Sky Fantasia(スカイ・ファンタジア)一巻の4
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第4章  初めての課外授業 前編

 

 

そんなこんなで一週間過ぎたある日の昼休み。

リョウとサブとリリの三人はいつものように兵士科と魔法科の間の中庭で昼食をとっていた。

すると、不意にサブが口を開いた。

「そういえば。お前らもう課外授業登録したか?」

サブは手に持ったパンをかじりながら横の二人に話しかけた。

 それに対して、二人は各々答えが返ってくる。

「わたしはまだだよ」

「課外授業? 何だそれ?」

リョウは食べる手を止め、「聞いたことがない」と言わんばかりとサブに訊き返した。

 その反応に二人は「あり得ない」と言わんばかりに一斉に視線をリョウに向ける。

「お前、まさか知らない訳ないのか?」

「だから、何なんだそれ?」

リョウはバカにされていると思い、少し不機嫌な顔をして訊き直した。

 そのリョウの姿にサブとリリは、顔を合わせるなり溜息をつくと、リリが少し呆れた表情を浮かべながらリョウに説明し始める。

「もう、先生の話ちゃんと聞かないとだめだよ。課外授業っていうのは、いつも学校内でしている講義や訓練とは別に、学生課の掲示板に張り出されている課題・・・ミッションをこなすことだよ」

と、リリのパンフレット通りの説明に「こいつよく読んでんだなぁ」と口には出さなかったが感心しつつ、パックジュースを飲み飲み続きを聞く。

「ミッションによっては制限とかがあって・・・たとえば人数とか。だから、早めにいいのを登録しないとなくなっちゃうの。とくにリョウ君たち兵士科は単位数が魔法科より多いんだから」

聞き終わって、リョウは「へぇー」と今初めて聞いたという表情を浮かべていると、横から呆れた表情でサブが突っ込む。

「何感心してんだ? 教官も言ってただろうが?」

「寝てた」

とはっきり答えると、リリはまた溜息をついた。

そして、リョウは弁当に残っているものを口に入れた。

 サブは少し話が脱線したが修正する。

「まあ、登録してないなら都合がいいや」

サブは自分のブレザーの内ポケットをあさりだした。

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「いいのがあんだよ。おまえらやらねぇか?」

これ、とポケットから出した電子紙を、リョウの前にチラつかした。

リョウはその紙を受け取ると目を落とす。

リリも横から覗く。

「難易度Cランク。俺ら一年にはそれが最高」

と言うと、サブはパックのジュースを飲みだした。

 リリはその内容を声に出して読み出す。

「内容は、違法を犯した貿易会社の社長の確保の手伝い・・・って、これCランクだよね? 犯罪者の確保は普通BかAだと思うけど・・・」

「そのホシの会社、小さいし、違法内容も違う世界からの許可のいる物を手続きせずに輸入したぐらい。だから、俺らみたいな学生に実戦経験させるために回ってきたんだろうよ」

それに上級生の手伝いだしな、と付け加え、手に持っているパックを握りつぶすと、近くのゴミ箱に投げ捨てた。

「―――っで、どうだ? 一緒にやろうぜ・・・っていうか。来い」

「……命令口調かよ」

リョウは呆れた表情で突っ込むが、別に断る理由がないので「どっちでもいい」と興味なさそうに答えた。

「じゃあ、OKな。リリは?」

「え? わたしは・・・」

と、リリは少し迷い、意見がほしくて横目でチラッとリョウを見る。

 一方、リョウはジュースを吸いながらそれに気付くと、リリの意味が読み取れず首を傾げる。

 その姿に、リリはがっかりするとサブに視線を戻した。

「受けるよ。そのミッション」

その言葉にサブは「よし、決まりだな」と承諾を得ると、二人に笑顔を見せ、立ち上がった。

「そんじゃあ、早速登録しに行こうぜ」

と言うと、学生課のある方へ歩き出した。

さっきのリリの返事にリョウは「何むきになってんだ?」と、リリに訊くと「べつに」と不機嫌な表情を浮かべて返してきた。

そして、リリは弁当を急いで片付けて、サブの方へ走って行ってしまった。

リョウは一人残され、腕組みして、何怒ってんだ、と、リリの考えていることがさっぱり判らず悩むが、「ま、いいか」と呟くと、考えるのをやめ、少し遅れてから二人の背中を追った。

 

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学生課に着くと生徒達が思った以上の数がそこに居た。学年は様々で電光掲示板の前に固まっている。

サブは部屋に入るなり、キョロキョロ周りを見渡し、誰かを探し始めた。そして、一人の生徒を見つけるなり、声を掛ける。

「いたいた。おーい! ジークこっちだ」

呼ばれた生徒はリョウ達を見つけるとすぐに近づいてきた。

 生徒の名はジーク・バンクル。とても整った顔立ちで見た目ひ弱そうに見えるが、サクヤにサブやリョウよりも前から弟子入りしており、剣術はかなりの腕がある。

 余談だがサクヤの従弟でもある。

そんなジークが近づくなり、リョウは話かける。

「ジークも呼ばれたのか?」

「うん。半ば無理やりだけどね」

と、ジークは苦笑を浮かべて答えた。

 サブは「まあ、いいじゃねぇか」とジークの肩に手を回すと笑いながら言った。その様子をリョウは呆れた目で、リリは苦笑いで見た。

「でも、僕もまだ受けるミッション決めてなかったからちょうどよかったから」

「人数も四人だったし、あと一人、知らん奴入れるよりましだろ?」

「それもそうだね。ジーク君道場で見たときから強かったから心強いしね」

と、リリは笑顔を浮かべて言うと、ジークは照れたのか少し顔を赤くして、

「そんなことないよ。僕もまだまだ修行中の見だしね」

と答えた。それをリリは「そんなことないのよ」と言うと、ジークは「いやいや」と答える。

 そんなやり取りが何度も続き、無限ループになりそうなのでリョウが、

「・・・なぁ、さっさと登録しに行こうぜ」

とぶっきらぼうにそれを止めた。

そして、四人は受付の方に進む。

そのとき、サブはリョウの横に並ぶと、

「なに? 焼きもちかぁ?」

とニヤニヤしながら茶化してきたが、リョウは「なにが?」とその訳が判っておらず真顔で訊き返した。

 その姿に、サブは呆れると「判らなかったらいいや」と言い残して受付に行った。

 リョウは(今日は何か、かみ合わないことが多いな)心の中で呟いた。

 

「――あと、リリ・マーベル。魔法科の一年ね」

それにリリは「はい」と答えた。

 受付の女性は、すべての確認を終えると四人にミッションの説明を始めた。

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「今回のミッションは二年生二人の補助要員として受けてもらいます・・・と言ってもあなたたちは二年生の指示に従うだけだから、だからあまり危ないことはないと思うわ。二人とも特別科の優秀な生徒だし、ターゲットも魔力機関からの援助もないみたいだから魔力戦闘もないと思うわ。ちゃんと指示に従えばあまり難くないと思うわ」

と、受付の女性はパソコンの表示しているデータを見ながら説明していく。

「それでは、今日の夜、学園のグランドに集合なので。遅れないようにね」

と、四人は説明を聞き終わると、部屋をあとにしてそれぞれの教室に戻っていった。

 

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時間はあっという間に進み。

今は夜。

リョウとリリは準備をして、学園に向かっている。

 

ちなみに今は二人とも学生服ではなく、戦闘服を着ている。

リョウはパンツに袖のないシャツ、シャツの上に黒いジャケットを羽織って、腰の後ろには刀を挿している。

リリはジャケットにスカート。そして、いかにも魔法使いと言わんばかりの丈の長い白いローブを羽織っている。

 

二人は学園に着くと、もうメンバーはそろっていた。

そして、みんなもまた各々の戦闘服を姿で立っていた。

 

サブはシャツにパンツ、シャツの上にはなぜか目立つ白いジャケット。腰の右側には剣を提げている。

ジークはシャツにパンツ、そして黒いマント羽織っている。腰の左側には剣を提げている。

 

「やっときたな。お前たちが最後だ」

と、一人の女性が二人を睨みつけていった。

 リリは「すみません」とペコペコして誤るが、リョウはそっぽを向いて「関係ない」といった顔をして誤らない。

 

今、怒りの表情を浮かべている女性は茶色の短髪で、シャツにショートスカート、シャツの上には半袖のジャケット羽織っており、腰には武器である剣を提げている。

予断だが、彼女はリョウとサブとジークの同門の姉弟子だ。

なので、リリ以外とは顔見知りである。

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「まあまあ、メグミ落ち着きなよ。二人とも反省しているみたいだし」

とても優しそうな男性が、メグミと呼んだ女性をなだめた。

 

この男性は背が高く、体つきがよく。パンツに上はまだ肌寒いのに袖のないシャツだけ。そして、肩当てを付けていて、腰に少し大きなハンドアックスを提げている。

 

「一人除いてな! まったく、リキアは後輩を甘いよ」

と、メグミはリキアと呼んだ男性を睨みつけて、一方的に文句を言い始めた。

 そんな二人を眺めながらリョウは、

「・・・なぁ、早くミーティング始めようぜ」

と自分のことを無かったことのように前の二人に言った。

 そんなリョウの態度に、リリは少し怒った表情を浮かべて、

「もう、元々はリョウ君が何度起こしても起きなかったのが悪いんだよ」

「・・・あんた。初ミッションでいきなり寝坊って・・・」

原因を聞いたメグミは呆れた表情を浮かべると、突っ込む気も失せたのかこれ以上は何も言わなかった。

「丸く収まったところで作戦会議を始めようか」とコウキが手のひらサイズの装置を出すとそれから、3Dの立体映像が浮かびあがった。

「じゃあ、まず簡単に自己紹介ね。わたしを知らないのはそこの女の子だけだと思うけど」

と言うと、メグミはリリに方を向いて「メグミよ」と言って、手を差し出し「よろしく」とあいさつした。

リリも「リリです。よろしくお願いします」とその手を握り返した。

「―――っで、こいつがリキア」

「おざなりだなぁ」

と、リキアは苦笑いを浮かべると、他の四人に「よろしく」とあいさつをした。

 メグミはそんな意見を無視して、話を進める。

「まず、今回潜入する場所は、敷地のど真ん中に屋敷があって、周りは開けているの。だから、正面から突っ込んで囮として相手の目を引いてもらう役を立てるわ。その役はリキアともう一人・・・リョウにまかせるわ」

「ち、ちょっと待ってください! 囮って、そんな危険なこと―――」

「別に大丈夫でしょ。情報からすると相手は一般のシークレットサービスぐらいしか雇ってないみたいだし、リキアがいるから突撃してもなんとかなるでしょ」

と、サクヤはリリの言葉を遮って言ったが「ですが――」と、リリは食い下がらなかったが、リョウが「リリ」と静止させると、リリは「でも・・・」と言ったが「・・・判りました」としぶしぶ黙った。

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 二人のやり取りが終わるのを確認するとメグミは話を再開する。

「―――続けるわね。敵が二人に集中している間にサブとジークが屋敷の裏から攻めて、一気にターゲットを確保といった単純な作戦だけど、これで行くわよ」

「わたしは?」

「あなたとわたしは敷地内の隅で待機。なにかあったときに、すぐに援護に迎えるようにするわ」

と、メグミの説明が終わると、リキアは装置をしまった。

「じゃあ、締めていくわよ」

メグミの掛け声でみんなは目的地に向かうために歩き出した。

 そのとき、リリだけが俯いて歩いていたので、リョウが横に並び声を掛ける。

「まだ怒ってんのか?」

と少し呆れた表情で訊くが、リリは横に顔を振って否定した。リョウは訳が判らず首を傾げると、リリは顔を上げて、リョウの顔を見つめた。

 そのときの表情は少し暗かった。

「違うの。さっきなんか嫌な胸騒ぎがして・・・」

と、言い終わる前に「ごめん。なんでもない」と言って、また俯いてしまった。

 リョウはその姿を見て、溜息をつくと、

「大丈夫だ。そう簡単に死なねぇよ」

とぶっきらぼうに言った。

 その言葉でリリは「うん」と少し安心した顔をして答えた。

 

リョウたちは目的地に着くと、みんな自分たちの決めた位置に着く。

リョウとコウキは門の前で無線機を付けて、チャンネルを合わせた。

すると、すぐに無線機から声が聞こえる。

『α1。みんな聞こえる?』

すると、みんなは各々返事をして繋がっていることを確認できた。

 敷地内の隅の草木に隠れている、メグミが指示を出す。

「これから作戦に入るけどあまり人を傷付けないように」

と、メグミが言うと、無線機から各々返事が返してきた。

 連絡事項が終わり、リョウは開始の合図を刀をいじって待っていると、不意に無線に通信が入った。

「リョウ君聞こえる?」

その声はリリだった。だが、その声は少し弱々しく感じた。

「なんだ? もうすぐ作戦開始だぜ」

とぶっきらぼうに言うと、すぐに返事は返ってこなかった。

 それが少し疑問に思い「おい。リリ」と呼びかけると、

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「・・・死なないで」

無線から聞こえてくるリリの絞り出すような声に、リョウは「はぁ?」と意図が判らず訊き返した。

「絶対に帰ってきて」

次は必死な声で言ってきた。

「・・・勝手に死亡フラグ立てんなよ」

リョウはその言葉に呆れながら突っ込むと、

「俺が簡単に死ぬわけねぇだろ?」

と、付け足した。

 その返事に、リリは「ごめん」と返すと、それからは黙った。

「・・・ねぇ。そろそろ良いかしら?」

不意に無線から違う声が聞こえてくると、

「これあなたたちの為だけにあるわけじゃないのよ」

と、付け加えてきた。

 たぶん、リリは向こうで小さくなってんだろうなぁ、とリョウは思いながらメグミの言葉を流した。

 それから、メグミは「まったく」と呟くと、一拍置いてから、

「じゃあ・・・開始!」

と掛け声を発した。

 各々は自分の役割に動き出す。

 

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リョウたちは無線から掛け声が聞こえると飛び出し、まず門の前のいる黒服の二人組みを倒した。次に門の前で罠がないか確認してから門をこじ開けて潜る。すると、すぐにリョウたちの侵入に気付いた大勢のシークレットサービスらしい黒服たちがわらわら現れた。

リョウとリキアはその集団に正面からぶつかった。

リョウは敵をなぎ倒しながら少しずつ進んでいく。まあ昔、一対多数の戦闘を何度も経験しているのであまり苦戦してなかったが、少し敵の動きがおかしいことに気付く。

シークレットサービス程度、一発で仕留められはずなのだが、相手はギリギリで防いできた。相手の攻撃もリョウがギリギリかわせるか、それとも防がなければならないような攻撃してくる。

あきらかに訓練を受けた兵士の動き。

そして、次の瞬間、魔力のこもった弾丸《魔弾》の発砲音が、リョウの耳に入った。

リョウは飛んでくる軌道を予測すると、すぐさま回避行動を取る。だが、完全にかわしきれず、左わき腹に被弾してしまった。リョウはすぐさま飛んできた場所を確認すると、刀に

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魔力を溜めた。魔力を篭った刀は赤く燃え始め、それを魔弾が飛んできた方へ放った。

鳳凰流奥義《炎刀斬》

炎の斬撃は建物にぶつかると爆発し、破片が飛び散った。

スナイパーを倒すと、すぐにわき腹の傷の痛みが走り、左手で傷を押さえる。その傷は深く血が指の間から滴り落ちた。

そして、リョウの動きが止まったところを黒服の男は襲い掛かってくる。リョウは反応が遅れ、動くことができない。

攻撃が向かってくる。

だが、その攻撃は横から視界に入ってきたゴツイ男に止められた。

リキアはリョウが攻撃を受けたのを見て、すぐさま駆けつけた。

そして、黒服の男を倒すと、すぐさまリョウに声を掛けた。

「大丈夫かい・・・・・ッ!」

リキアは庇いながら横目でリョウの傷を見た。

その傷はちゃんと見なくても判るほどに明らかに重症だ。

リキアはすぐさま無線機に手を当てると、

「こちらα2。α1すぐ退―――」

だが、無線機からはノイズしか聞こず、明らかに妨害されている。

 その姿を見て、リョウは痛みを我慢して顔を上げるとリキアに向かって、

「俺は動ける。それよりコイツらをどうにか―――ッ!」

言い終わる前にリキアの後ろになっている建物から何かが光っているのに気付いた。

 それはライフルの金属の光。

「離れろ!」

リョウは急いでリキアに向かって叫んだ。

しかし、間に合うことはなく。敵の撃った魔弾はコウキの首を突き抜け、リョウの頬をかすめた。

リョウはすぐさま立ち上がると飛んできた方へ、炎刀斬を放ち、建物ごと敵を吹き飛ばした。

そして、倒れているリキアに駆け寄る。

だが、首からは血が溢れ、顔と胴体をかろうじて繋ぎとめているだけの状態であり、力なく倒れている。

もう息はしていない。

その姿が見て、リョウの血は沸騰する。

脳裏にあの光景が過ぎる。

そして、どこからか声が聞こえる。

・・・さあ、解き放て!

「うおおおぉぉぉぉぉ―――」

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リョウの叫びとともに魔力は膨れあがり、体の周りから炎が撒き上がった。

 その炎は夜空を銀色に染め上げた。

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