真剣で私と戦いなさい! 8話:指輪の戦士
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5月16日(土)

 

朝、駅前に集合したは良いが先ほどヴァンプさんが用事で来れないので代わりの怪人が来るらしい。

 

 

大和「代わりってお前等なのか」

 

ウサコッツ「なんだよ、文句あるのかよ?」

 

 

ウサギをサイボーグ化したような容姿のウサコッツ、猫のような容姿のデビルねこ、緑色の機械仕掛けのひよこPちゃん・改、そして紺色のオオカミヘルウルフ。

 

女子高生たちに人気の怪人たち、アニマルソルジャーの4体が集まっていた。

 

 

大和「いや、護衛も兼ねてアーマーさんとかの方がうれしかったんだけどさ」

 

デビルねこ「アーマーは明日の準備の方に回されてるから無理なの」

 

 

デビルねこの言葉に続くようにPちゃんが電子音を鳴らしているが何を言っているのか分からない。

 

 

デビルねこ「いざとなったらPちゃんが核ミサイル撃つから大丈夫だって言ってるよ」

 

大和「大丈夫じゃないだろ」

 

ウサコッツ「それよりそろそろ時間だろ、早く行こうよ。僕、鎌倉行くの初めてなんだ。」

 

大和「道案内が初めて行くってどういうことなんだよ」

 

デビルねこ「PちゃんにGPS機能があるからそれで案内してもらうことになってるの」

 

 

デビルねこの言葉に反応するようにPちゃんの目が点滅する。

 

見た目こそアレだが彼らもフロシャイムの怪人、特にPちゃん・改はレッドさんに危機感を抱かせたほどらしいし、大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

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ウサコッツ「ねえねえ、大和はクロウと戦うんだよね?」

 

大和「どうしたんだよいきなり…それにあまり大きな声で話すなよ」

 

 

電車の中、流石に5席も占領するのは悪いので皆で詰めて座っている。

必然的に俺の膝の上に誰かが乗るのだが、意外にも無口なヘルウルフが俺の膝の上で借りてきた猫が如くじっとしている。

 

窓側に座りたいだけかもしれないが、通路側に座っているウサコッツを興味深げに見る子供や女子高生から逃れるためかもしれない。

 

 

ウサコッツ「分かったよ。…でもこれから行く人ってクロウって奴と戦ってる人なんでしょ?その人とあって情報を貰うって話だけど…」

 

大和「元々は『ジガ』に話して手助けでもして貰うつもりだったんだけど…キャップはおろか姉さんまで最近ノリ気になってるからね…」

 

デビルねこ「大和は戦う気はないのかの?」

 

大和「俺は指示を出す側なの…」

 

ウサコッツ「…自分以外に誰もいなかったら?」

 

 

ウサコッツから出てきた問い。

 

正直に言ってしまえばそれが俺が戦わないといけない理由でもある。

 

 

姉さんですら出てくる瞬間まで気がつけないほどの隠密性、少なくとも人語を理解し徒党を組む知性がある。

姉さんや総代ならクロウがどれだけいても負けることは無いだろうが、一般人は最初から目の前にいても勝ち目は無いだろう。

 

何より川神にはフロシャイムのように人に友好的な怪人が多い所為で近づかれても襲われるとは思わないだろう。

 

暴れ始める前に倒す必要がある。

つまりは出てきたところを叩くしかないわけで、あらかじめ出現位置が分かる俺ならばある程度先回りできる。

 

 

大和「別の誰かが来るまでの時間ぐらいは稼ぐよ」

 

ウサコッツ「戦うんだね…ならさ、僕らの連絡先教えてあげるよ。いざとなったら呼ぶと良いよ」

 

デビルねこ「だの!」

 

 

そういって二体は携帯電話を出す。

 

幾らピンチになったからといってこいつらを呼ぶことは無いだろう。

ウチには姉さんと言う反則(チート)がいる。

 

二体から連絡先を教わり携帯を戻そうとしたが膝の上にいるヘルウルフが袖を引っ張る。

何事かと思ったが、ヘルウルフの手の中にある携帯を見て理解する。

 

雲が無い満月の夜限定なら呼んでも良いかな…

 

 

 

 

 

 

 

鎌倉駅を降り、バスに乗ろうかと思ったがウサコッツたちが観光を含めて歩きたいと言い出したので途中から徒歩で移動する。

 

実際はPちゃんとウサコッツが空を飛び、デビルねこがウサコッツに捕まって、ヘルウルフは俺の肩の上に乗っている。

 

女子高生ぐらいの子達に指差したり写真を撮られたりしているがある意味仕方ないだろう。

 

 

 

ウサコッツ「お土産何が良いかな?」

 

大和「お土産は帰りに勝った方が良い荷物がかさばるぞ」

 

デビルねこ「レッドさんにもお土産買わないといけないの」

 

 

レッドさんも今頃はかよ子さんと2泊3日の小旅行中らしいから、生ものは控えた方が良いだろうな……

 

そんなことを考えている時だった。

 

 

大和「っ!」

 

ウサコッツ「どうかしたの?」

 

 

甲高い耳鳴り。

 

 

大和「クロウだ」

 

デビルねこ「急がないと!」

 

大和「鎌倉にはジガがいるはずだ。大丈夫だろ」

 

ウサコッツ「でも…」

 

大和「別に行かないって言ってるんじゃない。そんなに急がなくても良いってだけさ」

 

 

良い機会かもしれない。

ジガの戦闘が見れるかもしれないし、何か思い出せるかも知れない。

 

 

 

 

 

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ウサコッツたちに急かされて走る。

 

既にクロウは出現しているはずだ。

 

感覚的に分かるが、着いた先は海辺。

 

 

大和「ジガは…」

 

 

まだ来ていないようだ。

 

数百メートル先にクロウが1体だけ居るが、周囲に人は居ないようなので隠れて遠くから観察する。

 

 

ウサコッツ「何かくれてんだよ!戦えよ!!」

 

大和「ジガが居るって言ってるだろう。周囲に人は居ないみたいだからこのまま観察だ。あいつらの目的が分かる可能性もある」

 

 

別に戦うのが怖いわけではない。ただ無意味に戦ってジガに悪い印象を与えたくないだけだ。

 

 

デビルねこ「あ!動き出したよ…」

 

大和「…このままあとを追うぞ」

 

ヘルウルフ「戦わないの?」

 

大和「別に誰かが危険なわけでも、俺しか戦う人がいないわけでもないだろ?ジガの戦いを参考にするだけさ」

 

 

そう言ってクロウの後を追う。

夜間だけしか活動しないと思っていたが、昼間でも活動するようだ。

 

 

そのまま、数分が経過する。

ついに恐れていた事態が発生した。

 

 

ウサコッツ「人が!」

 

 

クロウは海沿いを移動しているが防波堤の方に小さな人影が見える。

このまま真っ直ぐ行けばいずれ接触することに…

 

 

デビルねこ「大和!」

 

大和「…ぎりぎりまで待ってみよう。ジガだってこっちに向かってるはず」

 

 

俺の声が届いたのか反対側からロングコートを身に纏った長身の女性が走ってくる。

 

クロウがそちらの方を見たかと思うと真っ直ぐに女性の方に走っていく。

女性の方から『纏身』という掛け声が聞こえ、光に包まれる。

 

間違いない。

彼女が『ジガ』だ。

 

 

ウサコッツ「さあ、大和も出番だよ!」

 

デビルねこ「引っ込んでおく理由もなくなったの」

 

大和「分かったよ」

 

 

そう言ってヘルウルフを下ろし、隠れて周囲に人がいないことを確認する。

 

 

大和「(考えてみるとこれが俺の初めての戦いだよな)」

 

集中するのに反応して右手に指輪が出現する。

 

大和「(やっぱり怖いな…)」

 

右手が震える。

やはり怖い。

 

大和「纏身」

 

 

俺の体を光が覆う。

纏身終了と共に両腕の角をスライドさせ臨戦態勢に入る。

右腕に気を集中させる。

 

気を使った砲撃は制御が巧くいかないためフルチャージ一回のみだが、牽制用に左腕を残しておけば大丈夫だろう。

 

両腕を握り締めて駆ける。

 

クロウはこちらに気づいていない。

最短距離を全力で駆け抜ける。

 

集中力は十分。

既にジガもクロウも動きがスロウに見えている。

 

ジガがこちらに気づき、クロウもこちらに気づくが遅い。

懐に入って右腕を思いっきり振り抜く。

 

姉さんと総代に大振りな攻撃は止めておけと言われたことを思い出したが、クロウの胸に吸い込まれるように直撃する。

 

クロウが飛んで行き、射線に障害物が無い。

急いで体勢を整えて右手の角を一斉に打ち抜く。

 

 

 

 

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クロウ「ギャアァアァ!!」

 

 

クロウの叫び声を合図に集中が途切れる。

 

砲撃は真っ直ぐ飛んで行き、クロウに直撃する。

そして空中で爆発した。

 

 

大和「え”?」

 

 

特撮ヒーローの敵のように爆発した。

クロウの体は落ちてくることは無く、砂煙の後には何も無かった。

 

 

ジガ「あなたは…」

 

大和「…爆発…ありえないだろ」

 

ジガ「あの…」

 

大和「…直撃したからって一撃で…」

 

ジガ「あう…」

 

ウサコッツ「大和ずるいよ」

 

デビルねこ「…不意打ちで一撃…」

 

ヘルウルフ「大和、卑怯」

 

 

横で好き勝手言ってくれるアニマルソルジャーたちPちゃんからも電子音が聞こえるが何を言っているのか分からない。

 

しかし、いきなり爆発するとは…

 

 

ジガ(?)「うわぁ…かわいい」

 

大和「…ジガさん?」

 

巴「あ、うん。私は柊巴(ひいらぎともえ)。あなたは?」

 

 

既にジガは変身を解き普通の人の姿になっている。

目つきは鋭く身長も俺より高い(姉さんも高いけど)、しかし声は柔らかく、笑顔が優しい。

何より胸が大きい。

 

 

大和「あ、ご丁寧にどうも。今日御伺いする予定だった直江大和です」

 

巴「あ、やっぱりそうなんだ。この子達は?」

 

大和「ああ、こいつらは…「「「アニマルソルジャー!!」」」…フロシャイム川神支部のぬいぐるみ怪人たちのウサコッツ、デビルねこ、Pちゃん・改、ヘルウルフです」

 

巴「ぬいぐるみ怪人か…かわいいな…触っても大丈夫?」

 

大和「まあ、もこもこしてて良い感じですよ」

 

 

膝に乗っていたヘルウルフの感触を思い出す。

俺の言葉にうれしそうに顔を崩し、ウサコッツをなで始める。

 

改めてみると纏身を解除したのに体に変化が見られない。

俺も纏身を解いて袖を捲って見るがやはりうろこ状に変化している。

 

 

大和「柊さんは…体に異常とか無いんですか?」

 

巴「…前はあったけど慣れてきたのか徐々に変化が無くなって最近では殆どなくなったよ」

 

大和「…慣れか」

 

巴「…少し場所を移そうか。さっきの爆発で人が来ちゃうかも…」

 

大和「はい」

 

 

柊さんに連れられて移動する。

念のためにとサングラスを渡されていたので、それを掛ける。

さらに立体マスクをする。

 

どう見ても危ない人だが、文句は言えない。

 

 

 

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柊さんに連れて行かれたのは神社、心なしか周囲に気配を感じる。

 

 

巴「日中ならあまり人がいないから大丈夫だと思うよ」

 

大和「ありがとうございます」

 

巴「いいよ、それにしても私のときより範囲が広いね、目も…」

 

大和「そうなんですか?」

 

巴「うん、私のときは目とかは何も無かったから」

 

大和「変身するたびに広がったりは?」

 

巴「寧ろ減っていったかも」

 

 

何故広がったんだろうか。

何か違いがあるのだろうか?

 

 

巴「…直江君は…指輪のことどう思う?」

 

大和「指輪ですか?面倒なモノだな…と思ってますけど」

 

 

これにとり憑かれてから慣れない事ばかり、クロウとか言う怪人と戦うことになるわ、姉さんたちに目をつけられて鍛えることになるわ、葵と井上に目をつけられるわ…

 

 

巴「…私も最初は嫌だったけど…最近は良いかな…って思うんだ」

 

大和「…俺が指輪を嫌ってるのが問題ですか?」

 

巴「あう、そういうのじゃ…」

 

 

目つきは鋭いが姉さんたちほど強気な人じゃなさそうだ。

これじゃ俺が悪いみたいだ。

 

 

大和「別に怒ってる訳じゃないです。…確かに内心じゃああまり良い気はしてませんでしたから…寧ろ、戦うのは怖いですから」

 

 

キャップたちの前じゃ恥ずかしくて言えないな。

 

ウサコッツたちにも後で口止めしておかないとな。

 

 

大和「さっきの戦いだって本当は柊さんが来る前から俺たちクロウを発見してましたから…でも何かと理由つけて逃げてました。戦いだって柊さんに集中してる間に不意打ちしましたし…」

 

巴「……」

 

大和「…俺の周りの女の子って俺より強い人ばっかりなんですよ。だから…」

 

 

情けないところとか見せたくない。

 

口にする前に柊さんに抱き寄せられる。

 

女性特有の柔らかい感触。

俺の頭を撫でながら柊さんが続ける。

 

 

巴「さっきも言ったけど私も怖かったよ。でも…弟に手助けしてもらってがんばろうって気になれたんだ。…だから…」

 

大和「柊さん」

 

巴「何?」

 

大和「恥ずかしいです」

 

 

役得ではあるが流石に恥ずかしい。

 

すぐそばでウサコッツたちがこっちをガン見している。

京あたりに話が向かえば恐ろしいことになりかねない。

 

 

巴「あう、ごめんね。弟に良くしてあげるから…」

 

大和「家族と一緒にされましても…」

 

巴「家族…あぁ!!」

 

 

俺の家族というキーワードに柊さんが突然立ち上がる。

 

 

巴「姉さんの食事…忘れてた」

 

大和「そういえばもう昼ですね」

 

 

気づけば既に12時を回っている。

昼食をとるには丁度良い時間帯だ。

 

 

巴「どうしよう…」

 

大和「怒ると怖いんですか?」

 

 

巴さんの容姿から同じく長身の姉さんのような人物を思い浮かべる。

 

 

巴「雛乃(ひなの)姉さんしか居ないから、怒られはしないだろうけど…まだ話したいことが…」

 

大和「…俺は元に戻るまでこの辺に居ますよ。後でまたそちらの家に向かいますから…」

 

 

俺の言葉にうなずくと大型のバイクに向かう。

 

バイクにまたがりヘルメットを被る姿は男の俺から見てもカッコイイ。

 

 

巴「あ、家分かるかな?」

 

ウサコッツ「PちゃんにGPS機能がついてるから大丈夫だよ」

 

大和「そういうわけで御気になさらず…」

 

巴「うん!じゃあ、後でね!!」

 

 

エンジン音と共にバイクが疾走する。

 

腕を振って見送った後、俺はウサコッツたちに向き直る。

 

 

大和「昼食は俺がおごるからさっきのことは黙っていてくれ」

 

ウサコッツ「ワーイ、いっぱい食べよう!」

 

デビルねこ「僕は糖尿だからあまり食べれないの」

 

ヘルウルフ「大和、好き」

 

 

単純な奴らでよかった。

 

強く念を押しておけば何とかなるだろ。

 

 

柊さんが去っていった方を見ながらため息をつく。

 

 

大和「…正直危なかった」

 

 

京で耐性があるつもりだったが、流石に危なかった。

 

でも…

 

 

大和「単純だな、俺…少しやさしくされただけでがんばろうって気になってきた」

 

ウサコッツ「大和!早く行こうよ!!」

 

大和「落ち着け、見ての通りまだ戻ってないんだよ」

 

 

とりあえず、金を下ろしておいて良かった。

 

 

 

 

 

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番外編

 

ヘンゲル「うむ、…良いだろう。…では後ほど」

 

そういってヘンゲルは電話を切る。

そして、すぐに立ち上がり出かける準備を始める。

 

 

サミエル「どうかなされたんですか?」

 

ヘンゲル「親友(とも)から新作の情報が入った。早急に手に入れるには、今から出れば丁度間に合う計算だ」

 

サミエル「はあ、…前の時(6話参照)みたいに警察にご厄介にならないようにお願いします」

 

ヘンゲル「分かっている。あの事ならキングからもお叱りを受けている」

 

サミエル「そうですか、ならばついでに…」

 

ヘンゲル「分かっている、ついでに夕飯の食材も買ってこよう」

 

 

そう言ってヘンゲルは足早に出て行く。

 

行き先は川神、彼の親友が待っている。

 

 

サミエル「…ヴァンプ様たちに明日のことを聞いてきてほしかったのですが……」

 

 

 

 

番外編

〜部下の憂鬱〜

 

 

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あとがき

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

コメントとか頂けると励みになります。

ついでに登場させてほしいキャラとか書いていただけるとうれしいです。

 

筆者はアニマルソルジャーの中ではヘルウルフが好きです。

皆さんはどいつが好きですか?

 

前回のあとがきで、井上好みのあの人が登場と書いておきながら名前だけ…次回こそは出ますよ?

 

 

 

 

 

 

言い訳

 

ともねえが大和に対してあんなことしないかもしれませんが、大和は公式設定でも年上に好かれやすいので…そこは主人公補正だと思ってください。

 

 

説明
『ジガ』に会う為ヴァンプと鎌倉に向かうことになった大和。しかし、ヴァンプに急用が入ってしまった為代わりの人員が来る。

難産でした。男ですけど…
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コメント
すごい人達の参入だ……(アイン)
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