剣帝?夢想 第七話
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平原に赴任してからしばらく慌ただしい日々が続いていたが、それが落ち着くとレーヴェは朱里たちの許可をとってから特別部隊の育成に取りかかっていた。レーヴェ自身が兵の中から百名を選りすぐり、装備もレーヴェがそれぞれにあった鍛冶屋に特注で作らせたものだった(費用はレーヴェ自身の給金と街の富豪から金を借りて捻出した)。愛紗たちの行う訓練よりも厳しく訓練を施し、レーヴェを核とした精鋭部隊を目指していた。最終目標は全ての隊員が並以上の遊撃士並の戦闘力を身に着けさせることだった。また、それと並行して密偵の育成も行っていた。そちらの方は義勇軍時に育成していた密偵がヨシュアほどとまでは流石に無理だったが、かなりの腕になっていたので彼に一任していた。また、民が平穏に暮らせるように新しい仕組みを考えたりと忙しくしているときに、一人の来客があった。

 

「レーヴェ殿、桃香殿。久方ぶりですな」

 

「ああ、半年ぶりといったところか。元気そうで何よりだ」

 

朱里からの報告で訓練を隊の副官に任せて戻ってみれば、見慣れた姿、趙雲こと星の姿がそこにはあった。

 

「お陰様で。黄巾党の件も一段落したので伯珪殿に暇をもらって各地を放浪しておったのですが、なかなかの評判でしたぞ。特にレーヴェ殿は曹操殿に一目置かれる人物と噂されておりましたな」

 

「ふ、それは光栄だな」

 

星の言葉にレーヴェは薄く笑う。愛紗や桃香はなにやら誇らしげにしていたが。

 

「それはともかく用件から聞こうか。用件はなくとも歓迎するが、休息の途中で立ち寄ったわけではないだろう?」

 

レーヴェの言葉に星は驚いた顔をしたが、すぐにいつもの少し悪戯気な笑みを浮かべると感心した声で言った。

 

「流石の慧眼、恐れ入りました。なんとも貴方と会話しているとこちらの考えることが見透かされているような気がしますな。ここを訪れたのは他でもない、私もそろそろ私自身の戦いを始めようと思いましてな。貴殿らさえよければ私もともに戦わせて頂きたい」

 

星は強い光を宿した瞳でレーヴェを、そして桃香たちを見つめてくる。

 

「うん!一緒に戦おう星ちゃん!みんなが笑顔で平和に暮らせる世の中の為に!」

 

桃香が嬉しそうな顔で星の両手を握りしめる。レーヴェも星の加入に対して否、というつもりはないので桃香の判断に対して何も言うことはない。愛紗たちも星の下に集まり口々に声をかけていた。朱里と雛里は星のことを知らないので戸惑った顔でレーヴェの方を見ていたが。レーヴェはそれに頷くと、星に向かって声をかけた。

 

「それと星、二人を紹介しておこう。オレの右にいるのが孔明、左にいるのが鳳統だ。二人とも優秀な軍師だ」

 

「え、えと諸葛孔明です。真名は朱里です。よろしくでしゅ!」

 

「あわわ、鳳統でし!雛里と呼んでくださいでし!」

 

「…少女のカミカミ口調とは良いものですな」

 

「すまないがその嗜好はオレには理解できない」

 

星がそんなことを言って手を差し出してくるが、レーヴェにそういう趣味はないので賛同しかねた。確かに二人の姿は癒されるというか和むというか、気は緩むのだが。

 

「おや、残念ですな。では主よ、私への最初の命令はなんですかな?兵の調練、街の治安維持、はたまた土地の開墾や灌漑指導。…もちろん主の夜の伽までなんでも言っていただいて結構ですぞ?」

 

「伽とかいう冗談は置いておくとして…朱里。何か急ぎの用件はあるか?」

 

「おや、冗談とは。しかし、怖いお姉さんが睨んでくるのでここは退くことにいたしましょうか」

 

ふと愛紗が睨みつけているのに気付き、なぜか背筋が寒くなった。

 

「え、えと、募集に応じてくれた兵隊さんたちの訓練が急務かと…」

 

「ならばその仕事、私に任せてもらおうか」

 

「ああ。では愛紗と星は兵の調練、鈴々と桃香は街の警邏、朱里は市の管理、雛里は兵站の管理だ。オレはさっき途中だった訓練の続きを再開する。夜には星の歓迎会をするからそのつもりでいてくれ。それでは解散!」

 

レーヴェの言葉にそれぞれが持ち場へと散っていく。鈴々は酒が久しぶりに飲めると喜びながら桃香と共に警邏へと出ていく。なにやら酒が飲めるからまじめに仕事をやると言って愛紗に窘められていたが、レーヴェはそれをやれやれと見送ってから自分も訓練へと戻っていった。

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星が仲間になってからしばらくして、レーヴェの訓練する特殊部隊がようやく形になったころ、河北の雄、袁紹から一通の書状が届いていた。そこには霊帝の死から始まった騒動が長々と綴られていたが、簡単に要約すると悪者である董卓を力を合わせて倒しましょうというものだった。

 

「さて、こんなものが届いたが、どうするべきかをみんなに問いたい。参加するべきか、参加を見送るべきか。オレの意見は参加するというものだ。董卓が圧政をしいているという情報は全く信じてはいないが、他の諸侯がどのような人物かを知るいい機会だ」

 

レーヴェは届けられた書状を皆に回しながら自分の意見を述べる。回された書状を見て真っ先に声を上げたのは、やはりというべきか桃香だったと愛紗、鈴々だった。

 

「当然参戦だよ!董卓さんって長安の人に重税を課してるって噂を聞くし。そんな人を天子様の傍に置いておくなんて言語道断!さっさと退場してもらわないと!」

 

「桃香様の仰る通りです!力無き民を暴悪な為政者から救わねば!」

 

「悪い奴はみんなぶっ飛ばしてやるのだ!」

 

予想通りの反応を返してくれた三人をしり目に、レーヴェは残りの三人に視線を向けた。その三人は首を傾げる素振りを見せていた。

 

「やはりこの文面に引っかかるものがあるか?」

 

「はい、いくつか気になる点が…」

 

レーヴェの問いに朱里が頷いて考え込む素振りを見せる。朱里の言葉に星も同じことが気になっていたというような気配を見せる。

 

「敵対勢力について書かれているとは言え、あまりにも一方的過ぎるかと…」

 

「そうです。董卓さんは悪い奴だからみんなで倒そう。と分かりやすいことばかり書かれていますけど、この手紙はそんな単純なものではないと思うんです」

 

朱里の言葉に雛里が頷き、言葉を続ける。そしてまた朱里が言葉を継いだ。

 

「これは諸侯の権力争い。…抜け駆けして朝廷を手中に収めた董卓さんへの嫉妬がこのような形で表れたというべきです」

 

その言葉を聞いても桃香たちはなにか納得のいかない顔をしている。

 

「それに、董卓の圧政も袁紹辺りの流した嘘だという確率もある。オレは十中八九そうだと思っているが。その点も考慮して動かなければならない。オレたちはもう義勇軍ではなく候の一つだからな」

 

「…自分たちの理想を実現するためにも、理想を客観的に見つつ、実現するために現実的な考えをしろ、ということか」

 

愛紗は自分に言い聞かせるように呟いた。

 

「ああ。だが、否定的なことを言っているが、オレはこの連合に参加する意義はあると思っている。まずないだろうが、本当に圧政に苦しむ人間がいるかもしれないからな。お前たちも、やはり人々を助けたいとは思うだろう?それなりに長い付き合いになってきたからどんな考えを持っていることぐらいかは分かる」

 

レーヴェの言葉に桃香たち三人は真っ先に頷き、星たちは慎重に、これからのことを見据えながら頷いた。

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「さっすがご主人様!みんなの気持ち、ちゃんと分かってくれてるね」

 

「ふ、オレも桃香たちほどではないが、罪なき人々を守りたいとは思っているからな。それでは連合には参加する方針でいく」

 

「ふむ…腕が鳴りますな」

 

「鈴々の出番なのだー!」

 

出陣が決まり、武闘派たちのテンションが一気に上がる。かくいうレーヴェも自身の育て上げた部隊がまずはどこまでのものになっているかが密かに楽しみになっていたりした。反面軍師二人は…

 

「あわわ……朱里ちゃん、兵糧とか軍資金とかどのくらい用意できそう?」

 

「…出陣する兵数が決定してないから分からないけどそんなに多くは用意できないかも」

 

「そこらへんのことはないものねだりしても仕方ない。今回もどこかから分けてもらうしかないだろう」

 

レーヴェは嘆息しながら二人に言った。それを聞いた途端、星を除いた全員が情けない顔になった。

 

「なんだか貧乏だなーって感じて切なくなってくるのだ」

 

「貧乏なのは事実だもんねー」

 

「矜持も大事だが、それよりも大事なのは民草をいかに安心させられるか、だからな。…すぐに出陣の準備を開始する。愛紗、鈴々、星の三人は軍の編成を頼む」

 

レーヴェたちはポツポツと呟くが、気を取り直してレーヴェが指示を出す。

 

「あの部隊はいかがしますか?」

 

「もちろんオレの隊として組み込んでくれ」

 

「御意」

 

「了解なのだ」

 

「うむ」

 

そして今度は朱里たちの方を見て口を開く。

 

「雛里は作戦計画の立案。もちろんオレの戦闘力をあてにした形で組んでくれて構わない。朱里は輜重隊の手配等、補給面を。桃香は…桃香は…」

 

桃香が期待した顔でレーヴェを見てくる。レーヴェはいろいろと考え、そして困った顔で

 

「オレと待機だ。適材適所ということでな」

 

「適材適所?…私の適所ってどこだろう」

 

その問いにレーヴェはさりげなく顔を逸らした。そこに愛紗が口を挟んできた。

 

「桃香様は我らの御旗、些事など我らに任せ、どっしりと構えていて下さればよいのです。実を云えばご主人様にもそうしていただきたいのですが」

 

「それは無理だな」

 

「主にはたしかにただ待っているというのは無理そうでな。しかし、だからこそ、兵の者にも慕われているのでしょう。それに人は御旗の下でこそ一つになれる。だが御旗になり得る人物はそうはいないのだから、桃香さまはご自慢の乳房通りに胸を張っていればよい」

 

「…どうせ無駄に大きいですよ〜だ」

 

星の言葉に桃香が拗ねるが、レーヴェはやれやれというように口を開いた。

 

「ともかく、桃香は王らしくしていればいいということだ。星もそういうことはほどほどにな」

 

「主は冷静ですな。しかし皆を平等に愛するというのも英雄の条件の一つですぞ?一人しか愛せない甲斐性なしに民草すべてを愛することはできはしない。ならば、多くの女性と恋をするのも英雄の仕事ではないかな?」

 

「それはオレには難しいな」

 

「でもちゃんと皆を平等に愛してね」

 

いつの間に立ち直ったのか桃香がレーヴェの腕に抱きつきながら言った。レーヴェは苦笑しながらも口を開いた。

 

「そのうちな」

 

自分の常識、といっても王族ならば愛人なども普通にいるだろうが、それとは違う考えに困りながらもレーヴェは桃香をそっと引き離した。

 

そして皆は準備へと掛かり、弱小ながらも連合に参加することになったレーヴェたちは準備に幾日かの時間を費やした。

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そして平原を出発してから一週間後、ようやくレーヴェたちは反董卓連合との合流地点に到着した。そこには様々な旗と、色とりどりの軍装に身を固めた兵士たちが待機していた。

 

「…たくさん兵隊さんが居るねえ〜」

 

「さすが諸侯連合といったところでしょうか。こうやって一同に会すると壮観ですね」

 

桃香はその場に集う兵士の多さに感嘆しているようで朱里も諸侯が集まっているという事実に感嘆しているようだった。陣地中央には袁紹のものと思われる旗があり、その横に袁術の旗、そして曹操、孫策、馬騰、ついでに白蓮の旗があった。

 

「さて、他の諸侯はどんな人物か…それは楽しみだな」

 

「いつもは噂でしか聞いたことが無い人たちに逢えるんだもん。このワクワク感は異常だよね」

 

レーヴェの言葉を間違った捉え方をした桃香だが、星がそれにくぎを刺した。

 

「しかしワクワクしてばかりもいられますまい。曹操に孫策。いずれも侮りがたい英傑で、袁紹、袁術も本人の能力は凡庸なれど、その財力と兵力は驚異の一言。そして最も心配なのは伯珪殿の人の良さですね」

 

それに関してはレーヴェも同感だった。白蓮自身は好感のもてる人物だが、彼女はあまりにも人がよすぎる。そこを諸侯に付け込まれることを星は心配しているのだろう。

 

「まぁ、何かあった時はオレたちが助ければいい。彼女には並々ならぬ恩があるからな」

 

レーヴェが目を閉じてそう言ったとき、金ぴかの鎧に身を包んだ兵士が駆け寄ってきた。

 

「長の行軍、お疲れ様でございました!貴殿のお名前と兵数をお聞かせ下さいますでしょうか!」

 

それに表の代表である桃香が答えた。最初はレーヴェが相として位を受けるべきだと桃香たちが主張したのだが、レーヴェが、自分はこの国の人間ではなく、勝手が分からないからと辞退したのであった。

 

「平原の相、劉備です。兵を率いてただいま参陣しましたー。連合軍の大将さんへ、取次をお願いできますか?」

 

「はっ!しかし恐れながら現在、連合軍の総大将は決まっておらぬのです」

 

その兵士の言葉にレーヴェたちはそろって眉を顰めた。ならばこの場所でいったい何をしているのだろうかと。

 

「だから今、総大将を決める軍議をしているのさ」

 

聞いたことのある声がレーヴェたちの耳に飛び込んでくる。声のした方を向くと、そこには白蓮が立っていた。

 

「白蓮ちゃん!」

 

「よ、桃香。久しぶりだな。星も久しぶりだな、元気にしていたか?」

 

「ええ、あれからあちこち放浪し、今はレーヴェ様、桃香様にお仕えしております。伯珪殿もお元気でなにより」

 

「お前が抜けた穴を埋めるのは大変だったけどな」

 

白蓮、桃香、星の三人が朗らかに会話を始めた。そこに愛紗が口を挟んだ。

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「ところで伯珪殿。総大将がまだきまっていないというのは本当のことなのですか?」

 

「ああ、残念ながら事実なんだ。一部を除いて、総大将なんて面倒な仕事はごめんだ、という人間がほとんどの上、やりたそうにしている人間も自分から言い出さなくてな」

 

「それでそいつに押し付けようにも発言の責任を取るのが嫌だ、ということか。諸侯が揃いも揃って情けない」

 

その白蓮の言葉で事情を察したレーヴェが呆れた声を出した。

 

「それで疲れたから天幕を抜け出して気分転換しようとしてたところに桃香たちがちょうど到着してたって訳だ」

 

「白蓮も…いや、なんでもない。桃香、軍議に乗り込むぞ。無駄なことをしている暇はないんだ。誰も言わないならオレが言ってやろう。責任ならオレが取ればいい。愛紗たちは兵たちに休息をとらせてやってくれ。それと影に情報収集を頼むと」

 

「御意」

 

レーヴェはそれだけを告げると桃香を告げて一際大きな天幕に向けて進みだした。

 

これはひどい。レーヴェが天幕に入った瞬間、思ったことはそれだった。天幕に入ると金ぴかの鎧を着た女が総大将に求められるものを言っていた。まずは相応の家格、レーヴェに言わせればそんなものはどうでもいい。家柄があっても無能では意味がないからだ。次に能力。言い方は気に入らないがそれは重要だろう。そして最後に容姿。これもまたどうでもいい。総合して言えることは、白蓮が言っていた総大将をやりたがっているやつというのは間違いなくこの袁紹だろう。

 

「……で?貴女の挙げたその条件に合う人間はこの連合の中にいるのかしら?」

 

曹操が凄まじくどうでもいいという雰囲気を漂わせながら、若干投げやりに袁紹へと問いかけた。彼女は天幕に入ってきたレーヴェと桃香をみて一瞬だけ、やっと来たか、というように口の端を笑みの形に釣り上げたが、すぐに元に戻った。

 

「さあ?それは私の知るところではありませんがけど。でも世に名高いあなた方ならば、誰かお知りなんじゃありませんの?」

 

…斬り捨てるか。レーヴェの思考に一瞬そんな物騒な考えが生まれ、すぐに振り払う。大抵のことでも動じず、常に冷静であれるレーヴェにとっては珍しいことだが、無性に斬り捨てたいという衝動が湧きあがっていた。レーヴェはそういう衝動を抑えつつも口を開いた。

 

「こんな無駄なことをしている間に董卓軍は軍備を着々と進めているんだが、いつまでこんなことをしているつもりだ?」

 

その言葉に、先ほどまでは曹操と、もう一人褐色の肌の女二人くらいしか注目していなかったレーヴェと桃香に一斉に視線が集まった。

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「あら?そういう貴方はどなたかしら?」

 

「平原の相、劉備と一応その主であるレオンハルトだ」

 

レーヴェが名乗った瞬間、辺りがざわめきに満ちた。星の言葉を信じるならば、レーヴェは曹操が一目置いている男ということで有名らしい。確かに諸侯の目はレーヴェとついでに桃香を、品定めするような視線で見ていた。

 

「ねえ、皆さん。皆さんは董卓さんと戦うために集まった訳でしょう?なのにこんなところで味方の腹の探り合いをしていてどうするんです!」

 

そう強い口調で訴える桃香を、諸侯たちは冷ややかな目で見つめてくる。曹操は愉快そうな表情をしていたが。

 

「あら、新参者は良いことを仰りますわね。では貴方達に聞きますわ。この連合を率いるに相応しい人物はだぁれ?」

 

「お前がやればいいだろう。そこまでやりたいという雰囲気をだしておいてなにを今さら」

 

レーヴェは完全に冷めた視線を袁紹に向けた。だが、袁紹は気づいていないのか満足げな声で口を開いた。

 

「あらあら、この私がいつそんなことを言いました?だけど…そうですわね。なり手がいないのであれば私がやってさしあげてもよくてよ?」

 

その言葉を皮切りに、曹操を始めとした各諸侯が投げやりにそれに賛同し、それぞれが勝手に天幕を出ていった。それに嬉々として頷いた袁紹に疲れた視線を向けながら…。そして袁紹がこちらへと振り返った。

 

「さて、レオンハルトさんとやら。あなたの発言のおかげで、私が連合軍の総大将という責任の重い仕事をすることになってしまったのですけれど…」

 

その言葉にレーヴェはやはり冷めた視線を袁紹に向けた。

 

「洛陽を不法占拠している董卓さんの軍勢は私たち連合軍とほぼ同規模。優秀な総大将であっても苦戦は必至でしょう」

 

自分が有能であるといっているような言葉に、カシウス・ブライトならばたいした苦戦もせずにことを為してしまうかもな、とレーヴェは思いつつ、次に出てくるであろう言葉を待った。

 

「そ・こ・で。私を総大将に推したレオンハルトさんにお願いがあるのですけれど」

 

「言ってみろ」

 

「簡単なことですわ。連合軍の先頭で勇敢に戦っていただければ良いのです。あ、もちろんその後ろには私たち袁家の軍勢が控えていますから、何も危険なことはありませんわ」

 

レーヴェはそう来るだろうと思っていたのですぐに答えを返した。

 

「ほう、確かに先陣というのは栄誉ある持ち場だろうが…もちろんオレたちに兵を補充してくれたり、兵糧を分けてくれたりするのだろうな?そんなことをする気もないのに弱小であるオレたちに先鋒を切れなど、よほどの無能しかやらないと思うが?」

 

他の、曹操たちならこの程度のことでは通じないだろうが、袁紹の性格からして十分有効ではないのだろうかと思い言ってみたのだが、やはり効果はあったようだ。

 

「む、無能!?…ごほん、も、もちろんですわ。兵糧は二月分分けてあげますし、兵も三千わけてあげますわ」

 

「三千か…進んで無能と呼ばれたいとは…。いやはや、恐れ入った」

 

レーヴェの涼しげな声に袁紹は声を詰まらせた。そして自棄になったような声で再び口を開いた。

 

「分かりましたわ!六千、六千の兵を貸してあげようじゃありませんか!」

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扱いやすいな、これはリベールのあの放蕩、いや、意外に骨のあるところを見せたのでそう呼ぶのは失礼か。あの侯爵よりも扱いやすいかもしれん。レーヴェはそう思っていた。桃香も似たようなことを思っているのがその表情で分かった。

 

「それで、作戦はどうする?優秀な我らが総大将はもちろん作戦も考えてあるのだろうな?」

 

「もちろんですわ!雄々しく、勇ましく、華麗に進軍、ですわ!」

 

その瞬間、レーヴェの頭が真っ白になった。こんなことはカリンが死んで以来初めてかもしれない、そう思っていた。桃香も目を丸くして言葉を失っていた。

 

「あらあら、私の素晴らしい作戦に絶句してしまってますのね。分かりますわ。私もこの作戦を思いついたときには自分の素晴らしさについつい陶酔してしまいましたからね」

 

「…その通りにやってればあとのことはこちらで任せてもらって構わないんだな?」

 

「もちろんですわ」

 

「了解した。それでは兵糧と兵の手配は頼んだ」

 

そう言って桃香と共にレーヴェはその場を後にした。その後、これからのことを聞いて朱里たちは厳しい顔をしていたのだが、作戦のことを聞いて顔から表情がなくなったのは予断であり、レーヴェたちは迫る戦いへ向けて準備を始めた。

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あとがき

 

今回も自分にしては長かったと思いつつ更新した七話です。

レーヴェの特殊部隊のイメージは<身喰らう蛇>の構成部隊か、リシャールの特殊部隊です。もちろん、ギルバートみたいな立ち位置の人間はいません。あれはあれで気にいっていたりしますが

 

近いうちに拠点フェイズを入れたいな、とは思いつついいネタが思いうかばないのでしばらく先になりそうです。

 

ではまた次回のあとがきで

説明
へたれ雷電です。

今回名前だけオリキャラが登場します。
詳しい設定はまともに出てからにしようかな、と
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コメント
なっとぅ様>またもや誤字が見直したはずが見直せてないですね(へたれ雷電)
3pそえrを聞いた途端→それ/5p曹操が凄まじくそうでもいい→どうでもいい(なっとぅ)
レーヴェ様>公爵は意外と有能らしいですね(へたれ雷電)
ユウ様>修正しました。報告ありがとうございます(へたれ雷電)
森番緒様>ある意味レーヴェだからこそという感じも…(へたれ雷電)
麗羽は空の軌跡の初期のデュナン公爵になんか似てるな(レーヴェ)
誤字 7p作戦はそうする?→どうする では?(ユウ)
麗羽の馬鹿さ加減はレーヴェにすら殺意を覚えさせるのかwww(森番長)
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