恋姫英雄譚 鎮魂の修羅55
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翠「うおいいいい、一体どうなっちまってるんだよ!!!??」

 

蒲公英「ちょっと、落ち着いてってば!!!」

 

涼州連合の乗る馬が混乱状態で暴れまわっている

 

翠と蒲公英も愛馬を鎮めようとするが、全く言う事を聞かない

 

その原因はというと、曹操軍の兵士一人一人が鳴り響かせる銅鑼であった

 

そのけたたましい爆音に、涼州が誇る軍馬達は乗り手を振り落とさんばかりに狂瀾怒濤の体を見せていた

 

一刀がかき集めさせたのはこれである

 

人間は気合と気概で何とかなるが、馬というのは大きな体とは対照的に臆病な性格の持ち主である

 

慣れない音に対しては、たとえ小さな音であったとしても敏感に反応してしまう

 

足さえ止めてしまえば、馬などいい的である

 

後は適当に矢を射かければ、一方的に殲滅できる

 

音を使った戦術なら張三姉妹を連れて来ることも提案の中に持ち上がったが、妖術に頼り過ぎるのはタブーであるのはこの大陸の常識であるし、華琳自身が妖術を使うことを良しとしないのは分かっているため、一刀も一般的に使われている銅鑼を事前に集めておいたのだ

 

更に言えば、氷環と炉青にも余程のことが無い限り妖術を使う事は禁止としていた

 

華琳「(これが、天の御遣いを組み入れるという事・・・・・)」

 

完全なワンサイドゲームと化した戦に、華琳は強烈な遣り甲斐の無さと肩透かしを食らっていた

 

鶸「姉さん、ここは退きましょう!!!」

 

蒼「そうだよー、こんなのもう戦じゃないよー!!!」

 

翠「馬鹿言うな、せめて一矢報いなけりゃ、気が収まらないぜ!!!」

 

蒲公英「こんなんでどうやって報いるっていうのー!!!??」

 

暴れる馬達に潰され自滅する者達もいるのでは、どうにもならなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、落ち着け!!!」

 

「なんだ、どうしたって言うんだ!!!??」

 

「こいつらがこんなにも恐れるなんて、どうなっているんだ!!!??」

 

葵率いる主力部隊は、虎豹騎と相対していた

 

翠と蒲公英が相手をする部隊は銅鑼を装備していたが、虎豹騎は一つも持っていなかった

 

それなのにどうしてこちらでも向こうと同じ現象が起きているかというと、それは虎豹騎の先頭に居る一刀だった

 

全身から湧き上がる邪気を目の当たりにした涼州連合の軍馬達は、乗り手の前進命令を聞かず浮き足立つばかりだった

 

葵「こいつがこんなにも怯えるなんざ、初めてだな・・・・・一人で俺達の軍馬全ての足を止めるか、あいつの身の内に宿るものがそれだけヤバいって事か・・・・・全員一旦下がれ、ここは俺が引き受ける!!!」

 

涼州筆頭が乗るだけあって、葵の愛馬も相当な名馬である

 

しかし、そんな名馬であっても一刀の纏う雰囲気に気圧されてしまっていた

 

動物の本能が、それくらいに一刀の邪気に対して警戒信号を発しているのだ

 

そして、葵は愛馬を降り一人、一刀と相対する

 

葵「一体どうなってんだこりゃ、どんな手品を使ったんだ?」

 

一刀「なんだ、生まれた時から馬と生きているくせに、馬の習性を完全に理解出来ていないってか」

 

彼女達とて馬の習性は心得ている、普段の訓練で人間の掛け声や銅鑼の音に慣れさせる訓練くらいしている

 

しかし、これだけの数の銅鑼に対応する訓練は流石にしていない

 

葵「どうやら、馬の事は知り尽くしているか・・・・・お前がそんな状態じゃなかったら、間違いなく婿に迎えていたんだがな」

 

一刀「そんな未来、最初から来ない事は決定していたんだよ」

 

葵「あ、そりゃどういう事だ?」

 

一刀「こうなることは、運命だったという事だ」

 

葵「運命ねぇ・・・・・なら、ここでお前が死ぬのも運命ってことでいいか?」

 

大刀、戦皇刀姫を構える

 

一刀「結果がそうであれば、そういう事だ」

 

それに合わせ、一刀も素手で構えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩香「・・・・・いいのですか、このような一騎打ちを承認しても」

 

氷環「隊長様なら、きっと大丈夫ですわ」

 

炉青「はいな、ウチはあに様を信じるどす」

 

菖蒲「しかし・・・・・相手は、あの涼州筆頭ですから・・・・・」

 

こうなるであろうことは事前に話し合っていたため覚悟していたが、不安が無いと言えば嘘になる

 

しかし、彼女達に出来るのはただ静かに見守る事のみであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葵「(・・・・・・隙が無ぇ)」

 

素手なのだからどこからでも打ち込めるだろうと思うであろうが、事はそう単純ではない

 

葵とて、涼州筆頭を長年務めてきただけあって、武に置いても娘達全員を相手にしても勝つくらいの腕を持っている

 

間違いなく、葵もこの大陸で五本の指に入るであろう武人の一角である

 

その類稀な武人が、たった一人の丸腰の男相手に攻めるのを躊躇させられてしまっていた

 

葵「(本当に惜しいぜ、お前にならこの大陸を任せても良かったのによ)」

 

武人としての勘が、相手の力量の大きさを告げていた、武に置いても、器に置いてもだ

 

だが、こうなってしまった以上、お互いに後には引けない

 

惜しい気持ちを押し殺し

 

葵「つあっっっっっ!!!!!」

 

渾身の力で戦皇刀姫を右薙ぎで振り抜いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキイイイイイイイイイイイイイイン!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葵「なっ!!!!!???」

 

次の瞬間、その表情は驚愕に変わる

 

振り抜いた戦皇刀姫は、一刀の左肘と左膝に挟まれ叩き折られた

 

今のは間違いなく、これまでの人生で最高の威力と速さを誇るものだった

 

それを真正面から何の小細工も無しに打ち負かされた

 

葵「(あの刹那の瞬間で、こんな芸当が出来るってのか)」

 

驚愕から一変、全身の力が抜けたように呆けた表情となる

 

武人としての力量の差を、これでもかと見せ付けられた

 

むしろこれは、素手であらゆる武器に対応することを想定している北郷流無刀術の一番の得意分野と言える

 

葵「ごはあああああああああああ!!!!!」

 

次の刹那、一刀の右拳が葵の腹にめり込む

 

衝撃を殺し切れず葵は吹っ飛ばされ、地面を無様に転がった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷環「・・・・・勝負ありましたわね」

 

炉青「あに様と一対一で戦えるのは、恋さんくらいなもんどす」

 

菖蒲「ほっ・・・・・良かったです」

 

彩香「今の攻防、殆んど見えませんでした・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葵「ぐっ・・・・・て、てめぇ・・・・・・っ!」

 

全身の痛みを堪え、何とか体を起こし見たものは、漆黒の羽だった

 

一刀「大したものだ、回天丹田が無かったら死んでいた」

 

薄皮一枚まで絞り込まれた邪気により、全身から舞い落ちる黒い氣の粒子

 

戦皇刀姫がぶつかる瞬間、一瞬で氣のメーターを振り切らせた

 

意識してやったのではない、あのまま行ったら折るより先に真っ二つになると、体が反射的に回天丹田を発動したのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩香「一刀君、あなたは本当に天からの遣いなのですね・・・・・」

 

菖蒲「はい、一刀様こそが紛れもない天の御遣い様です」

 

氷環「葵様には悪いですが、勝敗は兵家の常ですわ」

 

炉青「あに様の拳をまともに受けて、死なないだけでも凄いどすよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「それじゃ、曹孟徳の下まで来てもらおうか」

 

葵「ぐぅ・・・・・くそったれが・・・・・」

 

痛みで体が麻痺し、まともに動けない

 

自陣へと連れて行こうと近寄ってくる一刀に焦りが込み上げてくる

 

その時

 

「筆頭を守れええええええええええええ!!!!!」

 

「俺達の筆頭に何さらすんじゃ、われええええええええええ!!!!!」

 

「突撃だあああああああああああ!!!!!」

 

涼州の兵達が馬を捨て、自らの足で迫ってくる

 

氷環「いけません!!!」

 

炉青「あに様、助太刀するどす!!!」

 

菖蒲「今行きます、一刀様!!!」

 

彩香「虎豹騎、突貫!!!」

 

麗春「一刀を援護しろおおおおおおおおおお!!!!!」

 

涼州兵の突進に同じく突進で返す曹操軍最精鋭

 

斗詩「一刀様には、指一本触れさせません!!!!!」

 

猪々子「おらおら、あたいの斬山刀の錆になりたい奴はどいつだあああああああ!!!!!」

 

悠「一騎打ちの邪魔するたぁ、空気読めない奴らだな、こらあああああああああ!!!!!」

 

そして、そのまま乱戦に突入していく

 

しかし、一刀の訓練を1カ月もの間続けてきた虎豹騎の練度は凄まじく、おまけに馬を封じられた涼州連合は成す術なく討ち倒されていった

 

翠「母さん、大丈夫か!!!?」

 

蒲公英「うわ、凄い痣じゃん!!!」

 

一刀の拳が当たった個所には、拳大の青痣が出来上がっていた

 

鶸「お母様、この戦、私達の負けです!!!」

 

蒼「こんな一方的になるなんて・・・・・もう逃げるしかないよぉ・・・・・」

 

葵「ふ、ふざけるな・・・・・この俺に、尻尾を巻いて逃げろってのか・・・・・」

 

翠「そんな体で何が出来るんだよ!!!」

 

蒲公英「そうだよ、犬死にしかならないよ!!!」

 

鶸「蒼、そっち持って!!!」

 

蒼「うん、鶸ちゃん!!」

 

葵「おい、こら・・・・・よせ、てめぇら・・・・・」

 

問答無用で担ぎ上げられ愛馬に無理やり乗せられ、葵は娘達に誘導され戦場を離脱しようとする

 

一刀「っ!!」

 

シュバババ  ズドン!!!

 

そうはさせまいと、一刀は雷針砲を背中を向けた馬家にぶっ放す

 

「させるかあああああああああああ!!!!!」

 

その高速の邪気弾を、身を挺して涼州兵が防ぐ

 

一刀「逃がすか」

 

バシュウウウウウウウ!!!

 

地走りの氣弾、地泉戒で馬の足を狙う

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

「涼州連合、万歳!!!!!」

 

これも涼州兵達が肉の壁となり、防いでいく

 

一刀「邪魔だ」

 

ズドオオオオオオオオオオオン!!!!

 

「「「「「がはああああああああああああああああ!!!!!」」」」」

 

地面に拳を叩き付け、氣を炸裂させ衝撃を四方に拡散させる

 

敵兵をいっぺんに吹っ飛ばしていくも、次々と群がってくる

 

その間に馬家は潼関の城へ撤退していく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春蘭「でああああああああああああ!!!」

 

凪「はあああああああああああああ!!!」

 

潼関の城に突入する曹操軍

 

その中で、春蘭と凪がこれまでの鬱憤を晴らすかのような活躍を見せていた

 

なにせ、さっきの戦場では弓隊が戦果を挙げるばかりで、自分達の出番など皆無だったのだ

 

七星餓狼が紅く輝き、閻王が唸りを上げる

 

そんな中

 

「「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」

 

数人の涼州兵が素手で襲い掛かって来た

 

腰には剣を携えているというのにだ

 

春蘭「なんだこいつら、北郷じゃあるまいし」

 

凪「これは、組み技を主体とした五胡の格闘技です、組ませてはなりません!」

 

華琳「なら組ませなければ・・・・・」

 

「あがあああああああああ!!!!!」

 

「う、腕があああああああああ!!!!!」

 

「お、俺の足、どうなっているんだあああああ!!!!!???」

 

視線を向けると、組んでくる涼州兵に一刀が平然と組んでいた

 

しかし、組むのはほんの一瞬、その一瞬で涼州兵達は投げられたり、骨を折られたり、関節を外されたりしていた

 

一刀「無謀だなお前ら、北郷流無刀術が知らない関節技なんて無いのによ」

 

「ぎゃあああああああああ、止めろ、止めてくれええええええええ!!!!!」

 

無刀術訃技、指戒、指と握力を極限まで鍛え抜き、素手で相手の体に穴を開ける

 

ただ握り込むだけの技だが、これがゆっくりとされれば、お手軽な拷問術に早変わりである

 

両腕を折られうつ伏せにされた敵兵の脇腹に指が沈み込んでいく

 

一刀「おい、馬家はどこにいる」

 

「い・・・・・言ってたまるかああああああああ!!!!!」

 

一刀「そうか」

 

「がああああああああああああ、いぎいいいいいいいいいい!!!!!」

 

更に指が食い込んでいき、血が溢れ出していく

 

一度でも一刀に掴まれてしまったら、例え祖父でも逃れるのは難しいのだ

 

なにせその握力は、通常でも150キロを優に超える

 

氣を開放すれば最大450キロにまで達する

 

そこから回天丹田を行使しようものなら、計測するのが馬鹿馬鹿しくなってくる

 

まさに、生ける破砕機である

 

春蘭「お、おい北郷、もうそれくらいに・・・・・」

 

一刀「なんだ、早くあいつらを見つけなければならないんじゃないのか」

 

春蘭「・・・・・・・・・・・」

 

一刀「で、もう一度聞く、どこにいるんだ」

 

「ぎゅぐううううううううう・・・・・あ、悪魔めええええええええええ!!!!!」

 

一刀「誉め言葉として受け取っておくぞ」

 

「いがあああああああああ、こ、殺してくれええええええええええ!!!!!」

 

彩香「・・・・・これは、見れたものではありませんね」

 

春蘭「季衣と流琉を連れてこなくて良かった・・・・・」

 

凪「うう、惨いです・・・・・」

 

慣れてない者が見たら、あっという間に逃げ出しそうな拷問シーンが続いて行く

 

いくら敵兵であっても、最低限の敬意を示すくらいの礼儀は彼女達にもある

 

しかし、一刀にはそれが無い、味方と敵の区別はしっかりと付ける

 

それが今の北郷一刀である

 

城全体に木霊するが如くの断末魔が鳴り響いて行く

 

一刀「どうする、このまま内臓を握り潰してもいいか」

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっ、涼州連合万歳!!!!!」

 

凪「っ!・・・・・舌を・・・・・」

 

春蘭「私とて同じ選択をするな・・・・・」

 

彩香「一刀君・・・・・」

 

一刀「使えないな・・・・・早く馬家を見つけ出すぞ」

 

氷環「分かりましたわ」

 

炉青「了解どす」

 

こと切れた涼州兵を、興味を失った目で見降ろしながら、一刀は指示を出す

 

因みに菖蒲は外回りを回っていた

 

彼女の武器は狭い屋内で振り回すには適さないため、悠、猪々子、斗詩、麗春と共に掃討戦を敢行していた

 

「(おのれ、このままでは済まさんぞ)」

 

廊下の曲がり角に一人の涼州兵が潜んでいた

 

その手には弓矢が握られている

 

「(曹孟徳、仲間の仇、その命、貰い受ける!)」

 

息を潜め、ゆっくりと弓を弾き絞り、影から狙いを定める

 

春蘭「っ!!華琳様!!!」

 

凪「華琳様、危ない!!!」

 

華琳「え!?」

 

既に矢は放たれ今まさに、華琳の胸に矢が突き刺さろうとする

 

バシュッ!!

 

華琳「あっ!!・・・・・一刀」

 

その刹那、縮地で一瞬で距離を詰めた一刀が矢を防ぐ

 

矢は右の掌を貫き、小さな血飛沫が華琳の体に降りかかる

 

彩香「おのれ!!!」

 

「がひゅっ!!!」

 

精密な彩香の矢が曲がり角に隠れた敵兵の喉に命中し、敵兵はそのまま絶命した

 

春蘭「か、華琳様、お怪我はありませんか!!!??」

 

凪「だ、大事ありませんか!!!??」

 

華琳「ええ、大丈夫よ・・・・・助かったわ、一刀」

 

一刀「謝礼なんぞいい、さっさと行くぞ」

 

鏃が半分貫いた矢を引き抜き、廊下を歩いていく

 

彩香「待って下さい、その前に手当てを!」

 

一刀「それくらい自分で出来る、馬家を探す方が先だ」

 

氷環「隊長様、手当はしておいた方がいいですわ!」

 

炉青「はいな、毒矢だったらえらいことどすよ!」

 

一刀「安心しろ、それくらい邪気で中和出来る」

 

凪「そんなことが出来るんですか!!?」

 

一刀「一定の毒であればな・・・・・それより急ぐぞ、奴らを逃がしても良いのか」

 

春蘭「その通りだ、華琳様に働いた蛮行、その身を持って償わせてやる!!!」

 

その後、城の中を隈なく探したが、馬家一同の姿は無かった

 

裏口から逃走を図ったことが判明し追撃をしようとしたが、純粋な機動力で勝負しようものなら、やはり涼州連合に軍配が上がる

 

曹操軍の追跡を嘲笑うかのように、悠々と撤退していったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩香「しかし、呆気ないものです、涼州連合というのは馬さえ封じればこれほどに脆いものですか」

 

春蘭「まったく、借りを返せはしたが、これでは只の弱い者いじめではないか」

 

風「風達のやる事、殆んど無かったですからね〜・・・・・」

 

稟「ええ、ただ矢の一斉射撃を指示するだけでした・・・・・」

 

凪「馬に頼り過ぎたツケというものですか・・・・・」

 

一つの事に固執することの危険性を認識させられた一同であった

 

華琳「何かに縋るのは弱さという事ね・・・・・今回の戦いは私達にも反省の点があるわね」

 

彩香「はい、今回は殆んどが一刀君の功績です」

 

春蘭「そうであるな、北郷の独壇場と言ってもよかった・・・・・」

 

風「策に加え、実績も掻っ攫われちゃいましたからね〜・・・・・」

 

稟「ええ、一人で馬騰を抑えてもいますし・・・・・」

 

凪「おまけに華琳様の命も助けられていますから・・・・・」

 

華琳「・・・・・・・・・・」

 

これでは、舌戦の時のお説教など出来ない

 

功を上げた者に仇で返そうものなら、全軍の士気にかかわる

 

±で言えば、どう考えても+の方が勝っているのだから

 

華琳「この件に関しては、保留としましょう・・・・・今は、涼州征伐に集中するわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから曹操軍は、今度こそ月と詠の協力により一気に涼州にまで足を延ばした

 

しかし、涼州連合との交戦は度々あったものの、馬家の姿は確認できなかった

 

馬家の求心力を失った涼州は、あっという間に曹操軍の領土に加えられるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翠「母さん、なんでだよ、なんで涼州の救援に行かないんだよ!!!??」

 

蒲公英「そうだよ、皆を見捨てて生き恥を晒すなんて、西涼の名が泣くよ!!!」

 

葵「落ち着きやがれ、今の俺達に何が出来る」

 

潼関にて、涼州連合は大半の兵を討ち取られてしまった

 

こんな状況では、仮に涼州に帰ったとしても防衛など夢のまた夢であるのは目に見えていた

 

鶸「姉さんも蒲公英も、気持ちは分かるけど、お母様の言う通りです」

 

蒼「うん、残った皆もボロボロなんだよ・・・・・」

 

生き残り付いてきた者もいるが、元々万単位でいた涼州兵は数千にまで数を減らしてしまっていた

 

おまけにその全てが満身創痍で、付いてくるだけでもやっとの状態であった

 

完全に借りを返される形となってしまった

 

葵「こうなったら再起を図るっきゃねぇな・・・・・一番の近場は、益州しかないか」

 

蒲公英「え、あんな所に行くの?」

 

翠「今の益州に踏み込むのは危ないぜ」

 

蒼「うん、劉璋が政に興味が無くて遊び惚けているって話だよ・・・・・」

 

鶸「絶対にこっちの足元を見られますよ・・・・・」

 

葵「背に腹は代えられん・・・・・それに人の死に場所を奪っといて文句を言うんなら、俺一人で曹操軍に特攻しかけるが、いいか?」

 

鶸「だだだ、駄目ですよ、そんなの!!」

 

蒼「蒼達が悪かったから!!」

 

翠「変な気を起こしてるんじゃねぇよ!!」

 

蒲公英「叔母様に死なれちゃったら、蒲公英達どうすれば良いの!!??」

 

葵「だったらグダグダ言わずに付いて来やがれ!!!」

 

そして、涼州連合は一路益州を目指すこととなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、涼州を難無く占領下に置いた曹操軍は、涼州の統治を風と稟に一任し陳留に帰り着いた

 

しかし、華琳達が涼州征伐に動いている最中、一つの問題が発生していた

 

それは、洛陽で元漢王朝の文官達が決起しようとしていたのだ

 

禅譲の儀が取り行われるという噂が立ち、いずれは利権を奪われると危機感に苛まれた文官達が官軍を率いて陳留に攻めてくるという報が齎された

 

当然こんなことを華琳を含め、空丹と白湯も認めるはずもなく急遽討伐隊が組まれ、華琳を筆頭に多くの将兵達が洛陽に出陣した

 

しかし、そこに虎豹騎の姿は無かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩香「しかし、大丈夫でしょうか、華琳」

 

桂花「脳筋の春蘭はともかく、秋蘭や季衣と流琉もいることですし、心配はありません」

 

麗春「だな、今の朝廷の戦力など我ら虎豹騎が出張らずとも鎧袖一触である♪」

 

どれだけ漢王朝の力が衰退しているかを知っている一同は、数日すれば吉報が届くであろうと、玉座の間で高をくくっていた

 

桂花「それはそうと、あんた・・・・・華琳様のお咎めは無いとしても、私の咎めは覚悟しなさいよ!」

 

一刀「なんだ、何のことだ」

 

いきなり指をさされるも、一刀は何が何やら分からないと言った風だ

 

事の経過を彩香から聞いた桂花は、ご立腹だった

 

桂花「あんたが言いたいことはこういう事でしょ、そんなに戦争が好きなら、子々孫々、末代まで殺し合い憎しみ合えばいい、こういう事でしょ!?」

 

一刀「そうだ、それが人間の本性であり、未来永劫変わることのない絶対的な本質だ」

 

人の歴史がそれをまざまざと証明している

 

実際、有史以前から人間は血みどろの争いを演じてきた

 

それは二千年後の現代でも同じで、その勢いは衰えるどころか苛烈さを増すばかりである

 

つまり人類は、物事の解決を戦争に頼った時点で、自ら平和を放棄したのだ

 

なら好きにさせればいい、かつての自分の様に、運命に逆らうような行いこそが、もっとも忌み嫌われて当然なものである

 

かつてのジョン・レノンやボブ・ディランやマレーネ・ディートリッヒの戦争反対を訴え邪魔をする歌手活動など、人間の尊厳を踏みにじる最低の行いと言える

 

それだけではない、マーチン・ルーサー・キング、チャールズ・チャップリン、現代の太平洋戦争の戦争体験者、マララ・ユスフザイ、PKO、青年海外協力隊、これら全ての行いは、身勝手で、傲慢で、独善的で、偽善ぶった、押しつけがましいエゴイズムで、殺されて当然な冒涜でしかないのだ

 

戦争を否定することは、自分自身を否定するも同義である、なにせ数えきれない数の戦争の果てに自分達は生まれているのだから

 

そんな神をも恐れぬエゴイスト共は、徹底的に排斥すればいい

 

そうすればこの世は英雄達が跋扈する、至上の楽園となるであろう

 

その結果、何兆、何千兆の人間が死のうが、地球の生態系がどれだけ狂わされようが構いやしない

 

それこそが人類のあるべき姿なのだから

 

桂花「あんた・・・・・本当に前の方がマシだったわよ!!!!!」

 

氷環「な、隊長様への暴言、許しませんわよ!!!」

 

炉青「そうどす、ここで燃え散らされたいどすか!!!??」

 

菖蒲「私の戦斧の錆になる覚悟は出来ていますか!!!??」

 

桂花「あんた達こそ、こんな危険人物に良く付き従っていられるわね!!!??」

 

氷環「その言葉、そっくり返しますわ!!!」

 

炉青「はいな、曹孟徳に付き従っている輩が良くもそんなこと言えるどすな!!!」

 

桂花「こいつと華琳様を一緒にしないでくれる!!!」

 

菖蒲「覇道を支持する人間に言われたところで、塵芥も説得力などありません!!!」

 

麗春「お、おい、よさないか!!」

 

彩香「桂花も口を慎みなさい、何の為に華琳が一刀君を咎めなかったと思うのですか!!?」

 

桂花「しかし、彩香様ぁ!」

 

何とか麗春と彩香が場を収めようとするが、一触即発の雰囲気が解消されない

 

そんな中

 

「申し上げます!!」

 

いきなり伝令が一人、玉座の間に走り込んで来た

 

桂花「なによ、今大切な話をしているんだから後にしなさい!!」

 

彩香「桂花、報告の方が優先でしょう!!」

 

麗春「そうだぞ、緊急の案件だったらどうする!!?」

 

内心、いい仕事をしたと伝令を褒めちぎる二人であった

 

しかし

 

「徐州に・・・・・呂布が現れました!!!」

 

氷環「・・・・・え」

 

炉青「れ、恋さん・・・・・」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

伝令が齎した報は、本当に緊急を要するものだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Seigouです

 

前回では伝えそびれていましたが、菖蒲の新しい武器は香風ちゃんの戦斧と同じものだと思ってください

 

その為、屋内で菖蒲が戦闘をする描写は、物理的に難しいという事になりました

 

実際、香風ちゃんが屋内で戦闘をするシーンはディスク版でも無かった筈ですし

 

もしかしたら自分が忘れているだけかも、もしあったらご指摘お願いします

 

待て、次回・・・・・

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