戒任務に就いている中でもかなり優秀な小隊だ。せいぜいがんばる事だ」

 

 そう言い残し後ろに下がるクロエ。十分な距離を取ったところで機体を停止させ右手を挙げる。

 

 「それでは、模擬戦、始め!」

 

 合図と同時にファイター形態に黄氏一気に距離をとるフィリオ。接近戦を苦手とする彼にとって適度な距離を保つことは勝つために必要なことだ。しかし相手も只者ではない。既にフィリオの追撃に入り、鶴翼陣形で追い込みにかかる。

 一定の距離をとってから急制動をかけバトロイド形態で迎撃するがあっさりとかわされ逆に追い詰められていく。あらゆる方向から絶え間なく続く攻撃の前に防戦一方のフィリオ。あらゆる機動を駆使して何とか逃げ回る。

 そんなフィリオを見たクロエは駄目だなどとは思っておらず、むしろ高く評価していた。

 

 (三機に囲まれているにもかかわらず、状況を冷静に分析しうまく回避行動をとっている。止めを刺しに来たところをうまく牽制して防いでいる。新米にしては見事な腕だ。ミリアが送り込んでくるだけのことはあるな。それにしても・・・あの歳でQM69を使いこなすとは)

 

 QM69とは高速連続反転による高機動回避のことである。機体をロールさせわずかに敵の射線から機体をそらし回避するという高度なテクニックで、生まれつき高い対G性を持たなければ出来ない技術である。熱気バサラやガムリン木崎が得意としている。

 戦闘が開始されて20分。フィリオは焦りを感じ始めていた。

 

 (始まってからずっと防戦一方。敵は三機。数の上でも有利なうえに完璧なフォーメーションを組んでくる。このままいくとこっちが先にばてるか弾切れかで負けるな。なんとかしたいところだけど、アレはやりたくないんだよなぁ。・・・・・・でも仕方ない。こんな時のための技だしな)

 

 フィリオは無謀にもガウォーク形態で三機の真ん中に機体を突入させる。誰が見ても自殺行為といえる行動に驚いた三機だったがすぐさま持ち直し撃破にかかる。しかしクロエと参謀のトランキルだけはその行動にどこか見覚えがあった。

 フィリオは三機のちょうど真ん中で止まると両足をばらばらな方向に向けてエンジンを思いっきり噴かせた。当然機体はきりもみ回転をし始める。どこかへ行ってしまいそうな機体を姿勢制御ブースターでコントロールしながら、その状態のままガンポッドを乱射した。

 

 「やはり攪乱射撃!」

 

 攪乱射撃とはフィリオの母、ミラディーナ・エディアの得意とした戦術である。別名スターマイン(花火)とも呼ばれ、全方位に無差別に全武装を発砲して混乱した敵を単機または寮機と連携して殲滅する技だ。敵陣中央に突入するか包囲された場合に使用する。ただし使うには卓越した操縦技術と対G特性が求められる。

 

 「そういえば奴の姓はエディア、だったな。・・・・・フフフ。ミリアの奴め、そういうことだったか」

 

 今回はガンポッドしか使えないため効果は通常より薄かったが、それでも攻撃態勢に入っていた三機には十分すぎる不意打ちだった。内一機が回避にもたつき被弾。フィリオはそれを見逃さず素早く態勢を立て直しその一機を撃墜する。残った二機はいったん距離をとってこちらの出方を窺っているようだ。

 フィリオは真正面から挑んだ。ガンポッドを乱射しながら二機に突っ込んでいく。二手に分かれ挟み込むように迎え撃つクァドラン。そしてフィリオはまたもや予想外の行動に出る。ファイター形態になったかの思うと、機体を高速でロールさせながらフレアを発射し始めたのだ。フレアの発する高温と煙がセンサーと視界からフィリオを隠す。焦った一機が煙に向かって腕部に装備されたレーザーパルスガンを連射する。しかしそこから逆に居場所を見破られ撃破されてしまった。

 

 「馬鹿者が。向こうも同じ状況なのだ。先に手を出した方がやられるに決まっている」

 

 クロエのぼやきの通り残された小隊長の乗るクァドランは攻撃しようとしない。条件が同じなら敵が出てくれまで待てばいい。もし撃って来たならばさっきフィリオがしたことを逆にしてやればいい。膠着状態は煙が晴れるまで続くと思われた。しかしその予想は裏切られることになる。中からフィリオが発砲したのだ。しかも全く見当違いの方向に。

 

 「馬鹿な」

 

 クァドランはすぐさま発射地点と思われる場所にレーザーパルスガンを連射する。さらにそのまま煙の中に突入する。彼女は何かに弾丸が当たった感覚を感じ、勝ったと確信した。スラスターを噴射して煙を晴らす。しかしそこにはVF−19Sの姿はなく、ペイント弾で蛍光グリーンに染まったガンポッドだけが漂っていた。

 

 「チャックメイトです、クロエ司令」

 

 彼女の耳に届く通信。振り向くとそこにはクロエのクァドランと、クロエにピンポイントバリアで緑に輝く拳を突き付けたVF−19Sがいた。

 

 「私の勝ち、でいいでしょうか?」

 

 「ああ。お前の勝ちだ。ようこそ我が艦隊へ。艦隊を代表してお前を歓迎しよう、フィリオ」

 

 フィリオが正式に艦隊に迎えられた瞬間だった。

-3ページ-

 艦に戻りガウォーク形態で駐機してキャノピーを開けたフィリオを迎えたのは割れんばかりの歓声だった。どうやら皆さっきの模擬戦を観戦していたようだ。さまざまな方向から称賛の声をかけられる。取り囲んだ兵士はすべて女性。しかも皆美人だ。ここまで多くの女性に囲まれたことのないフィリオは戸惑い照れながら感謝の言葉を返していく。

 

 「見事だったな。流石にミリアに認められているだけのことはある」

 

 クロエは1人の兵士をひき連れてやって来た。その兵士は最初にブリッジまで案内してくれたあの兵士だった。その兵士が一歩前に出る。

 

 「さっきの模擬戦で小隊を指揮してたハンナ・デイルだ。あんたにゃ一本取られたよ」

 

 そう言いながら人差し指を一本差し出す。どうやら握手のつもりらしい。差し出された指を両手で握り返すフィリオ。ハンナはクロエと同様に凛々しい顔立ちで右目の下に泣き黒子があり、赤い髪をベリーショートにしている。口調はさばさばしていて姉御肌な印象を受ける。もちろん美人でスタイルもいい。メルトランディには美人の遺伝子が詰まっているとフィリオは確信した。

 

 「フィリオ・エディア・ホッセン准尉であります。今後よろしくお願いします。ハンナ小隊長」

 

 「ハンナでいいよ。堅っ苦しいのは苦手でね」

 

 「なら自分もフィリオと呼んでください」

 

 「わかったよ。よろしくなフィリオ」

 

 「ハンナにはお前が慣れるまで世話をしてもらうつもりだ。仲良くしろ。それよりもフィリオ。お前に聞きたいことがあるんだが」

 

 「なんですか司令」

 

 「お前の母は、ミラディーナ・エディアか?」

 

 「はい」

 

 「やはりそうか。模擬戦で使った攪乱射撃。あ奴が得意とした戦術だ。私も過去に何度か煮え湯を飲まされた」

 

 自分の母にそんな武勇伝があったことに少し驚くフィリオ。

 

 「ミラディーナの子なら納得だ」

 

 「なんだ。フィリオはミラの息子か」

 

 「ハンナも母を知っているんですね」

 

 「ああ。あたしはクロエ司令の部下では古参でね。司令とミリアがやり合ってるのをよく一緒に観戦してたよ。わからないことがあったら何でもあたしに聞きな」

 

 「よろしくお願いします」

 

 「機体はあそこに駐機させておけ。それが終わったらブリッジに来るように。あと、まだお前の部屋は決まっていないので追って知らせる。いいな?」

 

 「了解しました」

 

 駐機を終えたフィリオはハンナに運んでもらってブリッジに向かうのだった。この日、フィリオの部屋の場所を巡ってひと悶着あったのだがそれはまた別の機会に。

-4ページ-

 

 いかがだったでしょうか? リクエストがありましたら書いておいてみてください。可能であれば反映していきたいと思います。

 

 それではまた次回。

説明
 もうそろそろ書こうかなと思ったので続きを書いてみました。この作品は気まぐれで書かれているものなので更新が不定期になりますがあしからず。

 さて今回はフィリオがクロエ艦隊に到着します。どんなことが彼を待っているのかは読んでのお楽しみです。
 次回辺り主人公のプロフィールと期待説明でも書こうかと思います。(あくまで予定です)
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
3413 3050 5
コメント
クロエは必要に迫られない限りゼントラサイズでしょうから、愛機が落とされるなどでクァドランに切り替え、ゼントラ化が必要だから一石二鳥!ですかね(笹蟹)
面白くなってきましたねw(BASARA)
巨人化はしないんすかね?生活大変そう。(UBW00)
個人的には結構好きな話です。頑張って更新してくださいね^−^b(乾坤一擲)
タグ
マクロス7 オリキャラ バルキリー クロエ 最強女の艦隊 

赤眼黒龍さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com