とあるサスペンス作家の秘密
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「先生のサスペンス小説って……なんかこう……リアリティがあって引き込まれるんですよね。書き方のコツってあるんですか?」

 この仕事を始めてもう八人目の女担当者が、私が先程書き上げた小説をパラパラと読みながら、問う。

「コツかい? そうだねぇ……色々な物事を観察することがコツかな?」

 私は少し照れ笑いをしながら、担当者に教授する。

「観察ですか? 例えばどんな観察を……」

 担当者は少し感心があるようで、私の言葉に耳を傾ける。

「それはね……こういうことさ!」

 私は懐からロープを取り出し担当者の首に巻き付け、絞める。

「なっ……」

 担当者は突然の出来事を把握し切れず、驚いた表情のまま必死に息をしようとするが、どんどん絞まる気道のせいで息は入ることも出ることも許されない。

「恐怖で染まっていく人間の表情が好きで、そんな表情を小説に書き始めたら、いつの間にかヒットしちゃってさぁ? 編集部が湯水の如く私に殺される人間を与えてくれるから嬉しい限りだよ! って、もう動かなくなったのかよ……これだから抵抗力の弱い女は嫌いだ」

 首を絞められた担当者は、顔の穴という穴から体液を流して絶命していた。

 

 

 私は、絶命した担当者を外のガレージへと運び、納屋から持ってき斧でた五十等分に切り分け、その一部を飼い犬達に与える。犬達は余程空腹だったのか、奪い合いながら人間だった物を食べ始める。

 その光景を見ながら私は携帯を取り出し、編集部へ電話をかける。

「もしもし、私だ。あの担当者も使えなかったぞ。今度はちゃんと抵抗する、使える担当者を寄越すんだな。では、失礼する」

 電話を切った私は、肉を囓りながらニヤリと笑う。

「さて、ネタも出来たことだし、新作を書こうかな?」

 

 

End

説明
※若干グロテスクな表現が含まれておりますので、ご注意ください。


mixiであげたSSの転載です。
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