アリセミ 第七話 |
第七話 決戦(下)
正軒「―――先輩が反則ッ?」
剣道場内がドヨドヨとざわめく。皆、この反則宣言に戸惑っていた。
修養館女子剣道部、伝統の掟である『男女交際禁止』。
その廃止の是非を巡って行われる この試合。部長・山県有栖が勝てば規則は守られ、新革派の新人・今川ゆーなが勝てば規則は廃される。
そういう約束の下 行われた試合は、開始1分も経たずして有栖が怒涛の一本先取……かに見えたが……。
正軒「……どういうことだ?先輩は反則なんて犯してなかったぞ?」
窓の外から観戦する武田正軒は、当然の疑念をあらわにする。
彼もまた古流剣術の経験者、試合中の二人がどういう動きをしたかは遠目からでも しっかり視認できる。
正軒の見立て、有栖は別段おかしな動きはしていなかった。なのに何故………?
主審を務める副部長・山本知恵が宣言する。
副部長「正式に通告します、山県有栖、反則一!」
有栖「なっ!」
有栖が副部長に詰め寄る。
有栖「どういうことだ山本!私が何をしたと言うッ?」
副部長「有栖、アナタが今川さんの面を打った寸前、彼女は場外に出ていたのよ」
なにッ?と有栖は息詰る。
剣道において9m四方に区切られた白線の外を出ることは厳重な反則とされ、一度破れば注意を受け、二度目には相手に一本がカウントされてしまう。
副部長「今川さんはアナタから面を打たれる寸前、半歩だけど場外に出ていたのよ。ねえ、アナタたちも見たわよね?」
副部長は、白線の外にいる観客たちに同意を求める。しかもそれは、規則廃止に賛成する女子剣道部員たちだった。
部員1「は、はい…」
部員2「たしかに見ました」
部員3「ゆーなちゃん、線の外に出てたよね…?」
バカヤロウ、んなわけねーだろッ!
正軒が、このやりとりを見つつ心中で絶叫した。彼の視野は広く、鋭い。面を打たれる寸前 後退した今川ゆーな が境界線を踏み越えていたかは自信をもって判断できる。
今川ゆーなは外に出てはいない。
では何故、女子部員たちが真逆のことを言うのか?
副部長「なので、今の有栖の面打ちは無効になります。反則が入らなければ一本は間違いなかったでしょうけど……」
そういうことだ、ヤツらは『男女交際禁止』を潰したいがために、今川ゆーなに勝ってほしいために彼女に有利な判定を出しているのだ。
ゆーなの敵である有栖に一本を取らせないために、してもいない違反をでっち上げて……。
有栖「だが待て…!場外反則というのなら、反則になるのは白線を越えた今川の方だろう。何故私が反則になるのだッ?」
副部長「有栖、今川さんが場外に出る前、アナタ今川さんを押し出したわよね?」
有栖「なっ?」
たしかに その時、今川ゆーなは大きく後退していたが。
副部長「審判三人とも、アナタが押したように見えたと意見が一致してるのよ。ルールでは、相手から場外に押し出された場合、反則を取られるのはその押し出した相手の方」
有栖「山本、お前……!」
副部長「知ってると思うけど、反則が許されるのは一回まで、二回目を犯すと 今川さんに一本が入ることになるわ。ちゃんと覚えておいてね」
後は有無を言わさず副部長は踵を返し、有栖との対決を切り上げてしまう。
途中、今川ゆーなの横を通り抜けざま、その耳元へ囁いた。
副部長「(…これで有栖は、反則を恐れて思い切った攻めに出れなくなるわ)」
ゆーな「へう?」
副部長「(これでアナタのペースを作りやすくなる。いつも通りの攻めの剣道をなさい)」
そうして副部長は、試合場中央に立つと ぬけぬけと宣言するのだった。
副部長「試合を再開します!双方 元の位置へ!」
*
正軒「くっそう、やるなあ あの審判女……!」
窓から見守る正軒が、ギリギリと歯軋りする。
しかしこれでハッキリとわかった。有栖の敵は今川ゆーな一人ではない。『男女交際禁止』の廃止を望む女子剣道部 全員が敵なのだ。
正軒「そこまでして男と付き合いたいか…!」
有栖vsゆーなの試合そのものは、先のわからぬ一進一退の攻防へと発展している。
有栖も当初の作戦通りによく攻めてはいるが、相手もまた特待生になるほどの実力の持ち主。ネコのごとき俊敏さは通常レベルでは とても反応しきれず、にわかじこみの有栖の速攻では5回に3回は先を越されてしまう。
そうなれば浴びせかけられるのは有栖の もっとも苦手なランダム攻撃。定石にまったく当てはまらない予測不可能な攻撃を、有栖は危うげに かわす。
バシン!
ゆーなの竹刀が有栖の胴を打った。
主審・山本千恵の旗が上がる。
有栖「!!?」
しかし副審2名の旗があがらなかったため、今の打突は無効となった。…というか、そうなるのが当然だった。今の ゆーなの打突は、気勢においても型においても一本には程遠い。
有栖「山本め…、まったく形振りかまわんな……!」
少しでも ゆーなが打突を放てば、無理やり一本にして勝ちに持ち込もうとしている。
今のは副審の女子部員たちが戸惑って一本に至らなかったが、もし今度同じ状況になれば副審たちも主審に追従し、無理やりな一本を決めてしまうかもしれない。
ホームタウンジャッジどころの話ではない。
もはや、審判も完全に有栖の敵なのだ。
有栖「些細なミスも許されん!」
ゆーなの竹刀が有栖にかすりでもすれば一本にされかねず、逆に有栖の打突はよほど完璧に決まらない限り一本にはならない。下手に試合場の隅に行けば場外をとられてしまうかも知れず、有栖の些細な反則も見逃すまいと審判たちは目を光らせる。
細心の注意を払いながら ゆーなと鍔迫り合いで切り結び、至近距離で火花を散らす。
有栖「…審判まで味方につけて、物々しい限りだな今川……!」
面金越しに、有栖の鋭い怒声が飛ぶ。
有栖「そうまでして男に好かれたいか?男のためなら卑劣な手段も厭わんか……ッ!?」
ゆーな「うっさいなあ!ゆーな知らないもん、先輩たちが勝手にやってるだけだもん!」
ゆーなからの竹刀を押し返す力が、強い。
ゆーな「主将だって一人で反対なんて超カッコ悪いよ!皆がメーワクしてるんだよ!少しは空気読みなよ!」
有栖「それが先輩への口に利き方か!」
怒号の有栖。鍔迫り合いを解き、後退するのと同時に 引き面を叩き込む。ゆーなの脳天にこれ以上ない程きれいにヒット。
しかし審判の旗は一つとして上がらない。
有栖「くそッ、やはりかッ!」
相手は、やはり有栖の有利を徹底的に黙殺した。
*
正軒「……でも、勝負の流れ自体は いいぞ」
窓の外から正軒が見守る。
正軒「先輩が今川焼きを圧倒し始めた…。今川焼きの太刀筋は先輩にとって相性激悪でも、やっぱり実力そのものは先輩の方が断然 上なんだ」
新人の今川ゆーなと、高校三年間をがんばり抜いた有栖。
積み重ねてきた経験の差が、試合時間の経過するごとに如実に現れている。当初デタラメな ゆーなの剣に翻弄される有栖であったが、その誤魔化しがなくなれば三年生と一年生の実力差は明らかだ。
事実、審判は無視するものの有効な打突が次々と有栖からゆーなへと叩き込まれていく。
正軒「そうだ先輩、そうして有効打突を重ねていけば審判たちだって無視できなくなる。そのまま突き進むんだ……!」
勝負の熱気に正軒までもが手に汗を握り始めた。
*
今川ゆーなが肩で息をしだした。
有栖「呼吸が乱れているな今川」
彼女の体力が尽きかけている証拠だった。試合時間は残り1分を切っている。ゆーなの体力は、いまだ一試合5分間を闘い抜けるほどに鍛えられてはいなかった。
有栖「スタミナが足らなすぎだ。得意の『速さ』で多くの敵を瞬殺してきた反動か、長期戦に耐えうるだけの体力が育たなかったようだな」
有栖が、正眼の構えをビシリと崩さずに言う。
彼女の呼吸はとても穏やかだ、試合開始時から少しも変わらない。
有栖「生まれ持った『才』にかまけ、鍛錬をおざなりにしてきたツケが回ったのだ。……努力もせずに試合に勝てると思ったか。才能さえあれば何でもできると思ったか?」
ゆーな「うるさいッ!このウルサー!」
ゆーなが汗と唾の混じったものを吐き出す。
ゆーな「ちょーウザいんですけどッ!何よ、努力が一番って言いたいの?自分はスッゴイがんばったよって自慢したいの?ちょーウザい、ウザすぎ!」
有栖「そんなつもりはない。………ただな、私は最近、本物の『天才』というヤツに出会った。『天才』であるがゆえに多くのものが見えすぎ、かえって自分の可能性を潰してしまう、バカバカしいほどの『天才』にな」
*
正軒「…先輩、何を話してんだ?」
*
有栖「ソイツに比べれば、お前がもつ才能も努力も まだまだだ。その程度の才を鼻にかけるなど滑稽だと、そう思っただけだッ!」
ダンッ!
有栖の足が床板を蹴り、あっという間に敵と己との間合いを詰める。
『速さ』で勝るはずの今川ゆーなが疲労に囚われ、逆に『速さ』で圧倒される。
しかし逆転の理由はそれだけではなかった。有栖自身の『速さ』。特訓の中で、バカみたいな天才に何度も叩き伏せられた。その地獄のような繰り返しが、自然、彼女の力量の底を上げていたのだ。
有栖「――――――面ッ!」
バシンッ!
有栖の雷鳴の一閃が、敵ゆーなの脳天のキッチリ中心を、今度こそ正確無比に射抜いた。
まるで斧でマキを割るかのような爽快な打撃音が道場中に響き渡る。
正軒「あっ」
副部長「ああっ」
部員たち「「「あああっ」」」
観客「「「「おおおーっ?」」」」
衆目が見守る中、会心の一撃を受けた ゆーなは、脳震盪でも起こしたように よろめき、床板に尻餅をついた。
ゆーな「にゃあ…ッ」
これ以上ない一本、気合も型も充溢し、打突が決まったのも試合場の中央だ。文句も誤魔化しもしようがない、完璧な一撃。
選手を囲む三人の審判たちが、互いの表情を窺う。
…やがて、主審を務める副主将が、観念したように旗を揚げた。
副部長「………一本!」
わああああっ、とわきおこる歓声。
試合時間 残り一分を切ったところで、ようやく有栖に一本が入ったのだ。
正軒「…やったぞ先輩!」
剣道の試合は三本勝負、時間内に二本先取した法の勝ちになる。時間切れになれば一本先取していた方の勝ち、有栖は開始直後に場外の反則を取られていたが、あれは二つで一本分の判定になる。
正軒「このまま時間切れになれば先輩の勝ちだ…!」
残り時間はあと一分、劣勢となった今川ゆーなには、それだけの間に逆転できる体力は残っていない。
勝負は決まったか?
そのような空気が流れる中で、選手たちは元の位置に戻り、試合が再開される。
副部長「始めッ!」
しかし今川ゆーなの動きは、開始当初とは比べようもないほど精彩を欠いていた。疲れが彼女から鋭さを奪い、獲物を狙うハヤブサのような動きが、いまや千鳥足となっていた。
それでも果敢に、一本先取した対戦相手へ打ちかかる。
ゆーな「め、面ぇーーーんッ…!」
しかし有栖はたやすく回避する。今の ゆーなを いなすのは、小学生より簡単だ。
見事に空振りした ゆーなは、その勢いのまま危うく前のめりに倒れるところだった。それぐらい体力が尽きかけている。
有栖「…もう やめにしろ、そんなグロッキーな状態では、私から二本取るなど不可能だ」
ゆーな「…や、やだもん、まだ一分残ってるもん。ゆーなガンバラーだもん……ッ!」
この一年生、思ったよりも根性がある。
一見チャラチャラした ゆーなを、有栖は新鮮な驚きとともに見直した。
もはや九分九厘 勝負が決まってなお果敢に竹刀を振り下ろすのを止めない ゆーな、その姿には健気さすら感じられた。
三年生の有栖としては、疲れ切った ゆーなから もう一本を奪うのは既に容易かったが、この健気さを あえて叩き潰すのも忍びなく感じ、剣先を動かさなかった。
既に残り時間は30秒、その間 何もしないだけで有栖の勝利は確定する。
正軒「あと少し、先輩あと少し……!」
正軒が手に汗握り、時計の針も刻々進む。
ゆーなが攻めに攻め、有栖が それを難なく防ぐ。
場外からの歓声は狂わんばかり。
高校生活の彩りが懸かった剣道女子部員たちが、ゆーなに勝てと目を血走らせて絶叫する。
それでも時間は無慈悲に進む。
あと4秒、
あと3秒、
2、
1……、
――――それまでッ!!
試合終了の宣言が、道場中に響き渡った。
正軒「勝った………」
有栖の一本先取による判定勝ち。
一週間前には まるで歯が立たなかった天敵を、よくここまで圧倒できたものだ。この一週間 練習に付き合ってきた正軒も辛抱が報われる思いだった。
それは実際に闘った有栖も同様だろう。この勝負の結果を受け止め、実に満足そうな表情だ。しかし、その感慨は―――、
副部長「待てッ!」
―――その一言で阻まれた。
女子剣道部の副主将、この試合の審判も務める彼女が、またも道場に不穏な空気を導いた。
有栖「山本!今度は一体何の………?」
副部長「みんな、集まって」
有栖を無視し、副審二人を呼び寄せる副部長。本当に、今度は何を始めるのか?観衆たちも、この暗雲立ち込める雰囲気に戸惑い、ざわついている。
正軒「おいおい、今度は何なんだ……?」
窓から見守る正軒も眉をひそめること尋常ではない。
密談するように身を寄せ合う三人の審判、その体の隙間から「えッ?」とか「はっ?」とか、困惑の声が漏れ出た。
やがて相談がまとまったようで、囲いを解いた副部長・山本知恵は、有栖に向けて宣告した。
副部長「山県有栖、反則ッ!」
有栖「なにっ?」
どよどよと会場がざわめく。これからどういう展開になるのか、まったく予想がつかない。
副部長「有栖、アナタは自分が一本を取ってからの一分間、自分から攻めようとせず現状維持に努めたわね?」
有栖「何を言っているんだ山本…ッ?」
副部長「故意に試合時間を空費することは、試合規則にも定められた立派な違反行為よ。有栖、アナタは試合の残り一分間、攻められるのに攻めず、早急な決着を図らなかった。これは主将としてあるまじき行為とし、反則を加えます!」
有栖「そんな!」
なんという言いがかりだろう。
たしかに有栖は最後の一分間、自分からの攻撃を行わなかった。疲労困憊した ゆーなを不憫に感じ、直接叩き潰すマネを避けたのだ。しかし、その情けがこんな結果を生むとは。
副部長「反則は、二回取られると一本として換算されます。よって、今回の反則と開始当初にとった場外反則と合わせて一本が、対戦相手である今川さんに入ります」
有栖「ばっ…!」
ということは、つまり………。
副部長「有栖と今川さんは互いに一本取得、ということで並びます。ルール上、同点のまま時間切れとなった場合、延長戦となります」
延長戦。
ざわざわと場内に動揺が走る。基本的に この場の大多数は、勝てば男女交際を解禁される ゆーなの方を応援している。
彼らからすれば、希望が繋がったというふうだろう。本来なら負けのはずが、延長戦まで もつれこんだわけだから。
有栖「ふざけるなッ!」
激昂するなと言う方がムリである。
今言われた反則二つも、ほとんど言いがかりだ。通常の公式戦なら もう5回は有栖が勝っている状況、それが ここまで長引いているのは、他ならぬ審判側のムチャクチャな判定にあるからだった。
有栖「貴様ら、こうまでして勝ちたいのかッ?」
副部長「随分な言いがかりね、審判の言うことは絶対よ、逆らうなら退場してもらうわ」
有栖「言いがかりは どっちだッ!……いいや、だが いずれにせよ意味はないぞ。今川を見ろ、あの状態で延長戦を満足に闘いきれると思っているのか?」
今川ゆーなは、先の試合で体力を使い果たしてグロッキー状態、もう一戦どころか、普通に立って歩くこともままならない。
有栖「つまらん悪巧みなど やめて、さっさとアイツを休ませてやれ。このままでは明日からの練習に響きかねんぞ」
副部長「………………」
副部長は、ひとたび言葉を切って、沈黙のうちに有栖の総身を見詰めた。
有栖「………?」
副部長「有栖、アナタだいぶ服装が乱れているわね」
試合時間5分間、それをフルに闘えば どんなにピッシリした服装でも乱れずにはいられない。
いつも几帳面な有栖でも、激闘の末に襟元は崩れ、胴や面を 結ぶ紐も 解けかけ、剣道着そのものも大量に発した汗により全体的に湿気ってみえる。
副部長「延長戦を開始する前に、衣服を整え直す時間を設けましょう、10分」
有栖「10分だとッ!?」
有栖は目を剥かざるを得なかった。それだけの時間があれば、ゆーなが息を整え直すには充分すぎる。
有栖「ふざけるなッ!どこまで屁理屈を並べれば気が済むッ!」
しかし有栖の抗弁も むなしいものだった。
この道場にいる すべてが、ゆーなの勝利を望んでいる以上、どんなにムチャクチャな理屈だって通ってしまう。誰もが、女子剣道部の男女交際が解禁されるのを期待しているのだ。
有栖は改めて、自分の他に 誰も味方がいないことを実感するのだった。
自分以外のすべてが敵だ。
*
正軒「…………………」
正軒が窓枠から手を離す。
グレート「アレ?タケちゃん 何処行くの?」
正軒「こんなもの これ以上見てられるか」
そう言って彼は剣道場から去っていった、まるで何かを見限るかのように。
*
試合場では、疲労困憊した ゆーなに女子部員総がかりでサポートを行っている。
汗を拭いたりポカリのボトルを口に突っ込んだり、さながらボクシングのインターバルのようだ。『衣服を整え直す』という名目など ただの虚構にしか過ぎないと隠す気もない。
対して有栖の周囲には誰一人としていない。
たった一人で、このインターバルの表面上の理由である衣服の乱れを律儀に直している。
有栖「(………まずいかも知れんな)」
10分も休めば、ゆーなの体力もかなり回復するはずだ。彼女の本領である瞬発力も、万全に近い水準に戻るだろう。
色々と対抗策を練ってきたが、有栖にとって ゆーなとの相性が最悪なのは いまだ変わりない。何かの拍子にスキを突かれれば、その相性の悪さで押し切られることは充分にありうる話なのだ。
延長戦は本戦と違い、たった一本で勝負が決してしまう。ちょっとした偶然が勝負を決めかねない。
副部長「……どう、今川さん、行ける?」
再開前に副部長が、ゆーなの状態を気遣わしげに尋ねる。もはや公正を旨とする審判の態度ではない。
綺麗に面を着け直した ゆーなが頷いた。
副部長「両者、前へ!」
審判として、選手を呼び寄せる。
こうなったからには、いかにしようと勝つ。波立つ心を静めて有栖は竹刀を構えた。
たとえ一人でも、誰一人味方がいなくても。
選手双方の顔を覗き込み、副部長が高らかに試合再開を宣言する。
副部長「――――――はじ…ッ」
待てッ!!!!
有栖「ッ?」
ゆーな「ふぇッ?」
副部長「なにっ?」
怒号。
そう呼ぶに相応しいほどの大きくて、重く、聞く者の心中を激震させる声が道場中に響き渡った。
当然のように衆人の視線が集中する。
その視線を一身に浴びて、一人の男子生徒が剣道場に乗り込んだ。
生徒1「誰だアレ?」
生徒2「知らね」
その男子生徒が誰であるか、皆知らない。だからこそ この謎の男の登場に剣道場全体が当惑した。
ただ一人、その男を知っている有栖だけを除いて。
有栖「正軒……?」
いや、有栖ですら やっぱり当惑せざるをえなかった。
何故 彼が前触れもなく道場に乗り込んできたのか?それは彼が何者であるかを知る有栖でも計り知れないことだから。
皆が戸惑うのも意に介さず、正軒は板敷きの上がり、ツカツカと歩み寄った、三人の審判のうちの一人へ。
審判部員「な、なによ……?」
審判を務めるのは、有栖とは意見を異にする女子部員たち。
彼女らもまた予想外の出来事に動揺を隠し切れずにいる。そのうちの一人、正軒に目の前まで迫られた審判部員は その際たるものだった。
正軒「………よこせ」
審判部員「へうっ?」
気付いたときには、その手から審判旗は消えていた。審判の証が女子部員から正軒の手へ。いつの間に取られたのか。古武術にある、武器を失ったときに敵から奪い取る技が ここで活かされた。
正軒「これをお前らが もつ資格はない」
正軒は吐き捨てるように言うと、奪い取った旗を そのまま受け流すように、
正軒「先生、お願いします」
と、自分の傍らにいる、歳の行った中年男性に差し出した。
中年男性。
校内の大人といえば、教師以外にいるまい。
生徒3「……おいっ、アレ、きっくーじゃね?」
生徒4「体育教師の きっくー?」
菊地義正 46歳。
修養館高校に勤める教師で担当教科は体育。土曜の午前中授業を済ませ、職員室で昼食を取ろうとしたところ、正軒に捕まって ここまで引っ張られてきた人であった。
体育教師「おお、おい武田、こんなトコまで先生連れてきて何のつもりだ?早く戻らんとワシ、カップラーメンにお湯入れちゃったんだけども……」
体育教師のわりに気の小さい この中年は、異様に盛り上がる決闘場に連れ込まれて、非常にオドオドしている。
正軒「先生に頼みがあります。大丈夫です、延長戦の試合時間は3分だから、カップ麺が出来上がるまでに戻れますよ」
と、改めて審判旗を教師へ差し出す。
正軒「先生には この試合の主審をやってほしいんです。体育教師なら剣道のルールも一通り知ってるでしょう?」
体育教師「ま、まあな……」
正軒は このために剣道場から離れたというのか。完全に ゆーな贔屓の女子部員審判を廃し、公正な審判を新たに用意するために。
正軒「あと、副審は俺がやる」
正軒が、この試合の黒幕とも言うべき副主将を睨む。
正軒「もう一人の副審は お前らの中から好きなヤツがやれ、それで審判の公正は保たれる」
副部長「ふざけないで、いきなり乱入してきて何を言っているのアナタは、部外者が道場内に立ち入っていいわけ……ッ」
副主将は やり込められまいと必死に舌を動かす。
が、眉間に突きつけられた審判旗に、彼女は即座に黙らされた。
正軒「だあってろ」
正軒が、氷の刃の鋭さで言う。
正軒「やだってんなら この俺が、ここにいる全員 皆殺しにしてやるだけだ」
副部長は、旗の先端から発せられる殺気に飲み込まれ、完全に動きを失っている。
ただ、凄い、と それを目撃する全員の心に伝わった。
有栖「山本だって、副主将を任されるほどの我が部の猛者なのに。…それを ああも容易く……、いやっ、それより…!」
有栖は ハタと気付いて正軒の下に駆け寄る。
有栖「正軒ッ!どういうつもりだッ?」
怒鳴りたくもあった。練習という過程は協力してもらっても、勝負そのものは有栖当人の問題だ。それにまで正軒に助けてもらうのは あまりに潔くない。
正軒「………………」
正軒も そのことに気付いているのだろう、出しゃばったマネをしていると。
だから、悪戯の言い訳をする子供のように、バツが悪そうに言う。
正軒「先輩、昔 俺のシロクマおやじがさ、言ってたんだ」
有栖「?」
正軒「『勝負とは、すなわち命のやりとりだ、ゆえに どんなことをしてでも勝たねばならない。卑劣であろうと卑怯であろうと、勝ちさえすれば すべてが正当化される。ルールなどで守られた道場剣術とは違うのだ』ってね。でもさ、先輩……」
これはスポーツだろ、と正軒は言った。
正軒「これはスポーツの試合だ、先輩の努力以外のものが、勝敗を決めちゃいけない勝負だ」
有栖「正軒……」
正軒「先輩は、今まで積み上げてきたものを思うさま発揮すればいい。それ以外は俺が引き受けるから」
*
体育教師「えぇ〜〜と、では、両者、前へ」
なんとも覇気のない号令で、有栖とゆーなは再び対峙する。
女子部員「大丈夫、ゆーなちゃん?」
ゆーな「うん、たくさん休んだから もう ゆーなはダイジョバーだよ。見てて、必ず勝つから」
10分の休憩時間で ゆーなは再び体力を取り戻している。
勝負は振り出しに戻り、しかも延長戦は 本試合5分より短い3分勝負、彼女にとって有利な状況だ。
そんな中で、闘いは始まる。
正軒「先輩、がんばれよ…!」
副部長「もう、なんなのよ一体…!」
正軒と副主将・山本知恵が、副審として場外から睨みあった。
そして有栖。
試合に臨む彼女の心は、湖面のごとく穏やかだ。
竹刀を構える、眼を閉じる。
研ぎ澄まされた心が、外界のあらゆる雑音をシャットアウトする。観衆たちの ざわめきは もう聞こえない。
でもたった一つだけ、有栖の心へ届いている声がある。
がんばれ、先輩がんばれ、と。
ついさっきまで、自分には味方など一人もいないと思っていた。だが違う、たった一人だけ たしかに彼女には味方がいた。
百万人よりも一億人よりも頼もしい たった一人の味方が。
とても負ける気がしない。
正軒がいるかぎり。
正軒「……先輩、3分間をフルに使い切るんだ。今川焼きのネックは今でも体力のなさ、10分の休憩なんて お茶を濁しただけだ。引き回してやれば すぐに息切れする……!」
ゆーな「させないもん、ゆーな、ソッカー(速攻で勝負を決める人)になるんだから!」
それぞれの思惑がひしめき合う中、延長戦の火蓋が切られる。
体育教師「そ、それでは――――――――」
――――始めッ!
―――――――――――――――パシンッ!!!!!
正軒「んなッ!」
副部長「ええッ?」
決着は、瞬時にして着いた。
始めの合図が上がった瞬間、同時かと思われるほどの刹那のタイミングで振り下ろされた竹刀が、面防具を破裂させんほどの勢いで相手の脳天を したたかに叩いた。
んひゃあッ!
と痛みに悲鳴を上げたのは、今川ゆーな。
得意のスピードを活かす暇もなく、特大の一撃を頭に貰ってしまう。
対して、打突を放った有栖は、なんと左手一本だけで竹刀をもっていた。
副部長「片手打ち…?」
本来なら両手で握って振り下ろす竹刀を、あえて片手だけで飛ばして ゆーなの面に命中させた。片手を離せば体が開き、より遠くの間合いのものでも充分射程距離に収めることができる。開始直後の位置からほとんど動かずに ゆーなの面が狙えたのも、そこに理由があった。
副部長「片手打ちなんて難易度の高い技を、いつの間に……?」
体育教師「――― 一本ッ!!!」
高らかに有栖の勝利を宣言する中年の先生、剣道部に関わりのない彼は、勝負の結果を見たままに判断することができた。
当然、正軒も それに続く。
判定は2:1、これで勝利は確定した。
残る副部長が いかにゴネても判定は覆らない。少しの逡巡のあと、観念したかのように彼女も有栖の勝利を認める旗を上げた。
おおおおおおおーーーッ!
このブリッツ・クリークとも言うべき電撃的な決着に、観衆たちは熱狂した、自分たちが どちらを応援していたかも忘れて。
有栖「勝った……、のか?」
あまりの速さに、勝った有栖自身すら まだ状況に追いつけていなかった。
わきおこる拍手や歓声の中、ただ呆然と立ち尽くしている。そこへ正軒が駆け寄ってきた。
正軒「先輩…!」
さすがの正軒も、この電撃決着に戸惑い気味だった。
正軒「先輩、……いつの間に片手打ちなんてトリッキーな技覚えたんだ?」
勝利の決め手となった“片手打ち”、それは両手で竹刀を振るより遥かにバランスが難しい上級技だった。
有栖「何を言っているんだ正軒、お前は剣を使うとき常時片手持ちではないか」
正軒「それは、たしかにそうだけど……」
古流剣術を使い、現代剣道とまったく様相を異にする正軒は、そういう特異な剣の使い方をしている。
有栖「私もやってみたくてな、おじいちゃんに頼んで片手打ちの稽古をつけてもらった。キサマに内緒で」
正軒「何故 内緒に?」
有栖「ビックリさせたかったからだ。…しかし思った以上にうまく行ったな、試合で使うのは初めてだったが」
有栖は自分の握る竹刀をいとおしげに眺めた。そして……、
有栖「正軒」
正軒「ん?…うわっ」
ぎゅ。
いきなりの柔らげな感触に、正軒は飛び上がりそうになった。
有栖が、彼のことをおもむろに抱きしめたのだ、彼女のぬくもりが肌全体をもって正軒へ伝わる。
正軒「せ、先輩 何スか いきなり?」
有栖「その…、礼だ」
有栖は照れくさそうに言う。
有栖「お前は、練習に付き合ってくれり、今日助けてくれたしな。だから、なんとなくだ」
試合で激しく動いた直度だからか、有栖の体温は常より高く、正軒の肌まで熱する。惜しむらくは有栖は剣道の防具を着けたままなので、それに阻まれて彼女の胸の柔らかさなどが直接 体に触れないことか。
そして密着しあう二人に、会場がドヨドヨする。
有栖「………さて」
有栖は正軒から体を離すと、呆然としている副部長はじめ すべての女子剣道部員へ向けて言い放つ。
有栖「これでこの勝負 私の勝ちだ。…私が勝った場合どうなるか、約束は覚えているな?」
相手は声もない。
有栖「規則は このまま継続する。正しいルールあっての学校生活だ、おいそれと変えるわけにはいかん」
副部長「それはいいけど、………有栖、ちょっと聞いていいかしら?」
有栖「ん、なんだ?」
あれほど拘っていた規則撤廃を『それはいいけど』とは、何か様子がおかしい。
副部長「ねえ有栖、……そこの男、ダレ?」
副部長が恐る恐る指差したのは、他でもない正軒だった。
正軒「みぃ?」
副部長「いい?有栖………」
副部長は、カラカラに渇いた喉を唾液で潤してから、思い切って言った。
副部長「その、アンタが今 熱い抱擁を交わしていた、その男は誰かって聞いてるの」
こんな公衆の面前で、人目もはばからず、お互いの愛をたしかめあうかのごとき抱擁。
イヤそれだけではない、その男、関係者でもないのに颯爽と現れて、孤立無援の有栖のことをヒーローさながらに救った。
そのただならぬ雰囲気、心通じたる態度。
副部長「その男って、もしかして有栖の………」
……………彼氏?
有栖「んなあっ?」
それを聞いた有栖の顔が、瞬時に、耳まで真っ赤に沸騰した。
それを見て もう確定したといわんばかりに、
部員1「彼氏だ!」
部員2「彼氏なんだわ!」
部員3「主将に彼氏がいたんだ!規則破って彼氏作ってたんだーッ!」
ざわざわざわざわ……!突如発覚したスキャンダルに剣道場は引っくり返らんばかりの騒乱に陥った。
有栖「ななななな何を言ってるんだーッ!!正軒は、正軒はそういうのではなくてだな…ッ!ただ、特訓に付き合ってくれただけの……!」
部員4「一緒に練習するほどの仲なんですかッ?」
部員5「しかも呼び捨て!今呼び捨てにしたーッ!きゃーッ!」
有栖「人の話を聞けーッ!」
こうして、剣道場の混乱はまったく収拾することなく、有栖とゆーなの勝負が終わってなお、『男女交際禁止』の規則に関する問題に決着はつかないのであった。
*
ここで閑話休題。
正軒たちがいる修養館高校から遠く離れた ある場所に、一人の男が住んでいた。
彼は古くから続く家の当主で、その気質は厳格、ときに頑迷というべきほど己を貫き通し、信念に反するものをすべて退けてきた。
日本人にしては珍しいほどの巨体で、子供ぐらいバリバリと食べてしまいそうな恐ろしさが漂う。その上に真っ白な小袖と袴をまとい、齢四十を過ぎたばかりだというのに頭髪は胡麻粒一つもないというほどに白髪と化していた。
それらの特徴を総合すると、彼の外見は、まるで雪原を歩くシロクマのようだった。
「はい…、はい…、それは!いえいえ……」
そのシロクマが、黒電話の受話器をもって何がしか話し込んでいる。
「…指導など とんでもない、愚息の方こそ よい勉強になります。これをよい機会に、山県さんの老成の域を見せ付けてやってくださいませ。…はい、それでは………」
チン、と受話器を置き、それと同時にシロクマの口元が、おかしさを堪えきれぬと いうふうに吊り上った。
「腑抜けめが、やっと本分を取り戻したか」
などと ほくそ笑むと、ドシドシと足音をたてて廊下を進む。日本家屋の床板は、シロクマのような巨体に今にも踏み抜かれそうだ。
「母さん!母さん!朗報が入ったぞ!」
乱暴に居間の障子を開けると、そこには婦人が茶を入れているところだった。藤染めの和服を典雅に着込み、年齢はやはり四十半ばといったふうだが、物腰の上品さが女としての衰えを微塵も感じさせない。
「燐太郎さん、どういたしましたの?おやつの時間に慌しい」
「暢気に茶菓子など食っている場合ではないぞ母さん!今、山県健作さんから お礼の電話があってな……ッ!」
「ああ、元警察官で、今は引退して剣道教室を開いてらっしゃる方でしたわね。お礼って、アナタ何かして差し上げましたの?」
「俺ではない、正軒のヤツだ!」
「まあ」
興奮気味に息子の名前を出す夫に、婦人は小さな驚きの声を上げた。
夫婦の間に、勘当同然に家を飛び出した息子の名が上がるのは、随分 久しぶりのことだった。
「山県さんの お孫さんが、正軒と同じ学校に通っておるそうなんだが、そのお孫さんに正軒が、剣の稽古をつけてやっておるらしいんだ!」
「それでお礼のお電話を?ご丁寧に、随分と律儀な方ですのね…」
「それよりも、だ!…正軒のヤツめ、剣には もう興味がないなどと ほざきながら、ついに剣士に戻ったようだ!」
戦国、室町の頃に生まれた古流武術を代々継承してきた武田家。その家風を拒み、一人剣を捨てた息子・正軒を父・燐太郎は容赦なく勘当した。
以来正軒は一度として この家の玄関をくぐったことはない。旧家とはいえ、余人の理解を絶する価値観をもった家だった。
そんな家に生まれた正軒が一度は剣を捨て、そして今再び、人に指導するためとはいえ剣を握ったという。それは後継者を求める当主としての父が、どれほど待ちわびていたものか。
「腑抜けとはいえ、やはり根は剣客であったか。煮えたぎる血の疼きを抑えられんかったに違いない。……こうしてはおれんぞ!」
「どうなさいますの?」
「正軒のヤツが惰眠から目覚めた以上、一刻も早く正しい道に戻してやらねばならん!この時のために玲皇学園に いつでも転校できる用意をしてあるのだ、あそこの剣道部は強いからな!」
「まあまあ」
「正軒は今が一番伸びる時期だ、今まで無駄な時間を過ごした、その遅れを取り戻すためにも、できうる限り急がねば!」
「燐太郎さん、落ち着きなさいな」
内助の功タイプの良妻が、夫をピシャリとたしなめる。
「アナタは すぐそうやって気が逸るんですから。正軒さんとケンカなすったとき、後先考えずに勢いだけで正軒さんを勘当してしまったこと、もう忘れたのですか?」
「む、むう…」
「そのために正軒さんも、気安く おウチへ帰ってこれなくなったのではないですか。これ以上話を こじらせないためにも、アナタは首を突っ込むべきではありません。もうしばらく正軒さんを そっとしてあげなさいな」
「なるほど、たしかに あの年頃の小僧は、親に反抗することが格好いいなどと思っておるものだ。俺が行けば逆につむじを曲げてしまうというのも、ありえない話ではないな」
「いえ、そういうことではなく……」
「それならば…、そうだ、将来自分の嫁となる娘が、遥か先を行っておることを見せ付けてやるのはどうだ。さすれば、いくらあの腑抜けでも焦りが浮かぶというものだ。………うむ!それがいい!ならば早速 真田さんに話をつけてくるとしよう!母さん、俺は今から出掛けるぞ!」
「まあまあまあ………」
これがやがて、具体的な形となって正軒と有栖に迷惑をこうむることになるのだが、神ならぬ二人が今はまだ知る由もない。
to be continued
説明 | ||
決戦 後編。 特訓の成果で、勝負を有利に進める有栖。 しかし、恋愛禁止の規則を廃止させたい女子剣道部側は、審判を務めているのをいいことに、不正なジャッジで有栖の勝利をことごとく阻む。 それを見守り、鬱屈を募らせる正軒。 勝つのはどっちだ? |
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