君はここにいる(前編) |
近未来の日本、鎌倉府。古くからの伝統を持つ百合ヶ丘女学院の中庭に、長い蜂蜜色の髪の少女の姿があった。彼女は、建物の入り口付近に一人の女性を見つけると、そちらへと早歩きになる。
「教導官、ごきげんよう。先日の外征の報告書です」
「あら、ごきげんよう」
眼鏡をかけ、肩上にさっぱりと切り揃えた青藍色の髪を持つその女性は教導官、いわゆる先生だ。
彼女は十枚ほどの書類の束を受け取ると、手持ちのタブレット型端末に情報を入力し始めた。別の提出先が記されているため、これは彼女の個人的なメモのようだ。
「箱根地区のヒュージは殲滅したようだね、ご苦労様」
ヒュージ――それは、五十年ほど前に突如出現した巨大生命体のことだ。その脅威は今や世界中に広まり、これに対抗する戦士、リリィを育成する機関が百合ヶ丘女学院を始めとする((学校|ガーデン))だった。
「箱根、芦ノ湖、この辺りは湯河原のアルケミラ女学館も近い。落とされると厄介だから、今後も警戒することになるだろう。ところで」
そこで一息区切ると、彼女は書類を並び替え、拾得物や遺品に関しての項目を見る。
「((眞鍋娃透|まなべあすか))は……手がかりがなかったようだね」
「はい、残念ながら……」
教導官は、手元の端末で眞鍋娃透と呼んだ赤髪の少女の情報を閲覧していた。顔写真とともに、身長や体重、戦闘に関するデータまで、様々なことが記されている。その一つの欄には「行方不明」の文字が浮かぶ。
「ここまで手掛かりがないと失踪、事実上の死亡とするべきだけれども、深紀はそうしたがらないだろうね」
「以前話したとき、リリィとして戦っていた頃のことはあまり思い出せない、と言っていました。まだしばらく、その件については避けておいた方が良いかと」
教導官は溜息と共に軽く頷くと、画面上の((守護天使|シュッツエンゲル))の項を見る。百合ヶ丘女学院の伝統的な疑似姉妹契約の制度のことだが、そこには((藤澤深紀|ふじさわみのり))という名前があった。
――ピリリリ、ピリリリ。
唐突に、廊下に着信音が響く。
失礼、と一言。教導官は端末とは別の小型携帯電話をポケットから取り出し、素早く電話に応対した。
「用件を、手短に頼む」
「教導官、ノインヴェルト戦技交流会中の御台場にて大型ケイブが発生、そこから多数のヒュージが出現し、疑似ネストを形成しています。現在、交流会参加者の一年生が対応中です」
ケイブとは、ヒュージが使用するワームホールのことだ。彼らはケイブで神出鬼没に現れる一方、ネストという拠点を持ち、これにより勢力を拡大している。御台場にもそのネストが形成されつつある――言うまでもなく予断を許さない状況にあった。
教導官は厳しい面持ちで、またもや端末にメモを取りながら必要な対応についての会話を三往復ほどする。
少女も会話から内容を察した。やや不安げに教導官を見るが、しかし落ち着き払った様子でもあり、このような戦闘が完全に日常の一部となっていることが伺えた。
教導官は通話を終えると、おもむろに携帯電話と端末を収納する。そして少女の方へと向き直る。
「聞いての通り、私は失礼する」
「教導官も、どうかお気をつけて」
ごきげんよう、と二人は挨拶を交わし、各々の事へ向かうべくその場を後にした。
◇ ◇ ◇
「速報をお伝えします。御台場にヒュージが出現した模様です。直ちに住民はリリィの誘導のもと避難を開始してください。繰り返します。現在、御台場に――」
けたたましく割り込みのニュース速報が入る。
アナウンサーが避難を促し、巨大な逆三角形の建物と、背後の巨大な影――形成途中のネストが映し出される。新宿の街中の大型ビジョンにもその速報は流れた。幾許かの通行人は足を止めてそちらを見上げている。
比較的安全な遠方からの映像だろうか。全長二メートル弱の「小型」なヒュージが大量に歩みを進めている。それらは蟻型で、餌を探し求めるように隊列を組む。
最初はそれらに重火器で応戦する者がいたが、現場にリリィが到着すると間もなく引き下がった。
リリィが扱う武器は通常の火器ではない。魔法科学技術の結晶たる、決戦兵器「((CHARM|チャーム))」である。大型のヒュージに有効打を与えられるのは、CHARMを扱えるリリィだけだ。
ヒュージを目にも留まらぬ速さで斬り伏せるリリィや、二丁のCHARMで次々と撃ち倒すリリィが映し出されると、街中の群衆からも「おおっ」と歓声が上がる。リリィは戦士でありながら、その華やかな側面が強調されることも多い。言うなればヒロインだった。
しかし、そんな歓声を尻目に、全く面白くないと言いたげに足早に歩く薄藤色の髪の少女がひとり。黒のワンピースを身に纏い、黒いマスクを着け、とにかく黒尽くめの彼女は、人混みを避けるように街中の書店へと入った。
雑誌コーナーの中にはリリィを特集したものも多く見られ、彼女は本の森の間をまたもや辟易した様子で歩みを進める。そして小説を扱うコーナーへと至った。
彼女は藤澤深紀。読書が趣味の一般大学生であり、百合ヶ丘女学院を卒業した元リリィだ。
一冊の本を手に取り、パラパラと軽く中身を読む。
今や、謎の巨大生命体や魔力があり、小説よりも事実が奇なる時代。SFやファンタジーは衰退気味だが、ヒュージ出現以前の古典的な小説は、あらゆる異なる世界を見せてくれた。彼女にとってはそれが心地よかった。
もともと目星をつけていたのか、手に取っていた本はそのままに、二冊ほど加えて購入した。
書店を出ると、街は落ち着きを取り戻しているようだった。オーロラビジョンのニュース速報も既に終わり、寝ているだけの猫を映し出している。少し離れたところでは戦闘が起きているというのに、日常に戻るのは些か早いものである――というよりも、戦闘が身近に行われている状況がもはや日常の一部となっているのだった。
深紀はその後、書店の斜め向かいの薬局で即席麺や完全食、その他の生活必需品を多めに購入すると、速やかに帰路に着く。ニュースの内容は傾聴してこそ無かったが、全く耳に入っていない訳でも、また不安を覚えない訳でも無かった。
夕刻が近づくにつれ空は徐々に雲を増し、街に影を落とす。道を歩きながら自動車のライトに照らされたとき、深紀は左肩の古傷がずきりと痛むのを感じた。
箱根地区北西部。
鬱蒼と生い茂る低い草木が宵闇に覆われる頃。
一筋の光が山肌を掠め、木々を焼き、川を抉る。水はジュウと音を立てて蒸発し、水流は向きを変えて溝を埋める。それは、絶想を像する熱量を湛えたマギだった。
光線の主は、たった今ケイブから大地に降り立った一体の巨大なヒュージだ。山全体を揺るがす轟音とともに木々を薙ぎ倒し、歩みを進めるそれは、全高二十メートルを優に超え、特に大きい種別としてギガント級と呼ばれる。頭部や四肢は大まかに人間に近い形をしているものの、歪な赤銅色の体表をもち、とても人間には似ても似つかなかった。
その出現の瞬間を、僅か二十メートルほどの至近距離で見ていたリリィが二人いた。藤澤深紀と眞鍋娃透だ。娃透は、深紀が三年生になって間もなくできた二つ下のシルトだった。シュッツエンゲル制度に則った契約上の妹をそう呼ぶ。
二人はいずれも百合ヶ丘女学院の制服に飾緒のついた燕尾型のジャケットを組み合わせた服装で、茂みの間からヒュージの方を覗いている。
「ギガント級……出撃前には予兆がなかったはず!」
「もう三時間! 時間とりすぎたみたいね、撤退!」
小声で示し合わせ、二人は同時にマギを足下に込め、跳躍する。可能な限り音を立てないように、こちらがヒュージから目立たないようにと、低い姿勢で速やかにその場を離れた。
この時、深紀は一つ妙だと感じていた。というのも、CHARMにもヒュージやケイブを探知する機能が備わっているからだ。最新鋭のヒュージサーチャーほどではなくとも、至近距離でしかもギガント級の規模、予測できないはずは無かった。
(故障かしら……まったくこんな時に!)
深紀はレアスキル「鷹の目」を発動した。リリィが一つまで覚醒する超常的な能力、それがレアスキルなのだが、鷹の目はその中でも周囲の状況を広範囲に渡って、まさに鷹の視野を持ったように把握できるというものだ。
斜め後ろにいるヒュージも「視界」に入る。ケイブからは複数のラージ級、ミドル級のヒュージが出現していた。そろそろ直線距離で百メートルほどは離れていた。
「深紀様、拠点に連絡します!」
「ええ、お願い!」
それが失敗だった。娃透は携帯電話を取り出すや否や木の根に足をかける。慣性のまま身体が宙に浮き、CHARMもその手を離れた。低い位置での移動が仇となった。
深紀はマギを込めて逆方向に地を蹴り制動する。落下地点へと駆け寄ろうとするが、それもかなわなかった。
――JUAAA!!
ヒュージの咆哮とともに、前方からマギの光線が迫る。先程のヒュージは、彼女らの居場所を知ってか知らずか、的確に攻撃して来たのだった。
深紀はすかさずマギで防御結界を強化する。かろうじて直撃は免れたが、物理的な衝撃はそのまま受け、十メートルほど突き飛ばされ、池の浅瀬に叩きつけられる。
「娃透、あすか……あ……」
全てが混濁して見えた。
とにかく娃透のことが気がかりで名前を呼ぶ深紀だったが、言葉が届いたのか、届かなかったのか、無事なのか、そうでないのか。知ることもなく意識を手放した。
◇ ◇ ◇
新宿からやや東の高層マンションの十四階。藤澤深紀は、この場所にたった一人で住んでいた。
時刻はまもなく午前五時。起きるには早い時間だが、彼女は既に悪夢にうなされ目を覚ましていた。
箱根地区北西部でギガント級ヒュージを発見し、撤退に失敗したその一件は実際の出来事だ。思い出さないようにと封をし続けてきた記憶でもあったが、当時のままの異様な現実感をもった光景を切っ掛けとして次々と思い出し、悔しさに呑み込まれ、ただ涙していた。
深紀が気を失った後、拠点で待機していた五人のリリィもケイブに気付き、住民の多い南東への侵攻を食い止めるため出撃。その際、当時のルームメイトの((芥川千恵|あくたがわちさと))が倒れている深紀を発見したのだった。
結局そのヒュージは討ち漏らし、周囲に娃透の姿はなく、CHARMもなく、彼女のものと思われる認識票だけが落ちていた――事件から三日後、百合ヶ丘女学院の保健室のベッドの上で深紀はそう聞かされた。その日から今に至るまで、娃透は行方不明のままだ。
ティーンエイジの少女たちがマギを良く扱える傾向があるという偶然のため、ヒュージ出現以降かれこれ五十年に渡り、世界の命運は十代の少女たちに委ねられている。リリィという英雄が背負うものは過大だった。
また、ガーデンを卒業し、リリィとしての役割を終えるとどうなるのか――マギ保有量は徐々に減退し、栄光は過去のものとなり、人類を守る側から守られる側へと役を変える。居場所を見つけられたなら良いだろう。しかしそうでなければ、リリィだった頃に囚われてしまうことになる。深紀も、そういった問題を抱えていた。
――あのとき、私は娃透を守れなかった。
――私にシュッツエンゲルになる資格なんてなかった。
不甲斐ない自身の今の有り様を思い、後悔に呑まれて堂々巡りに考えている内に小一時間ほどが経過した。ようやく泣き止むと、枕はしっとりと濡れ、これが文字通り枕を濡らすということか、などと思う。
この日、深紀は大学へ行く用事があったものの、目は酷く充血していた。サングラスをかけるのも気は進まず、家に留まり、買ってきたばかりの小説を読んで過ごすことに決めた。
「ごきげんよう、あなたが藤澤深紀様ですか?」
「あら、ごきげんよう。私がその藤澤深紀です」
三年生に上がって間もなくの昼休み。深紀は寮で同室の芥川千恵と、その実の妹にしてシルト、((芥川智里|あくたがわともり))の二人と昼食の約束のため席を確保し、先に購入した目の前のカニチャーハンをお預けになっているところだった。
「はじめまして! 眞鍋娃透といいます! あなたに憧れて百合ヶ丘女学院に入学しました! お会いできて光栄です!」
突如現れた一年生、娃透は、赤毛の三編みを大きく揺らし、破竹の勢いで深紀への憧れを表明する。所属のリリィに憧れて――あるいは恋心を懐いて――リリィになることを決めたりガーデンを選んだりというケースは多いと噂される。しかし、その矛先が自分に向かうだなんて、と深紀は思っていた。
「初めまして。とても嬉しいのだけれど、あなたはどこで私のことを?」
「ワールドリリィグラフィック十月号の百合ヶ丘拡大特集回の三十八ページ左下のコラムです!」
――うわ、圧がすごい!
最初はそういう印象だった。飛び出る言葉一つ一つが深紀への情熱的な気持ちで溢れている。一種のリリィオタクでもあるのだろう。しかし、ワールドリリィグラフィックは、リリィ関連では間違いなくトップの雑誌だ。深紀は、優秀なリリィが多く在籍するこの百合ヶ丘においては、所属する隊のないフリーランスの、矮小な一人のリリィに過ぎないと自覚している。特集に掲載されるというのも不自然な話だった。
「そのコラムというのは、どういう内容?」
「ある記者が、これまで何人ものリリィから深紀様の噂を聞いたそうで」
彼女が言うには、親しかった友人の遺品や形見を届けてくれる人がいる、という証言が百合ヶ丘に限らず他のガーデン、相模女子高等学館や聖メルクリウスインターナショナルスクールからも挙がっており、その多くがどうやらある一人の百合ヶ丘のリリィによるものだ、という内容だそうだった。
「なるほどね、よくもまあ噂で……」
確かにそれは深紀がしたことだった。フリーランスのリリィとして戦場に途中から加勢することが多かった深紀は、レアスキル「鷹の目」を発動していれば細かい物が見え、また几帳面な性格もあり、何かを見つけては回収することを繰り返していた。それは時に装備品の残骸や、認識票であったりもした。
するとそこへ、芥川姉妹が戻ってきた。千恵はハンバーガーを、智里は豆腐サラダをトレーに載せている。深紀は、ハンバーガーの付け合せのフライドポテトがやや危なっかしい位置にあるのを見ると、それを摘んで食べた。千恵は特に何も言わなかったが、深紀に挑戦的な視線をむけ、そして娃透を一瞥する。
「あら、ごきげんよう。かわいらしい子ね」
「ひ!」
「新入生の眞鍋さん、私に憧れて百合ヶ丘に入ったという子で……」
芥川千恵は端的には超の付く女誑しだ。その雰囲気を感じ取ってか、娃透はやや引き気味だ。彼女は三年生としてノルン――すなわち、シルトのまたシルトがいる状態――の一番上になったにもかかわらず、未だに一部の後輩や同級生と関係を持つ。生徒会からお咎めを受け、倫理道徳勉強会にもお小言をぶつけられてきたが、しかしある時から急に甘くなったそうだ。曰く「リリィとしての道徳は騎士道精神を語れば事足りる。私生活についてはその如何を問わない」とのことだ。この一件で、千恵は生徒会への色仕掛けが噂されている。
「眞鍋さん。折角ですし、私達と一緒に食べませんか?」
「いいんですか? 私も買ってきます!」
娃透は智里に誘われると、抱えていた教科書を置くなり、深紀にアイコンタクトを取り、すぐに買いに行ってしまった。深紀が断らないことは既に織り込み済みなのだろう。
芥川智里は人の心に柔らかく入り込んでいけるところがあった。昔から下級生の信頼も厚く、会って間もない人の扱いならば智里に分がある。この姉妹はいずれも抗い難い魅力のある二人だった。
「私から誘おうと思ったのに……それと、千恵は初対面なのに、刺激的すぎ」
「ま、お姉ちゃんはいつもこうですから」
姉を反面教師として育った智里は、真面目な性格で誰に対しても緩めの敬語で当たる。ただ、好き放題をする姉にはどうしても厳しくなれない。そういう関係だった。
程なくして、娃透はカニチャーハンを持ってきた。しかし、それは深紀のそれよりも二回りほど大きい特盛りだった。
◇ ◇ ◇
深紀はまたしてもリリィだった頃の夢を見ていた。娃透と出会った日のとても平和な記憶だ。当時のことは思い出さないようにと努めていたが、平和な内容であればうっかり求めてしまうものだった。
現実感の高さに記憶が混濁し、さながら胡蝶の夢のごとく、自我の在り処も曖昧になる。しかし、体を起こし、端末に表示された時刻を見ると徐々に我に帰った。今の私は今の私だ、と。
午前八時。まだ時間に余裕があった。夢の続きが見られないかと考え、再び布団に潜ろうとした、その時。
――ヴーッ、ヴーッ。
端末がバイブレーションで着信を報せる。画面上には珍しい、しかしかなり見慣れた名前があった。
「もしもし、おはよう……深紀です」
「深紀さん、お久しぶりです」
通話の先にいたのは芥川智里だった。最後に連絡を取ってから四ヶ月が経過していたが、つい先ほどまで一緒に食事をしていたような気分でもある。深紀は、親しみが湧いて上擦りそうな声を抑える。
「連絡なんて珍しい、何かあったの?」
「実は、お姉ちゃんが久しぶりに会いたいとのことで」
「なら千恵は? 直接連絡くれても良かったのに」
「それが、編集部がリリィ現役時代よりも忙しいらしく、連絡しておいて、とだけメッセージが……」
芥川姉妹はいずれも卒業後、教導官になることを勧められていた。しかし、それに応じたのは妹の智里だけだった。姉の千恵については、戦闘に嫌気が差しながらも可愛らしいリリィに関わったままでいたいという不純な理由でリリィ関連雑誌の編集部に入った。非常に彼女らしいといえばそうである。
「直近だと、明明後日の午後しか空いてないんです……あ、その日なら私も行きます」
「その日は大学で用事ありそうだけど、来てくれるなら近くのカフェとかでも、良い?」
「大丈夫です!」
こうして、芥川姉妹と深紀は約束を取り付けた。
二人はしばらく通話を続け、最近の世間話で盛り上がる。智里は深紀のことをよく理解しているのか、御台場の一件など、あからさまに戦闘に関する話題を出すことはなかった。一方で、深紀から提供できる話題は、最近読んだ本のことばかりだった。
この日、深紀は非番で休暇を得ていた。幾ら休みとは言っても、寮のソファに寝転がって読むものといえば、対ヒュージ戦闘に関連する書籍だった。
先日は近隣地域にてケイブ発生のために出撃し、ラージ級ヒュージを五体ほど倒した。代わりにミドル級やスモール級の数は極端に少なかったが、身体的にもマギ的にもかなり疲労が残っていた。
足湯にでも行こうかしら、と考える。しかし身体を起こすのも億劫で決めかねていた。その時。
――コンコン、ココン。
ノックとともに、こちらの返答を待たず扉はギイと音を立てて開く。深紀は既に誰がいるかは察していた。
「深紀様! ごきげんよう!」
「ごき……ブレイブちょうだい、誰か、ブレイブ」
「えっどうしたんですか!?」
そこには紅茶のポットを持った娃透がいた。
リズミカルな四回のノックは取り決めの通りだ。娃透が深紀を尋ねるのはもう五回目で、いつもこんな調子である。互いに距離感も近くなり、軽口を叩くようにもなっていた。
「昨日の出撃が大変だったの、狂乱使いすぎちゃった。負のマギが残ってる気がする」
「ええー、大丈夫ですかね……」
サブスキルの一つ「狂乱の閾」は、その上位にあたるレアスキル「ルナティックトランサー」に類したもので、身体機能や重力の制限から開放されたバーサーク状態による戦闘が可能になる。一方で、精神的に不安定になり易く、負のマギの影響を受けやすい。それを支える事が出来るのがレアスキル「ブレイブ」なのだが、残念ながらこの場には使える者がない。
「そこのベッドにでも座って」
「でもここ、千恵様のですよね?」
「……ここ二日は出払ってる」
「あ、なるほど……」
娃透はベッドに腰掛けて、紅茶の入っているであろうポットをローテーブルに置く。深紀はどうにか身体を起こすと、戸棚からティーカップとソーサーを二組取って、その反対側のベッドに座った。
机の上には砂糖とティースプーンが常備されている。娃透がティーカップに注ぐのを待ち、深紀は砂糖をごく少量だけ入れる。甘さが要らないときでも、ほんの少しだけ砂糖を入れると香りが立って良いのよ、とは千恵の弁だった。
「さて、今日は話があるんでしたっけ」
これは、深紀が娃透と話し始めるときのお決まりの文句だった。特段、示し合わせた内容がある訳ではない。毎回、本題を促しても世間話に流れてしまう娃透を気にかけてのことだった。
「あの、その、えっと……」
「はいあと五秒ね、三、二――」
「一年生と三年生でシュッツエンゲルの契りを交わすことは可能ですか!?」
深紀は、なるほどそう来たか、と思う。その言葉の真意は明らかだった。少し気恥ずかしく、唇が乾くように感じられる。紅茶を一口だけ含もうとするも、思いのほか熱いままだった。努めて平静を装うが、体温が上がったような心地もしていた。
「それは、私とシュッツエンゲルの契りを結びたい、ということ?」
「そういういうわけでは……あるんですけど……」
娃透としては、回りくどくして深紀に察してもらうので精一杯だった。二人とも同時にカップに手をかけようとし、くすりと笑う。その動作一つも互いに照れ隠しだった。
「この前の戦術の話を覚えていますか? 鷹の目とテスタメントって小隊を編成すると、偵察や探索に向いていて相性が良いのではないか、って言っていましたよね」
「そうね」
「わたし、テスタメントに覚醒しました」
「えっ?」
テスタメントはレアスキルの中でも更に希少なものだ。マギの放出速度として喩えられるスキラー数値の要求が高いために、覚醒しうる人口自体が限られる。
「聞いてなかったけど、あなた、スキラー数値は?」
「86です!」
得意げに言う。その数値は実際、トップクラスという程ではないが結構高かった。一方の深紀は半年ほど77で頭打ちになっており、このままマギ減退とともに減少して行くものだと予想していた。それと比べて娃透は、明らかに今後を期待されるべき一年生だった。深紀は素直におめでとうと言葉を贈るが、娃透は笑顔を崩し、やや複雑な心境を顕にする。
「本当はファンタズムに期待していたんですけど、覚醒前には区別がつきにくいじゃないですか、ファンタズムとテスタメントって。レギオンに入るなら((前衛|AZ))に行きたかったんですけど、テスタメントは防御が弱いので、どうしても((後衛|BZ))やバックアップになると思うんです。負傷が多いのも知っていますから……」
確かにそうだった。テスタメントの防御結界が弱まる点はまさに問題視されており、深紀の学年では負傷する者が多い。そして、解決方法が模索され始めたような時期でもあった。そのため娃透は、深紀が提案した編成に期待をかけているのだった。偵察や物探しをすることが多いとはいえ、ヒュージとの一対一の戦闘を重視するのには変わらない。デュエルは常に前衛だ。
尤も、チームプレイ向きのテスタメントを独り占めするのも良くないと深紀は感じていたが、娃透の性格ならば他のリリィと関係を築けないはずは無い。自分の卒業後のことは彼女自身に託せば良いか、と考えた。
「つまり、私と一緒に動きたい、そういうことね」
「はい、そうです!」
もちろん、一緒に動くことにシュッツエンゲル契約は必要ではない。しかし、一緒に動く学年違いの二人組ならば、皆から「はよ契れ」と言われることは火を見るより明らかだった。そこで深紀は、娃透に最も尋ねたかったことに踏み込む。
「じゃあ、どうして私の生き方が良いと思うの? そんなに良いことばかりでもないもの。遺品回収だって、成り行きだけれど……」
「それは……何も残らないなんて、つらいじゃないですか。私たちの生きた証が残せないのって。大層なものじゃなくても、物が一つでもあれば、私を知る人がいる限りは思い出してもらえますから」
それは、深紀が普段から遺品を届けようと思うときに考えることと同じだった。あるいは、成り行きですることになった中で、自分を鼓舞するための理由付けだったのかもしれない。この時点で深紀がすべきことは明らかだった。ここまで言ってくれた娃透のためにと、深紀は自分から申し出ることにした。
「娃透、シュッツエンゲルの契りを、結びましょう」
◇ ◇ ◇
深紀はまたしても過去の夢を見ていた。寝起きは悪かったが、いつも通りコーヒーを淹れ、菓子パン程度をつまむ。テレビをつけると、カジュアルな情報番組が今日の天気を伝えていた。
夢の内容には、閉じ込めてきた記憶を無理やり掘り返されるような心地がしていた。しかし、三日連続ともなると少しずつ慣れても来るものだ。娃透に関する記憶も徐々に鮮明さを取り戻しつつあった。
ふと、深紀は部屋の隅にある箪笥の中身を気にかけ、カフェインを入れた身体に鞭打ち立ち上がる。箪笥の最下段、そこに仕舞ってあったのは、娃透の認識票だ。他にも彼女の持ち物はその大部分を深紀が預かっている。
――大層なものじゃなくても、物が一つでもあれば、私を知る人がいる限りは思い出してもらえますから。
娃透のそんな言葉を思い出していた。
彼女の家族は、過去にヒュージの襲撃を受けて亡くなっていた。深紀の知る限り兄は生き残っていたそうだが、一般の孤児院に引き取られる際、治療が必要だった娃透は兄と離れてしまったと聞いていた。娃透は孤児院では寡黙な印象だったそうで、輪には入らず小説やリリィ関連の書籍を読むばかり。一言でいえば浮いており、親代わりの職員にも距離感を持って接されていたとのことだった。つまり、百合ヶ丘に来てからの娃透の方が、例外的に明るく振る舞えていたのだった。
深紀はふと、娃透自身も失った家族を思いだす物品を何か持っていたのかもしれないと思い至る。実際のところは分からないが、彼女が深紀に憧れシルトになった理由としては、家族を失ったという点だけでも十二分に思えた。
引き出しを閉じる。深紀は、未だ見つかっていない娃透のCHARMが気がかりだった。発見したらすぐに連絡する、とは卒業時に言われていたことだが、少し前までは忘れられてしまったならそれはそれで、と思っていた。
深紀は思考を振り払うように立ち上がる。その日は早い時間帯に大学の授業が控えており、手早に外出の準備をした。
「はい、今日はここまで。鷹の目のS級など、レアスキルを極めた場合に出来る固有技については次回詳しく触れて行きます。今日の内容は宿題として強制はしませんが、各自の戦略に合わせて実地で活用できるよう、復習と深い理解を心がけてください。座学が出来てもケースに適用できなければ意味がない。皆さんもよくご存じのことと思います。それでは、ごきげんよう」
教導官の長台詞が終わり、同時にチャイムが鳴る。午前の授業の終わりに、教室の皆は合わせて一礼をし、ごきげんようと返した。リリィたちは教室を散り散りに出る。その多くは食堂か購買の方へと向かっているようだった。
深紀はその様子を眺めながら教科書を畳む。裏表紙を見ると、記名欄には未だに二年と記されていた。一つ線を書き足し、三年椿組と改める。
三年生ともなると単位を取り終えたリリィが大半で、実践的な部分に関しては実地の経験で得ているリリィが多い。それでもなお授業に出る深紀は、教導官にでもなるのではと噂されることもしばしばだった。しかし実際のところは、娃透との今後を思い、経験不足な部分を補おうという一心だった。この授業は、レアスキルやサブスキルを実践にも結びつけて緻密に扱うもので、最新の研究や仮説にも触れる高度なものだ。例えば、娃透はテスタメントに覚醒したが、発動中のレアスキルの効果向上の範囲や制約がどのように裏付けされるか。そのような事が知りたかった。
荷物を纏め終え、深紀は立ち上がる。その時、教導官がこちらへと歩いて来るのが見えて手を止めた。彼女はタブレット端末を片手に深紀の方をじっと見ている。
――えっ、私?
――そうだよ。
二人は無言で、身振りと表情のみで会話をした。そして間もなく机の前に立つ。
「ごきげんよう。いきなりだけど、提案したいことがあって」
教導官はタブレット端末で検索画面を開く。深紀の位置からはその画面は見えず、軽く背伸びをした。
「藤澤深紀さん、あなたは眞鍋さんをシルトに持ったのでしょう。以前はフリーランスのリリィとして近隣の出撃の際は他レギオンに加勢して露払いを、また出撃後期の追加人員として入り、殲滅完了の確認や、遺品回収等をすることもあった。現在は内容はそのままに、二人で一緒に動くようになったそうだけれど、そのシルトがテスタメント持ちなので不安がある。そういうところではないかと思ってね」
深紀は面食らう。まったくもってその通りだった。((瀧夏水|たきなつみ))教導官は、百合ヶ丘の全リリィのプロフィールが頭に入っているのではないかと噂される事もしばしばだったが、それだけのことはあった。
教導官は画面を深紀に向ける。そこには、甲州の甲斐聖山女子高等学校の案内があった。深紀はすぐにその意図を察する。
「転入させるんですか?」
「察しがいいね。あの子はまだ一年生だから、将来の話をするならばあなたに言う方が良いと思って」
甲斐聖山の教育指針の箇所を指し、続けて言う。
「聖山は、ヘリオスフィアとテスタメントの教育に力を入れている。ここで学ぶことは娃透にも将来的に良いのではないかと思う」
テスタメント発動中に弱まった防御結界に、ヘリオスフィアという防御に寄与するレアスキルを当てる。普通はそうするだろうという順当な作戦を、ガーデン単位で実践しているのが甲斐聖山だった。深紀も、それ自体は上手く働いているという立場だ。しかし疑問点があることは否めず、思わず言い返した。
「ヘリオスフィアとテスタメントの教育に力を入れているということは、これらのスキルを持つ者が集っているということです。結局はヘリオスフィア持ちと共闘することで場を凌いでいるだけではありませんか? すると、それ以外のスキルがある者と協力する方法には繋がらず、連携重視のレギオンに所属する際に対応できる戦略の多様性が損なわれるかと思います。負傷のリスクは低減されますが、実際には百合ヶ丘の方が教育の質は高いのではないでしょうか?」
言うねえ、と教導官は笑う。困った様子で、笑いながら片手をこめかみに当てていた。
「ちょっと、視野が狭まっているんじゃないかな?」
深紀は何も言い返せかった。自分が言うことが間違っているとも思わなかったが、シルトと離れたくない気持ちが働いていることは否定のしようがなく、詭弁を弄したような気分にもなっていた。
「生きて帰らなければ、何も残らないよ」
考えておきなさい、そう言い残すと教導官は教室を去った。気づけば他に三人が残るほどになっていた。深紀はしばらくその場で立ち尽くしたが、まもなく纏めた荷物を手に教室を後にした。
その日、深紀は娃透と昼食の約束があったが、せっかくの二人の食事でありながら、先程の事を言うべきか言うまいかと悩むばかりで、あまり味わうことは出来なかった。
◇ ◇ ◇
深紀は普段通りの朝を過ごしていた。もはや過去の夢も日常の一部だ。適当に淹れたインスタントコーヒーはいつもよりも苦味が強く感じられた。
結局、深紀は甲斐聖山女子高等学校への転入についての話を娃透に提案することは無かった。そして彼女はそれから二ヶ月後に命を落とした。自分が即断していれば亡くなることもなかったのではと後悔し、狂乱の閾の状態を悪化させたことが現在に至るまでの抑圧の一つの原因だった。もちろん、それは後の祭りというものだ。
生きて帰らなければ何も残らない――深紀は当時、その言葉には共感できなかった。遺品について考え、何かを残したいという立場を取ることが多かったことが災いし、反発する要因にもなっていた。リリィは生きていてこそまた新たに救える命があり、次の世代にも繋がっていく。教導官が言いたかったのはそういうことだろうと今なら理解できた。
考えすぎても良くないと、深紀は残ったコーヒーをぐいと流し込む。そして今日も大学へ行くため荷物を纏めた。深紀は明日、芥川姉妹との久々の再会の予定だ。ここ最近ずっと続いている娃透に関する夢について、伝えるべきかと悩んでいた。
箱根地区北西部。
山に囲われたその地に幾らか早く夜が訪れた。木々の隙間には深い影が落ちつつあったが、突如、その闇夜を切り裂くように一筋の光が迸る。その光の主は、赤黒い体表を持つ巨大生命体、ヒュージだ。ギガント級と分類される特に大型のそれは、文字通りの重い足取りで山全体を揺さぶっていた。
「ギガント級……出撃前には予兆がなかったはず!」
「もう三時間! 時間とりすぎたみたいね、撤退!」
直前までは別の作戦行動を行い、ようやくこの場で合流した二人のリリィがいた。彼女らはヒュージがケイブから出現する瞬間を確認するや否や、マギを足下に込めての高速移動で速やかに撤退する。二人は木々の間を縫うように移動しながらも、十秒かからず百メートルほどの距離を取った。
「深紀様、拠点に連絡します!」
「ええ、お願い!」
娃透は携帯電話を取り出し、一瞬だけ操作した。その瞬間、彼女は木の根に脚を掛ける。身体は宙に浮き、CHARMも手を離れた。
「娃透!」
――JUAAA!!!
深紀は駆け寄ろうとするが、同時にギガント級ヒュージが咆哮する。そして、彼女らのいる方へとマギの弾丸を放った。深紀は咄嗟に防御結界を強化して備える。
すると娃透は、深紀が手の届く距離まで近付いたのを確認すると、宙に浮いたまま爪を噛み切った。流れ出た血は一瞬で刀の形を取り、その手に収まる。
「お姉様――また、ここに来て」
その刀は峰を向けて深紀へと振るわれた。迫りくるヒュージの光線は直前に減光し、そのマギの一部を深紀は纏う。左肩に強烈な打撃を受けた深紀と娃透は互いに逆向きに弾き飛ばされ、間に着弾した光線による爆風が更に追い打ちをかけた。深紀は十メートルほど飛ばされ、池の浅瀬に打ち付けられる。
「娃透、あすか……あ……」
深紀は、娃透の突然の行動が理解できず混乱していた。真意を問うように娃透の名を呼ぶ深紀だったが、彼女はその全てを知ることもなく意識を手放した。
◇ ◇ ◇
――違う。
深紀は飛び起きた。数日前にも見た夢と同じ日の記憶のはずだが、その内容は異なっていた。以前見たときよりもさらに鮮明で、実際にあったかのような生々しさが身体に染み付いていた。
時刻はまもなく午前五時半。やはり起きるには早い時間だが、夢の強烈な違和感に恐怖すら覚えており、とても寝られるような気分ではなかった。その瞬間、バイブレーションが着信を知らせる。それは智里だった。
「もしもし、深紀です……こんな早くにどうしたの?」
「娃透の、夢を見たんです……」
「えっ?」
深紀は背筋が凍るような心地がした。
「私も、五日連続で……」
「深紀さんも? 私たちに伝えたいことでもあるんでしょうか」
今や魔力も怪物もいるような時代、リリィの中には幽霊が見える人もいると噂される。智里が言うのは、単なるオカルトの話ではなく、現実的な推測だった。深紀としては、夢を見た事よりも内容の齟齬の方が引っかかっていたが、それをいきなり言うのも憚られた。
どうにか気を紛らわそうと、午後には直接会うにもかかわらず雑談を続ける。緊張からか深紀は珍しくも大学で勉強している内容についてを得意げに語ったりもした。近代史や古典的な科学についてだが、当の本人は全く向いていると思わないらしい。
「二十世紀末までには科学だけで現代とそう変わらな……ってもうこんな時間!」
「そうですね時間が……ではまた後ほど」
「あとでまた!」
一時間半ほどが経過した。通話の甲斐あって、深紀が大学へ行く準備をする頃にはすっかり当初の恐怖も忘れていた。一方で疑問だけが残り、後で会ってもこの事ばかり話すことになるだろうな、と感じていた。
「全く、あなたは我儘ですね」
立体映像の緑髪の女性がそう言う。
山地にひっそりと佇む避難所、現在は使われていないその建物の地下には研究施設があった。仄暗い空間に、腕を組む桃色の髪の少女の姿が見える。彼女は白の装束を纏い、不服そうに立体映像に向かって話しかけた。
「我儘……? 逆ですよ、私があなたたちの我儘に付き合っているんです。私は非人道的実験を認めません、いつも言っていることです」
「だから、これは人類のた――」
「人類のためなら何をしてもいいの!」
桃色の髪の少女は一瞬声を荒げるが、諦めたように溜息をつくと、コンピューターの前に備え付けられた黒い革製のソファに腰掛けた。彼女の体格にしては大きすぎるそのソファは、ふんわりと彼女の身体を受け止める。緑髪の女性はかなり気圧されたようだった。
「もう一度言いますよ。強化実験を呑んだ際の約束、十分に完遂できていないですし、悔恨を残しています。協力願います」
「それは詭弁、と言いたいところですが……仕方ないですね。こちらにも付き合いがありますので、提供しましょう」
あくまでも付き合いという点を強調するのは、彼女の立場として譲れない事なのだろう。その返答を聞き、桃色の髪の少女は膝の上で手を組むと、満足げに微笑む。
「ご協力ありがとうございます。詳細については送りました通りですので、ご確認くださいね」
「全く……ずるいですよ、あなたは」
ごきげんよう、とお嬢様学校の形式を取っているガーデンに特有の挨拶を交わし、通信を切断する。桃色の髪の少女は満足げにソファの上で伸びをした。
「さあ、アクトの始まりよ、なんてね」
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オリジナルリリィ合同に寄稿しました小説の前半部分です。 続編を検討するに際して試験的に公開します。 主人公紹介: https://w.atwiki.jp/orily/pages/13.html |
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