対姫†無双 1 |
scene-荒野
「大丈夫か! 勇敢な少女よ!」
「え……? あ…………はいっ!」
「貴様らぁっ! 子供一人によってたかって……卑怯というにも生温いわ! てやああああああっ!」
――春蘭さま! うまくいったのかな? でも……ボクのこと知らないみたいだし、左目あるし……。
「うわぁ…………っ! 退却! 退却ーーーっ!」
「逃すか! 全員、叩き斬ってくれるわ!」
「おい、春蘭! ちょっと待てっつの!」
――!!
「ばっ……! 北郷、なぜ止める!」
「俺達の仕事は偵察だぞ。その子を助けるために戦うのはいいとして、敵をぉ、うわっ!?」
突然抱きついてきた少女に驚く一刀。
――兄ちゃん! 兄ちゃん!! 兄ちゃん!!!
「怖かったのか?」
自分にしがみつく少女の頭をそっと撫でながら聞く。ふるふると首を横に振る少女。
――兄ちゃんに撫でられるの久しぶり〜。怖くなんてなかったけどなんか兄ちゃんの手がすっごく優しいからこのままでいよっと。
「安心するがいい、このわたしが来たからには怖いものなぞないからな。待ってろ! すぐに成敗してきてやろう」
「だから待てっての! 今はもっと他にするべき事があるだろ?」
――兄ちゃん、手が動いてないよ?
「ごめんね、ちょっとこのお姉さんと話があるから放してくれないかな?」
「えっ? 兄ちゃんボクのこと嫌いになったの!?」
「北郷貴様、少女を泣かすとは何事か!」
「ちょ、なんで剣を俺に向ける?」
「少女を泣かすような輩は華琳さまの配下にはいらん! 少女よ、危ないから離れるがよい」
「いやです! これはボクと兄ちゃんの問題です!」
――ごめんなさい春蘭さま。でも兄ちゃんから「そんなワケないだろ」って言ってもらわないと絶対に離れないもん。
「北郷〜」
「な、なんか顔がさらに怖いんですけど春蘭さん? 落ち着いて話を聞いて下さい」
自分の方が泣きたいと思いつつも、離れてと言うだけで実際に離れようとする動作を全くしない一刀。少女のふくらみはつつましいながらも柔らかい身体を感じていた。
「一刀、謎の集団はどうしたの? 戦闘があったという報告は聞いたけ……その娘は?」
「その野盗と戦ってた子だよ」
「そう。ずいぶんとなつかれているようね?」
「それが華琳さま、北郷が少女を泣かせてしまい、困っていたところなのです」
「え? 泣かせたの俺確定?」
「最低の全身精液男ね」
「ね、マジで俺ヤバイから」
「ボクのこと嫌いじゃない?」
「もちろん! 俺がこんなに可愛い女の子嫌いになるはずないって」
――えへへへ〜。兄ちゃんボクのこと可愛いって〜。……でもこの兄ちゃんボクの兄ちゃんじゃないみたい。悲しくなんか……。
「うぅ……。兄ちゃん」
ようやく一刀から離れる少女。あまりの落ち込みぶりに華琳が声をかける。
「あら、別に抱き合ったままでもいいわよ?」
「え? あ、あの……お姉さんは?」
「私は曹操、山向こうの陳留の街で勅史をしている者よ」
「ボクは許緒です。……曹操さま、盗賊退治をするのなら、ボクもごいっしょさせて下さい!」
「春蘭、許緒の腕は?」
「は。たった一人で野盗と戦うだけあってなかなかのものかと」
「そう。……許緒、共に戦いたいのは一刀といたいから?」
「それもあります! でも、村を襲う盗賊団をほっておけないです!」
「ならばよし。……春蘭、秋蘭。許緒はひとまず、あなた達の下に付ける。わからないことは教えてあげなさい」
こうして許緒と名乗る少女は覇王曹操と天の御使い一刀との邂逅を果たしたのだった。
<夢のはじまり>
「……鈴々の相手は誰だ〜?」
このちびっこ、知らない。見たことない子だ。また”きょっちー”の記憶?
――そうだよ”季衣”。こいつは張飛。ボクのライバルだ。
ライバル?
――天の言葉で、ええっと……好敵手とか、恋敵って意味だよ。
ふ〜ん。
「覚悟しろちびっこめー! ボクの鉄球が火を噴くぞぉ〜!」
「鉄球が火を噴くなんてあり得ないのだ。常識的に考えて」
「なにを〜っ! 試してみるか!?」
きょっちー、負け惜しみ言ってる。
――いいから見ててよ〜。
「ほ、ホントに火を噴いたのだ……」
――へへん。ヒゲのハンマーは違うんだよ〜。
でもさ〜、矛で受け止められちゃったじゃん。
「いくよ。てやああああああああ!!」
また火を噴いて回転してる! あっ、張飛の矛を折った!
――すっごいだろ〜。
でも鎖も切れちゃったよ。
「まだまだなのだ! 鈴々ピンピンしてるのだ!!」
「おとなしく降参しろ! ボクは兄ちゃん捕まえに行くんだ!」
「ダメなのだ! お兄ちゃんは鈴々が守るのだ!」
「邪魔するなぁっ!」
え? 鎖が切れてるのに鉄球が動いて攻撃してる?
――よく見なよ。鎖のかわりに光ってるの見えない?
あ、ホントだ。なんか凪ちゃんの氣弾に似てるね〜。
――うん。ボクも修行して使えるようになったんだよ〜。
もう何度、季衣の奥義、愚羅毘敦反魔が命中したろう? しかし何度くらっても張飛は倒れない。
「ぐっ……ぜ、全然効いてないのだ!」
「もう降参しろってば! 死んじゃうぞ」
「嫌なのだ! 死んでもここは通さないのだ!」
張飛、すっごい血を吐いてるよ……。
――うん……。でも、あいつは手加減できる相手じゃないから……。
さらに何度かの強撃を与えた後、季衣はさらに氣を高める。全身が強く輝きだす季衣。
「今楽にしてあげるよ、張飛。てやぁぁぁぁぁっ!」
「待ちなさい、季衣っ!」
「えっ……!?」
「華琳様っ!?」
――華琳さまが止めてなかったら、ボクが張飛にトドメをさしてた。
でも、あの傷じゃ……。
季衣を背負って去っていく呂布を見送る魏軍。
「……華琳様、本当にこれで良かったのですか?」
「我らは徐州を手に入れた。今はそれで良しとしましょう。……張飛も倒したことだし」
「討ち取らなくても?」
「あれではもう助からないでしょう。ならばせめて死に際は主の元へ」
「お優しいのですね」
「甘いかしら? でも今回は季衣の涙に免じて通させてもらうわ。いいわね、季衣」
「華琳さまぁ! ボクは……ボクは」
きょっちー泣いてたんだ。
――だって、だってさ。
「兄ちゃんに嫌われた……」
――兄ちゃんたちの張飛を殺したボクは兄ちゃんに嫌われる。そう思ったら我慢できなくて泣いちゃった。
「よく頑張ったわ、季衣。……あなたが北郷を慕っているのは知っている。劉備とはもう戦えないかしら?」
「いえ! ボクは戦えます。華琳さまのために!」
兄ちゃんよりも華琳さまの方が大事なんだ?
――わかんない。どっちも大好きだもん。でもボクはわかったんだ。ボクのことを好きでいてくれるのは魏の兄ちゃんなんだって。
<夢のおわり>
<あとがき>
初めてなんでうまく投稿できたか心配です。
一応、季衣と流琉がメインです。次で流琉が登場予定です。
ゲームとほとんど同じとこは大幅にすっとばす予定なので話数は少なくなるはずです。
説明 | ||
初投稿です。 よろしくお願いします。 タイトルの『対』は『たい』じゃなくて『つい』です。 <夢のはじまり>〜<夢のおわり>の間は季衣の夢です。 |
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コメント | ||
ブックマンさん、コメントありがとうございます。わかりにくい不親切な文章でごめんなさい(こひ) なにやら複雑ですね。(ブックマン) 竜我さんコメントありがとうございます。二話目も追加しましたが季衣の経験についてはもうちょい先で(こひ) うむ〜 全√を経験してる季衣が過去の自分に憑依してる感じなのかなぁ・・・? とりあえず一話目やし次回を楽しみに待つとしましょう(竜我 雷) |
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