1.She says Goodbye, We say Hello |
〜シラナミ〜
……目を覚ましたとたん、視界がぐらついた。
熱、か?
僕としたことが、体調管理がなっていないな…。
そもそもここは何処だ。
「…あっ、気がつかれましたか?」
額に冷たいタオルの感触。
声の方へ視線を向けると、…名前は覚えてはいないが、
うちのメイド服を着た女がいた。
「あ、ええと…内々に呼んだ僧侶さまは、治療を終えて今日は帰られました。
その…ひどく弱っておられたせいで、熱が…下がらなくて…。
今しばらくお眠りに…あ、何か召し上がられるなら報せるように言われております。」
おどおどとそんなことを言う。…弱っていた? 僕が?
「僕は…どうしたんだ。」
「……えっ。あ、あの、…いくつも酷い傷を負われて、…倒れておいででした。
すぐ、気がつかれましたが、どうにか内々に治療してくれ、とだけ……
……それと……きっと明日もう1度、同じ目に遭うから、と……」
まったく覚えていなかった。何が起きたんだ…?
〜ミツノ〜
私なんかが、本当にこの仕事に就けるなんて、それだけでありがたいって思った。
何があっても、どんな仕事を言いつかっても、精一杯やりきろうって。
例え、初めての仕事が、シラナミさまの結婚式の、控室係、でも。
「今日は忙しいから、新人でも容赦できないからね!
指示通りに動くのよ! ぼーっとしないで!」
…と、言われてしまうということは、ぼーっとしているんですね…。
申し訳なく思いながら、お支度のととのったシラナミさまを見送る。
違うの、決心は本物なの。
ただ……間近で見るタキシード姿のシラナミさまが……か、かっこよくて……!
結婚式は女が主役なんて嘘だわ。なんて麗しいの……倒れてしまいそう……。
「大変!!お倒れに!!!」
えっ、いえ、倒れそうは比喩表現で、倒れては……
「シラナミさまがお倒れに!!!」
……運ばれてきた、お顔に血の気の無いシラナミさまを見て、
今度は息が止まりそうになった。
「会場をあわててお出になったと思ったら、一瞬でこんな…一体何が……
あなたここで見ていてちょうだい! 治療の手配をしてくるわ!!」
……ごめんなさい、ごめんなさい、シラナミさま。
憧れて、やっとここに来て、最初の仕事がこれだって、
シラナミさまがどうにかなってしまうより100倍ましだわ。
目を覚まされてください。どうか……!!
〜シラナミ〜
ぼんやりと脳裏に浮かんだのは、赤い鎧の男。
けど、何があったかは思い出せない。
「あ……あの……」
…先ほど事情を説明してきたメイドが、じっとこちらを見ていた。
「……ああ、そうだな、食事は要らないが…水をくれ。」
こいつに聞いても、きっとこれ以上のことは知らないだろう。
メイドが水さしから汲んでよこした水を、一気に飲み干す。
……目線。…なんでこいつこんなに僕を見る。
「なんだ、まだ何かあるのか。」
「あっいえ、申し訳ありません!
その……私などが出過ぎたことかと存じますが…ただ、心配で……」
「……ふん。お前新人だな。
こんな妙な荒事は最近めっきり無いが、
強引な仕事はわりと手がけるぞ、うちは。」
「あ……はい。存じております。」
驚いた。知ってて来たのか。
……確かに、女の目に不安の色はあったが、怯えはなかった。
こういうことがあると、引く奴は合わないと辞めていく。
目でわかる。こいつは簡単には辞めない。
「明日……記憶には無いが、何かあるらしいし、
明日以外でも、何かあるだろうが、まあ必ず戻る。
出来る限りフォローすればそれでいい。お前の仕事だ。」
「…は、はいっ!」
「お前、名前は?」
そいつは真っ直ぐに僕を見て言った。
「…ミツノと申します!」
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【ネタバレ他】 DQXジューンプライドイベント 「当時のネタ」もありです。 メンテで意識をいじられるのは体に負担ということになっています。 【その他】 数字は時系列 各ページ冒頭のキャラ名視点で進行します 出逢い篇捏造。 ・'16年度アストルティアクイーン予選応援作品 ※pixivさんから引きあげて来ました ※少なくともtumblrさんにも同じ話が上がる予定です |
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