Sky Fantasia(スカイ・ファンタジア)一巻の1 |
プロローグ
俺の周りには炎が激しく燃え上がっている。
黒い煙が上がり、空は黒ずんでいる。
俺の周りにはたくさんの人が倒れている。
その人たちは、血まみれで倒れており、生きているのか死んでいるのか判らない。
・・・愉快だ。
何で俺は戦っているんだ?
・・・だれかいないのか?
また一人の戦闘服を着た者が俺に襲い掛かって来る。
だが相手の攻撃が俺に当たることはなかった。
俺の体は勝手に、向かってくる相手を持っている刀で切り刻む。
まるで相手にならない。
これは戦いじゃない、一方的な虐殺だった。
のどが渇く。
いくら暴れても疲れない。
「ウ・・アウゥゥ・・・」
俺は自分の地獄絵図を他人事の様に見ながら、必死に叫ぼうとする。
(誰か・・・止めてくれ・・・・)
だが、それが声で出ることはなかった。
俺の中の黒い感情が、俺の体を蝕む。
ザッ!
前から足音が聞こえてきた。
俺は顔を上げると、その音のする方を向く。
俺の目の前には、一人の女の子が立っていた。
女の子はとてもやさしい笑みを浮かべていた。
「大丈夫。怖がらなくてもいいよ」
彼女は言うと、ゆっくりと俺に近づいてきた。
(・・・来るな!・・・来ないでくれ!・・・)
俺は必死に声を出そうとした。
だが、声が出ることはなかった。
このままじゃ・・・
彼女も・・・
殺してしまう。
だが、不思議なことに俺が襲い掛かることはなかった。
・・・来るな!
女の子は俺の前に立つと両手を広げ、俺を抱き締めた。
「もう大丈夫だよ」
その声はとても優しく、俺を包み込む。
すると、俺の黒い感情はだんだん収まっていった。
そして、俺の気持ちが楽になり、段々と瞼が重くなってくる。
どうやら疲れがでてきたらしい。
心地よい闇が俺を覆う。
俺は意識をその闇へと落とした。
第一章 はじまり
初めにこの話の世界観は以下のようである。
空暦2047年。
かつて一つだった世界は、千年前の空と大地による戦争によって、十二個に別れた。
だが、今は技術の発展により、人たちは世界を渡るすべを手に入れた。
それによって、十二の世界を(世界によっては何らかの制約があるが)行き来することができるよ
うになった。
その十二個の世界の中の一つ《グラズヘイム》
この世界は《魔法》と《科学》が共存された世界である。
その中の一つ魔法は、主に二つの力によって成り立つ。一つは人の精神エネルギーを使う《魔
力》、二つ目は自然の力《マナ》である。
そして、魔法と一言で言っても多くの種類があり、たえば、謳を謳って発生される魔法や魔方陣を
使うもの、さらに、特殊な言葉を詠唱して発動する魔法、といったさまざまな魔法が存在している。
それらの魔法を統括する政府公認機関の一つ《魔導連邦保護局》通称《魔連》
魔連は主に、この世界を統括しているが他の世界の支援もしている。
この魔連の活動内容は、魔法を悪用する者の取り締まり、犯罪者の逮捕、
そして、戦争、犯罪で住処を失った者への保護、といったことをとり扱っている。
グラズヘイムの主国《ミズガルズ》
この国は、魔連の本部やさまざまな重要機関が集まり、島の真ん中に大きな塔が目立つ本島。その本島の周りには東西南北の島々あり、計五つの島で一つの国が出来ている。
そして話は、ミズガルズ南部のとある場所から始まった。
1
「ここでは、皆さんの個性を伸ばすことを目的とした。学園であり―――」
壇上の上でマイクを使って話す、学園長である少し小太りな男性の声が、体育館に響き渡る。
この場所は、ミズガルズ南部にある魔連が運営する学園《セイント・エディケーション学園》
この学園は、東西南北に一つずつ姉妹校を持ち、これらの学園では、魔連の局員を育成することが目的としている場所である。学園では、戦闘学や魔法学、機械情報学など、多くの分野を学ぶことができ、そして、多くの優秀な局員を輩出している。
今日はその入学日。
そして、今は入学式の真最中である。
「・・・ダリぃー」
今、メンドくさそうにしている少年、リョウはこの学園の新入生の一人である。
彼は魔連局員によって推薦され、普通十五歳からの学園を十二歳で入った生徒である。
だが、本人は別に入るつもりはなかった・・・。
「―――ですから、皆さんには―――」
「・・・・・早く終わんねぇか―――ん?」
と、愚痴を呟いていると、後ろから誰かがわき腹を突っついてきた。
リョウは顔だけ後ろを振り向けた。
「だめだよ。そんなこと口にしちゃ」
そこには、リョウがよく知っている長い髪の女の子が少し頬を膨らませて座っていた。
「しょうがねぇだろ。ホントのことなんだから。大体、こんな話まじめに聞いてる奴なんて誰もいねぇーよ」
「愚痴らないの。ちゃんと聞かなきゃ後で困るよ」
と女の子は言い残し、前の方へ視線を戻した。
「俺の分までよろしく」と、リョウは女の子に言うと、欠伸をした。
女の子の名はリリ。歳はリョウと同じ。そう、この子も局員推薦で入ったもう一人である。
そして、リョウとは訳あっていっしょに住んでいる。
一緒に住んでいるといっても、リリの家族も一緒だ。
そんなこんなで、等々リョウは目を瞑り、寝ることで学園長の長い話を流すことにしたのだった。
リョウは起きたときには式はほとんど終わりかかっていた。
(半分以上聞かなかったなぁ・・・ま、べつにいいか)
と、リョウは考えるのがメンドくさくなったのでやめた。
そして式も終わり、リリに捕まる前にリョウは体育館を出た。
そして、パンフレットを見て、自分のクラスを確認する。
場所は第一校舎の三階。
目的地を見つけると、そこに向かう。
自分のクラスに着き、一番に黒板に書かれているもの見た。
そして、クラスを見渡し、書かれている自分の指定席を見つけると、そこに向かって進んだ。
リョウは席に座ると、ざっとクラスを見渡し、そこら辺にいる生徒たちをざっと見た。
ある奴は笑いながらクラスメイトと話している奴、他には机に伏せて寝ている奴などいろんな奴がいる。
見終わると、視線を窓に向ける。
リョウは空を見上げながら呟く。
退屈な学園だ、と・・・。
2
教室で担当の教師が予定事項を言い、今日の行事はすべて終わった。
だが、リョウは半分以上寝ていて聞いていなかったが・・・。
リョウは固まった体を伸ばしてほぐしていると、いきなり携帯が震えた。それをリョウはポケットから取り出し、確認すると携帯のディスプレイには『リリ』と表示されていた。
まあ、登録しているのは家族の奴しか入ってないけどな。
そして、メールの内容は『一緒に帰ろう』とのこと。
それに簡単な返事を返すと、荷物を持って合流する為に教室から出た。
この学園では、兵士科と魔法科、通信科があり、それぞれの科に一つずつ校舎が分けられている。
ちなみに、リョウは兵士科でリリは魔法科なので、校舎が隣同士で離れている。だから移動の際、校舎を挟んでいる渡り廊下を使うことになる。
その渡り廊下は一、二、三階に一つずつあり、現在リョウは自分のクラスの階である、三階の方を使うことにした。
すると、前の方で3、4人の男子生徒が変に固まっているのが目にはいった。
その男子生徒たちは、誰かを囲って話しているみたいだ。
この学園の制服は、男子生徒はブレザーにパンツ。女子はブレザーにスカートといった、シンプルな制服だ。
そして、男女のブレザーは学年ごとに色が分けられていて、一年は緑、二年が黒、三年が赤となっている。
ちなみに目の前にいる男子生徒たちの色は黒。
リョウは関わるといろいろ面倒なので、素通りしようとした。
そのとき不意に会話を耳に入る。
「ねぇー。君、新入生? 俺達が校舎案内するよ」「昼メシまだだよね?」「一緒に食べに行こうよ」「俺おいしい店知ってるよ」
「す、すみません。今、わたし―――」
と男子生徒たちの中から女の子の声が聞こえた。
(ナンパか? こんなところでよくや―――ッ!)
と、思いながらチラッと目にすると、驚き、吹き出しそうになった。
その訳は、男子生徒たちの隙間から見えたのが緑のブレザーの一年の女の子だっただけじゃない。
そこにいたのは紛れもない。
リリだ。
リョウは「あのバカ」と心の中で毒づくと、すぐに男子生徒たちに向かって、
「おい! そいつから離れろ!」
と、叫ぶと、その声に男子生徒たちは反応し、一斉に振り返る。
そして、おもいっきり睨みつけてきた。
「なんだテメエ! なんか用かぁ?」
その中の一人がリョウを怒鳴りつけてきた。
(・・・たく。面倒だなぁ)
と、リョウは内心毒づくと、リリの方をチラッと見た。
リリは困った表情を浮かべて、こちらを見つめている。
その姿を見ると、リョウは呆れたふうに溜息をついた。
(入学初日からトラブルに会うか・・・あれもある意味才能か?)
と心の中で感心するが、すぐに気持ちを切り替え、目の前にいる男子生徒に視線を戻す。
「そいつは俺のツレだ。さっさと退け」
その言葉にさっきの男子生徒が、リョウに近づいてきた。
「なんだ? ガキ殺(や)ん―――ガッ!」
――のか、と言い終わる前に、リョウは真下から真上に向かって、相手の顎に掌底を叩き込んだ。
そして、男の顔が大きく仰け反ると、すぐさま回し蹴りを食らわし、横に吹き飛ばす。
見事にお手本のようなコンボがきまった。
残った男子生徒の間からリリの腕を掴み、自分の方へ引き寄せ、胸の前で抱きかかえると、男子生徒から飛び退き、距離をあけた。
そして、リョウはリリを放すと、庇うように前に立ち、男子生徒からリリを隠すような形をとる。
すると、リリは少し頬を赤くしながら、後ろからリョウに話しかける。
「あ、ありがとう。リョウ君。」
「これくらい自分で片付けろ。お前の魔法なら簡単だろ?」
と、リョウはぶっきらぼうに言い返すと、男子生徒に向き直った。
「てめぇ・・・よくもやりやがったな」
残り三人の男子生徒は、怒りの表情を浮かべ、各々持っている武器を取り出すと、一斉にリョウに襲い掛かってきた。
リョウはそれを見ると、メンドくさそうに腰の後ろに手を回すと、提げている刀を抜く。
そして、男子生徒たちを迎え撃った。
それも、一方的にボコボコにする。
だが、情けをかけて峰打ちで・・・。
3
渡り廊下でのびている男子生徒たちは後々面倒なので、リョウとリリは逃げるように学園から出た。
なので、今は帰宅路を歩いている。
リョウは普通に歩いているが、リリは少し居心地が悪そうにリョウの後ろを歩き、二人の距離に微妙な間が空いていた。学園から出てからというもの、二人は無言で歩いている。
すると、俯いて歩いていたリリが、前にいるリョウに向かって、申し訳なさそうに話しかけてきた。
「・・・ごめんね。迷惑かけて」
「別に。たまたまその場に似合わせただけだし」
と、リョウは何にも無かったかのように平然と答えた。
また沈黙する。
リリもまた、俯いて黙り込んでしまった。
その様子に、リョウは溜息をつくと、顔だけ後ろに振り向け、リリに話しかける。
「そういえば、何で魔法使わなかったんだ? あれぐらいの奴ら、お前の魔法なら一瞬だろ?」
リョウの質問を聞くと、リリは下を向いたまま答える。
「・・・置いてきた・・・」
「はぁ?」
リョウはリリの消えそうな声に訊き直すと、リリは頬を少し赤く染めて、
「置いてきたの・・・指輪。今日は授業ないから」
「・・・ドジ」
リョウは呆れながら言うと、リリは「うっ」と唸り、固まってしまった。
リリは魔法使うときに両方の手の中指に一つずつ指輪をつけて、魔法を行なう。
指輪を使う訳は、簡単な魔法ではいらないのだが、少し大きな魔法を使うとき、補助の役割になっているからだ。
「そもそも学園内だから、むやみに魔法は使えないし、それに、すぐに囲まれたから詠唱する暇もなかったんだよ」
「・・・ノロマ」
と、リョウはまた、呆れながら言い、リリと「うっ」と唸らせ、胸に突き刺さる一撃を与えられた。
「ま、そもそもお前がアイツらを一瞬で片付けられるほどの俊敏さが、ある訳ないからな」
と、追い討ちをかけ、リリは「・・・とどめ刺さなくてもいいのに」と呟くと、ますます落ち込んだのだった。
リリはリョウと一緒に暮らし始める前からいろいろな魔法を勉強し、身に付けていた。
そもそも、リリは頭がとてもよく勉強もできるし、さらに、家事も義姉と一緒して得意。そんなことから、当時のリョウは、リリがなんでもできる、完璧超人だと思っていた。
しかし、そんなリリにも致命的な弱点があった。
それは、運動能力がないことだった。
しかも、絶望的に・・・。
そのことで、この学園に入る際もとても大変だった。筆記は心配なかったが、実技の体力試験は、ほぼ絶望的だった。しかし、一生懸命努力して、なんとか合格ラインギリギリで受かることができたのだった。
まあ、予断だが、リョウはというと、実技は余裕だったが、筆記が絶望的だったが、リリが必死に教えることで、なんとか合格できたのだった・・・・・
4
二人が住んでいるところは、学園がある十五分歩いたところにあり、《魔連》南支部にも同じくらいの時間で行けるといった、都心にあるわりと大きなマンションに住んでいる。
なので、通学が楽で助かる。
リョウたちはマンションに着くと、入り口の目の前のエレベーターに乗り、自分たちの部屋がある最上階まで昇る。
階に着くと、自分たちが住む部屋に向かった。
「ただいま」
と言いながら、リリは部屋のドアを開けた。
そのとき、中からはとても良い匂いがしてくる。
すると、いきなり前の扉が開くと、エプロン姿の女性がパタパタ≠ニスリッパを鳴らしながら走って、こちらに向かって来くると、出迎えてくれた。
「お帰りなさい」
その女性はとても綺麗な笑みを浮かべて、二人に言った。
リリもさっきのことを忘れたかの様な笑みで答える。
「お姉ちゃんただいま」
「もうすぐお昼ご飯できますから、二人とも、もう少し待っていてください」
「なんか手伝うことある?」
と、リリは靴を脱ぎながら訊いた。
「そうですねぇ・・・それでは盛り付けを手伝ってもらいましょうか」
と、女性は答えると、リリは「うん」と返事をすると、女性の横を通り、すぐ近くの扉を開けると、部屋に入っていった。
このお姉ちゃんと呼ばれている女性の名はルナ。だが、リリとは血が繋がっていない。ルナはリョウがここに来る何年か前に魔連に保護された。
そのとき、どこにも行くところがなかったルナは、リリの母であるマリアに「わたしのところに来ない?」と誘われた。ルナはその誘いを受け、現在マリアの養女であり、リリの姉である。
「仕事、終わるのは早くないか?」
と玄関の前にまだ残っていたリョウは、ルナに訊いた。
「今日は早めに切りあげて帰ってきたんですよ」
「・・・?」
リョウはルナの理由の意味が判らず、首を傾げた。
その姿を見たルナは、可笑しくなり、クスクス笑うと、
「判りませんか? 今日は二人の入学日ですから」
とうれしそうに答えた。
リョウは少し呆れながら「あっそ」とぶっきらぼうに言う。
すると、制服から私服に着替えたルナが、部屋から出てきた。
「お姉ちゃんまだそこにいたの? 早くやろうよ」
「はいはい。今行きますよ」
と、ルナは答えると、リョウに背を向けて歩きだす。
だが、急に立ち止まり、首だけリョウのほうに向けると、
「お母さんもすぐに帰ってきますから、リョウさんも部屋に荷物を置いたら手伝ってくださいね」
と言って、リリと一緒に部屋に入って行った。
リョウは「了―解」と呟くと、靴を脱ぎ、自分の部屋に入った。
リョウは着替えると、キッチンに顔を出した。
それに気付いたルナがすぐにリョウに、指示を出す。
「あ、リョウさん。できたのを並べてくれませんか?」
と、リリと盛り付けをしながら言った。
リョウは「了解」と返事をすると、料理を運び、席に並べ始めた。
そうやって用意をしていると、不意に部屋のドアが開いた。
そこから現れたのは、この家の主であるマリアだった。
「ただいま・・・って、あれ? 二人とももう帰ってたの?」
マリアはリョウとリリを交互に見て驚くと、すぐに笑みを浮かべて、
「二人とも入学おめでとう」
と、二人に祝いの言葉を言った。
「ありがとう」
「どーも」
と各々反応を返す。
マリアはそれを聞くとテーブルの方に移動すると、
「じゃあ、食べようか」
と言って、席に座った。
みんなは席につくと、四人は各々ペースで食べ始める。
みんな(リョウ以外)は会話が弾ませながら。
「・・・で、どう学園は? やっていけそう?」
と、不意にマリアは二人に訊いた。
「わたしは、カルキュラムを見ても面白そうなのがたくさんあったからやっぱり、がんばって入ってよかったかな」
と、リリは笑顔で答えた。
だが、リョウは、
「・・・ダルい」
と素っ気なく答えた。
「気に入らなかったんですか?」
ルナはリョウに問いかけると、リョウは食べる手を止め、ルナの方へ視線を向けた。
「どいつもこいつも、緊張感がまるでないガキばっかりだし、ひ弱そうな奴らばっかりだった」
「ガキって、あなたも、でしょうが」
と、マリアは呆れて突っ込み、
「大体、学園は戦場じゃないんだから、殺気立った奴が居る訳ないでしょが。そんな殺伐とした学校なんて
誰も行かないわよ」
と、マリアは付け加えた。
「それに、あなたはウチの新人局員とまともに張り合えるんだから、弱そうに見えるのなんて当たり前でしょ。そんな奴と自分を比べて、愉悦に浸るなんて、あなたもまだまだね」
と、マリアは悪戯っぽく笑って言った。
リョウは「うっ」と唸るが、言い返す。
「それくらい評価してくれてるなら、魔連で雇ってくれよ」
と訴えるが、マリアは手元にあるコップを持つと、
「ダーメ。その話は学園に行くときに言ったでしょ。そもそも賭けに負けたし」
と言って、口に含んだ。
リョウは「うっ」とまた唸り、もう言い返すことができなかった。
それを見たルナはフォローをいれる。
「お母さんはリョウさんに、まだまだ戦闘技術や作戦術など、多くのことを学んでもらいたいのですよ。それが魔連に入ったときに、役に立ちますからね」
ルナの正論に、リョウは納得するが、それでもこれ以上ごねても、言い負けるのが目に見えているので黙った。そして、食べ終えると席を立つ。
それを見て、マリアがリョウに聞く。
「あら、どこいくの?」
「散歩」
と、リョウはぶっきらぼうに答えると、扉を開け、部屋から出て行った。
リョウが部屋から出て行った後、ルナとリリは食べ終わると、片づけをはじめた。
リリは今、使い終わった食器を洗い場に運んでいる。
すると、リリが「そういえば」と呟くと、二人に訊く。
「二人はこれからどうするの?」
その質問に、マリアは席で飲み物を飲みながら答える。
「わたしはまだ仕事が残ってるから局に戻るわ。今日は夜まで掛かると思うわ」
するとルナが、食器を洗いながら、マリアに声を掛ける。
「じゃあ、ここが片づいたらわたしも―――」
「いいわよ。せっかくの半休なんだから、今日はゆっくりしなさい」
と、マリアはルナの申し出をあっさり断った。
だが、ルナは「でも・・・」と納得できず、渋る。
すると、リリが食器を持って、ルナの横に立つと、
「お姉ちゃん仕事行っちゃうの? この前覚えた魔法、見てほしかったんだけど・・・」
と、リリが残念そうにいうと、ルナはその顔を見て「うっ」と呟くと、このままでは何でも言うこと聞いてしまいそうだったので、マリアの方へ視線を向ける。
それに気付いたマリアは、
「いいじゃない。見てあげなさい」
とあっさり答えた。
その返答にルナは「はい」と返事をすると、横にいるリリ微笑みかけて、
「許しももらいましたし、いいですよ・・・でも、その前に洗い物を手伝ってくださいね」
と言うと、リリは「うん!」とうれしそうに返事をした。
そんなやり取りを、マリアは席から眺める。
そして心の中で、幸せだな、と感じた。
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処女作です。誤字脱字があるかも知れません。我慢できない人は、ごめんなさい。そして、読んでくれて有難う御座います。 読み終わった後、コメントをくれるとうれしいです。どんどん叩いて下さい。 |
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